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ブラントン シングルバレル 1989年ボトリング 46.5%

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BLANTON 
SINGLE BARREL 
KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKEY 
Distilled 1978-1981
Bottled 1989 
Cask No,433 
750ml 46.5% 

グラス:國際企画テイスティング
開封後:半年程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香:ハーバルな華やかさとスパイシーな刺激。合わせてキャラメルソースやビスケット、微かにシナモンやオレンジピールのアクセント。濃くはないが程よい甘味が感じられる。

味:口当たりはスムーズでメローな甘味から、スパイシーな刺激が口内に広がる。薄めたメープルシロップやべっこう飴、紅茶の出涸らし、酸味は少し発酵したようなニュアンスを伴う。ボディは度数相応のボリュームがあり、余韻はスパイシーでウッディ、ドライなフィニッシュが長く続く。

樽感はそこまで濃厚ではないが、香味とも程よく熟成を感じさせる味わいが、あとに続くスパイシーなフレーバーを邪魔しない。恐らくライ麦由来の特徴だろう。また、ちょっと牧場っぽいニュアンスがあるというか、オールドのブラントンには独特の特徴がある。個人的な好みを言えば、もう少し樽が濃ければ。。。ロックは及第点、ハイボールまたはミントジュレップがオススメ。

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現在のバッファロー・トレース蒸留所が、かつてエンシェントエイジ蒸留所として操業していた時代にリリースされた1本。ブラントンは1984年に誕生したブランドで、今回のものは初期のボトルに当たります。
名称変更が行われたのは1999年、合わせて結構な改装もしている模様。その影響だけの問題ではないとは思いますが、現行のブラントンとは良くも悪くも別物な仕上がりだと感じます。

ブラントンの最大の特徴は、シングルバレルであるということ。加水とは言えバーボンバレル一つからは300本程度しかボトリングされないなかで、万単位の出荷を行うスタンダードグレードをブレンドしないでリリースするというのは、余程原酒をしっかり選定しているか、フィルタリング等で細かい誤差を取り除いてるか、そのどちらかだと感じます。(コストと時間を考えると、後者と推察・・・)
熟成行程では4年程度熟成した原酒のうち、ブラントンとして相応しいとされる樽を専用の熟成庫Hに移し、さらに4~6年熟成させるという情報が日本市場では広く使われていますが、現地では専用のマッシュビル(コーン75-78%、ライ12-15%のハイライ仕様)で仕込んだものを、最初から熟成庫Hで6~8年とされています。

また熟成に使われるウェアハウスHについても、該当する熟成庫である理由は験担ぎのようなもの、というのが日本側で説明されている内容ですが、実際はAからZまである熟成庫のうち、Hだけが木造ではなく屋根や外壁が一部金属で作られていて、室内温度が屋外とあまり変わらなくなる(むしろより温度差が大きくなる)。これによってさらに熟成が進むため、とする明確な理由があるようです。
なぜ日本と現地で異なる素性説明が存在するのか。それは恐らくですが、ブラントンがリリースされた直後は、原酒の状況に応じてあてがうブランドを変えるため樽を移す作業が行われていたものの、近年はプロセスを簡略化し、最初から専用の原酒を作り、かつ温度差の大きい熟成庫であることを考慮してトータルの熟成年数を2年程度短くしたのなら、効率化の観点に加え情報の違いがあっても違和感ありません。

この手の変更は資本や体制が変わった時に行われることが多いので、1999年の蒸留名称の変更と合わせて仕込み方法を変えた。。。とかでしょうか。もしそうであれば、この1989年ボトリングのブラントンは原酒を選定していた時代のもので、現行のブラントンとは異なる作りだったことになります。
まあ、それが味のどの部分に作用しているかというと、これがこうと断定は出来ないですが(汗)。
ただ2000年代くらいまでのブラントンは、良い意味で野暮ったいところが魅力としてあります。特に度数の高いものはそれがボディの厚みと共に際立っており、ストレートフロムザバレルやゴールドラベルらハイプルーフのものは、オススメしたいバーボンの一つです。

