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BLACK NIKKA
RICH BLEND
EXTRA SHERRY
Limited Bottled in 2018
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@販促サンプル
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★(5)

香り:注ぎたてはグレーンの穀物香から、うっすらとしたシェリー樽原酒の甘み。レーズン、ドライオレンジ、徐々にコーヒーフレッシュのようなミルキーさ、ほのかな硫黄も伴う。

味:まろやかでクリーミーさを伴う口当たり。シェリー樽のニュアンスはプルーンやシロップ漬けのチェリー、オレンジママレードを思わせる甘み、ほろ苦さ、微かにサルファリー。バランス寄りの構成。
余韻はややドライでビター、少しピリピリとした刺激、ふわりとチョコレートクッキーのような甘く香ばしいアロマが鼻腔に抜ける。

ブレンデッドらしくどこか軽さのある口当たりだが、シェリー樽由来のニュアンス、味わいの濃さ、全体として混然となったような香味が感じられるウイスキー。熟成感は8~10年程度といったところから、それ以上に若い刺激も感じるが、香味全体を抑えるシェリー樽や原酒由来のバランスの良さもある。余韻で感じるビターな樽感が、長期熟成原酒の名残であろうか。

少量加水すると華やかさ、蜂蜜や柑橘系の香味が開きバランスが良くなる。ロック、ハイボールは際立った変化はないが、ブレンデッドウイスキーらしくマイルドで飲みやすい味わい。

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自分の周囲では誰も予想していなかった、ブラックニッカからの新しいリミテッドリリース。"エクストラシェリー"が、2018年5月29日にリリースされる予定です。
ブラックニッカのリミテッドリリースと言えば、60周年を記念しリリースされたブレンダーズスピリットに端を発し、クロスオーバー、アロマティックとリリースされてきたわけですが、低価格ながらブレンドの方向性と原酒の個性をそれぞれ楽しめるウイスキーに仕上げられており、特にエントリーユーザーを中心に高い評価を得たのは記憶に新しいところ。

そして2018年、年初に発表された"アサヒビールの事業方針2018"では、ブラックニッカブランドに加えて、発売56周年となるスーパーニッカのブランド強化を行うことが発表されていました。
ここで、流石にもうブラックニッカで新商品は出ないだろうと。例えばクリアブレンドの販促キャンペーン強化くらいで、むしろスーパーニッカでピーテッドとかシェリーとか、あるいはピュアモルトとか出るんじゃないか・・・などと考えていたわけですが、その予想は鮮やかに裏切られるわけです(笑)。

今回のリリースは、昨年11月にリリースされたアロマティック同様に宮城峡の長期熟成原酒とシェリー樽原酒をキーモルトとした構成。また、通常リリースのリッチブレンドもシェリー樽原酒をキーモルトの一つとしていることから、これらとどのような違いが感じられるのかが気になるところです。
早速販促用のサンプルを入手しましたので、単品でのテイスティングに加えて、関連する銘柄との飲み比べもレビューしていきます。

ブラックニッカ飲み比べ
(左から、ブラックニッカ・アロマティック、リッチブレンド(ノーマル)、リッチブレンド(エクストラシェリー)。アロマティックとノーマルなリッチブレンドは色合いがほぼ同じように見えるが、エクストラシェリーは少し濃い色合いとなっている。)

まず、エクストラシェリー単品としては、濃厚とまでは行かずともはっきりとシェリー樽原酒の効いたブレンデッドであると言えます。 43%の設定もあって飲みごたえもある仕上がりです。

上記3銘柄での比較は、色合い同様、エクストラシェリーが最もシェリー感が強く、次いでアロマティック、そしてリッチブレンド。ただ後者2本は熟成感や香味の多様さこそ違うものの、樽感だけならそこまで大きな違はないとも感じます。
熟成感としては、ノーマルなリッチブレンドが最も若いと感じるのはある意味当たり前として、エクストラシェリーとアロマティックはほぼ同等。ただ、エクストラシェリーの方が樽感の分、一歩上回るかなという程度です。

そしてそのシェリー感ですが、そもそも宮城峡のシェリー樽原酒はサルファリーなニュアンスを持つものが多く見られ、その原酒が使われたエクストラシェリーもまた、若干ですがサルファリーな要素が備わっています。ここはアロマティックでも感じられており、共通する原酒の特徴であると言えます。
他方、エクストラシェリーにはクリーミーさを纏ったようなシェリー感があり、このフレーバーは、アロマティック含めこれまでのニッカのブレンデッドには見られなかった香味。ブレンドレシピのキモにして、全体の濃さとバランスを整える役割としても一役買っていると感じます。


昨年アロマティックが発売された当時、その感想には「スムーズで飲みやすいが、平凡で物足りなさを感じる」という声が散見されたところ。
勿論それは、アロマティックがエントリーユーザー層をターゲットとして開発されたからとも考えられるわけですが、一連のリリースで、ブラックニッカとして完成度の高いブレンダーズスピリットに続き、スモーキーなピーテッドモルトの個性を打ち出したクロスオーバーときた流れでは、シェリー樽原酒の個性を打ち出すという点でアロマティックはクロスオーバーの対極にはなりえなかったとも。
そこにニッカウイスキーの答えとして追加で開発された商品が、このエクストラシェリーであるなら、これこそ真打ちのブラックニッカ・シェリータイプと言えます。

それは値段なり、と言える部分も当然ありますが、あくまでブラックニッカブランドであることを前提とすればこんなところか。むしろ現在一般的な市場で購入できる2000円前後のウイスキーでは、最も濃いシェリー感が備わっていると言える仕上がり。
近年、樽の調達コストが上がりがちなシェリー樽原酒は、市場で人気がある反面、低価格であるほど効かせるのが難しくなります。そこを価格を抑えつつ原酒の割合を増やしてきた点は、ピーテッドタイプのブレンドをリリースするより踏み込んできたなと感じます。
このボトルをきっかけにして、往年のブラックニッカファンはもとより、エントリーユーザーがさらにウイスキーを楽しんでくれるといいですね。