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サントリー スペシャルリザーブ 40% 2021年流通品

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SUNTORY 
SPECIAL RESERVE 
Luscious Elegant Aroma 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)

香り:穏やかな香り立ち。トップノートは華やかでややドライ、オーク香と薄めたメープルシロップを思わせる甘み、微かにシェリー香に由来する甘酸っぱさも混じる。全体的に適度な熟成感がるが、奥には少し鼻腔を刺激する若さ、やや表面的な印象も受ける。

味:口当たりはスムーズでゆるい甘さ。香りで感じられる甘酸っぱいウッディさと華やかなオーク感が、グレーンのコクや柔らかい口当たりから鼻腔に抜けていく。余韻にかけては樽由来のフレーバーがまとまっていき、ほろ苦く、香り同様に少しピリピリとした刺激を伴いつつ残滓として口内に残る。

主軸となる原酒構成は決して若すぎず、体感で5~12年といった熟成感。白州のバーボン樽原酒を思わせる個性をキーモルトに、シェリー樽系のフレーバーが隠し味となって香味の幅に繋がっている。値段なりの部分はあるが、ストレートでもそれなりに飲め、ロックや水割りに合わせやすい。何より、個人的にはハイボールをお勧めしたい。香味の軸となっているオーク香が伸び、さっぱりとした飲み口から鼻腔に抜けるようにふわりと香る、甘やかで華やかなアロマが特徴と言える。
肩肘張らずデイリーに楽しめる、白州味メインなブレンデッド。目立たないが仕事はきっちり、もっと評価されるべき”いぶし銀”なヤツ。

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2021年4月1日に施行されるジャパニーズウイスキーの新基準。
自主基準ではありますが、この基準に合致する3000円台までのジャパニーズウイスキーは、オールド、リザーブ、ローヤルしかなく。ウイスキーにおける一般的なデイリーユースを同価格帯までとすれば、この3本はまさに、デイリー・ブレンデッドジャパニーズ御三家と言える存在となっています。

先日オールドを飲んでそのクオリティに驚かされ、じゃあリザーブとローヤルはどうだろうと、会社帰りに近所のカクヤスでご購入。
ノーマルなリザーブは、特級時代のものを除けば10年前に12年表記のものを飲んで以来久しぶりであり(新幹線で水割り缶は飲みましたが)、これだけ期間が開いたとあっては、実質初テイスティングとも言えます。

その日はリザーブをロックとハイボールでやりながら、クラブハウスで「JWの新基準を読み解く」を放送したわけですが・・・。お、こいつもええやんかと、放送しながら軽く4~5杯くらい飲んだと思います(笑)。
ブレンドの軸となる10~12年程度熟成したモルト原酒の香味を、若い原酒(特にグレーン)で伸ばしたような方向性はオールドとも同じなのですが、全体的に熟成年数が上がっているのか若さは目立たない。また、白州原酒由来の華やかなオーク香にシェリー系の樽感やグレーンのコク、甘みがアクセントとなって、バランスの取れた仕上がりです。

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あくまで個人的な印象ですが、上述の”御三家”(三本柱とか、呼び方は何でも良いですが、全て半世紀以上の歴史を持つロングセラーなので、敬意を評して)の中で、リザーブは目立たないというか、だったらローヤルでええやんとも思ってしまう位置づけでした。度数もリザーブだけ40%ですし。
ただ、改めて飲んでみるとそれぞれキーモルトとなっている原酒の違いが分かりやすく。ストレートはあまり響かないかもしれませんが、飲み方次第ではなかなかどうして、多くの愛好家が納得できるだろう味わいに仕上がっていると感じます。

リザーブの軸となっている、白州原酒由来の華やかなオークフレーバーは、実は角瓶にも構成要素の一つとして備わっているキャラクターです。ただ、これはハイボールにすると消えてしまう。一方で、リザーブはハイボールにしてもそうした香味が適度に残り、含み香で華やかに香りつつ、余韻はすっきりさっぱり、ブレンデッドらしく飲みやすいバランスの良さが印象的です。