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なお、ブラントンは個人的に思い入れの深い銘柄でもあります。
リリースが1984年で生まれ年というのもありますが、話は10年以上遡って大学院時代。1学年上の先輩と研究室の帰り際にBAR飲みすることが多かったのですが、その先輩が好んで飲んでいたのがブラントンでした。
当時の自分はまだスコッチとバーボンの違いもよくわかってないような状態でしたが、独特のボトルデザインがかっこよく、カウンターで研究の相談をしながらロックで飲んでいたのです。

そういう意味で、自分にとってブラントンは青春の味というか、大学の思いでの一つ。
こうして飲む度に、あの頃の景色を思い浮かべ、初心に戻れる。まさに特別な1本と言えるのかもしれません。

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今日のオマケ:ブラントンのコルク修復について。
バーボンのオールドボトルは、コルクが折れやすいものが多い印象があります。
バーボンそのものに含まれる樽成分(樹液、糖分に類するもの)が、時間と共にコルクとボトルを固着させてしまうからと考えられますが、中でも大口径のブラントンのコルクが折れると、替えが効きにくいので困ったことに。。。
そんなブラントンは、シャンパンやスパークリングワインのコルクがフィットするのでオススメです。(ロイヤルサルート等にもフィットするので、1つ持っておくと便利。)

ただ、ブラントンと言えばキャップトップの競走馬が象徴でもあり、それがなくなるのはビジュアル的に。。。という声も。
ご安心(?)ください。実はオールドのブラントンはコルクをネジ止めしているので、写真のようにもとのコルクを取り除いて、新しいコルクを接着剤をつけてねじ込むと、キャップを再生できるのです。
万が一があっても安心、気兼ねなくオールドブラントンをお楽しみください(笑)

ビームス チョイス 100ヶ月熟成(8年)1970年代流通 45% 特級表記

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JIM BEAM 
BEAM'S CHOICE 
BLACK LABEL 
AGED 100 MONTHS 
(Aged 8 years) 
Kentucky Straight Bourbon Whisky 
Bottled 1975 
750ml 45% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1ヶ月程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:キャラメルやメープルシロップのかかったポップコーンを思わせる、軽い香ばしさのある甘さと穀物香をベースに、スパイシーでほのかに溶剤、チェリーシロップ、黒パンを思わせる酸もアクセントとして伴う。
また、時間経過でハーブや赤い花を思わせる植物っぽさも混じる。

味:マイルドでメロー、チョコレートクッキーやチョココーンフレークのような、色濃い甘味と軽い香ばしさ。甘味はリッチだが、ボディはやや軽め。ウッディでビター、軽くスパイシーなフィニッシュが、メローなチャーオーク香を鼻孔に感じさせつつ長く残る。

オールドバーボンらしい濃厚な甘味、強めのチャーを感じさせるウッディネス。加水の影響か味はやや単調気味ではあるが、時代を感じさせる要素がなんともそそる1本。現行のジムビームとは全くの別物。ただ加水またはロックにすると、ボディがだいぶ薄くなるので、それはそれと割りきるか、ストレートで楽しむのがちょうど良い。
大降りのロックグラスにダブル以上注いで、葉巻を咥えたら完璧か(笑)

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読んで字のごとくですが、ジムビーム蒸留所が製造する、かつてのプレミアムブランド。
100ヶ月熟成(要するに8年)という珍しい表記に惹かれて購入したものですが、当時のビームスチョイスは定常的に使われていた模様。
マッシュビルは通常のジムビームとおそらく同じ、または大きく変わらない程度の違いとは思いますが、ノーマルの4年、5年よりも熟成が長い原酒が使われ、その分樽感も濃厚に。色合いが明らかに違いますね。古いものだと今回のように度数も少し高めに設定されています。

