タグ

タグ:ニューリリース

サントリーのニューリリース 「ESSENCE of SUNTORY」 シリーズについて

カテゴリ:
さる1月10日、サントリーが2月27日に限定発売するニューリリース「エッセンス オブ サントリー(ESSENCE of SUNTORY)」を発表しました。
ここのところ情報収集をしていなかったので、シェリーカスクでもミズナラでもなく、まさかこんな面白いリリースでくるとは思わず、発表があった際は驚きも感じました。

まだ作り手のコメントなど、背景を含めた情報は公開されていませんが、自分なりに感じるところを、リリース紹介と合わせてまとめていきます。

3/5追記:エッセンスオブサントリーシリーズをテイスティング。レビューを下記に公開しました。

l_13072-1
ESSENCE of SUNTORY シリーズ
・THE ESSENCE シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 ピーテッドモルト 500ml 49%
・THE ESSENCE シングルグレーンウイスキー 白州蒸溜所 ライタイプ 500ml 57%
・THE ESSENCE シングルグレーンウイスキー 知多蒸溜所 ワイン樽4年後熟 500ml 49%

ニュースリリース:
https://www.suntory.co.jp/news/article/13072.html?fromid=top


"Essence"は、単語としては本質や真髄という意味を持ちます。
今回のリリースでチョイスされたこれら3タイプの原酒は、サントリーのウイスキーラインナップを構成する上では縁の下の力持ちというか隠し味というか、少なくとも"エースで4番"という位置付けではありません。
しかし響を筆頭に世界で評価されるサントリーのブレンドは、これらを含む多様な原酒の作り分け無しでは構成できない。文字通りサントリーウイスキーのエッセンスであり、重要な役割を持つ原酒の一部と言えます。

例えば、山崎ピーテッドモルトはその際たるもので、この蒸留所の一般的なスタイルからすれば"異端"であることは想像に難くないと思います。

「THE ESSENCE シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 ピーテッドモルト」
"ベリーを想起する甘みと酸味の味わいに、やわらかなスモーキー香が特長。酒齢12年。" 


しかし響にしてもローヤルにしても、あるいはシングルモルト山崎にしても、構成原酒の中で少量のピートフレーバーが味を引き締め、深みを与えているのです。
以前BAR IANでマスターブレンダー輿水氏のオーナーズカスクを飲ませて頂く機会があり、それが山崎のピーテッドモルトでした。
この時、異端でありながらブレンドに欠かせない原酒へのこだわり、それを使う面白さと難しさを輿水氏から直接伺ったわけですが、実際に飲んだことでサントリーのブレンドへの理解も深まったようにも感じています。

(オーナーズカスク 山崎1993 バーボンホグスヘッド。
蜜のような甘み、土っぽさ、強いスモーキーフレーバーが特徴。島要素の少ない長熟カリラのよう。)

また、白州蒸留所のグレーンウイスキー ライタイプは、ウイスキーブームを受けた増産に加え、"将来のより多彩な原酒づくり"を目指し、2013年に本格稼働した設備で作られたもの。同蒸留所のグレーンウイスキーは、知多で作られるコーンベースのものではなく、異なる穀物原料をベースとした生産が当初から計画されていました。
ライベースのそれは、カナディアンウイスキーで言えばフレーバリングウイスキーに該当し、華やかで香味の強い仕上がりが期待できる。まさに今後のサントリーウイスキーを構成する、新しい要素の一つと言えます。

「シングルグレーンウイスキー 白州蒸溜所 ライタイプ
"ライ麦由来の華やかな味わいとスパイシーな香りが特長。酒齢4年。"


(白州蒸留所に設置されたグレーンウイスキー製造設備。この設備でどのような原酒が作られるか、注目していた愛好家も多い。サントリーニュースリリースより引用。

一方、同じグレーンでも知多蒸留所グレーンウイスキー ワイン樽4年後熟は、サントリーがこれまでの原酒づくりの中で、グレーンの作り分けとして模索してきたものの一つ。
知多蒸留所では、連続式蒸留機の蒸留の段階を調整することで原酒の重さを作り分け、樽を使い分け。。。サイレントスピリッツと呼ばれるグレーンでありながら、ブレンドの個性を作る1ピースに仕上げています。

「シングルグレーンウイスキー 知多蒸溜所 ワイン樽4年後熟(こうじゅく)」
"プラムのような甘酸っぱい味わいに滑らかな飲み口、芳醇な香りが特長。酒齢16年。"
 


