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ラフォンタン 1969 アルマニャック 1990年代流通 40%

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LAFONTAN - Armagnac 
Distilled 1969 
Release in 1990's 
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1周間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:クリームチーズのような少し発酵したような酸と、合わせてレーズンやダークフルーツのを思わせる甘いアロマ。古い木造倉庫のような土や埃っぽさを伴う落ち着いたウッディネス。メンソールのようなスッとするニュアンスを伴う。

味:粘性を伴うマイルドな口当たり。酸味を伴う葡萄、紅茶キャンディー。ほのかに果実の皮のような苦味と渋味、樽由来の香味か乾いた植物っぽさも伴う。中間以降の広がりがもたつくというか、平坦で単調。余韻はウッディで、キャラメルの甘みを思わせる少々ベタつく質感が口のなかに残る。

アルマニャックらしい甘味と発酵したような酸味、土っぽさとウッディネス。熟成感はそれなりに備わっているが、ベース部分には荒さも残っており、もう10年くらい熟成させたら。。。とも感じた。ただし経年変化で後追いで整えられつつある要素も感じられ、時間が形作る香味の一端を味わえる。
全体を加水やカラメル添加で整えているのか、フレーバーの起伏と広がりは序盤の勢いほどはない。この手のタイプはシガーと共に。

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ラフォンタンと言えば、200mlサイズでヴィンテージが1年毎に揃っているアルマニャック地方のブランデー銘柄。
ブランデーのみならず蒸留酒で、1年毎に区切られたリリースがあるというのは非常に珍しく。製品の特性上、誕生日、退職記念、あるいは還暦祝いなど、主に個人に由来する年に関連した、プレゼントとして活用されることが多い銘柄といえます。

一方で、ウイスキーを主として扱うBARでは、ポールジローやラニョーサボランなどのコニャックが勧められることはあっても、謎の多いアルマニャック地方産で、しかも200mlのラフォンタンが勧められるのは稀。味について触れられることも少ないように思います。
ただ現在の日本で多く流通する200ml規格以外に、XOやVSOPなどの通常のブランデーの規格やヴィンテージ入り700mlでリリースも行われており、1990年代には日本市場にも輸入されていました。
今回のテイスティングアイテムは、そのうちのひとつである1969年蒸留の1本。熟成年数は恐らく25年前後といったところになります。


ラフォンタンを日本の酒関連サイトで調べると、4代目となる作り手が伝統的な製法で原酒を作り、手作業でボトリングするということから独立した生産者であるように感じます。
ところがブランドを調べていくと、ラフォンタンは生産者というよりボトラーズのようなものであり、フランス・ノガロにある生産者貯蔵庫共同機構(CPR:Cave des Producteurs Reunis)が所有する原酒を使ってリリースされていたものであることがわかります。※現在はCPR Les HDM(Hauts De Montrouge)という組織名称に変わった模様。

フランス・ノガロは人口2000人に満たない小さな街です。そのなかでCPRは農家から葡萄を買い取って蒸留し、あるいは蒸留設備を持っている会社からは原酒を買取り、ひとまとめにして貯蔵し、製品化する。小規模集落で行うビジネスとしては、適切かつ合理的な取り組みの中で発展してきたようです。
現在、同機構の生産拠点の周辺には広大な葡萄畑が広がり、蒸留のみならず多くの契約農家が様々な品種の栽培を行っていることがWEB上でも触れられていました。

しかしこのようなケースでは、製品に使われる原酒の出自ははっきりしなくなります。
葡萄品種についても、現在はコロンバール、フォルブラン、ユニブランのようですが、このラフォンタン1969に何が使われたのか(味から察するに伝統的なものでしょうけれど)、そこからしてよくわかりませんでした。
同機構からはバルク的に原酒を販売しているケースもあるようで、アルマニャックの生産に謎が多い一因となっているとも感じました。

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(フランス・ノガロ郊外にあるCPR Les HDM の生産拠点。同地域のアルマニャック生産者全てが関わっている模様。ラフォンタンのラベルに書かれた生産者住所、32110 Nogaro France はノガロ市までのもので、Google先生の力で調べても街中の古びた建物しか出てこない。)

