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引き続き、ウイスキー関連書籍の紹介です。(前編はこちらからどうぞ。)
まず前置きとして、この特集で選定した書籍にはムック系や単発の雑誌が含まれていません。
これは全ての本がそうだとは言いませんが、編集や監修がいい加減、あるいは情報の偏りが大きかったりで、帯に短し襷に長しという中途半端な内容のものが多いためです。
最初はとっつきやすいかもしれませんが、特段目新しい情報もなく、すぐ本棚で埃をかぶる運命にあるように感じます。
それでも「本当にウイスキーのことがわからないので、何でもいいからキッカケを作りたい」という人は、少々古い本ですが"知識ゼロからのシングルモルト&ウイスキー入門(古谷三敏著)"が、ウイスキーに関する基本的な知識と、一般的な銘柄に関する情報がバランスよくまとめられているように思います。
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中古も安く手に入りますし、漫画レモンハートの内容がベースなので初心者でもわかりやすい。「ブレンダーの気合を感じるぜ」とか、一言で銘柄のPRがされているのも、広報的観点で見て理にかなっています。
こうした入門系の書籍は他にも色々ありますが、もう一つ候補を出すなら土屋守著の「ウイスキー完全バイブル」が、2015年11月発売で情報が新しく、初心者向けで今後の指針にもなる構成となっています。
前者はイラスト系で、後者は実写中心。どちらを好まれるかは読み手次第ですね。
ただし入門書1冊でカバーできる範囲は限られており、あくまで入門のキッカケづくり程度に考えてもらえればと思います。この手の入門書は1冊買えば十分です。
 
2.製法関連の情報を知りたい方へ
・熟成の神秘にフォーカスした入門書。「ウイスキーの科学」
・面白味はないが勉強にはなる。「ウイスキーコニサー資格認定試験教本」
 
ウイスキーの製法を知りたいという場合、大体の書籍には「お約束」的な情報が書かれているため、それこそ前編1.に上げた書籍や上述の入門書が1冊でもあれば、基礎の基礎は十分と言えます。ネットで調べても良いくらいです。
しかしそれ以上に踏み込んでウイスキーの製法、蒸留や熟成のなんたるかを学びたいとなると、かなり専門性が高くなります。
そうした踏み込んだ内容がまとめられたものは、「ウイスキーの科学」がまず挙げられます。
同書籍は、サントリーで貯蔵・熟成の研究に携わった経歴を持つ古賀 邦正氏が執筆。
全体の構成は熟成のメカニズムに重きが置かれていますが、ウイスキーの製造工程全般について詳しい解説と分析がされており、ウイスキーを知りたいという方の琴線をさらに刺激してくれると思います。
 
そしてもう1冊が「ウイスキーコニサー資格試験教本」。
ウイスキーコニサー試験を受けるにしろ受けないにしろ、ウイスキー全般に関する情報が網羅されており、当然蒸留に関する記述も通常の書籍より詳しく書かれています。ウイスキーブームで試験制度も活発になり、毎年リニューアルされているため情報の新しさもある程度担保されている。かつて自分も1冊買いました。
ただ、教本であるため中身はストイックさが強く、参考にするというより「勉強したい」という意欲がある方向けです。少なくとも自分にとってはウイスキー飲みながら読んで楽しむって感じではないですね。


3.マニアックな知識を求める方へ
・ウイスキー関連の歴史を知りたい方に。「ウイスキー起源への旅」
・ついに出た一冊、しかしここまでの情報が必要かは謎。「バーボンの歴史」
・オールド愛好家のバイブル。「スコッチオデッセイ」
 
この3冊は、それぞれの分野に特に深くハマった人向け、あるいはハマっていきたい人向けと言えます。
例えばウイスキーの歴史は、これまで挙げた書籍の中で簡単な解説などは必ずされており、ウイスキーを飲んでいく上で通常困らない範囲の知識は得られると感じています。
しかしそこから更に踏み込みたい場合は「ウイスキー起源への旅」が、勉強もさることながら読み物としても良いかもしれません。
もっとライトにウイスキー関連の歴史を知りたい場合は「ウイスキーの歴史(ケビン・R・コザー著)」がまとまっている印象を受けます。単純に読み物としてだけなら「もし僕らの言葉がウイスキーであったなら(村上春樹著)」も有名ですね。
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「バーボンの歴史(リード ミーテンビュラー著)」、「スコッチオデッセイ(盛岡スコッチハウス著)」は、その手の分野に興味が無ければなんのこっちゃという内容ですが、そちらの道に進まれる場合はまさにバイブルと言えます。
「バーボンの歴史」は、2016年1月に発売されたばかりのバリバリの新刊。これまで単体で取り上げられることの少なかったバーボンを、製法から歴史までここまでやるか?というくらい深く掘り下げており、愛好家御用達の1冊になりそうです。(自分もまだ全部読めてません。)
オールドボトルに興味が出てきたら、「スコッチオデッセイ」は一冊あって損なしです。
主に1971年から1989年前後で流通したスコッチウイスキーを、製造会社別にエピソードや構成原酒と合わせて紹介しています。書かれている内容は必要最低限ですが、これまで昔の「世界の洋酒事典」等を開いて調べなければならなかったことが1冊に凝縮されている、まさに道しるべです。
また、ウイスキー全般、ラベルに様々な歴史と情報が込められています。
それらに興味をもたれた方は、スコッチオデッセイと合わせて「スコッチ・ウイスキー物語 ラベルに読む英国の歴史(森護著)」が良い参考書になると思います。

 
長くなってしまいましたが、自分がこれまで読んできた書籍を中心に、これからウイスキーを学びたいという人向けの書籍をまとめさせてもらいました。
選定に関しては賛否両論あるかと思いますが、ウイスキーそのものの特集は数多くある中で、書籍の特集はあまり見られなかったこともあり、自分なりに参考になる(長く使っていける)かなと思うところを集めたつもりです。
ちなみに自分は飲み始め当初、コレクターのように書籍を買いあさった時期がありました。
しかし、情報の重複も多く、結局参考にする本は限られてしまいました。
ジムマーレイのウイスキーバイブルや、マイケルジャクソンのウイスキーエンサイクロペディア、ザガッティーのコレクションブックとかもありますが、いまや特にページを開くこともなく、本棚で埃被っちゃってますね(笑)。
なので、「これからウイスキーを勉強したい、右も左もわからない」という方は、入門書を1冊、そして後は1.で紹介したところから1冊買われて、後は知識欲に応じて2.、3.あたりから揃えていくのが良いのかなと感じます。
なお、これは取り上げた方が良いんじゃないか、という本が他にありましたら教えて頂けますと幸いです。