そのリリースが始まったのは1960年代。ビームスチョイスと言えば、様々な形状で知られる陶器ボトルの”コレクターズエディション”があり、こちらはファーストリリースが1966年。(コレクターズエディションではないビームスチョイスは1963年のモノあり。熟成年数は6年)
ジムビームとしてのデキャンタリリースは1950年代からありますが、当時の広告等を見る限りでは、通常ボトルのビームスチョイスも、1960年代のほぼ同時期に発売されたのではないかと推測されます。

1980年代から1990年代にかけて、日本ではバーボンウイスキーのブームもあったことから、ビームスチョイスは該当する時期のものが相当数日本市場に残っており、現在もヤフオク等で見かけることが多いバーボンです。
その全てを飲めているわけではないですが、傾向としては古い方が濃厚で個人的に好み。1970年代中頃あたりまでは仕様が90Proofで、その後1980年代には80Proofと5%下がる。熟成年数は基本的には8年程度ですが、1990年代になるとこの表記もなくなり、5年熟成のグリーンラベルとして販売を継続したようです。

元々そこまでボディが厚いバーボンではないので、度数や熟成年数の推移は影響が大きく。特に80年代くらいまでは度数が下がっても同じようにマイルドでメローな味わいを感じられますが、それ以降は明らかにドライな仕上がりになっていきます。
また、90Proofの時代であっても、飲み方はやはりストレートがオススメ。ロックだと飲みやすくはなるものの、伸びるというよりは薄くなる感じで、氷に耐えられるライフが少ないように思います。

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なお、この手の加水調整されて甘味がしっかりあるバーボンは、ストレートで飲むと物足りなく、かといってロックでも同様だし、ハイボールにするにはちょっと勿体無いというジレンマがあります。
そこで邪道といえるかもしれませんが、バーボンのオリジナルブレンドに使うというのが一案。特にワイルドターキー・レアブリード、あるいはローゼズシングルカスクなど、度数は高いが樽感がそこまでリッチじゃない近年のバーボンとのバッティングは、お互いの良いところが合わさって鉄板と言って良い組み合わせに。ベースとなる味わいでスコッチの原酒ほどキャラクターの違いが大きくないため、調整も容易です。

近年、オールドのハイプルーフバーボンが高騰しており、昔ほど気軽に飲めなくなってきました。ターキー8年の90年代とか、安かったんですけどね・・・。だからこそ家飲みで、ロックで飲んで美味しいオリジナルブレンドを作ってしまおうと。そういう楽しみ方も個人的にはアリだと思っています。

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というわけで混ぜ混ぜ混ぜ。。。。

オールドクロウ 1912年蒸留 100プルーフ 禁酒法前

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OLD CROW 
BOURBON WHISKY 
BOTTLED IN BOND 
Distilled 1912 
Bottled About 1919 
1Quart 100Proof
(948ml 50%)

グラス:ロックグラス&木村硝子
時期:開封直後
評価:★★★★★★★★★(9)

香り:艶やかでスパイシー、ボリュームのあるアロマ。カステラを思わせる洋菓子の甘さとほのかな焦げ感、カラメルソース、オレンジママレード、チェリーシロップと駄菓子のヨーグルトクリームのような人工的な甘さと酸。微かにハーブリキュールのような薬品香も混じる。

味:経年によって角のとれた柔らかい飲み口。メープルシロップ、チョコチップクッキー、そして穏やかな酸味が、徐々にスパイシーさとウッディな渋味と共に存在感を増し、歯茎と舌を刺激する。
余韻は粘性のある柑橘系の甘酸っぱさに加えて、ジンジンとした刺激がゆっくりと収斂し、穏やかに消えていく。

