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アラン シェリーカスク 55.8% 2019年リリース

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ARRAN 
Sherry Cask 
Cask Strength 
Cask type Sherry Hogshead 250L 
700ml 55.8% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@サンプルテイスティング
評価:★★★★★★(5-6)

香り:樽由来の甘やかさに加えてハイプルーフ故の刺激。甘栗や焼き芋の焦げ感を伴う甘さに、ライムのような柑橘系の爽やかさをともなうシーズニングシェリー香。時間経過でダークフルーツを思わせる甘みが主体的に。

味:パワフルな口当たり。香り同様にハイプルーフ仕様らしい刺激が口内に広がるが、合わせてシェリー樽由来の粘性のある甘味がそれをコーティングしている。ドライプルーンやキャラメルコーティングしたナッツの甘みとほろ苦さ、奥には若い原酒の酸、若干の焦げ感を伴うウッディネス。
余韻はドライでほのかに樽由来のタンニン。シェリー樽由来の甘さの中に、微かにオーキーな黄色系のフルーティーさが混じるアランらしさも感じられる。

全体の仕上がりの粗さはあるが、しっかりとシェリー樽のキャラクターが備わっている1本。一方で原酒の個性なのか、樽由来なのか、1st fill シェリー樽100%での熟成ながら、他の同系統リリースには見られない柑橘系の爽やかさや余韻のフルーティーさが特徴でもある。少量加水すると口当たりがまろやかになり、親しみやすくなる。

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2019年にオフィシャルラインナップを一新したアラン蒸留所。その際、ラインナップに加わったのがカスクストレングスのシェリーカスクです。
樽構成は1st fillのシェリーホグスヘッドのみで、熟成年数は海外情報では7年程度という記述もある若いタイプ。香味の点から見ても、熟成年数については違和感なく、樽は1st fillといっても、ヨーロピアンオークとアメリカンオークのもの、両方が使われていると思われます。

テイスティングでも触れましたが、このボトルにはシェリー系の色濃い甘みの中で、香りにライムなどの柑橘香、味には余韻にかけて黄色いフルーティーさが若干混じるため、それが特有の個性として感じられます。
おそらく、色濃いシェリー感はヨーロピアン(スパニッシュ)オークに由来するものですが、ヨーロピアンオーク100%ならもっと濃厚な仕上がりになってもおかしくありません。このリリースはそこにシーズニング期間の浅いアメリカンオークの原酒が混ざり、若い酒質由来の要素と合わさって上記の個性に通じているのではないかと考えられます。

よってジャンルとしては、所謂アベラワーのアブナックやグレンファークラスの105のような、10年熟成未満の短熟ハイプルーフ仕様にあたりますが、価格的にも内容的にも競合製品に負けていない(というか上位に食い込む)クオリティに仕上がっているあたり、流石アラン蒸留所だなと思ってしまいます。
ここで「流石アラン蒸留所だな」と自然に思えてしまうことが、ファーストリリースから20年間かけて築き上げてきた実績なんでしょうね。 アランのリリースなら外さないだろうという安定感、今回の大幅リニューアルで変更のあった他のボトルも総じて好評で、特に1万円以下の価格帯では磐石とも言えるラインナップが揃っていると思います。



なお、アラン・シェリーカスクは昨年リリース直後にテイスティングして、リカルのほうに紹介記事は掲載していましたが、ブログでのレビューはしていませんでした。※トップの写真はその時のものを使用。
先日、ウイスキー仲間とZOOM飲みでブラインドテイスティングをした際、サンプルとして頂いていたモノの中にこれがあり、せっかくなので記事にもしようかなと。(その際のブラインドは、「ウイスク・イーで取り扱いがあるボトル」という前置きがあったため、ボトル指定で正解できました。)

改めて飲んでみると、粗削りながらアランらしさもあり、ネガティブさの少ないシェリー感はわかりやすい魅力もある。5000円台の価格設定としては優秀な1本ですね。シェリー系は夏に向かないと愛好家の中で評価されることもしばしばありますが、これはレビューでも触れた柑橘系のフレーバー故にあえてハイボールで使ったり、ロックにしたり、冷やして使うことも出来る、ハイプルーフながら使い勝手の良いシェリー系リリースだと思います。

ハイランドパーク 15年 2003-2019 For WU DRAM CLAN 58.2% #6126

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HIGHLAND PARK 
For WU DRAM CLAN WHISKY SOCIETY 
Aged 15 years 
Distilled 2003 
Bottled 2019 
Cask type 1st fill European OaK Sherry Butt #6162 
700ml 58.2% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@サンプル
評価:★★★★★★(6)

