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秩父 10年 2008-2019 エイコーン #196 61.3%

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ACORN'S 
CHICHIBU 
MALT DREAM CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2008 Dec 
Bottled 2019 Nov 
Cask type Bourbon Barrel #196
700ml 61.3% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライな香り立ち。華やかさのなかに混じる甘酸っぱいウッディさ。バニラとオーク、ほのかにベリーや無花果のドライフルーツを思わせるアクセント。奥にはいつもの和生姜とハッカのスパイシーさ。

味:強い口当たり。 甘酸っぱいオークフレーバーは、アプリコットジャムや無花果の甘露煮。フルーティーさの奥からスパイシーさがあり口内を刺激する。余韻はドライでウッディ。フルーティーさの残滓を感じつつハッカやあくの残った筍、独特のえぐみ、ウッディな渋みを感じさせつつ、ドライなフィニッシュへ。

長熟バーボンが纏うような赤系のフルーティーさを備えた、不思議な樽感の秩父。オーソドックスに黄色いフルーツのバーボンオークで大正義だけではなく、その樽感がアクセントになっている。ベースの秩父味はいつもの通りだが、樽感が濃いこのボトルは他のそれらより余韻まで分離せず馴染んでいる。

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美味しいと評判の、エイコーンのMDC(モルト・ドリーム・カスク)です。
エイコーンと言えば先日のウイスキープラス5周年向けが個人的にちょっと。。。だったので、警戒していましたが確かに美味しい。ただし料理に例えるなら、かかってるソースが美味しい肉であり、ベース部分は安定の秩父。そしてなお価格。。。については言わぬが花でしょうか。

熟成樽はバーボンバレルとのことですが、アメリカンオーク由来の黄色系統だけでなく、少し赤みを帯びたようなフレーバー構成になっているのが特徴。バーボンそのものも、長期熟成したものはそういう果実風味をチャーオークフレーバーのなかに備えるものがあり、ひょっとしたらその系統の樽で熟成されたか、あるいは内側野焼き具合であるとか、なにかしらトリガーになる要素があったのかもしれません。
オーナーズカスクでこういう樽に当たるかどうかは、もう運次第ってのが面白さであり難しいところです。

そう言えば全然話は変わるんですが、どんぐりって食べれるんですよね。
息子が読んでた絵本を見て、昨年試してみたのです。あとなんの漫画か忘れましたが、どんぐりでラーメン作るみたいなのもあったなあ。。。と。灰汁抜きして加熱して、食べてみるとなるほど強引に例えるなら栗っぽい。でも灰汁がとても強いし渋い個体がw

そんなときにも連想する秩父味。ああ平常運行のウイスキー脳。秩父は秩父でも第2蒸留所はそういう個性が出ていないようなので、何が要因かはなんとなく。。。酒質由来とするかはともかく、それにしたって面白い個性です。

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今日のオマケ:アルト モンカヨ ヴェラトン 2014 グルナッシュ

スペインの濃厚赤。何やら近年パーカーポイント100点を複数回とってるオーストラリアの作り手が、共同ベンチャーとして立ち上げたメーカーによるもの。生産者側の実績は豊富。
エチケットがセンス良く、なにより値段も手頃だったので味も知らずに購入。ドキドキでしたが、これは良い買い物でした。

香りはブルーベリーやクランベリー、あるいはカシス。赤黒系の果実感が濃厚で、そこに杉やハーブ、少しきのこのようなニュアンスも混じる。ギスギスしておらず柔らかい香り立ちに、味も濃厚で度数もそれなりにあるほうだが、香り同様口当たりは柔らかく、余韻にかけて感じられる石榴のような酸味が樽香とともにアクセントになっている。

濃厚だが、それ故のバランスというか、丁寧さを感じる作り。系統はボルドーのカベルネでもブルゴーニュのピノでも、あるいは新世界のそれでもない。どっちかというとイタリアに近いような印象を受ける味わい。ああ赤ワイン楽しんでるなって思える1本で、自分は好きですね。みんなで集まってる時に、ワイワイ楽しめるワインだと思います。