グラスのなかで長い眠りから目覚め、刻々と変化する香味、ボリューミーで艶のあるテクスチャーは陶酔感も伴う。ライ比率が高いのか、しっかりとしたボディに加えて、澱みやヒネのない状態の良さが純粋に素晴らしい。
ボトリング直後はもっとウッディでスパイシーだったと思われるが、1世紀を越える経年がもたらす、負担のない飲み口と角のとれた香味、舌触り、そして時を飲むロマン。長期熟成したワインを思わせる、瓶熟の真髄を見るようなボトルでもある。
最初の1杯は、当時の飲み方を再現してロックグラスでストレート。。。

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今回の一本は超弩級。歴史的価値も満載で、ラベル酔いせざるを得ない禁酒法施行前のオールドクロウ。とてつもなく貴重なボトルを、開封作業から経験させていただきました。オールドボトルの開封はいつも緊張しますが、今回のそれは今までの比じゃなかく、オープナーを持つ手が震えましたね。

このボトルをレビューするにあたっては、まず関連情報として禁酒法と、その当時の消費者の動向について簡単に紹介していきます。
アメリカでは1920年から1933年まで禁酒法が施行され、0.5%以上のアルコールを含有する、”酔いをもたらす飲料”が規制対象となりました。
この法律は酒を飲むことを禁止しておらず、販売することを禁止したものであったわけですが、結果法律施行前に大量の買い込みが行われただけでなく、施行期間中は精神薬の区分で販売されたり、闇ルートでカナディアンウイスキーの販売が横行したり、施行前より消費量が増えたり。。。といった、多くの有名なエピソードが生まれることとなります。

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(禁酒法の期間中、医師の許可をもらうことで例外的に酒類を購入することが可能だった。同法の影響で多くの蒸留所が操業を休止せざるを得なかったが、薬という抜け道から一部は生産を継続することができたという。上はその認定証。)

この手のウイスキーは、古ければ古いほど数が少なくなっていく傾向があります。
ましてまともに販売されてなかった13年間の、谷間の時期があるのですから、普通ならその前のウイスキーは消費しつくされているはず。。。ただ、ことバーボンにあっては禁酒法期間中だけでなく、その前の時代のものも一定数出物があるのだそうです。

というのも当時、酒が買えなくなる可能性が高いことを知った富裕層が、駆け込み需要でウイスキーを買い集めて倉庫に保管(盗難を恐れ、隠し倉庫に置かれるケースが多かった模様)。その後当人が何らかの理由で飲めなくなり、時が流れて発掘されるということが度々あるのだとか。今回のオールドクロウも、時期的にそうして保管されていたボトルの一つだったと考えられます。
日本では特級時代の末期が洋酒ブームの終演とバブル崩壊に重なり、多くのウイスキーが在庫となった結果、近年のオールドボトル市場を賑わしていますが、それに近い現象とも言えますね。

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(隠し倉庫の中から発掘された、禁酒法前のバーボンウイスキー。こうした出物が、現地オークションを度々賑わしている。ただし、一定数あるといってもコレクターも多く、価格が安価であるわけではない。)

さて、いよいよ本題。オールドクロウは、スコットランドからの移民だった創始者が1830年に製造を開始。1856年に作り手が亡くなった後、今回のラベルにも書かれているW.A.Gaines社が製造を継ぐこととなります。
当時のオールドクロウは、アメリカンウイスキーを代表する銘柄と言えるほどの人気があり。同社はオリジナルのレシピを受け継いで製造を行ったとされていますが、蒸留器や生産ラインが変わったからか、あるいは心情的な問題か、昔のほうが出来が良かったなどのネガティブな意見が見られ、逆に創始者の残した原酒には伝説的な価値がついたというエピソードが残されています。