オークフレーバーの強さだけでいえば、スコッチモルトのバーボン樽熟成など、もっと強く、主体的に感じられるものはあります。ですが、そうした銘柄はオークフレーバーが強すぎて、単体では良いのですが、特に食中で使うにはくどいと感じることもしばしば。。。和食、というか白米と味噌汁が出てくるような日常的な食事にはなかなか合いません。
オールドの水割りでも感じた、フードペアリングと言うほどには対象を定めない、まさに日常的な使いやすさ。特定条件下での計算されたバランスの良さが、リザーブにもあるのです。



サントリー・リザーブは、かつて佐治敬三社長の「海外から来たお客さんから見ても、見劣りしないウイスキーを」という号令の下で開発され、1969年に発売されました。
これは1970年の大阪万博を見据えた方針でしたが、1971年には洋酒輸入自由化が始まり、ライバルとなるスコッチウイスキーが自由に輸入・販売されるようになること。
さらに歴史を遡ると、1962年の酒税法改正(雑酒扱いだったウイスキーに、ウイスキー区分が新設される)を受け、国内でも各社の競争が過熱していたことから、サントリーとしてウイスキー区分のブランドを確立するための1手でもありました。

一方で、視点を現代に向けると、国内外で加熱するジャパニーズウイスキーブーム、新たに施行されるジャパニーズウイスキーの基準。そこに適合し、新時代におけるブランド確立に向けて、虎視眈々と準備を進めていたサントリーの戦略。。。
これらの動きが、リザーブ発売当時の状況とも重なって見えて、興味深くあります。

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リザーブの軸となるオークフレーバーは、スコッチモルトに多く見られる王道的キャラクターの一つであり、香味だけでいえばライバルは多数。また製品自体も、価格帯でブレンデッドスコッチ有名銘柄12年クラスとモロかぶりという、まさに激戦区に投入されたブランドです。
ですが、飲み比べて特段見劣りするという感じはなく。ジャパニーズウイスキーらしさを、複数タイプの原酒の掛け合わせ、多彩な樽香が織りなす重厚さとするならば、同じようにオークフレーバーが軸にあっても、淡麗寄りのバランタインやシーバスリーガル12年に無い複雑さを感じることが出来ますし、味の面でも優れていると思います。

1969年発売当時、リザーブのキャッチコピーは「国産品と呼ばず、国際品と呼んでください」でした。
このリザーブの戦略が、どのような結果に繋がったかは定かではありません。すぐにオールドが市場を席巻しましたし、品質面で当時のグレーンは怪しいところもありました。ですが、現代においては文字通りの国産品であり、国際品と呼ぶにもふさわしいクオリティを身に着けたと言えます。

サントリー・リザーブが、今後どのように愛好家に受け入れられていくのか。脚光を浴びる時が来るのか。御三家としてリザーブを残したサントリーの戦略が、現代の市場にどのようにハマるのかはわかりません。
ただ個人的なことを言えば、今まではこうした銘柄は率先して飲んできませんでしたが、改めて飲むと気づく点が多いというか、本当にしっかりと考えられて造られていることが見えてきます。1周まわってデイリーユース。これもまた、ウイスキーの楽しみ方なのかもしれませんね。

シングルモルト 白州 ノンエイジ 2020年リリース 43%

カテゴリ:
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SUNTORY
HAKUSHU
SINGLE MALT WHISKY
No Age
Release 2020
180ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:自宅
評価:★★★★★★(5-6)

香り:ややドライだが品のいい香り立ち。バニラや洋梨を思わせる甘さ、干し草、微かにグレープフルーツの皮を思わせる爽やかさ。原酒の若さからか、樽香がささくれているようなイメージで、多少の刺激を伴うものの、総じて華やかでオーキーなアロマが主体。

味:若い原酒由来のピリピリとした刺激、香り同様のオーキーな含み香を伴う粘性のある口当たり。酒質由来か刺激の中に柔らかい甘さ、膨らみがあり、すりおろし林檎や柑橘の皮を思わせるフレーバーも。
余韻はドライでほろ苦いウッディネス。華やかなオーク香が鼻腔に抜けていく。

類似のタイプを挙げるなら、スペイサイドやハイランドモルトのバーボン樽熟成10~12年モノという系統の構成。若い原酒のフレッシュさとオークフレーバー、木々のアロマ、すなわち森の蒸留所。白州NASのリリース当初から変わらないキャラクターでもある。
味わいに適度な厚みと熟成感もあり、少量加水すると若さが軽減され特に香りのまとまりが良く、口に含むと徐々にフレーバーが膨らむように広がる。ストレートでは粗さがあるが、ハイボール良好、ウイスキーフロートも面白い。