イチローズ モルト&グレーン ワールドブレンデッド 秩父ウイスキー祭り2020 

カテゴリ:
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Ichiro's Malt & Grain 
SINGEL CASK WORLD BLENDED 
For CHICHIBU WHISKY MATSURI 2020 
Finished Cask type French Oak #7256 
Bottled 2019 Nov 
700ml 58.6% 

グラス:国際規格テイスティング
時期;開封後数日以内
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:クリーミーなバニラ香やお香を思わせる甘い木香が支配的に広がる。合わせてウッディで干し草のようなニュアンスに、ややスパイシーで生姜や筍のようなアロマが混じる。

味:濃厚で香り同様にフレンチオーク由来のフレーバーが、含み香としてもわっと広がる。中間にはグレーンの甘味、微かに洋梨の白い果肉、ほのかなえぐみ。じわじわとトーンの高い刺激を伴う。
余韻はスパイシーでウッディ、さらさらとした乾いた舌あたりを残し、フレンチオークの要素が長く続く。

香味ともフレンチオーク由来のクリームのようなバニラ系の香味が主体的に備わった、樽感の強いブレンデッド。その香味は、柔らかくというよりも、お香に火をつけたように鼻腔、口内に広がる。あるいは新築のコテージや桧風呂の木の香りに包まれるようでもあり、特徴的な構成である。加水するとマイルドにはなるが、樽と酒質が分離するようなアンバランスさも感じられた。

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秩父ウイスキー祭りでリリースされる記念ボトルのなかでも、目玉と言えるイチローズモルトからの2銘柄。シングルモルト秩父とワールドブレンデッド、その2020年度リリースの1本です。
販売は会場での抽選となるため運試し的な要素も強く、その後リユース市場での動向含めて良くも悪くも注目される銘柄でもあります。

2019年の同イベントでリリースされたワールドブレンデッドは、ベースとなるウイスキーをバーボンバレルでフィニッシュしたもので、スタンダードな構成というか良くも悪くもイチローズモルトらしさのあるキャラクターであったところ。
一方今年のリリースはフレンチオーク由来の樽香である、バニラクリームを思わせるニュアンスが全面に出て、ウッディなえぐみは控えめ。なかなか個性的な仕上がりとなっています。
ラベルに後熟樽として表記されたT5は、樽を作ったTaransaud社の規格であり、5年間自然乾燥させたフレンチオークを、225~228リットルサイズに組み上げた特別仕様の樽なのだそうです。

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(秩父ウイスキー祭り2019でリリースされたワールドブレンデッド。フィニッシュの樽のキャラクターはあまり強くないが、その反面秩父モルト含めて使われた原酒の個性を感じやすい。今年のリリースとは対局にあるような1本。)

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(フレンチオークでフィニッシュされた、ワールドブレンデッド"ジャズラウンジ「マデュロ」向け"。全面に感じるバニラクリームのような樽香は共通項で、同系統のウイスキーと言えるが、こちらの方がウッディさや秩父モルトを思わせるニュアンスが強い。)

シングルカスクブレンデッドは、1樽分のみ作られる仕様であるためか、通常のブレンドに比べてはっきりとしたキャラクターとなる傾向があります。
ただ今回のボトルは、秩父モルトも使われているのでしょうが、スタンダードリリースのホワイトラベルの延長線上にあるようなレシピを思わせる構成で。。。プレーンな内陸系モルト比率が高く、グレーンも4~5割ほどか。フィニッシュで付与された濃厚な樽香に反して、ベース部分がそこまで強く主張してこないのです。
それが悪い訳ではなく、これはこれでまとまるとも言えるため、樽を味わうブレンドとして楽しむものと感じました。

ちなみにテイスティング段階で詳細スペックを認識していなかったことで、その木香の強さをして「なにこれ?ミズナラ!?」と誤認(汗)。
冷静になって、過去にテイスティングしたボトルのなかで特に似ている香味を持つマデュロ向けに思い当たり、これフレンチオークじゃんと、間違いをただせた訳ですが、そのままレビューを書かなくて良かったです。
あぶなかったー。。。