香り:サルファリーさと湿ったウッディネス。合わせて粘性のあるダークフルーツシロップ、焦げた樹液やみたらし、くるみのほろ苦さ。時間経過で古びたウェアハウスのような、古典的なニュアンスも漂う。 

味:シェリーオーク由来の甘酸っぱいダークフルーツのフレーバーと、かりんとうや黒飴の甘さ。リッチな口当たりから、スパイシーな刺激、サルファリーさ、椎茸の出汁のようなエキスも微かにある。フィニッシュはウッディなタンニン、ドライ。硫黄香はあるが、香りほど気にならず、奥には微かにモルティーなフルーティーさも。

第一印象は、ハイランドパークのその他リリースでも度々見られる硫黄を含んだ濃厚シェリー系。”現時点”では、特筆して素晴らしいボトルとは言い難い。ただ、このモルトの本質はシェリー感よりもその奥にある。スワリングした時に混じる古典的なアロマ。口直しで水を含んだ時の口内に残るフルーティーな香味の残滓。加水の変化に加え、硫黄はグラスのなかで比較的早く抜けていく印象で、間違いなく瓶熟推奨。将来の確たる可能性に満ちた1本。

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先日Kyoto Fine Wine & Spiritsの店主O氏からサンプルをいただいていたうちの1つ、Wu Dram Clan向けのハイランドパーク。
このグループは、もともとドイツの愛好家2名で構成されていたものですが、そこにO氏が後追いでジョイントし、先日の”鹿バンク”のリリースに続くという流れです。

今回のハイランドパークはというと、飲んだ印象ではまず違和感。店主の好みは古典的なモルトで、なかでもグレンモールが大好きというちょっとマニアックな趣向があったりするのですが。今回のハイランドパークのどシェリーで多少サルファリーでも許容しちゃうのは、モルトマニアックス受賞系というか、欧州の愛好家っぽいチョイスなんですよね。
この点については、選定の経緯を聞いてみて納得。カスク選定にO氏は関わっておらず、選定者はドイツの2名。リリースが決まっていたあとで、グループに加わったのだそうです。

ハイランドパークを傘下とするエドリントングループは、ここ数年15年熟成前後のシングルカスクや、ヴァイキングソウルなどを含めた樽売りを、比較的積極的にやっているような印象があります。
それも一般市場向けのオフィシャルスタンダードではなく、免税向けや、専門ショップ向け、あるいは欧州やアジアの愛好家向けなど、誤解を恐れず言えば「お金がありそうなところに特別感のあるリリースをピンポイントで投入している」ような戦略が見えるのです。
この辺りは、同グループ傘下のマッカランでも類似の動きを見ることができますね。

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(ハイランドパークのシングルカスクリリース。免税店向け、ショップ向けの一部。これら以外にも今回の愛好家向け、台湾やシンガポール向け等多数存在する。)

ただ、近年のハイランドパークのシングルカスクをいくつか飲んだ印象としては、安定感に乏しいというか、クオリティは結構ピンキリであるように感じます。
サルファリーさが目立つものが多いのは好みの問題もあるのでさておき、シェリー感を突き破るようなベース部分の荒さ、シェリー樽由来のフレーバーの濃淡、傾向の違いは現代のファークラスマジックか?というくらいにばらつくのです。
樽売りにあたり、意図的にキャラを変えているとしても、玉石混合の玉になかなか当たらない印象もあり、現代のシェリー系故の難しさなのかもしれません。

ではこのWu Dram Clan向けはどうかというと、先に触れたようにモルトマニアックスが好みそうな、スパニッシュオーク材のエキスの色濃く混じった、濃厚シェリー系・・・で終わらない。今後、時間と共に磨き抜かれた”玉”に変化する可能性を秘めた、カスクリリースであると言えます。

度数高く、熟成年数もそこまで長期ではないので、口内を酒質由来の刺激が強い部分もありますが、言い換えれば開封後年単位で経過しても、経年変化に耐えられる可能性があるということ。硫黄感の抜けは比較的早そうで、グラスの中の変化で将来の姿を感じることができる点もポイントですが、なにより特筆すべきはベース部分の味わいと言えます。
樽材由来のエキスやサルファリーさの裏に、熟成したハイランドパークが持つフルーティーで、古典的な麦芽風味に通じる要素が潜んでおり、瓶熟、開封後変化させることで、数年程度で大きく進化する可能性があります。