これらと同タイプのウイスキーは、各蒸留所での試飲提供に加え、マガジンライブなど各種イベントのサントリーブースにもありましたので、既に飲まれている方もいると思います。
自分は特に山崎のピーテッドが印象に残っていますが、それぞれ個性的であり、こうした原酒を飲むことで、まさにサントリーウイスキーのエッセンスである"多様な原酒の作り分け"の一端に触れ、理解を深めることができたと感じています。

ひょっとすると、昨年のイベントあたりからこれらの試飲があったのは、今回のリリースに向けた布石、愛好家の反応を見るためのものだったのでしょうか。
全く同じものが発売されるわけではないと思われますが、だからこそ「エッセンスオブサントリー」の出来と、我々にどのような体験を与えてくれるかが非常に楽しみです。

ニッカウイスキー カフェシリーズの新商品を6月発売(レビュー有り)

カテゴリ:

クロスオーバーを発表したニッカウイスキーから新たなリリース。同社の売りとも言えるカフェスチルで作る、カフェジン、カフェウォッカを6月にも発売するとの情報が入りました。
新商品の2銘柄は、既存ラインナップであるカフェモルト、グレーンに次ぐ、カフェシリーズの一角に位置付けられています。
   
NIKKA COFFEY GIN
700ml 47%
NIKKA COFFEY VODKA
700ml 40%
※6月27日発売予定
※希望小売価格:4500円

元々ジンやウォッカは、蒸留機によって精製したアルコール。つまりウイスキー蒸留設備があるどの蒸留所でも作る事が可能であり、イギリス、アメリカ等では新興蒸留所を中心にオリジナルブランドが製造されている模様。
イギリスでは今、ちょっとしたジンブームにもなっているようですね。

日本はと言うと、愛好者は一定数居る中で、同じ蒸留酒でも少々マイナー領域と言わざるを得ません。
直近だと京都蒸留所がリリースするクラフトジン"季の美"が話題になりましたが、それも一部コアユーザー間であり、ましてウォッカなど。。。カクテルで飲まれることは多くあるも、そのまま、あるいはロックなどの飲み方は、ウイスキー以上に少数派と言っても過言ではない状況です。
かく言う私もBARでカクテルを注文したり、新商品が出ればテイスティングはしますが、ホワイトスピリッツを普段飲みにするかというと中々馴染めません。
(ジンやウォッカを愛飲されている方を否定する訳ではありません。)

そんな日本市場に、ジンとウォッカを投入するその心。ウイスキー愛好者の間では、熟成しないで販売できるホワイトスピリッツは、クラフトディスティラリーが「原酒が熟成するまでの間、繋ぎとして販売するもの」とする認識があり、商品がユーザーに受け入れられるか以上に「ニッカはそこまで原酒がヤバいのか・・・」と勘ぐってしまいました。
ただ、それは両リリースを一口飲めば、新規の市場獲得を狙っている、実に野心的なリリースであることが伝わってきます。

今回、クロスオーバーの販促サンプルと同時に、カフェジンとウォッカのサンプルも入手。様々な飲み方にトライしているところです。
なお、これらのサンプルはメーカーから直接貰っている訳でも、依頼されてるわけでもありません。知人繋がりで入手しているもので、以下は両リリースについての自分の本音ベースの話です。

後日個別に記事化しますが、まずは全体概要から。
カフェジンは、レシピに通常使われるジュニパーベリー以外、オレンジ、柚子などの和柑橘、そして林檎を使用し、一般に販売されているジンのギスギスとしてドライな飲み口とは異なる、柔らかく、どこか奥ゆかしい爽やかさが特徴的。更に山椒を効かせることで、余韻にかけてフレッシュな香気が立ち上ります。
カフェウォッカは、穀物の甘みとほのかな酸味、そしてコクのある口当たり。ここまで飲みやすいウォッカは記憶にありません。
どちらにも共通してアルコール臭さは少なく、一般的に流通している同ジャンルの既製品を飲み進まない自分が、冷やさず常温ストレートで抵抗無く飲めてしまうほどの飲みやすさがあります。

両リリースのコンセプトは、カフェスチルによって香味成分を多く残す、香り高く味わい深いスピリッツ。
ジンもさることながら、ウォッカは特に効果を感じやすく、カフェグレーンやカフェモルトより普段飲みに使える飲み飽きないバランス。その味わいは、下手なウイスキーなら代用品にもなり得るのでは。。。という印象です。

まさに日本人をターゲットとしたようなスピリッツ。舌の慣れているコアなユーザーからすれば、癖や刺激の物足りない味わいかもしれませんが、このリリースから入ってさらに様々な銘柄の魅力を経験出来れば、新しいブームに繋がる可能性もあります。