イチローズ モルト&グレーン ジャパニーズブレンデッド リミテッドエディション2019 48%

カテゴリ:
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ICHIRO'S 
MALT & GRAIN 
Japanese Blended Whisky 
LIMITED EDITION 2019 
700ml 48% 

グラス:テイスティンググラス
場所:BAR Eclipse first 
時期:開封後半年程度
評価:★★★★★★(6)

香り:ナッツや松の樹皮を思わせる武骨なウッディさ。キャラメル、オレンジピールのほろ苦く甘いアロマと微かにハーブ、ドライな刺激も感じられる。全体的に重みのある樽香が強いが、適度に整っている。

味:ウッディだがスムーズな舌当たり。胡桃やブラウンシュガー、徐々に栗の渋皮煮、ほのかに柑橘系のドライフルーツ。色の濃い甘味とほろ苦さが広がり、後半にかけてライムシロップを思わせる酸味とざらつくようなウッディネス。微かにハッカのアクセントを伴いつつビターなフィニッシュが長く続く。

羽生蒸留所原酒を思わせるキャラクターが主体。シェリー樽とは異なるウッディさに、それを引き算する軽いモルティーさと酸味がアクセント。また熟成感のあるメローなグレーンが繋ぎとなっているが、あくまでメインはモルト。バランサーに撤していて、樽感は強いが思いの外スムーズに飲める。

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WWA2019でワールドベストブレンデッドを受賞した、イチローズモルトのリミテッドエディション。同2018でも同じくワールドベストを受賞しており、2年連続の偉業を達成した限定ブレンドです。

イチローズモルト&グレーンのリミテッドエディションは、秩父などの日本原酒のみならず、輸入原酒を用いるワールドブレンドと、秩父蒸留所が保有する日本産の原酒(羽生、秩父、川崎)のみを使って構成されるジャパニーズブレンドの2種類があり、今回のリリースは後者に該当します。
似たようなラベルで紛らわしいですが、価格も生産量も雲泥の差。ワールドブレンドの方は定期的にリリースされているためまだ市場にボトルがありますが、ジャパニーズブレンドは2018、2019の2年間。2020ロットは生産されていないようで、また本数もそれぞれ500本程度となっています。

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(イチローズモルト&グレーンのワールドブレンド、リミテッドエディション。秩父原酒に内陸系熟成原酒という構成。ロット差がそこそこある印象で、写真のバッチ5はシェリー系の内陸原酒のキャラクターが厚みを与えている。)

さて、ジャパニーズブレンドも2018年のものと、今回レビューする2019年のものはレシピが異なっている模様。2018年のほうがリッチでウッディ、レシピは27年熟成の羽生モルトに35年の川崎グレーン、そして5年熟成の秩父とのことですが、羽生、川崎の比率が高くウッディな香味が強く。まさにウェアハウス(あるいは材木屋)のなかにいるような、包み込まれるように豊かな木香と甘いアロマが特徴的なブレンドでした。
これは過去にリリースされてきたカードシリーズの一部や、清里フィールドバレエシリーズ等とも共通する要素です。

2019はそうしたニュアンスもあるのですが、該当する羽生らしい武骨なウッディさが、バランス寄りの範囲にまとめられている印象を受けました。
イメージとしては、2018の羽生・川崎原酒の味わいを秩父原酒で引き算したような構成。独特な癖故に混ざりきらないモノも多い秩父モルトにあって、このブレンドは強いウッディさで上手く抑えていると思います。
2019のレシピはわかりませんが、同じ原酒で秩父が増えているか、あるいは羽生の熟成年数が15~20年くらいの、2000年代あたりの原酒も使っているのではないかと推察します。

イチローズモルトの代表的エピソードといえる、東亜酒造から引き取られた羽生原酒ですが、近年はいよいよ在庫が少なくなってきたとのこと。昨年聞いた噂では30樽あるかどうかという話(裏はとれていません)。いずれにせよ、通常のリリースに回す量はもうないようです。(リーフシリーズのダブルディスティラリーとか、どうなっているんだろう。。。)
まさにジャパニーズという樽香、ウッディな味わい。自分は2018のほうが好みでしたが、失われ行く味わいを堪能させてもらいました。