1920年、W. A. Gaines社は禁酒法を受けてウイスキー事業から撤退。オールドクロウはオールドグランダッド等で知られるNational Distillery社へと移っていくことになるわけですが。。。ND社時代になると、創業者の時代とは蒸留所だけでなくレシピも異なっていたようで(禁酒法期間中で操業が制限されていたことも要因の一つと考えられる)、オリジナルのレシピを色濃く受け継いでいるのは、今回の流通時期まで。
現在のオールドクロウは、ジムビーム傘下となり、コーン77%、ライ13%、モルト10%のジムビームと同じマッシュビルで製造されていると言われていますが、当然オリジナルのレシピは全く異なるもの。正確にはわかりませんが、今回テイスティングで感じた印象としてはかなりライ比率が高い作りだったのではと思われます。

それはバーボンでありながらバーボンでないとういか、過去経験にない要素を持つ味わい。ボディに厚みがあり、スパイシーで酸味も伴う穀物ベースの香味構成はライの比率の高さを感じさせる部分ですが、経年によってウッディネスと口当たりが丸みを帯びて、存在感はハイプルーフバーボン相応にありつつ決して荒々しくない。(度数は90プルーフ台には下がっていると思われるが。)
オールドバーボンらしい艶やかさ、鼻孔に抜けていく馥郁とした甘いオーク香を堪能していると、自然に余韻が消えていき、口内が正常な状態に戻る。
力強さと優しさ、何杯でも飲めてしまいそうな印象を持つ仕上がりは、現行は勿論、60年代、70年代のどのオールドクロウとも異なるものです。

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(右は1969年蒸留、ND社時代のオールドクロウ100proof。コーン比率が高くなったのか、バーボンらしいバーボンという味わい。このリリースが行われた当時、W.A.Gaines社はウイスキー事業から撤退しているが、版権の関係か、あるいは広く馴染んだ作り手の社名だったことからか、ND社は表記を継続して使っていたという。なおこの後、ND社は製法を誤り粗悪な原酒を作った結果、オールドクロウの凋落を招くこととなる。)

勿論、今回のテイスティングで感じた味わいは当時のままではなく、100年間を越える経年がもたらした変化が加わったもの。元々はもっとバッチバチで、余韻が穏やかなんて言えないような、荒々しいものであったと推察します。
モルトウイスキーやブレンデッドスコッチでは、こういう形にはならない、アメリカンウイスキーだからこその仕上がりです。

今回のボトルはコルク直打ち。それを蒸留年と瓶詰め年、そして度数が書かれた紙シールで封印してある仕様で、スクリューキャップでないことも時代を感じさせる要素。液面低下は肩のONE QUARTの上あたりで、経年を考えれば妥当なところでした。コルクの状態を見ても、フェイクである可能性はまずないと思います。
一方紙封印の瓶詰め年の記載部分が破れてしまっており、何年熟成か正確なところはわかりませんでしたが、禁酒法時代のバーボンは一部輸出品を除いて500mlサイズで販売されていたため、1クオート仕様であることから6年または7年熟成あたりで1919年の流通ではないかと。それこそ、当時の駆け込み需要にあわせて出荷されたのではないかと考えられるのです。

純粋な美味しさもさることながら、それを作り出した当時のレシピと、それを仕上げた時間の流れ、そして様々な偶然の積み重ね。それを頂いた機会に感謝を込めて、堪能させていただきました。


以下、補足。
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禁酒法前、今回のオールドクロウと同時期のボトルのTAXシール。この時代はボトリング時期が上、蒸留時期が下に書かれている。

イエローストーン 特級表記 1980年代流通 43%

カテゴリ:
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YELLOW STONE 
KENTUCKY STRAIGHT BOURBON 
1980's 
750ml 86Proof (43%)  

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:FRUIT RESTRANT BAR AIKA 
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:酸を感じるドライな樽香。チェリーや薄めたメープル、焦げたオーク、微かに溶剤、あるいはオレンジのような柑橘系のニュアンスも混じっている。

味:口当たりは甘味が薄く、酸味とドライでビターなウッディネスが主体。樽由来のエキスが乏しい反面、ライ比率が高いのかスパイシーで口内へのアタックがやや強い。余韻は薄めたメープルやオレンジママレード。徐々にドライでスパイシー、乾いた質感が残る。

