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リトルミル 23年 1988-2012 ダンスシリーズ 54.7%

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LITTLEMILL 
The Dance 
Aged 23 years 
Distilled 1988 
Bottled 2012 
Cask type Bourbon Hogshead 
700ml 54.7% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:ケミカルなニュアンスと共に、華やかなオーク香。微かにハーバル、ジャスミンのようなアロマ。フルーティーさはキャッチーなタイプで、メロンやオレンジキャンディ、和紙紙系のニュアンスを伴う。

味:オイリーな口当たりのなか、駄菓子のオレンジやパイナップルフレーバーを思わせるケミカルなフルーティーさ。余韻にかけて果実の皮を思わせるほろ苦いウッディさ、ハーブ、オーク由来の華やかさがアクセントとなって長く続く。

最近で言うところのジェネリックトロピカル系統。樽感は程よく、リトルミルらしい紙感や、人工的というか薬っぽいケミカルなフルーティーさを主とするタイプ。ただ、オイリーで粘性を感じる口当たりと、ケミカルな要素があざとさにも感じられる。この辺りのキャラクターが、一部の愛好家から熟年の人間を連想させると言われる所以だろう。
加水すると一瞬薬っぽいアロマ、若干ネガティブな風味も出てくるが、すぐに軽やかなフルーティーさ、オーク香が広がる。

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酒置場整理してたら出てきたシリーズ。1994年に閉鎖されたローランド地方の蒸留所、リトルミル。
リリース当時は「最近リトルミル増えてきたよね」なんて、食傷気味ですらあったのですが(市場でも余っていましたが)、5年強経過した現在は閉鎖蒸留所としてオフィシャル、ボトラーズとも価格急上昇中。気が付けば高値の花という蒸留所になっています。
それこそ、昨年発売されたオフィシャルの40年や29年なんて、同じ蒸留所とは思えない価格設定でした。

リトルミルの特徴は、ダンボールだとか紙っぽさだとか、とても食指が動かないような個性的なフレーバーで語られていました。
しかし最近は潮目が変わってきて、「トロピカルなフルーティーさ」などのフルーティーなフレーバーとセットで語られることが増えてきています。
リトルミルのリリースを購入またはBARで注文する際、近年では前者のニュアンスを多少折り込みつつ、後者の個性を強く期待して・・・と言う方も多いのではないでしょうか。
この状況、昔はパッとしないクラスメイトが、同窓会で会ってみたら流行りのファッションを着こなして180度印象が変わっていたような感じと言いますか、あれ?お前こんなだったっけ?みたいな。記憶にある姿とのギャップを感じる古参愛好家も少なくないと思います。

リトルミルの酒質、系統はアイリッシュ寄りの個性があり、若い時はそこまでフルーティーでもなく、むしろ紙っぽさや植物感等”○○警察出動”な要素が目立ちますが、熟成を経て樽由来の風味と交わって熟成感が出てくると、次第に”ジェネリック・トロピカル”とも言われるフルーティーさや、モノによってはよりはっきりとしたトロピカルフレーバーが備わってくるように感じています。



今回のボトルは、その例に漏れずジェネリック系です。
一方で、上の記事にもあるように、昨年オフィシャルからリリースされた29年熟成のリトルミルなど、30年近い熟成年数となるものには、60年代蒸留のモルトに通じるようなトロピカルフレーバーが感じられるものもあります。 80年代以降の蒸留でありながら、なぜこうした個性が生まれたのかは謎ですが、ローモンドスチルを用いた独特な蒸留方法が影響しているのかもしれません。

それを裏付けるように、リトルミルの個性は後継の蒸留所であるロッホローモンドに受け継がれており、原酒の作り分けでリリースされる現在のインチマリンが、熟成したリトルミルに最も近い個性を持っていると感じています。
同蒸留所は、2000年代以降蒸留のシングルカスクやシングルモルトから酒質が向上しており(理由は不明)、インチマリンの場合は蒸留方法の工夫や樽使いから、若い熟成年数であってもフルーティーさがはっきり出ているものもあります。最近はオフィシャルの12年に次いで、2000年代の原酒の比率が増えてきた18年も徐々にフルーティーになってきました。