イチローズモルト モルト&グレーン ウィスキープラス5周年記念 59%

カテゴリ:
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ICHIRO'S MALT 
Malt & Grain 
Single Cask Blended Whisky 
For THE WHISKY PLUS 5th ANNIVERSARY 
Cask type Bourbon barrel 
Botteled 2019 Aug 
700ml 59% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度 
場所:ジェイズバー
暫定評価:★★★★★(5)

香り:ドライでアメリカンウイスキーを思わせる穀物感。ペパーミントやハッカのようなスーッとする鼻腔への刺激に続いて、メローであまやかなオーク香が奥から広がる。若干青みがかったニュアンスもあり、青リンゴや瓜に似たフルーティーさも感じられる。

味:ドライでスパイシーな口当たり。一瞬メローなアメリカンウイスキー系の甘味があるが、出涸らしの茶葉を口に含んでいるような、ウッディでビターな渋味が強く感じられる。
余韻はウッディでビター。オレンジピールや和生姜、軽いえぐみを伴うスパイシーなフィニッシュ。

所謂ワールドブレンデッドタイプ。第一印象はアメリカンウイスキー系の味が強く、そこに混じる秩父原酒や内陸モルトのモルティーさ。ウッディさもさることながら、特に味に渋みが強い。ブレンドに使ったグレーンか、またはシングルカスクブレンデッドとしてマリッジに使ったバーボン樽から、そういうニュアンスが出てしまったのだろうか。少量加水すると馴染んで多少バランスが良くなる。

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先日、駒ケ岳を紹介した、池袋にあるエイコーンさんの直販店「ウイスキー・プラス」の開業5周年記念ボトリング。
順番が逆になりましたが、駒ケ岳よりも先に発売されていたのがイチローズモルトのモルト&グレーンのシングルカスクブレンデッドです。

テイスティングのとおり、アメリカンウイスキーの風味と秩父モルトの風味をあわせ持つ、なかなかに特殊な1本。前面にあるのはバーボン、奥から秩父モルトが顔をだすような・・・それだけなら過去のモルト&グレーンの限定品でも珍しくない作りですが、このボトルは特に樽由来の渋みが強く出ていて、グレーンとモルトの間をウッディな苦味や渋みが繋いでいるような、個性的な仕上がりとなっています。

使われている原酒を香味から推察すると、グレーンは比較的穀物感残った、アメリカンウイスキータイプのもので10年熟成程度。秩父モルトは5年程度、そこにバルクのほぼノンピートの内陸原酒で10~15年程度のものをいくつかブレンドしたようなレシピでしょうか。比率としてはグレーンが多めのようにも感じます。
若さが目立つタイプではないですが、長期熟成というタイプでもなく。しかしながらレビューでも触れた渋み、苦味が強いのは、シングルカスクブレンデッドとして樽詰に用いたバーボンバレルから、その系統のフレーバーのみが強めに出てしまったのかもしれません。

ひょっとするとですが、カスクサンプルだとこのブレンドはもう少し甘味や果実感があったけれど、ボトリングしてみたら想定外に樽由来のタンニン系統のフレーバーが強かったというタイプなのかも。
バーボンやカナディアンもイケる方は許容できるかもしれませんが、自分はちょっとアンバランスに感じる仕上がりでした。

イチローズモルト 秩父 オンザウェイ 2019 51.5%

カテゴリ:
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ICHIRO'S MALT 
CHICHIBU 
ON THE WAY 
Bottled 2019
700ml 51.5% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートは乾いたウッディネスと強めのアタック。フレッシュな林檎を思わせる果実香、柑橘の綿、乾燥した穀物っぽい軽い香ばしさから、メンソールやハッカ、スパイシーさが主張する。