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 先日、2020年ロットのシングルモルト山崎NASが美味しくなった、というレビューを書かせていただきました。その要因としては、全体的な熟成感の向上、一部キーモルトとなる原酒の風味が厚くなったことで、山崎らしさが感じられるようになったことが印象としてありました。

ならば、もう一つのシングルモルトである白州も美味しくなったのでは。。。と考えるのは愛好家の性。ハイボールブームを受けての原酒増産にかかる効果に加えて、原酒のやりくり。それこそ白州は12年を休売としているわけですが、関連する原酒をNASリリースにまわしている可能性も考えられます。
機会を見つけて飲んでみたいと思っていたところ、このタイミングで出荷停止となっていたノンエイジの180mlボトルが復活しており、コンビニを中心に展開されていたので、さっそくテイスティングしてみます。

 ※2020年ロットのシングルモルト山崎。このロットから表ラベルにJAPANESE WHISKYの表記が入る。白州も同様の整理。昨今整備が進むジャパニーズウイスキーの定義に沿ったものだろうか。

結論から言うと、香味のベクトルは以前の白州NASと同じ。しかし熟成感が若干向上して、美味しくなったようにも感じられます。あくまで個人的な印象ですが、例えば数年前のロットが6~10年の原酒をブレンドしていたとして・・・それが6~12年に広がり、平均熟成年数としても若干増えた結果なのではないかという感じです。
そのため、若いニュアンスは変わらずあるのですが、刺激の中に感じられる熟成を経た原酒由来の粘性のある甘みや、オーキーなフルーティーさ。全体に厚みと華やかさがあるのではないかと思います。

ただ、山崎NASと比べてしまうと、個人的に白州のほうは明確にこれと感じるような違いではありません。 お、なんかよくなったかも。。。というレベル。
そもそも白州NASはリリース当初から方向性が定まっており、軸になっていたのはバーボン樽、アメリカンホワイトオーク系のフレーバー。若いなりに良い仕上がりのシングルモルトでした。
それがリリースを重ねるごとに、原酒不足からかちょっとオーキーなフレーバーが薄くなって、若さが目立っていたのが2~3年前時点のロットという印象。今回のリリースは良くなったという話もそうですが、初期ロットの頃の味に”先祖返り”したと言うのが適切かもしれません。

白州NASは、山崎同様にこれがプレ値ではなく正規価格で買えるなら、納得感あるクオリティ。最近のジャパニーズウイスキー市場の中でのコスパも十分です。
しかし水を差す形になりますが、冷静に考えるとこの手のフレーバーはスコッチモルトに結構あるタイプなだけでなく、スコッチのほうが安定して買えてしまうという点が・・・。
例えば、5000円以下の価格帯でアラン・バレルリザーブ(新ボトル)や、グレンモーレンジ10年、グレンフィディック12年、グレングラント10年or12年・・・など、アメリカンオーク系フレーバーを主とする蒸留所のオフィシャルリリースと、モロかぶりしてしまうのが少々ネックです。

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この点はノンエイジというエントリーグレードでありながら、唯一無二と言える日本的な個性を持つ山崎に対して、白州は王道というかスコッチ寄りのキャラクター故に、独自の個性・ハウススタイルのためにはさらなる熟成が必要なようです。
白州は”森の蒸留所”と言われていますが、オフィシャルシングルモルトは12年、18年、25年と熟成年数が上がる毎に、その"森"が深くなっていくような印象があります。
例えるなら、25年は深山幽谷の深く立ち込める森の空気も、NAS時点では木々が細く、日も差し込み、風も抜けていくような、若い森の姿なのです。

今回のリリースでは、白州という”森”に成長(あるいは伐採からの回復)の兆しが見られたのが、明るい話題です。
それは一時的なものなのか、今後さらに良い変化があるのかはわかりませんが、今は純粋に、一定以上のクオリティがあるジャパニーズウイスキーを手に取れる機会と、その味わいとを楽しみたいと思います。

2019年を振り返る ~印象に残ったボトルや出来事など~

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1年があっという間に過ぎ去ってしまった・・・なんてことを毎年呟いている気がしますが。(もう歳だなぁ・・・とも)
日々こうしてブログを更新していると、過ぎ去ってしまった時間の存在を実感出来る、日記的な感覚があったりします。

