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スプリングバンク 19年 2000-2020 ”鹿バンク” 50.8%

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SPRINGBANK 
Aged 19 years  
For Wu Dram Clan (Kyoto Fine Wine & Spirits)
Distilled 2000 
Bottled 2020 
Cask type Refill Sherry Hogshead #699 
700ml 50.8%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@サンプル
評価:★★★★★★★(7)

香り:微かに青みがかっているが、メインは香ばしいカルメ焼きやライ麦パンを思わせる麦芽香。バンクらしい蝋っぽいニュアンス。奥にははちみつやパイナップルを思わせる甘酸っぱさ、オークの華やかさもあり、ピートスモークと共に存在を主張してくる。

味:熟成感のしっかりとある濃厚な口当たり。とろりとした質感、アプリコットやパイナップルの甘酸っぱさとオークフレーバーのアクセント。合わせて香ばしい麦芽風味。余韻にかけてヒリヒリとする唐辛子系のスパイシーさに、土や焦げた植物を思わせるピート、香りで感じたバンクらしさが鼻孔に抜ける。

通好みで多層的なバンク。オフィシャル10年のようなバーボントロピカル全面路線ではなく、酒質の個性、ピート、それらを熟成して伸ばしたような味わい。序盤は一瞬若さを感じるが、時間経過で香りに華やかさと統一感、味わいにフルーティーさが感じられるようになる。ピート香は強くないが存在感があり、飲むほどに薫製香のようなスモーキーさも楽しめる。見た目も良く、中身も懐が深い、理想的なモルトウイスキー。

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ウイスキー繋がりで、O氏から頂いたスプリングバンク、通称”鹿バンク”のサンプル。
同氏は元々ワイン系では相当なストックを所有しているヘビードリンカーなのですが、数年前からウイスキーにも手を伸ばし、趣味が高じて酒屋まで開いてしまったという相当ぶっ飛んだガチ勢です。
そのO氏の営む酒屋”Kyoto Fine Wine & Spirits”が、ドイツ、シンガポールの有志と共にボトリングしたのが、今回のスプリングバンクになります。

近年のスプリングバンクと言えば、スタンダードの10年にあるようなバーボンオーク由来のフルーティーさと、麦芽由来の要素が混じったタイプが評価されていますが、このボトルは樽構成がリフィルシェリー(恐らくアメリカンオーク)ホグスヘッドであり、バーボンオーク系統とは少々異なる、酒質ベースの香味がメインで、そこに品の良いオーク香のアクセント。

序盤は若干の固さや樽由来と思われる青みがかった要素が感じられ、「おや?」と思わされるかもしれませんが、その香味は麦芽風味の厚さに由来してか、グラスの中でじわじわと変化。熟成感のある蜜のような甘味とフルーティーさ、華やかなオークフレーバーもアクセントとして伴って、異なる魅力を見せてくれます。
麦芽風味を主体としての奥行き、風味の引き出しの多さが、スプリングバンクらしさと言えます。

加えて、中身の良さに花を添えるラベルのセンスのよさ。スコットランドの精霊と言われても違和感のない、神秘的な印象さえ受ける鹿のイラストは、工芸画家・牟田陽日氏作のオリジナルで、O氏の依頼で描き起こした絵画。(牟田氏の作る陶器、工芸品は一見の価値ありです。)
このラベル案を初めて見せてもらったのは、今年の2月上旬。ほぼ同時期にマッスル3のラベル作りをしていた自分からすれば、完成度の差を見せつけられて。。。いやもう、軽く嫉妬しちゃいましたねw

まさにかつてのムーンインポート等に見られた、飲める芸術品の類。
今回、ご厚意からサンプルをいただき、「どれどれラベルは良いけど、中身はお手並み拝見ですね」なんて思ってましたすいません、文句のつけようがありません(汗)。内輪のボトルには多少厳しめに評価するところですが、これはもう・・・。強いて言えば、注ぎたては★6相当ですが、10分もしないうちに変化して、そのスケールの大きさと香味の多彩さで★7です。
外観、中身ともにあふれるセンスの良さ。価格は確かに高いですが、それに見合うこだわりを細部(外箱のシール)にまで感じることができる1本です。

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ご無沙汰しております。
随分更新が開いてしまいました。多分このブログが始まって5年、ここまでの長期間更新無しは初じゃないでしょうか。
まず、生きております(笑)。話題のウイルスに感染して隔離されたとか、そういうことではありません。