味:口当たりはハイトーンでオーキーなウッディさ。バニラやドライアップル、樽由来の甘味にボリュームがあり。徐々にジャスミン茶の出涸らしのようなタンニン、えぐみを思わせるニュアンスも。
余韻はほろ苦くスパイシーで、和生姜やナッツの混じる乾いたウッディネスがクリアに抜けていく。

メインの樽はバーボンないしアメリカンオークと思われる乾いたウッディネス、オーキーさに由来するフルーティーさも感じられるが、下地にあるのは秩父の特徴。樽由来の要素は悪くなく、酒質部分と合わさって複雑でもあるが、馴染みきらないもどかしさ。まさにこれからの秩父へのオンザウェイ。

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秩父蒸留所の定期リリースのひとつ。。。といっても、2013、2015とリリースされた後で2017がなく2019年ですので、結構久しぶりな1本。
ON THE WAY(途中、~への道)というタイトルの通り、将来の秩父モルトの姿を見据えて、蒸留所に貯蔵された原酒をブレンドしてリリースされる発展途上のシングルモルトです。

ベースとなっているのは、同蒸留所の中で最も比率が高い、バーボン樽原酒と推察。
前作までは3~5年程度熟成の、比較的若い原酒のみで構成されていたところ。それ故ニューポッティーな若い酸であるとか、微かなピートであるとかも感じられたのですが、この2019年リリースは樽感が主体になっています。
ハイトーンな中に熟成感も伴うことから、6~8年くらいのものを軸に10年熟成くらいの原酒まで含まれているのではないかと思います。

ただその樽感はバーボンオークバリバリとはならず、ハイトーンななかに林檎系のフルーティーさとバニラ系の甘味が合わさって感じられる。複数年数の原酒がブレンドされた結果、オーキーではないクリーンなタイプと、ウッディーなタイプが相互に主張している感じ。
この構成を考察すると、意図して2つの樽感の中間を作り出そうとしたのではないかとも感じます。


秩父のモルトは「樽負けしやすく、長期熟成に向かない。」とする意見が、愛好家の間で少なからずあります。
そうした評価は蒸留所側にも届いているのでしょう。今年のモダンモルトのセミナーで、肥土さん本人が言及されており、同時に興味深い考察もされていました。
曰く、樽由来のフレーバーでタンニンは、熟成の初期はある程度まで濃くなるが、一定以上の期間を経ると分解されるため、秩父の原酒は10年以上の熟成に耐えられるのだと。
確かに、タンニンがポリフェノールなどに分解されるという現象は、熟成を通じて起こるもののひとつとされています。

つまり今回のボトルは、今ある原酒から将来こうなるのではというイメージのもと作ったのかなと。
ただ、ポリフェノールなどのタンニン由来の成分は渋味や苦味に繋がるだけでなく、樽から溶け出た成分、エキスは無くなる訳ではないので、ざらつくような感じやドライさは強くなる目論見通りに進むのかは神のみぞ知るところ。
日本はそもそも高温多湿なので、空調を使うなど特殊な環境に置かない限り、どの蒸留所も基本的に樽が強くなります。
あとはそれとどうバランスをとるか、いかに酒質部分のフレーバーと馴染ませるかがポイントであるわけですが。。。秩父の原酒はその独特の個性から、酒質に樽感が馴染みにくいんじゃないか、と最近思うのです。

長期熟成によって起こる樽内の変化には、原酒の味わい(分子構成)の均一化が進むというのもあります。
テイスティング中でも触れた、秩父の酒質そのものが持つハッカ、和生姜、あるいはえぐみの残った筍のような特徴。。。現時点の秩父はこの存在感が強いので、最初に樽感があって、後がこのフレーバーに続く、あまり馴染んでるようには感じられない要因となっています。(IPAカスクなどめちゃくちゃ個性の強い樽は後半部分まで圧殺されるため、逆にバランスがとれている。)
20年、30年熟成を目指すという秩父のゴールの姿は、この点がどうなっているのか。願わくば、適度に秩父らしさが残りつつ、馴染んだ味わいになっていると良いのですが。

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