2019年に更新したレビュー数は270程度、総数は1500を越えました。うち投稿していない銘柄もあったりで、何だかんだ500銘柄は飲んでいると思います。
また、今年はブログ活動をしてきた中でも、最も繋がりの広がった年で、楽しいことも多かったですし、考えさせられる事柄も少なからずありました。
2019年最終日の更新では、これら1年で経験したことの中から、印象に残っている出来事やボトルをまとめて振り返っていきます。

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■Liqulの執筆開始&グレンマッスルのリリース
最も印象的だった出来事は、勿論この2つ。
まずひとつ目が、酒育の会の代表である谷島さんからお声がけいただき、Liqulでオフィシャルボトルレビューの執筆を開始したこと。
同紙がWEB媒体へと移行する来年からが本番なので、今年は準備運動的な意味合いもありましたが、業界で活躍されている皆様と一緒に活動することができたのは、大きな刺激になりました。

また、執筆にあたりアイコンを新垣先生に描いて貰えたのも、ウイスキーの縁で実現した出来事のひとつです。
某海賊漫画風くりりん似顔絵。個人的にはすごく気に入っているものの、仲間内から「こんな悪い表情出来てない」と言われておりますがw
2020年最初の記事は既に入稿済みで、先日リニューアルが発表されたアランの新旧飲み比べが掲載される予定です。

そしてもうひとつの出来事は、オリジナルリリース「グレンマッスル18年ブレンデッドモルト」が実現したことですね。
宅飲みした際の酔った勢いで始まった計画でしたが、愛好家にとってのロマンをこうして形に出来たことは、ブログ活動というか人生の記念になったといっても過言ではありません。
実現に当たってご協力頂いた笹の川酒造、ならびに福島県南酒販の皆様、本当にお世話になりました。。。

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グレンマッソー18年は、国内で3年以上貯蔵されていたものとはいえ、輸入原酒(バルク)を使ったブレンデッドモルトウイスキーです。
突き抜けて旨いリリースとは言えませんが、キーモルトを探るミステリアスな面白さに、嗜好品として楽しんでもらえるバックストーリー。加えて香味にも流行りの系統のフルーティーさがあり、一定レベルのクオリティには仕上がっていたと思います。

何の思い入れもなくとりあえずサンプルだけ手配して、複数のなかから比較的まともなものを選んで・・・というような選定方法では、我々愛好家側の色は出せないと思っての”ブレンド”というジャンルでしたが。SNS等で「今年印象に残ったウイスキーのひとつ」と、何人かに言って貰えていたのが嬉しかったですね。
そして第一歩が踏み出せたことで、それに続く新しい動きもあり、来年はそのいくつかを発表出来ると思います。我々の作った味がどんな感想をいただけるのか、今から楽しみです。

※参照記事

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■ジャパニーズウイスキーの定義とワールドブレンデッド
さて、輸入原酒と言えば、2019年は輸入原酒を使いつつ「ジャパニーズ的な名称を用いたリリース(疑似ジャパニーズ)」が、前年以上に見られたのも印象的でした。
一部銘柄に端を発し、ウイスキーの成分表記についても少なからず話題となりました。こうした話は、すべて情報を開示したり、事細かに整理したからといってプラスに働くものとは限りませんが、法律上の整理と一般的なユーザーが求める情報量が、解離してきているのは間違いありません。
今の日本は、昭和のウイスキー黎明期ではないんですよね。

一方で、大手の動きとしてはサントリーが「ワールドブレンデッドウイスキー AO 碧」を新たにリリースしたこともまた、2019年の印象的な出来事のひとつだったと感じています。
ワールドブレンデッド表記は、自分の記憶ではイチローズモルト(ベンチャーウイスキー)が2017年頃から自社リリースに用い始めた表記。ジャパニーズウイスキーブームのなかで、それとは逆行するブランドを業界最大手であるサントリーが立ち上げたのは驚きでした。

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ウイスキー文化研究所ではジャパニーズウイスキーの定義作りが進み、既に素案が公開されている状況にあります。
来年のTWSCはその定義に基づいてカテゴリーの整理が行われていますし、4月にはジャパニーズウイスキーフェスティバルが開催される予定であると聞きます。