しかし物は良くても、厳しいことを言えば、その売り方でしょうか。
例えばハイボールブームの仕込みのように、CMや缶飲料などの手を出しやすいところから入るのではなく、いきなり本命をドカンと出して本丸を狙ってくるこの感じは、不器用だな〜という気がしてなりません。
値段も希望小売価格4500円、実売4000円前後となると、同ジャンルではプレミアムな価格帯。コアユーザーから注目されているレンジではありますが、果たして一般的な家飲みに馴染むか。。。という疑問もあります。

ただ、中身は自分の知る限り唯一無二とも言える魅力があり、これが一般市場に広く出回る面白さ。長寿となるか、短命で終わるか。
聞くところでは、5月13日、14日開催のバーショーでPRも行われるとのこと。反響を見ていきたいですね。(自分は今年の夏の家飲み用に、どちらも買うと思います。)
長々書いてしまいましたが、本日はこの辺で。後は個別レビューに続きます。

富士山麓 樽熟原酒 50°ノンチルフィルタード レビュー

カテゴリ:

KIRIN WHISKY
FUJI-SANROKU
樽熟原酒50°
50% 700ml

グラス:SK2、創吉テイスティング
量:個人所有
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★☆(4-5)(!)
※少量加水やロック、冷凍ハイボールで飲んだ場合★5評価

香り:ツンとした刺激のある香り立ち。若い原酒のニューポッティーさ、溶剤っぽい香りに栗の渋皮煮を思わせる甘さと苦味。少量加水すると若さや刺激が和らぎ、品の良い甘い樽香に加えてエステリーで華やかな熟成香もほのかに感じられる。

味:ハイプルーフらしくスパイシーな口当たり。香り同様に若いニュアンスはあるが、ライチを思わせる爽やかな酸味とねっとりとしたメープルシロップのような甘みがある。
余韻はバーボン樽、というよりバーボンそのものを連想させる樽香、焦げた樽材由来のほろ苦さ。長く続くが、度数から来るアタックの強さと比べると細い。
少量加水すると口当たりの刺激が和らぎ、ねっとりとした甘み、口当たりに。序盤はやや単調気味だが後半は樽の香味が一層引き立つ。


もはや説明不要ともいえる、キリンが3月22日に発売した富士山麓のリニューアルブランド。
ノンチルフィルタードを採用し、香味の幅を増やしたと言うのが今回の最大のウリです。
その他、詳細はこれまでの記事に加え、先日UPした、旧ボトルとの比較記事にもまとめていますので、興味のある方は合わせて参照ください。
ストレートでは旧ボトルに比べて香味の幅が出ていますし、加水、ロック、ハイボールと一般的な飲み方を試しましたが、全体的に見て良くなっていると感じます。特にロックが良かったですね。

富士山麓 樽熟原酒50% 新製品の進化を探る(3/24)
http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1054458385.html

旧ボトルと比較して良くなったことは、少なくとも自分の中では揺るがない評価ですが、単体としての評価となれば話は別です。あくまで一つのウイスキーとして、評価をしていくのが今回のレビュー。
まず中身に関してはコスパや他との比較を考慮しないで考えると、熟成感としては体感5年程度とまだまだ若く、グレーン由来の中間の単調さに加え、全体を樽で押さえつけた仕上がりの荒いウイスキーという事になります。

まあこのグレードのウイスキーでは、スコッチ含めてそうした特徴は特段珍しい話でもなく、その中でも光る要素がどれだけあるかということになるわけですが、濃い甘みや樽香は見るところがあり、キャラクターは確率されていると感じます。
加えて加水やロックなど、一般的に飲むことが多い飲み方に当てはめてると、ストレートで感じられた香味の荒さが押さえられ、飲み方に幅を感じるのは評価ポイントです。

前回の比較記事では試していなかった、酒販店推奨の富士山麓の美味しい飲み方、関西式のハイボールも試してみました。
ウイスキーを冷凍、グラスもキンキンに冷やし、冷えたソーダで割って氷を入れずに作るハイボール。アルコール度数を感じず飲める飲みやすさに加え、若いフレーバーが爽やかさに繋がって後半に樽香がふわりと広がります。
50ml分を小瓶で冷凍して作ってみましたが、ゴクゴクスイスイ飲み干してしまいました。これは夏場に飲みたい味です。 
デイリーに飲んで愛される要素は、こういう様々な飲み方で伸びる間口の広さなのかなと思うところ。リニューアル商品が前作より微妙、というのがここ最近多く見られた流れですが、新しい富士山麓は限られた中でよく作っているなと感じます。