本業のほうで大きな仕事にぶち当たり、コロナ禍に伴う計画全面見直し、テレワークの緊急導入に伴う混乱。。。作業員が削減されて、仕事量が増えたと言いますか。完全に1日のサイクルが仕事と睡眠になっていました。
休日であっても気軽に仕事が出来てしまうし。。。。マジでテレワーク考えものですよ。
生活のリズムがガラッと変わってしまった1ヶ月、仕事、家庭、そして趣味、こんな非常事態だからこそ、整理しないといけないなと色々考えさせられた期間でした。
ブログの方は、ぼちぼちやっていきます。

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さて、前置きがなくなりましたが、今日のオマケは、ルスタウのアルマセニスタのオールドボトル。年代は不明。ミリオンさんじゃなくて、HATTA SHOTEN名義というところに時代を感じる、ドライタイプのオロロソシェリー。
澱がかなり出てるので、ワインのようにパニエを使って斜め置き。ドライオロロソってそこまで魅力を感じなかったのですが、これはすごく良いですね。長熟酒精強化ワインにあるぞくぞくするような熟成香に、アーモンド、ドライフルーツを思わせる酸味。食後酒だけでなく、食中酒としても大活躍でした。
こういうシェリーが熟成されていた樽を使ったウイスキーは、きっと美味しくなるのでしょう。

スプリングバンク ローカルバーレイ 10年 2009-2019 56.2%

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SPRINGBANK 
Local Barley 
Aged 10 years 
Distilled 2009 July 
Bottled 2019 Oct 
700ml 56.2% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:香ばしい麦芽香と微かに柑橘、やや焦げたようなピートのスモーキーさ。奥には若いモルトの酸からオーク由来のバニラ、華やかさはアクセント程度にあり、あくまでもモルティーなアロマが強く主体的に感じられる。

味:少しざらつくような口当たりだが、コクがあってオイリー、麦芽風味はしっかりと濃く、スパイシーで微かにニューポッティーな若い酸が香り同様にある。合わせてじわじわと潮気に加えて焦げたようなピート。余韻にかけてトロピカルな要素がオークフレーバーに混じり、ピートフレーバーと共に長く続く。

若さはあるが、バンクらしい麦芽由来のフレーバーを軸として、余韻のフルーティーさはトロピカル系統の味わいに繋がっている、麦芽風味の魅力が全面にあるボトル。荒削りながらドキッとさせられる存在で、将来どれだけの飲み手を魅了するだろうか。しかしなぜシリーズの最初からこれを出さなかった。。。最後にこれを持ってくるあたり、作り手の作為というかドヤ顔が見えるようである。

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恐らく多くの愛好家が唸らされただろう、新生ローカルバーレイシリーズ5作にして最終リリース。ファーストリリースを除くと、10年前後熟成で類似スペックのものが4作続いたことになりますが、間違いなく最後のこの1本こそローカルバーレイに求める味わい、理想系に近かったのではないかと思います。
(過去リリースについては、”ローカルバーレイ”のタグを参照。)

2016年、新たにリリースされたローカルバーレイシリーズを飲んだ時、真っ先に感じたのは「良くも悪くも麦の地酒」という印象でした。
かつて、スコッチウイスキーは地酒的なものであり、それがブランデーに対抗する形でマイルドで飲みやすいブレンデッドが主流となり、最終的には世界的に認められる主要な輸出品になっていきました。
その間、香味は飲みやすく市場の好みに合わせて変化。結果、量産の過程で効率化の名のもとに失われていったものもあると考えられます。実際、近年はシングルモルトであっても麦の味が細くなり、樽しゃぶり系のリリースが増えてきていることに異論はないと思います。

一方、ある程度ウイスキーに慣れ親しんだ愛好家は、シングルカスクやカスクストレングス等のより香味の強いものや、”麦の酒”を求めるようになっていく傾向があります。求めるのは圧殺するようなシェリーでも、口の中でピートを焚いているようなヘビーピートでもない、麦の味が分厚いウイスキーなのです。