シングルモルトウイスキーでは、産地が重要な要素となるため基準に基づく産地呼称等の整理が必要ですが、ブレンデッドはジャパニーズだけでなく、広い視点で考えなければならないとも思います。
他産業ではMade in Japanブランドが世界的に強みと言っても、日本製のパーツや材料が評価されている部分もあれば、国内外問わず作られたそれらを、日本の技術や品質追求の考えの下で組むことで形成されている部分もあります。
サントリーの碧を始め、ワールドブレンデッド区分のウイスキーは、日本の環境だけでなくブレンド技術という日本の技をブランドに出来る可能性を秘めたジャンルと言えます。

つまり輸入原酒(バルクウイスキー)もまた、使い方次第で立派なブランドとなるのですが、問題なのは酒ではなく”売り方”。どこのメーカーとは言いませんが、海外市場をターゲットに、紛らわしいを通り越したえげつない商品をリリースしている事例もあります。
現在作られている基準をきっかけに、そうした整理にもスポットライトが当たり、業界を巻き込んだ議論に繋がっていくことを期待したいです。

※参照記事

■2019年印象に残ったウイスキー5選
小難しい話はこれくらいにして、行く年来る年的投稿ではお決まりとも言える、今年印象に残ったウイスキーです。
まず前置きですが、今年は冒頭触れたとおり、500銘柄くらいはテイスティングをさせていただきました。
中には、サンプル、持ち寄り会等でご厚意により頂いたものもあります。皆様、本当にありがとうございました。

オールドの素晴らしいものは相変わらず素晴らしく、そうでないものはそれなりで。一方ニューリリースでは原酒の個性が弱くなり、ボトラーズは特にどれをとってもホグスヘッド味。。。のような傾向があるなかで、それを何かしらとタイアップして売るような、ラベル売り的傾向も目立ちました。
市場に溢れる中身の似たり寄ったりなリリースに、食傷気味になる愛好家も少なくなかったのではないかと推察します。

その中で、今年印象的だったボトルを年始から思い返すと、オフィシャルリリースや、作り手や選び手の想いが込められたものほど、そのバックストーリーの厚みから印象に残りやすかったように思います。
個人的な好みというか、その時その時の美味しさだけで選ぶなら、カテゴリーから上位を見てもらえれば良いので、面白味がありません。味以外の要素として、そのリリースに込められた情報、背景、個人的な思い入れ等も加味し、”印象に残ったウイスキー”を選んでいきます。
なお先の項目で触れている、グレンマッスルやサントリー碧も該当するボトルなのですが、二度紹介しても仕方ないので、ここでは除外します。(ニューポット、ニューボーンについても、来年まとめるため対象外とします。)

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チャーしたスパニッシュオークの新樽で熟成された山崎。味は若い原酒を濃い樽感で整えたような粗さはあるが、その樽感がシェリー樽、あるいはシーズニングという概念を大きく変えた。味以外の"情報"で、これ以上のインパクトはない。是非飲んで欲しい1本。

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最高の白州のひとつ。白州蒸留所シングルモルトで初の30年熟成という点も印象的だが、15本と極少数生産故、樽から全量払い出されなかったことがもたらした、アメリカンオーク由来の淀みのないフルーティーさ、良いとこ取りのような熟成感が素晴らしい。

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アメリカで多くのシェアを獲得していた、全盛期とも言える時代のオールドクロウ。
100年を越える瓶熟を経てなお濁らずくすまず、艶のある甘味と熟成ワインのように整ったウッディネスが素晴らしい。また味もさることながら、ボトルそのものが有するバックストーリーも申し分なし。記憶に刻まれた、文化財級の1本。

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新しい蒸留所が示した新時代への可能性。樽由来のフルーティーさ、麦芽由来の甘味とフロアモルティングに由来する厚みのあるスモーキーフレーバーが合わさり、短熟らしからぬ仕上がりが評判となった。来年の10周年、そしてこれから先のリリースにも期待したい。

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マイ余市を選ぶつもりが、年末の持ち寄り会で滑り込んだ特別なウイスキー。2014年に天寿を全うされた、故竹鶴威氏に敬意を表した記念ボトル。ニッカが蒸留所を再稼働させた1990年の、最初の原酒をリメードホグスヘッド樽で熟成させたシングルカスクで、ニッカらしいウッディさにオークフレーバーと、ベンネヴィスらしいフルーティーさが合わさった、ファン垂涎の1本。