以前セミナーで聞いた話では、現存するリトルミルの原酒は、1990年代のものはまだあるが、80年代以前はほとんど無いとのことです。現在のブランド戦略から考えれば、残された原酒はリミテッドリリースとして、とんでもない価格でリリースされていくのだと思います。
しかしその個性を楽しみたい人はロッホローモンド(インチマリン)がある。 まだボトラーズ含めて該当する蒸留時期のリリースの少ない蒸留所ですが、今後2000年代以降の原酒が、20年熟成、30年熟成と育つ中で、より明確に好ましいフルーティーさを纏っていく姿を、過去にリトルミルにあった変化から期待したいです。

グレンギリー 21年 1995-2016 ウィスキーラヴァーズ名古屋2017記念ボトル

カテゴリ:
GLENGAROCH
Whisky Lovers Nagoya 2017
Imported by Three Rivers
Aged 21 years 
Distilled 1995
Bottled 2016
Cask type Refill Hogshead
700ml 61.7%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:20ml程度
時期:開封後3ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(5-6)

香り:焦げたような強いウッディネス、アーモンド、微かにシナモン、ハイトーンでスパイシーなアロマ。徐々に砂糖をまぶしたレモンピール、若干の草っぽさも感じられる。

味:とろりとしてスパイシーな口当たり。焦げた木材やウッディなえぐみ、カカオパウダー、余韻はリンゴのコンポートを思わせるフルーティーさを感じた後で、焦げたような苦味が戻り、長く残る。

時間経過では目立った変化はなかったが、少量加水すると麦芽風味にナッティーでフルーティーな香味が開き、余韻にピーティーなニュアンスも感じやすくなるなど、バランスが断然良くなる。

最近リリースされることが多くなった感じのある、グレンギリーの1990年代。先日、夜の限界にチャレンジし続けるダメダメ団こと名古屋のBARよっちさんから連絡があり、テイスティングして是非感想"辛口ビシビシ希望"で聞かせてほしいと、幾つかのサンプルを頂きました。
(誕生日祝いを兼ねてとのこと。本当にありがとうございます。)

【BAR よっち】
愛知県名古屋市中区栄1-7-4 御園西ビルB1F
営業時間 14:00〜23:00

グレンギリーの1990~1995年は80年代のソーピーなニュアンスが抜けた代わりか、1997年の蒸留再開後のドライでアタックの強い酒質と異なり、ピート以外に癖も強い時期。総じてホグスヘッド系統のフルーティーな味わいが備わってますが、各社がリリースするボトルにもブレ幅が大きい印象が有ります。


(グレンギリー蒸留所の熟成庫。手前はバーボン、奥はシェリーだろうか。通路、樽の管理タグ、綺麗に整備された印象を受ける。気がつけばこの辺りのビンテージがリリースされてもおかしくない時期に・・・。 Photo by T.Ishihara)

今回のボトルである、ウイスキーラヴァーズ名古屋2017のグレンギリーもその例に漏れず、少し毛色が違うタイプと言えます。
ギリーらしい個性、アタックの強さや癖に加え、ユーザーから求められるであろうフルーティーさもある程度備わっていると感じつつ。一方で色合いとは裏腹にリフィルの際に少し焼いたか元々残っていた香味か、焦げ感のあるウッディネスが壁となって評価を分けそうと感じました。 

個人的な好みを言えば、ピートかフルーティーさがあと一押し欲しいですが、これもまたシングルカスクの面白さです。
加えてテイスティングの通り、少量加水でワンテンポ置いてから飲むとさらに良さを引き出せる。とろりとした口当たりが香味をホールドしているため、工夫して長く楽しめる印象もあります。 

今年のイベントから、名古屋に産まれたご当地ボトルの一つ。こういうリリースがあるのも、主催者のみならず、よっちさんら地元の皆様の協力でイベントが開催されたからこそ。
少々荒削りですが徐々に整ってじっくり楽しめる1本は、次のイベントまでの1年間に想いを馳せるにぴったりですね。

ブナハーブン 27年 1988-2015 スリーリバース ダンス 53.7%

カテゴリ:
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BUNNAHABHAIN
Three Rivers
Aged 27 Years
Distilled 1988 
Bottled 2015
Cask type Butt #629
700ml 53.7%

グラス:サントリーテイスティング
量:ハーフショット
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:直近開封
暫定評価:★★★★★★★(6-7)