その点でこのローカルバーレイ10年は、若さ故に全体的に粗さがあるのは否めませんが、これくらいの粗さは香味の強いウイスキーを求める愛好家にとっては許容範囲でしょう。
厚みのある麦芽風味はローストしたようなほろ苦さと、スプリングバンクらしさと言える個性的なニュアンス(個人的には、蝋っぽい麦感)、土っぽいピート香とほのかな塩気、余韻にかけて広がるトロピカルなフルーティーさ。バーボン樽由来のオーキーさではなく、あくまでも昔のハイランドモルト等に感じられるニュアンス。。。
これらの要素はすべて麦由来のキャラクターであり、まさに麦の地酒であり好ましい要素もある。ローカルバーレイに求める味わいとして、理想系に近いように感じられたわけです。

なお、前作となる9年のレビューでも書きましたが、このローカルバーレイに使われている麦芽品種はオプティックで、ベアなどの古代品種ではない、普通の近代品種です。
スプリングバンクは100%フロアモルティングなので、麦と精麦に特殊な要素は見られません。なぜ新生ローカルバーレイからは、こうも強いフレーバーやオールドモルトに通じるフルーティーさが感じられるのか。
樽構成はバーボン77%、シェリー30%、ポート3%とのことですが、特段特別な組み合わせではなく。恐らくシェリーはリフィルで、特殊なところでポートの役割は全体の繋ぎ、バランサー。ですがこの麦由来の風味の強さとはあまり関係なく。。。

作り手がローカルバーレイたる味わいを意識して、試行錯誤を重ねてきたからとは思いますが、新生ローカルバーレイシリーズ5作の最終リリースにして、集大成として納得させられる美味しさの一方、最後まで謎は残ったままでした。

スプリングバンク ローカルバーレイ 9年 2009-2018 57.7%

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SPRINGBANK 
Local Barley 
Aged 9 years 
Distilled 2009 
Bottled 2018 
700ml 57.7% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:BAR Eclipse first 
評価:★★★★★★(6)

香り:スプリングバンクらしい蝋っぽさのある濃い麦芽香。バニラや麦粥、洋梨の果肉を思わせる白い果実のアクセント。微かに硝煙のようなニュアンスを伴う淡いスモーキーさ。

味:塩気のはっきりと感じられる口当たり。香り同様に厚みと濃さのある麦芽風味から、柑橘系の甘酸っぱさ、ホワイトペッパーのようなスパイシーな刺激も感じられる。
余韻はややざらつきを感じる舌当たり、籾殻や土っぽさ、ーティーだが合わせて麦芽由来の厚みのある甘味が残り、長く続く。

まさに麦の地酒という1本。若い原酒故に樽感が強くない分、ローカルバーレイたる麦芽由来の風味が香り、口当たり、そして余韻に至るまで随所に感じられる。一方、その若さ故のネガティブな要素が少ないのも、このボトルの興味深い点である。しいて言えば、ざらつくような舌触りくらいだろうか。

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先日日本国内のモルトBAR等に入り初めたスプリングバンク・ローカルバーレイシリーズ・・・の2018年リリース品。つまり昨年2019年に日本市場に出回っていた”前作”に該当する1本です。
そういえば飲んだ記憶がなかったなと、ニューリリースを飲む前にレビューをUPしておこうと思います。

2015年から復活したスプリングバンクのローカルバーレイシリーズは、16年、11年、10年とリリースを経る毎にだんだん若年化が進み、次は戻るだろうと予想したらまさかの一桁。最終リリースとなる今年流通の2019年版は10年表記なので1年戻りましたが、10年前後が4作続いたのは、蒸留所側でなにか思うところがあったのか、あるいはローカルバーレイの原酒が豊富なところから毎年リリースする形にしたのでしょうか。

過去のリリースを含めると、樽の効き具合等の違いはあれど、総じて麦感強めな地酒的構成なのが新ローカルバーレイの共通項と言えます。
この9年は、一番若い熟成年数であるためか、樽由来の要素が淡い反面、麦芽由来の香味が過去シリーズのなかで最も強く出ているように感じられました。その一方、若い原酒ながら嫌みが少ないというか、ここまで仕上げてくるのも特徴。オールドボトルが5年や8年等の若いエイジングでも旨さを感じられることと、同じ要因があるのかもしれません。

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(スプリングバンク2017年、2016年、2015年リリースの3種。あくまで自分の感想だが、2015年のファーストリリースが、麦芽風味の中に若さに通じる要素が一番強かった気がする。リフィルシェリーなどの樽使いの違いから来る要因だろうか。。。)