※その他候補に上がったボトル
・グレンファークラス 29年 1989-2019 ブラックジョージ
・リトルミル40年 1977-2018 セレスティアルエディション
・アラン 18年 オフィシャル
・アードベッグ 19年 トリーバン
・余市10年 2009-2019 マイウイスキー作り#411127

ちなみに、2019年はウイスキーだけでなく、ワインも色々飲んだ1年でした。
いくつか個別の記事を書いてみて、まだワインについては1本まとめて記事に出来るだけの経験が足りないと、オマケ程度でふれるにとどめましたが、ウイスキー好きに勧められるボトルもある程度固まったように思います。
ウイスキー愛好家のなかでも、ワインを嗜みはじめたメンバーがちらほら出てきていますし、来年はウイスキー×ワインの交流も進めていきたいですね。

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■以下、雑談(年末のご挨拶)
さて、本更新をもって2019年の投稿は最後となります。
まとめ記事ということで長くなりましたが、最後に来年の話を少し。。。

来年3月で本ブログは5周年を迎えます。
ブログ活動を再開した当時はどれだけ続くかなんて考えてませんでしたが、これも本当にあっという間でした。
ブログを通じて色々と繋がりも増え、執筆活動以外の動きもあり。先に記載した通り、来年は新たに発表出来ることもいくつかあると思います。

他方で、ブログ外のところでは息子が小学校に上がるなどの家庭環境の変化や、仕事のほうも任されている事業で管理職的な立ち回りが求められるようになってきて、公私とも変化の大きな年になりそうです。
自分にとってブログ活動は趣味であるため、継続はしていくつもりですが、今年から暫定的に行っている週休二日ルールを定着させるなど、時間の使い方を考えなければならなくなると思います。こうして、環境が変わっていくなかで何かを継続することは、本当に難しいんですよね。

楽しみである気持ちが半分と、不安のような複雑な気持ちが半分。。。というのが今の心境。そんな中でも、細々とでも活動は継続していくつもりですので、皆様来年もどうぞよろしくお願いします。
それでは、良いお年をお迎えください。

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サントリー 北社 12年 ピュアモルトウイスキー 40%

カテゴリ:
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SUNTORY 
PURE MALT WHISKY 
HOKUTO
AGED 12 YEARS 
660ml 40% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1ヵ月程度
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでしっかりとオーキー、洋梨や林檎の蜜、微かに干柿のような甘みと香木を思わせるオリエンタルなウッディネス。奥には干し草のような乾いたニュアンスも感じられる。

味:白色系の果実を思わせるやわらかい甘さとウッディな口当たり。香り同様の構成で、オーキーな華やかさとほろ苦さが含み香で広がり、ほどよいコクもあるが、余韻にかけてはドライでやや単調でもある。

響というよりは当時のローヤル12年とも共通する華やかでオーキーな熟成香が、ピュアモルトである分ダイレクトに感じられる。序盤に比べて余韻は広がりに欠ける印象もあるが、個性の強いモルトを飲みやすくまとめた作りであれば、こういうあり方もありだろう。少量加水、ロック、多用な飲み方で楽しめる。

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サントリーから、2004年にピュアモルトが、2006年ブレンデッドがそれぞれリリースされた北杜シリーズ。
ブレンデッドウイスキー北杜は50.5%のハイプルーフ仕様が売りのひとつで、これは当時の富士山麓樽熟50%(2005年発売)を。そして今回レビューするピュアモルト12年は、竹鶴12年ピュアモルト(2000年発売)を。
北杜市には白州蒸留所があり、その名の通り、白州蒸留所の原酒をキーにしたウイスキーですが、その位置付けは他社が独自の色を出して話題になったところに、対抗馬とわかるリリースをほぼ同価格で打ち込むという見え方で、なかなかに露骨でした。

しかしこれも、少しでも再浮上のきっかけを掴みたいと形振りかまっていられなかった、当時のウイスキー業界事情があったとも言えます。
最終的に北杜シリーズは2010年頃に終売。この頃にはハイボールブームに火がつきはじめており、角瓶の出荷調整が起こるなどサントリーとして低価格帯で重視するジャンルが定まってきた時期です。選択と集中もあって様子見で展開していたものを引き上げた、ということなのだと思います。