香り:リッチでフルーティーなシェリーフレーバー。  黒蜜やチョコレートを思わせる甘いアロマ、オーキーな華やかさはややドライにも感じる。ほのかに干し葡萄の酸味や土っぽさ、全体的に嫌味の少ないシェリー樽熟成香でよくまとまっている。

味:少し粉っぽい口当たりからねっとりとした甘さ、香りの印象同様に嫌味の少ないリッチなシェリー感に加え、軽やかなスパイシーさとオーキーなフルーティーさ。アプリコットジャム、オレンジピールチョコレート。鼻抜けにほのかな硫黄香がある。
余韻はねっとりしたシロップの甘さに淡いウッディネスが心地よいドライさに繋がる。パッションフルーツや柑橘類を思わせるドライフルーツが充実している。 


ブナハーブンでシェリーというとえぐみが強くゴムゴムしく、個人的には閉口してしまう印象が強かったところ。
しかし1980年代後半から1990年代前半蒸留のモノには「おっ!」と思うものがいくつか出てきており、特にこのスリーリバースのダンスは、今まで飲んだ1980年代蒸留ブナハーブンの中では頭一つ抜けて良い出来のシェリー樽熟成モルトだなと感じました。
直近のリリースと比較して、マスコットキャラのVサインを獲得していないのが不思議なほどです。

シェリー樽モルト特有のリッチで深い甘みのある口当たりから、樽材由来のえぐみは控えめで、ドライフルーツを思わせる香味がすぐに開いてきます。
ブナハーブンらしくピートは皆無で、シェリーの影響により塩気などの地域特有の要素もありません。余韻はほろ苦くほのかに硫黄香が鼻に抜けるのですが気にならない程度。メーカーコメント同様に柑橘系のドライフルーツを思わせるほのかな酸味と果実味も感じられます。
ホグスヘッドでフルーティーなモルトというのは良くあるのですが、これはバット表記でありながらこうした傾向のある香味は、何か特別な樽なのかなと感じます。バットの27年熟成で224本ボトリングってのも少ないですし・・・少なくとも、ただのシーズニング樽ではなさそうです。

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1980年代はスコッチのシェリー樽モルトにとって暗黒時代に等しく、大きく質を落とした時期でした。
黄金期といわれた1960年代の原酒は枯渇し、シェリー樽モルトはもうダメなのか。。。と思っていましたが、それが1990年前後の時期から質を戻しつつある蒸留所が見られます。
こういうボトルを飲むと未来のウイスキーに希望が持てますね。
評価は7にしようか迷いましたが、今後の変化の触れ幅をとって6-7とします。

ボウモア 15年 2000-2015 スリーリバース ダイナソー 58.7%

カテゴリ:
BOWMORE 
Three Rivers "DINOSAUR" 
Aged 15 Years 
Distilled 2000 
Bottled 2015 
Cask type Hogshead #67 
700ml 58.7% 

グラス:グレンケアン
量:ハーフショット
場所:BAR飲み(エクリプス)
時期:開封後1週間程度
暫定評価:★★★★★(5)

香り:ツンとした乾いたオーク香、グレープフルーツの皮、スパイシーで塩気を感じさせる香り立ち。徐々にキッパー、ダシ、貝殻や和紙を連想する紙っぽさ。灰を連想するボウモアらしいピートのニュアンスも感じられる。

味:やや荒さの残るスパイシーな口当たり、塩気を強く感じる。リフィル系のナチュラルなオーク香、ハイトーンで柑橘系のフレーバーが鼻に抜けていく。
余韻はピーティーでほろ苦く、エッジの立ったフィニッシュ。加水すると香りも味も薄くバランスが悪くなってしまう。

ダイナソーは、1990年代以降に蒸留されたアイラモルトの若い原酒をボトリングしている、スリーリバースのシリーズもの。ダイナソーという名の通り、全てのラベルに1種類ずつ恐竜が書かれているのが特徴です。
今回はラフロイグと2本同時に発売されましたが、一応このボウモアが8th、ラフロイグが9thとなるようです。

ラベルに書かれているのは、肉食恐竜の王者ティラノサウルス。
その筋のファンは垂涎とも言えるラベルですが、モルトファンが注目するのは恐竜以上に裏ラベルでしょう。
スリーリバースがリリースしているボトルには、裏ラベルにマスコットキャラクター(名称不明、一部では"さんぺいくん"と呼ばれていたような)が書かれているのですが、自信作であるボトルはピースサイン、ちょっとやっちゃった系のボトルは謝っているというのが、モルトファンの間では有名な話。
そのピースサインはめったに出ないものの、このたび3年ぶりにピースサインが出たということで、ラベル以上に話題になっていました。(ダイナソーシリーズでは2度目かな?3年ぶり2度目とか甲子園みたいですw)