ハイランドパークは、過去にも「10年前は全然ダメだったけど、瓶熟で変化した」というボトルがいくつかあり(昨年末、某ストイックな人にブラインドで出されたばかり(笑))、その兆しが現段階で見えている今回のボトルには安心感すらあります。
難しいリリースが多い中でも、光るモノは集まるべきところに集まるんですかねぇ・・・。今後はレダイグ、そして他数種類のリリースも予定されているそうで、その引きの強さ故に今から楽しみです。

アラン 18年 46% 新ボトル 2019年リニューアル

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ARRAN 
Single Malt 
18 years old 
Release to 2019~ 
700ml 46% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後数日
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:近年寄りのシーズニング系のシェリー香。ダークフルーツのシロップ、微かに焦げたオークとかりんとうを思わせる香ばしさ。奥にはオーキーなバニラや華やかさが混じり、複雑さを与えている。

味:ドライプルーンやチョコレートケーキを思わせる色濃い甘味。序盤は香り同様近年のシーズニング系の香味がメインで、若干焦げた樽のエキスのような要素も混じるものの、それを打ち消すように黄色系のフルーティーさが広がる。
余韻はウッディさと柑橘の綿のようなほろ苦さ。シェリーの甘味の残滓の中に、オークの華やかさが混じって長く続く。

色合いの通り、シェリー系の原酒がメインの構成で、旧18年から大きくベクトルを変えてきた。全面にシーズニングシェリーのそれがあるが、ベースにあるのはアランらしいフルーティーさで、シェリー感の奥から開いてくる。加水だが、骨格はしっかりしていて物足りなさはない。
現在の市場において、1万円以内のシェリー系モルトのエースとなれる存在。

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2019年に大規模なリニューアルを実施した、アラン蒸留所のオフィシャルリリース。
ラベル、ボトルデザインの変更に加え、中身にも大なり小なり変更があり、上と下の新旧写真を見るだけでもそれは明らかです。

アラン蒸留所は、スペイサイドとハイランドを足して2で割ったような素直な酒質と、アメリカンオークとの馴染みの良さが特徴。15年熟成を越えたあたりから一気にフルーティーな味わいに変化していく傾向が、オフィシャルリリース全般にあるハウススタイルと言えます。
一方、今回のリニューアルでは10年、18年、21年、エイジング表記がある3種類それぞれに共通して"アメリカンオーク"ではなく、"シェリー樽原酒"の使い方に変化が見られるのがポイントだと感じています。

10年はバーボン樽主体のなかにシェリー系の原酒が繋ぎとなって、21年はリフィルシェリー(ホグスヘッド)系の比率が増えて、どちらもバランスのとれた味わいとなっていました。
ではアラン18年の変化はというと、色合いで比較してもわかる通り、構成が明らかにシェリー寄りになりました。3本の中で、最も大きな変化があったボトルと言えるかもしれません。

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(アラン18年の旧ボトル。シェリー感は繋ぎ程度で、アメリカンオーク由来のオーキーな黄色系のフルーティーさがメイン。麦感を伴う適度な厚みのある酒質も楽しめるバランスの良さ。類似のモルト(対抗馬)は、グレンモーレンジ18年。1万円以内の価格帯におけるエース候補だった。レビューはこちら。)

公式の記載は旧18年と変わらず、シェリーホグスヘッドとバーボンバレルのバッティングとのことですが、1st fill シェリー樽と思われる濃厚な原酒の比率が増えているのが香味からも色合いからも伝わってきます。
そのため、オーキーで華やかな含み香ではなく、ドライプルーンやチョコレート、微かに焦げたオークのニュアンスを含んだ、リッチなシーズニングシェリー香が、まず香味の前半部分で主体となっています。

使われているシェリーホグスヘッドは、バットからの組み直しではなく、近年増えている最初から250リットルのサイズで作られたシーズニング樽でしょう。それだけだと、アランのような酒質は圧殺されて逆に単調になりがちですが、そこは複数樽バッティングのオフィシャルボトルです。
シェリー感のバランスをとりつつ、余韻にかけて旧18年にもあったアメリカンオーク由来の黄色系のフルーティーさが広がってくる。いかにもアランらいしと言えるキャラクターが、近年のシェリー系のネガティブなところをうまく打ち消しています。
この香味の幅が、新しいアラン18年のポイントであり、魅力であると言えます。

過去のアラン18年は、上に書いた通りアメリカンオークのフルーティーさと華やかさがメインにあるモルトであったため、いくつかの蒸留所のオフィシャルと方向性が重複していました。
勿論それも価格帯別では充分上位にあるクオリティでしたが、シェリー系にジャンルがシフトしたことで、同ジャンルにおける1万円以内の価格帯では”候補”ではなく”エース”になったと言えます。
この価格帯で購入できる現行品モルトのなかで、アラン18年以上のシェリー系モルトは見当たりません。