北杜12年はこれまで何度か飲んでいる銘柄でしたが、今回のボトルは自分が過去飲んだものとは印象が異なって熟成香が強く、オーキーな華やかさだけでなく、ミズナラを思わせるオリエンタルな要素も混じって感じられた点には驚きました。以前飲んだものも華やかでしたが、バーボン樽の白州強めというか、もっとあっさりしていたと記憶していました。

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裏ラベルに書かれた内容の後半、「なお北杜は~~」の箇所が、「2004年秋に誕生する市の名前」と未来を指しているので、それ以前の発売、つまり発売初期の気合いをいれて作ったロットだったのかもしれません。(少なくとも、別ロットのボトルからは該当する説明文が消えています。上記画像参照。)
何れにせよ、これが2000円台というのは、かなりのコスパ。今そこにあるなら、迷うことなくケースで買うなと考えた脳裏を過るのは、3年ほど前6本以上の在庫を見かけた某都内酒屋の存在。きっともうないんだろうなぁ。。。

サントリー 白州蒸溜所秘蔵モルト 43% 2000年代流通

カテゴリ:
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SUNTORY SINGLE MALT WHISKY 
HAKUSHU DISTILLERY  
Hizo malt 
2000's 
700ml 45% 

グラス:テイスティンググラス 
場所:萌木の村 BAR Perch 
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(6ー7) 

香り:ふくよかでスウィート、ダークフルーツはドライプルーンやベリー系のニュアンス、適度なスパイシーさも伴うシェリー香。湿ったようなウッディネスと土っぽさも感じるが、全体的に熟成感とバランスが整った香り立ちである。

味:香り同様の構成。加水で整えられた柔らかくも濃厚さのある口当たり。ダークフルーツシロップのような酸を伴う甘味が広がり、奥には少し粘土のような重みのある要素も感じられる。余韻はウッディでビター、紅茶を思わせるタンニン、序盤のダークフルーツの甘味の残滓を感じつつ、程よくドライで長く続く。

濃厚でありながらバランスの良いシェリー系のモルト。シェリー樽主体ではあるが、それ以外の樽の原酒も一部使われているのだろう。加水を含むサントリーのブレンド技術、そして冬の時代に熟成を続けてきた優良な原酒。これらが噛み合って出来た完成度の高いシングルモルト。ストレートでじっくりと楽しみたい。

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2000年頃、元々はサントリーがポイントキャンペーンの返礼品として作成したらしい限定品。
ところが、当時はウイスキー冬の時代。在庫が残ってしまったのか、蒸留所で販売されたり、WEBショップで販売されたり、あるいは地元の酒屋に卸されたり・・・と何だかんだ物量が出回ったという経緯を持つボトルでもあります。

当時山崎・白州の両蒸留所では、カスクストレングス仕様の”蔵出し原酒”が販売されており、この”秘蔵モルト”は加水仕様という位置付けになります。NASスペックですが、1980年代蒸留の熟成、つまり今は無き旧白州東蒸留所の15年熟成程度の原酒も含めて幅広くブレンドされており、原酒構成はシェリー樽が中心。今となっては間違いなく、レアボトルであると言えます。


この秘蔵モルトは、山崎版白州版があり、白州のほうは飲んだ事がなく今回がはじめて。
白州だからバーボン系の原酒中心だろうと勝手に考えていたので、注文してグラスに注がれた瞬間は驚きましたね。
そして白州のシェリー系というと、ウッディさが強かったり、粘土っぽいニュアンスがあったりと、ストレートで飲むなら「白州はバーボン樽派」という第一印象から若干警戒してテイスティングに挑むことに・・・。
ですが、その警戒は杞憂であったと、ノージング段階で即気づかされました。

白州のシェリーらしい濃厚なウッディネス。これはまず健在。ですが、加水と複数樽のバッティングで、全体がこなれて嫌みのない程度に押さえられているのがポイントです。そしてそれ以上に色濃いフルーティーさと甘味が備わって、シェリー樽熟成の良い部分が引き出されているのもポイントと言えます。
”秘蔵”の名に恥じない良い原酒の組合わせを感じられた、現在には無い充実した1杯でした。

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