では、その麦感の強さ、通常リリースとの違いを考えていくと、今回の麦芽品種はオプティックで、2000年代以降の主要品種のひとつ。加えて、フロアモルティングはスプリングバンクのスタンダードであることから、麦芽関連の情報だけ見ると特別な要素が見えません。

残るは生産地の土壌か、あるいは発効時間や蒸留の際のカットポイント等の違いか。その比較対照となるオフィシャル10年は、加水の影響もあってか麦感は多少弱めながら、共通するニュアンスがないわけではないのも悩ましく。
麦だけにフォーカスするなら、キャンベルタウンの土壌はそんなに肥沃というか、特別な麦が育つものなのか・・・。ブランドの位置付けとして特別であることは否定しませんが、その香味の由来がはっきりしてこない点が個人的に長く疑問だったりするのです。

と、個人的な疑問はさておき、今年リリースの10年は前評判が良いと聞きます。是非早い段階で飲んでみたいですね。

スプリングバンク 8年 1980年代流通 特級表記 43%

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SPRINGBANK 
CAMPBELLTOWN MALT 
100% Pure Malt  
Aged 8 years 
1980's 
750ml 43% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかな香り立ちから、しなやかな麦芽と淡いオーク香。白系のフルーティーさがあり、品の良い林檎の甘さやマスカットの酸、少しの干し草。合わせて柔らかいスモーキーさは、微かに塩素を思わせる要素も伴う。

味:ややドライだが柔らかい口当たり。香ばしさと共に蝋っぽさのある麦芽風味、膨らみがあってピーティーで染み込むよう。シトラス、林檎を思わせる含み香。余韻は若干弱いようにも感じられたが、ソルティーで麦芽風味、柑橘ピールのほろ苦さともに長く続く。

モルティーなフレーバーを樽がアシストしたような、品の良いフルーティーさが魅力。一口目は味の方で少し抜けたような印象を受けたが、飲むほどに味わいが蓄積し、あまり気にならなくなる。ブリニーさも健在。なにより多少抜けていてもそれを補うコシの強さが、この時代のモルトの特徴でもある。癒し系なバンクとして長く楽しめるスルメなモルト。

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1990年頃まで、スプリングバンク・オフィシャルリリースのスタンダードだった8年熟成品。蒸留所云々の話はもう同じみであるので省略。
スプリングバンクの8年といえば、「スプリングバンク 8年 特級」でググって出てくるようにペアシェイプボトル(以下、写真参照)が特に知られていますが、その後継品として1980年代中頃に2~3年程度、短期間流通していたのが、今回レビューする黄色ラベルの8年です。

ラベル表記やボトル形状等から推察すると、この黄色ラベルの後で白ラベルのものがリリースされ、1990年代に8年が終売に。白ラベルのほうが、特級表記に通関コードが書かれていないため、1980年代後半、1988年等の特級時代末期から流通したものと考えられます。(ネック部分に張られたエンブレムは、1990年代にリリースされる15年やウェストハイランドのデザインと共通するものです。)
なお、スプリングバンクのオフィシャルスタンダードとしては、その後、トールボトルのCVや10年に切り替わっていったと考えられます。

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(今回の8年ダンピーの前にリリースされていたペアシェイプボトルの8年。スクリューキャップ仕様だからか、風味、骨格共に強く残っている印象。それゆえモルティーさがやや荒々しく感じられることもあるが、飲むほどに味わい深いスルメ属性なモルトであることは、この時代も変わらない。レビューはこちら

流通時期解説が長くなってしまいましたが、このスプリングバンク8年の流通時期を1985年頃と仮定すると、蒸留所の閉鎖が1979年からですから、それに近い時期の8~10年程度熟成原酒を使われているということになります。
恐らく1979年の閉鎖間際の原酒で白ラベルに切り替わり、残された原酒が10年熟成になったところで終売、ボトルチェンジしたという感じなのでしょう。

味の違いは・・・実は白ベルのダンピー8年を飲んだことがないので比較が出来ず(汗)。
ただ、ペアシェイプ時代との比較としては、香味の抜け具合、こなれ具合で今回のボトルの方がフルーティーさを感じやすく、柔らかく仕上がっている印象があります。(過去飲んだ複数のボトルも同様の印象でした。)
スクリュー時代より液面低下しているものも少なくないため、コルクキャップとの密閉度合いの違いによる影響なのかもしれません。
人によってはこちらの時代の方を好むかも・・・?
モルティーさと白系のフルーティーさ、そしてピートと塩気のアクセント。しみじみ旨い1本です。

