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BRORA
PROVENANCE
Aged 25 years
Distilled 1975
Bottled 2001
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1週間程度
場所:個人宅持ち寄り会
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:ややセメダイン系の刺激があるが、酸味のあるピート香、香ばしい麦芽、オレンジやグレープフルーツの皮を思わせる柑橘感。バーボンオークのバニラの甘みを伴うウッディさ。

味:コクのある口当たり。しっかりとピーティーで、ほろ苦く焦げたようなピートフレーバーから、蜂蜜レモン、ドライアップル、魚介、じわじわ乾いた麦芽風味とホワイトペッパー。
余韻はややドライ、おしろい系の麦芽風味の甘みとピーティーさ。張り付くような塩気、スモーキーフレーバーが長く続く。

独特の酸味を伴うピーティーさがブローラらしさ。樽はリフィルバーボン系で、ディアジオスペシャルリリース系統の酒質ベースの味わい。加水で香味とも飲みやすく仕上がっているが、余韻にかけてはややピート系のフレーバーが浮ついて感じられる部分も。単純に飲みやすく、個性があって美味しいモルトに仕上がっている。


今回のモルトの蒸留年である1975年は、"ブローラ"が個別の蒸留所として整理された年にあたります。
ブローラはクライヌリッシュの古い蒸留設備であることは広く知られていますが、ブローラという蒸留所名がつけられるまで、新クライヌリッシュの稼動から約8年の空白があるんですよね。
今日はちょうどその時期のモルトの紹介でもあるので、1975年のブローラ誕生まで、"代替用の蒸留所"としての経緯に触れていきます。
brora
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現在のクライヌリッシュ蒸留所が稼働したのが1967年。これを受けて、"後のブローラにあたる古い設備"は一旦操業を休止します。
しかし翌年、当時DCL傘下だったグレンギリーが閉鎖(のちにモリソングループが買収)され、グレンギリーで作られていたブレンド用のピーティーな原酒を代替する目的で1969年に再稼働。
また、1972年にはカリラ蒸留所の大規模拡張工事が開始され、カリラでの蒸留が約2年間ストップ。その期間中のピーテッドモルトの生産も役割となり、名も無き古い蒸留棟は、クライヌリッシュBとして代替目的での稼働が続いていたようです。

そしてカリラが再稼働した翌年の1975年。DCLはこの古い蒸留設備を"ブローラ"と名づけます
この時点でカリラの生産能力が大幅に強化されていたため、原酒の代替が必要だったというより、クライヌリッシュとはキャラクターが違いすぎるし、かといって休ませとくのももったいないし、雇用の問題もある。。。なら業界が好調なうちは。。。当時を推察すると、おおよそこんな感じでしょうか。
実際、ブローラのキャラクターはウイスキーの不況が始まる1980年代にはピーティーさを弱め、クライヌリッシュに近いスタイルへ原点回帰していくこととなります。

サイトによっては、グレンギリー休止からカリラの工事が終わるまでの期間を、ヘビーピート時代とする見解をまとめるケースも見られます。
ただ、味わいで見ると1970年代はしっかりピートのニュアンスを感じる原酒づくりが続いており、今回の1本も同様。加水のマイナスを加味しても十分ピーティーな味わいで、酒質に対してピートが残り過ぎているようにも感じるほどです。

調べる限り、ブローラの原酒がその稼働中にリリースされたことはなく。大手グループ傘下の蒸留所ゆえ、個別のキャラクターが評価される前に、その方針に大きな影響を受けて姿を消したと言えます。ですが成長した先にあったその味わいは、現代のウイスキー愛好家の中で大きな価値を持っています。
2020年に再稼動するとされる新しいブローラは、ただのブレンド用蒸留所ではなく、蒸留所単体としてのストーリーを紡ぐことが出来るのでしょうか。