構成原酒は2~3年程度と比較的若いのか、特に口当たりで粗さ、ドライさが目立ち、ストレートでは引っ掛かりがある。どちらかと言えば割り材、カクテル向きで、実際これで作るミントジュレップはAIKA来店時のお約束メニューである。
ふんだんに使われたミントの爽やかさとライムや添えられたオレンジの柑橘が、ベースの酸や甘味と馴染んで実に美味。

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100年を越える長い歴史を持つバーボンの有名銘柄のひとつ。イエローストーン。
ラベルにかかれているのは爆弾による爆発ではなく、イエローストーン国立公園にある間欠泉。イエローストーンで検索をかけるとウイスキーより上位に出てくる有名な観光スポットなので、もはや説明は不要ですね。

ただ、考察が必要なのが今回のイエローストーンが、どの蒸留所で作られていたのか、ということ。
バーボン業界では、蒸留所の装置や蒸留工程そのものがもたらす個性という観点が、スコッチモルトほどPRされておらず(どちらかと言うと重視されているのはブランドエピソードと原料比率)。銘柄の版権の売買や、蒸留所の買収に伴う蒸留拠点の一点集中といった動きが多くあるのが、同業界の特徴と言えます。

現在のイエローストーンは2010年、ケンタッキー州レバノンにライムストーン蒸留所が新たに創業し(完全に親会社から独立しているわけではなく、Luxcoグループの支店的な位置付けの模様)、そこで作られた原酒を使ってリリースされています。
蒸留所を管理するのはイエローストーン等の関連する銘柄をかつてリリースしていた一族の末裔で、念願かなって版権を取り戻した、なんて読めるPRもされています。

では今回のボトル、1980年代後半流通(1988年頃と推測、仕込みは1983年、1984年頃か)のイエローストーンがどこで作られていたか。
同銘柄は1944年からGlenmore Distilleryグループに版権があり、これが1991年にUDV傘下に移り、その後はヘブンヒルで原酒が作られていたようです。(火災時等は違ったのでしょうけれど。)
今回のボトルはUDV移行前なので、前身のグループが所有する蒸留所のどこかということになるわけですが、ラベルにはルイビル表記があるので、同地区の蒸留所と考えるのが有力。

ルイビルは元々イエローストーンを作っていた、Taylor & Williams Distilleryがあった場所。同蒸留所は既に閉鎖されており、蒸留設備もなくなっていたようですが、コメント頂き調べてみると、1933年にTaylor & Williams Distillery社がその郊外にShively蒸留所を新設しており、1985年に閉鎖されるまで稼働していたようです。
Glenmore社はイエローストーンをフラグシップブランドとし、Mellow-mashと位置付けた仕込みで製造。蒸留所の閉鎖後は原酒のストックで製造を継続し、上述の通り1991年にUDVに売却したそうで、特級時代末期のイエローストーンは上記Shively蒸留所の閉鎖間際の仕込みである可能性が高いことがわかりました。(かもさん、いつも的確なコメントを頂きありがとうございます!)

ただ、メロウマッシュとの位置付けにしては、ドライというかビターで辛口というか、今回の1本はちょっと違うようにも。。。(汗)
さらに古いイエローストーンもちゃんと飲んで見たいですね。
そういえば、某店にオールドのイエローストーン7年があったな・・・。

※蒸留所の考察について、コメントいただいた内容に基づき再度調べ、本文中の記載を修正しました。(2019/10/10)

オールドグランダッド 114プルーフ 1990年代流通

カテゴリ:
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OLD GRAND DAD 114
KENTUCKY STRAIGHT BOURBON 
BARREL PROOF  
1990-2000's 
114 Proof 750ml 