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今日のオマケ:コノスル シングルヴィンヤード No,21 ピノ・ノワール 2017

個人的に、2000円以内で購入できる新世界ピノで最高のクオリティだと思う1本。コノスルの所有する単一区画の畑で、手積みで収穫された葡萄を使い、11ヶ月の樽熟を経て仕上げられる。この系統の味わいが好きな方なら、普段飲みで気兼ねなく使えるのが有り難い価格設定。これをナパで出したら軽く2倍はするんでしょうね。。。

典型的な新世界系の味わいで、濃いめかつはっきりとしたアタック。熟したベリーやチェリーのリッチな果実味、微かに黒土、スパイス、徐々にしなやかなタンニン。複雑さはそこまでないが、適度な深み、コクがあって分かりやすい味わい。
バキュバン保管2日目、3日目でも十分美味しく、むしろ全体的にこなれ、熟したベリーの甘味の中の酸やスパイスのバランスがとれてくる印象。熟成に使われている樽のうち、古樽が80%を締めることも、樽感がくどくならず果実味主導の構成に繋がっています。
5年くらい熟成させたバックビンテージのものも飲んでみたい。きっと美味しいはずだと思うのです。

スプリングバンク 1965-1996 ロンバート ジュエルズオブキャンベルタウン 46%

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SPRIGNBANK 
LOMBARD'S 
Jewels of Campbeltown 
Aged 30-31 years 
Distilled 1965 
Bottled 1996 
700ml 46% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
場所:BAR Sandrie
評価:★★★★★★★(7)

香り:ドライでエステリー、熟した洋梨、乾いた麦芽やおしろい、仄かにマンゴーや柑橘を思わせるフルーティーなアロマ。奥にはスモーキーなニュアンスも。

味:若干水っぽさはあるが、スムーズな口当たり。オーキーでエステリーな要素を伴う麦系の厚いフレーバー。中間から薄めた蜂蜜、リンゴのコンポート。余韻はウッディでドライ、焦げた木材や土っぽいピート、仄かな塩気を伴い長く続く。

エステリーでスペイサイドを思わせる綺麗な香味だが、麦芽風味の厚さや余韻のピートがキャラクターを主張してくる。一方で加水の影響か、樽が多少浮わついてメリハリに欠けるようにも感じられた。


ロンバートがリリースする"JEWELS OF SCOTLAND"シリーズのはしりと思われるもの。
ロンバート社はウイスキー原酒の商社的な(買い付けて、ブレンドメーカーに流す)商売をしていたためか、蒸留所やボトラーズとのコネクションがあり、1980年代から1990年代は特に優れたリリースを排出しています。

一方、企画が続かなかったケースもあり、例えばソサイエティを意識したように独自のナンバリングを蒸留所に振り分けてリリースを開始したゴルフシリーズは、10蒸留所に満たず終了。このジュエルズオブキャンベルタウンも、ゴルフシリーズの流れで考えるとスペイサイド、ハイランド、ローランドと各地域作りたかったのかもしれませんが、それらはリリースされることなく、Jewels of Scotland で統一されて現在に至っています。
ひょっとしたら、自社としてはそこまで先を見通せるストックがなかったのかもしれません。

さて、今回のボトルですが自分のイメージする60年代のスプリングバンクとは異なっていて驚きました。
もっと麦というか蝋のような独特のニュアンスや、ボディも強いものかと思えば、エステリーで華やか、綺麗な構成で序盤はまるで長熟スペイサイド。勿論余韻にかけてバンクらしさもあって充分美味しいモルトですが、この女性的で綺麗な仕上がりはちょっと意外。
狙った訳ではないでしょうが、"キャンベルタウンの宝石"の名は伊達じゃないということか。。。
仕上がりの傾向としては、近年のボトルだとブティックウイスキーからリリースされた、スプリングバンク1995にも似た感じだと思います。

なおテイスティング時点は、開封からそこまで時間が経ってなかったので、この夏にかけてまたキャラクターが変わってきているかもしれません。
特に全体的に香味が開いてくると、ボリュームアップして期待するポテンシャルが感じられるようになるはずです。

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