以下、余談。
富士山麓では、特に新ボトルで余韻にかけてバーボンを思わせる香味が感じられます。セメダイン系の香味とかではなく、バーボンそのものを思わせる香味が構成要素に溶け込んでいるわけですが、一部のウイスキーでも見られる現象であり、富士山麓が特別というわけではありません。
ただこれは富士御殿場蒸留所のグレーンの作り分けで、一部バーボンに近いヘビータイプの原酒を仕込んでいること。
そこに熟成に使われたバーボン樽由来のものが加わったと考えるのが自然でしょう。新樽という可能性も考えられますが、富士御殿場蒸留所はニッカやサントリーほど自社で樽の製造を行っていないため、実際のところ関係が深いフォアローゼス社のバーボン樽がほとんどという話と聞きました。入手した樽に長期熟成用の原酒を入れる前、アク抜き的な熟成で樽に染み込んだ香味を移し、その原酒をブレンドに回すなど個性を出す工夫をしているのではないかと思います。

また、富士御殿場蒸留所ではモルト原酒を50%で樽詰めすることで、香味をより多く引き出す工夫をしています。今回はそこにノンチルフィルターの合わせ技です。
しかし樽の中のウイスキーは、エンジェルシェアと合わせて度数も低下しており、50%で詰めればだいたいは50%以下で払い出されます。(例外的に度数が変わらない、あるいは度数が上がるという現象もあるらしいですが、あくまで特例です。)
じゃあなんで50%で大量に商品化出来るのかというと、グレーンが高度数で度数調整をしているから…ということなんでしょうね。新ボトルでもグレーンを思わせる要素が強く感じられます。
個人的には富士御殿場蒸留所のモルトで18年50%とかを飲みたいんですが、このシステムじゃ難しいのかな。

ロングモーン NA ディスティラーズチョイス 2016年リリース

カテゴリ:
LONGMORN
The Distiller’s Choice
(No Aged)
40% 700ml

グラス:SK2、創吉テイスティング
量:100ml程度
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★(5)

香り:あまり奥行きや重さの無い、ライトで爽やかな香り立ち。若さを連想する酸味や乾いた木材のえぐみ、徐々にバニラの甘さ、微かなハーブ。柑橘系のニュアンスもあるがスワリングすると飛んでしまう、なんとも儚い感じ。

味:飲み口はライトで若干のクリーミーさ。香ばしい麦芽風味と香り同様の若さ。中間からはあまり広がる印象が無く、薄めたキャラメルのような甘さでのっぺりとしている。余韻はスパイシーで麦芽と果実の皮のようなほろ苦さ。微かにケミカルなフレーバーも感じられる。

ロックにするとクリーミーな口当たりが強く感じられるが、逆にセメダインのような溶剤的な香りが鼻に抜けていく。ハイボールにすると不思議と嫌な部分が感じられなくなり、ほのかなクリーミーさを残しつつ、レモンでも絞ったかのような爽やかさでゴクゴク飲める。


2016年1月に発売された、ロングモーンのニューリリース。
発売開始そのものは現行品のロングモーン16年の記事と合わせて紹介しておりましたが、そんなボトルが早くも手元に届きました。
原酒構成は3種類の樽が使用されており、ファーストフィルのアメリカンホワイトオーク樽、特段指定のないシェリー樽、そしてウイスキーカスクの3種類。ただ、シェリーはリフィルか比率として少ないように感じられます。
テイスティングノートの記載の通り、全体的に若さがあり、ファーストフィルのアメリカンオークと言いつつも、感じられるのは若干の柑橘系のフレーバーと木材のえぐみ。ボトラーズのようにバーボンフルーツバッチリ、という仕上がりになっていなかったのは残念でした。
何より現行品の16年と比較して、構成がライト傾向にシフトしたのは、1994年以前の石炭直火蒸留時代の原酒から完全に脱却した故かもしれません。

本ボトルの発売当初、情報を得たのはイギリスの大手酒販メーカー、ウイスキーエクスチェンジから。
オフィシャル公式発表より酒屋掲載のほうが早いとかどういうことやねん、と元広報マンとしては色々ツッコミを入れたいところですが、さらにツッコミを入れたくなったのが、当時エクスチェンジでは「16年に取って代わるボトル」として販売を開始していたところ。しかし1月末から2月頭にかけての現地ニュースでは「16年はラインナップに残る。」とした記述があり、気が付けばウイスキーエクスチェンジから該当する記述は消えていました(汗)
というわけで、このボトルは16年終売の代替品ではなく、ただのニューリリースだったようです。