グラス:国際企画テイスティング
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後2ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:濃厚でメローな香り立ち。チャーオークの香ばしさ、チョコウェハースやキャラメルポップコーン。甘味と共に軽く乾いた木屑、ビターオレンジのような要素も混じる。

味:ウッディーでメロー、香り同様リッチな味わい。チャーオーク由来の濃厚さのなかにはチェリーシロップ、オランジェット、樹液のような粘性のアクセント。徐々に焦げたカラメルを思わせる苦味への変化。鼻孔に抜ける軽い植物感を伴い、ビターでウッディ、スパイシーなフィニッシュが長く続く。

メローでパワフルな濃厚バーボン。ライ麦27%と通常のバーボンより高い比率のマッシュビルが特徴だが、全体的には樽感が強くどっしりとした味わい。果実系の要素よりチャーオーク由来の色濃い甘味が主体で、甘味の後はウッディな苦味が余韻を引き締めている。加水以外にロックにしても崩れないしっかりとしたボディ感で、マッシュビル由来のスパイシーな刺激が際立つ。

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コスパの良いバーボンとして、愛好家から評価を受けるオールドグランダッド114。57%のバレルプルーフ仕様で、裏ラベルを読むと「樽から直接ボトリングされている」旨が書かれているわけですが、加水調整が入っているので真の意味でStraight from the barrelではないものの、ひょっとしてシングルバレルではあるのかもしれません。

今回のボトルは、蒸留所並びにブランドを所有していたナショナルディスティラリーグループがウイスキー事業から撤退し、ジムビーム傘下(厳密にはその前身である、フォーチュンブランド社)となった、1987年以降の流通品。香味の濃厚さから、当時の樽の影響の濃さを差し引いて熟成年数は8年程度と推察しています。

上述のシングルバレルなのかという点も気になりますが、それ以上にリリースに使われている原酒はどこで作られたものかという点が、オールドボトルでは気になるところ。
上の裏ラベルに書かれているFRANKFORT.KYは旧オールドグランダッド蒸留所を、CLERMONT.KYはジムビーム蒸留所をそれぞれ指しているわけですが、ジムビームで作られた原酒のボトリングプラントになっているフランクフォートの設備がいつまで蒸留所として稼働していたのか、はっきりとわかりません。

参考までにナショナルディスティラリー社が当時傘下としていたオールドテイラーは1972年、オールドクロウは1987年に蒸留所を閉鎖しているとのことで、グランダッドも1987年の売却と同時に閉鎖したと考えるのが自然。
ジムビームが蒸留所とストックごと引き取り、生産はジムビーム蒸留所に集約し、熟成とボトリングを各工場で行うという形に変更され・・・過去のストックを消費しつつ、新しい体制での生産原酒に切り替えていったと予想されます。あるいは一般普及品などは混ぜていた可能性も。。。

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(ほぼ同時期流通の加水仕様。ストレートでは普通のバーボンだが、加水やハイボールなど樽感を薄めるとソーピーなニュアンスが。。。)

ナショナルディスティラリー社時代のオールドグランダッドは、ソーピーで特殊なフレーバーが感じられるボトルがいくつかあることでも知られています。
20世紀後半、同社が所有する文字通りのドル箱、国民的銘柄であるオールドクロウが急激に売り上げを落とし、同社のウイスキー事業撤退のきっかけとなります。この背景には蒸留工程におけるミスを放置し続けたことによる、味の劣化があったという説があります。確かに、ベースが共通する1970年代アメリカ流通のギルビージンも似たようなおかしな味がするものがありましたし、そう考えると今回のボトルはジムビーム時代の原酒100%なのかもしれません。

また、2000年代以降、近年にかけて樽感が薄くなるに従いドライでスパイシーさが際立つようになっていくオールドグランダッドですが、所有者が代わり、安定した操業に切り替わったのは怪我の功名だったのかもしれません。
例えそれが、レシピだけ同じで設備の異なる、嗜好品として大事な要素を犠牲にした代物だったとしても・・・。

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