さて、ウイスキー愛好家の間では1960年代というとウイスキーの黄金世代として特別な意味があり、ついつい他の酒類でも特別ななにかを期待してしまいます。
確かに生産量の関係か、樽の関係か、美味しいものは多くなるように思いますが、全てが素晴らしいわけではなく。ことアルマニャックの場合、熟成年数によっては近年と大差ないレベルのものや、逆に落ちるものもあります。(バルク買いした原酒をろくに熟成もさせないで、ナポレオン表記でリリースした。かつての日本では多いに売れていたモノとか。)
そのため、蒸留時期よりも原酒に対して熟成期間がどれだけ適切に確保されているのか、という方が重要なのではとも感じます。

他方で、このラフォンタンの1969年というと今から50年前。熟成期間プラス経年での変化がもたらす落ち着いた味わいは、近年の原酒とは異なる仕上がりでもあります。
現在の技術でこれを擬似的に再現する方法はなく、何より目からの情報という説得力のある要素がもたらす特別感は得難いもの。
近年、長期熟成の原酒の確保がより一層困難となるなか、まだ手に入る60年代としてオールド・アルマニャックに目を向けてみるのも良いかもしれません。

補足:アルマニャック生産者には謎が多く、本件も調べきれてない情報や誤認もあると考えます。新たな情報がありましたら、是非教えていただけますと幸いです。

ドメーヌ オニョアス 51年 1965-2017 バコ THE BOW BAR向け 42%

カテゴリ:
DOMAINE D'OGNOAS
BAS ARMAGNAC
Aged 51 years
Distilled 1965
Bottled 2017
Bottled for THE BOW BAR
700ml 42%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:開封後1週間以内
参考評価:★★★★★★(6ー7)

香り:穏やかな酸味を伴う華やかなウッディネス。杏子、メープルシロップ、バタークッキー。徐々に香木、ウェアハウスの湿ったようなウッディネスも伴う。
香り立ちは時間経過で非常によく、長い眠りから解き放たれるよう。

味:まろやかで華やかな口当たり。蜜のような甘みにブラッドオレンジや白ぶどうの酸味、じわじわとカカオチョコレートのほろ苦さ。ボディは程よく、深みに繋がっている。
余韻はウッディでビター、非常に長い。焦げたえぐみを伴う過熟気味の樽香、チャーオークのニュアンスも感じられる。

角の取れた香味と深みのある味わいに長期熟成アルマニャックの良さを感じる。
一見すると過熟気味の要素もあるが、それを補う香味の開き、多彩さがあり、開封後の変化に期待出来るだけでなく、時間をかけてじっくりと味わいたい。


札幌の名店、THE BOW BARの本間氏が選定、ボトリングした半世紀を超える長期熟成のアルマニャック。
正直アルマニャックは詳しくないので、素性の詳細は信濃屋さんの販促ページをご覧ください。という無責任なことしか言えませんが、そこから引用させて頂くと、オニョアスはバス・アルマニャック地方において最も古い歴史と多くのストックを持つ生産者の一つであるのだとか。

こうした現地生産者とのコネクションは、いかに情報社会といってもメールを送って「じゃあこれからよろしく」というワケにはいきません。
スコッチは既にいくつかのボトラーズや蒸留所との連携がある為、先立つものがあればなんとかなる場合もありますが、ブランデー、それもカルヴァドスやアルマニャックはまだまだ未開の地。酒販のインポーター以外に、今回のTHE BOW BARように現地とのコネクションを築いてきたBARの存在が、日本と様々な佳酒を繋ぐ架け橋となっているんですね。

今回のアルマニャックですが、赤みがかった美しく深い色合いから察することが出来るように、かなりの熟成感がある1本です。
特にテイスティングの通り香味の多彩さ、一見すると過熟気味なウッディーさが強く、この点は個人的にあまり得意ではない要素ながら、その奥から開いてくる多層的な香味が短期熟成では得られない"時を飲む"という贅沢な質感をもたらしてくれます。
レビューはいつものテイスティンググラスですが、大ぶりのグラスで香りを開かせながらじっくりと楽しみたい1本です。


以下余談。
ブランデージャンルで現地とのコネクションを築いているBARとしては、西から小倉のスタッグ、京都のカルヴァドール、K6、東京浅草のドラス、そして札幌のボウバーなどが有名(抜けがあったらごめんなさい、コッソリ教えてください)。
このブログでも何度か紹介しているカルヴァドス・アプルヴァルはその一本に該当しますし、現地の旅を著書としたドラスのマスター中森氏の「旅するバーテンダー」は、合わせて読むとさらにお酒が美味しくなる読み応えのある1冊です。

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