勿論、これだけ大きな変化ですから、旧の方が良かったとする声もあると思います。それこそ10年や21年とは異なり、新旧で別物と言えるくらいの変化ですから、本音を言えば、出来が良かった旧は旧で残してほしいとも。。。
とは言え、近年難しい状況にあるシェリー系のウイスキー市場にあって、このリリースは歓迎すべきものです。
最近のシェリー樽に抵抗がなければ充分満足できるクオリティ。そうでなくても、納得は出来る仕上がりではないかと思います。

タリスカー 15年 スペシャルリリース 2019 57.3%

カテゴリ:
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TALISKER 
AGED 15 YEARS 
SPECIAL RELEASE 2019 
Distilled 2012 
Cask type Charred American Oak Hogsheads 
700ml 57.3% 

グラス:シュピゲラウ
時期:開封後1週間程度
場所:新宿ウイスキーサロン
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:チャーオーク由来のほのかに焦げたようなアロマ、タールや葉巻葉、微かに魚醤のような癖。合わせてアプリコットジャムを思わせるドライフルーツ香とほのかなピート、スモーキーさがじわじわと広がっていく。

味:度数に反して柔らかい口当たり。乾燥させた麦芽風味、アプリコットのアクセント、ほのかに焦げ感とざらつきのあるチャーオークのウッディさ。徐々に黒胡椒を思わせる風味とスパイシーな刺激、ピーティーで仄かにヨードを含むスモーキーさが鼻孔に。余韻はスパイシーさの残滓と柔らかい甘さを伴う心地よいフィニッシュ。

まさに王道、オフィシャルハウススタイルど真ん中というタリスカー。ピーティーなフレーバーに加えて10年、18年に共通する果実香や、ハイプルーフ故にさらに感じやすくなったスパイシーさ。樽由来のフレーバーは若干チャーオーク系の要素を感じさせるが、バランス良く過剰なチャーオーク感はない。むしろスパイシーさのなかで黒胡椒に通じる風味を後押ししている。
突き抜けて旨いわけではないが、完成度は非常に高くバランスも良い。家飲みで複数本あっても苦にならないタイプ。


2019-2020リリースとなるディアジオのリミテッドエディション。これまではオフィシャルスタンダードをベースにしたデザインが多かったところ、今年のリリースから「Rare & Nature」をテーマとし、ラベルデザインは花と動物シリーズをオマージュしたものへと方針転換。蒸留所を取り巻く野生動物や草花をイラストに加えた、懐かしくも新しいデザインへと変化しました。

タリスカーについては、昨年のスペシャルリリースで8年がオフィシャル・ヤングエイジで初のカスクストレングスで登場。何より、名作と名高いTDラベルのタリスカーと同じ8年スペックということもあり、愛好家の間で話題となりました。
そして1年。アイラ、アイランズ系の人気蒸留所はこの先短熟成メインかと思いきや、ここでミドルエイジの15年がラインナップに。別枠ですが、アードベッグからは19年が昨年リリースされましたし、グレンモーレンジ含むディアジオ系列のリミテッドリリース方針は、本当に何が出てくるか読めずにワクワクしますね。


今回、熟成に使われた樽はチャー済みのアメリカンオークホグスヘッド(おそらく1st fill)。最大の特徴はこのチャー済みの樽由来のキャラメルのような甘さと焦げ感が、くどくなく全体の香味を構成する一要素として存在している点。これがまず作りの上手さとして感じられる要素の一つです。
同系統の香味はオフィシャル10-18年にもあり、ハウススタイルとして認識する要素だと思いますが、今回のリリースではそれがスパイシーさと結び付いて蒸留所の特徴をさらに引き立てているように感じます。

また、熟成したモルトと樽感が結びついたフルーティーさも、柔らかい口当たりの後に複雑さを形成しています。
個人的に去年の8年は悪くないけどそれなりというか、熟成の壁は越えられないなという印象があったところですが、この15年に感じられる「熟成したモルト」のバランスには、香味を受け止める鼻と舌側の"余裕"または"あそび"が良い意味で存在し、ハイプルーフ仕様でありながらホッとしてしまうのです。

ボトルとしての完成度は高く、安定感もある。しかし突き抜ける要素は控えめで、例えば豪速球のような目立つ能力で試合を制圧するような絶対的エースではないのですが、居てくれたら安心する数字は残すタイプの選手。。。これ以上をこの価格で求めるのは、それはもう贅沢というものですね。
価格面含めて、今年のラガヴーリン12年同様にグッドリリースだと思います。