ただ、確かに以前はピースサイン=自信作だったようですが、今はそうした意味は無いのだそうです。
実際このボウモアも、2000年代らしさは出ていてボウモアらしいボウモアなんですが、自信作として意識して飲むと「あれ?」と感じる人が多そうです。
荒さの残る仕上がりで、香り、味共にフルーティーさよりも塩気やスパイス、テクスチャーの荒さなど、エッジの立った香味がメインに感じられました。ボディがライト傾向に触れてきているためか、少し和紙のようなニュアンスも感じられます。
一方、ボウモアは口開けが荒くても時間経過でフルーティーさが前に出てきて、最後は全開に、なんていうパターンが結構あります。このボトルも現時点では・・・ですが、開封後1年、2年後くらいは荒さがこなれて良い方向にシフトするかもしれません。


今回のボトルは神田のシードルBAR、エクリプス・ファーストさんでテイスティングしました。
このBARはマスターの趣味か、ダイナソーが全種類揃っていて、「ダイナソーください」
といったら、カウンターに壮観な光景が広がりました(笑)
今回のボトルとマスターのお任せで飲み比べをしても楽しいと思います。

ボウモア17年 (1994-2012) ウイスキーフェス大阪記念ボトル

カテゴリ:
先日ウイスキー仲間から頂いたブラインドテイスティングサンプル
既に回答は伝えていて、正解も聞いている状況ですが、今回は蒸留所絞りという簡易クイズでしたので、テイスティングはこちらで公開。
ただまぁこの蒸留所に関しては、このビンテージであると伝えた段階で、だいたいの飲み手には伝わるレベルであるほど特徴がはっきりしています。
先日記事をUPしたストラスアイラとはまったく逆の位置づけ、つまり個性的と言えるのだと思います。

BOWMORE
"WhiskyFestival2012 in OSAKA"
Distilled 1994
Aged 17 years
700ml 54.6%

評価:★★★★★★(6)

"グレープフルーツ果汁を思わせる瑞々しいほどの果実香、作為的とすら感じる。そこから灰っぽいピートスモーク、塩素、微かなヨード香。最初の果実香は時間と共に抜けていき、えぐみが強くなってくる。
口当たりは勢いがあり度数相応の力強さを感じる。グレープフルーツやパイナップル、そしてピート、乾燥した牧草。中間の変化は乏しく、ボディーは軽め。
フィニッシュはスパイシーでピーティー、舌の上を塩分がコーティングする。
時間経過や加水で、上面にある果実味が崩れてしまう。変化を楽しむならいいが、注いだ後は早めに飲んでしまいたい。"

作為的な果実感が強い印象を受けたが、らしさも充分感じるボウモア。蒸留所絞りの予想でも、ボウモアだと思うんだが・・・と回答しています。
歯切れが悪いのは、仲間内で腹黒いヤツが数名おり、90年代ボウモアに似たフレーバーを出すアードモアを出してくることもあるため、「まさかアードモアじゃないよな」と保険をかけたため。
特にこのサンプルは時間経過で香りや中間の抜けが進んだので、勝手に迷宮にハマりかけました。
出題者にそんな意図はなかったんですが・・・邪推してしまうのはブラインドをする上で本当に良くないことですね。

今回のボトルも飲めていなかったので、またしてもありがたい出題でした。
ザリガニ・・・ではなくてロブスターなんですか、このラベル。評判の良いボトルだったと記憶しています。
スリーリバースの取り扱いとのことですが、この味の作為的な感じ、樽はエージェンシーの経由でしょうか。
元々はダンカンテイラー、ピアレス香なんて言われていたアレ。最近はケイデンヘッドもこんな感じで"味付け"感があるボトルを出しています。
まぁ初期のダンカンテイラーはリフィルオーク系の樽の使い方が上手だっただけだと思うのですが、最近は露骨なモノも増えてきました。
自分はウマけりゃ良いの考え方なので、ウラで何やっても味が良ければOKですが、この件については、いつか誰かが答えをリークしてくれないかなと期待しています。

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