一方で、原文をそのまま掲載するなら
Longmorn 16 Year Old will "remain part of the range", however the company adds that "more information available in due course".
http://www.thespiritsbusiness.com/2016/01/longmorn-introduces-nas-expression/
と、ラインナップに残ることは書かれているものの、詳細な情報は後だしであることも書かれており、フラグのにおいを強く感じます。
なにせ、今回リリースされたディスティラーズチョイスは、お値段94ドルと、日本円にして約1万円強、現行品の16年とほぼ同じ価格設定となっています。このままの条件で現行品16年が販売継続するとは到底思えません。
また、上でも少し触れましたが、ロングモーンは1994年に蒸留方法を変更し、1999年頃にはフロアモルティングもやめてしまっています。原酒の質が大きく変わっているのは明らかなところで、同じ形状のボトルをいつまで販売し続けるのかは気になっていました。値上げか、あるいはラベルチェンジか、何かしらの動きはありそうです。


最近、気になるボトルをウイスキー仲間と共同購入しており、今回のボトルも仲間が海外から引っ張ってきてくれました。自分の慣れている環境で、比較的まとまった量をストレートだけでなく、加水、ロック、ハイボールと飲めるのは、対象ボトルをじっくり深堀り出来ていい感じです。
もう一本突如リリースされたレディーバーンの末裔も手元にありますので、後日テイスティングを掲載したいと思います。

ロングモーン16年 オフィシャルボトル 終売 と NA仕様のニューリリース

カテゴリ:

LONGMORN 
16 years old 
48% 700ml 
暫定評価:★★★★★★(5-6) 

香り:柔らかくほど良くドライな香り立ち、焦がした麦芽、バナナ、ほのかに湿ったオーク。徐々にメープルシロップの甘さ。オフィシャルらしく多層的なアロマ。

味:一瞬生木っぽいぬめりのあるニュアンスの後でオレンジピールや麦芽感、微かに乾いた草のえぐみ。噛みごたえがあり、芳ばしさと心地よいスパイシーさが後半にかけて広がる。
余韻はビターで柔らかいスモーキーさが鼻に抜ける。バタースコッチ、薄めた蜂蜜、トーストを思わせる長い余韻。

竹鶴政孝が修業した蒸留所の一つであり、マッサンの影響で急速に知名度が高まったロングモーン。ブレンドにおけるトップドレッシングとしての評価に加え、オフィシャル旧ボトル、並びにボトラーズリリースの長期熟成モノは高い人気がある銘柄です。
ただ1970年代後半からは麦芽品種の違いからくる影響か、味わいの淡泊化が進み、1970年代前半蒸留あたりまでに見られた複雑さ、パイナップルなどを思わせる黄色いフルーティーさは近年すっかり影をひそめてしまいます。

今回、久々に現行品の16年を飲んでみると、香りはオフィシャルらしいブレンドによる多層感、味もリッチで飲みごたえがある。
突出してフルーティーなタイプでもないし、シェリーオーク由来と思しきヌカっぽさというか生木っぽさがマイナス要素でもあるんですが、オフィシャル単体として意識して飲むと随分違うもんだなーと見直しました。


そんなロングモーン16年にもNA化の波が到来しているようです
すでにイギリスのウイスキーショップWhiskyExchangeではオフィシャルの正式発表よりも先にニューリリースとなるロングモーン ノンエイジ が発表されています。

LONGMORN The Distiller's Choice
No Age 700ml 40%
https://www.thewhiskyexchange.com/P-31733.aspx
Longmorn The Distiller's Choice replaces the 16 Year Old. Aged in a combination of hogsheads, sherry casks and bourbon barrels, this is a sweet and spicy with notes of ginger and toffee.

蒸留所側から正式発表はないものの、上記説明文には16年から切り替わる旨の記述があります。つまり現在販売されてる16年は終売ってことでしょうか。

ロングモーン蒸留所は1994年まで石炭直火炊き蒸留をスコットランドで唯一採用していましたが、改修によりスチーム式に変更。また、1999年には一部実施していたフロアモルティングも休止しており、今回ニューリリースとなるノンエイジのロングモーンは、新世代と言える原酒がほぼ主体となるボトルと考えられます。
熟成年数以外に度数も現時点の48%から40%に変更。現在が中々飲みごたえがある中で、かなり穏やかな感じになるのでは・・・。
昨年記事にしたスキャパのニューリリース(日本では2016年2月発売)は、40%ながら中々ボディのある味わいでした。その再来を期待したいところです。

このページのトップヘ

見出し画像
×