ハイランドパーク 21年 1972-1993 SMWS 55.2%

カテゴリ:
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HIGHLAND PARK 
THE SCOTCH MALT WHISKY SOCIETY 
No, 4.15
Distilled 1972 Feb 
Bottled 1993 Aug 
700ml 55.2% 

グラス:リーデル
場所:BAR Sandrie 
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★★(8)

香り:へたっておらず、しっかりと勢いがある香り立ち。ビターでスモーキー、土っぽさと葉巻を思わせるスモーキーさに、バタークッキー、色の濃い蜂蜜とイチジクジャム。時間経過で軽い香ばしさを含む麦芽の甘味と甘酸っぱさがさらに開く。

味:マイルドでコクのある口当たり。ドライアプリコットやイチジクジャム、そこからほろ苦く焙煎したような麦芽風味。ほんの微かに乾燥した植物や根菜の灰汁などの雑味が混じるが、多彩さに繋がっている。
余韻はパイナップルケーキのようなしっとりとしたオークフレーバーと、熟成したモルトの蜜のような甘味。ほろ苦いピート、沸き立つようなスモーキーフレーバーを戻りにともなって非常に長く続く。

まさに熟成のピークにあるモルトの風味を楽しめる1本。系統としてはオフィシャル25年の1990年代流通品のそれだが、シェリー感が控えめであることと、シングルカスクであることも手伝って、樽由来のフレーバーに邪魔されず、むしろ後押しにして突き抜けてくるハイランドパークの個性と美味しさに感動を覚える。願わくば開封直後を飲んでみたかった。。。

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自分が求めているハイランドパーク味。アメリカンオークのリフィルシェリーバットあたりと思われる熟成で、シェリー感はアクセント程度ですが、そのフレーバーに酒質ベースのドライフルーツや色の濃い蜂蜜を思わせる風味、ハイランドパークらしい乾燥した植物や土っぽさに通じるピート香が混ざりあって、実に魅力的な味わいを形成しています。

特に余韻が素晴らしいですね。20年という熟成期間がハイランドパークの酒質にとってベストだったのか、開封後の時間経過でこなれているにもかかわらず、2段階、戻りも含めて3段階まで伸びるフィニッシュ。度数が高く、それによって強い余韻のものはいくらでもありますが、まるで余韻だけ別にウイスキーを飲みなおしたように持続的かつ広がりのある点は、この時代のモルトの素晴らしさと言えるのです。

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(1990年代流通のハイランドパーク25年。小細工抜きに旨い1本。今回のボトルとはほぼ同じ蒸留時期にあることから、共通項があるのは当たり前かもしれないが、その美味しさを構成する一要素に特化したシングルカスクの魅力が今回のボトルには集約されている。)

なお、感じた余韻のなかに、ヘビーピートモルトのように過度に主張するような強さはないが、沸き立つように持続するピート香があり、これはフロアモルティングで仕込まれたモルトで度々見られる特徴であると感じます。

ハイランドパークは一部(約20%)のモルトを現在もフロアモルティングで仕込んでいるところ。同仕込み方法では、麦芽の状態が不均一になること(どんなに頑張ってひっくり返しても、火の通りが麦芽毎に異なる、それ故に香味の複雑さに繋がる)、そして現在のモルトスターでの方式に比べてじっくりと麦芽が乾燥させられるため、ピートが麦芽の奥まで染み込み、PPMは低くても、存在感のあるスモーキーさが沸き立つように出てくるのではないかと思えます。
この味わいの複雑さと余韻の長さは、そうした時代の麦芽、そして仕込み方法が影響していると考えると、効率化が全て正しいわけではないと、仕事のあり方も考えさせられてしまいますね。

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今日のおまけ:カレラ セントラルコースト ピノ・ノワール 2016

2019-2020年時点で市場に流通している、セントラルコーストの現行ロット的なボトル。カリピノらしく熟した赤系の果実を思わせる風味は健在ですが、数年熟成させたものに比べて少し酸が固め。ただ、カレラはその果実感に艶があるというか、どことなく良いブルゴーニュワインに通じるようなニュアンスもあるのが魅力だと思います。

それっぽく言うと、気品というかエレガント?
そのまま飲んで良し、熟成させて良し。国内だと大手酒販最安値はリカマンで、税込み3600円くらいだったはず。新世界ピノは似たような香味のものも少なくないですが、この価格帯では頭一つ抜けてますね。
ウイスキー好きが好む果実味もあり、この辺は是非一度試してほしいです。

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