カテゴリ

カテゴリ:ニュース

ウイスキーバイブル 2019 主要部門をアメリカンウイスキーが独占 ジャパニーズ部門はポールラッシュが受賞

カテゴリ:
今年もジムマーレイ著、ウイスキーバイブルにおけるワールドウイスキーオブザイヤーが発表されました。
個人的にはボジョレー解禁的な印象もある、ウイスキー業界の風物詩なこの発表。ああ、もうすっかり秋ですねぇ。。。

ジムマーレイ氏の活動ついては今更説明は不要と思いますが、ざっくりまとめると、毎年1000種類以上のウイスキーをテイスティングし、コメントとスコアリングをまとめた著書"ウイスキーバイブル"の執筆を手がける、非常に大きな影響力を持つテイスターです。

そのスコアリング基準は不明確な点もありますが、近年の評価では、
2016年クラウンローヤル・ノーザンハーベスト・ライ
2017年ブッカーズ・ライ13年
2018年テイラーフォーグレーン12年
と、各年のウィナーがアメリカ・カナダ方面に寄っていることから、その趣向が見えてくるようです。
2015年の山崎シェリーカスクから一転して、クラウンローヤルが選ばれた年など「正気とは思えない」と辛辣なコメントが寄せられたこともありましたが、なるほどここまで続くと一貫していますね。

長熟バーボンに備わる艶やかな甘みや、ハイプルーフで突き抜けた味わいは自分も求めている要素の一つであり、スコッチとの対比に異論を唱えるつもりはありません。ただ、その時々の思い切った線引きが、ジムマーレイ氏の評価なのでしょう。
今年はそれがさらに極まった内容となり、ワールドウイスキーオブザイヤーと、シングルカスクオブザイヤーの主要2部門をバーボンが受賞。全体でもトップ3銘柄のうち2銘柄がアメリカンで、異なるカテゴリーのコンペを見るような結果となりました。

■The full list of winners
◆2019 World Whisky of the Year

William Larue Weller 128.2 Proof 
- Buffalo Trace Antique Collection 2017

◆Second Finest Whisky in the World

Glen Grant Aged 18 Years

◆Third Finest Whisky in the World
Thomas Handy Sazerac Rye 127.2 Proof

◆Single Cask of the Year
Blanton’s Gold Edition Single Barrel



ワールドウイスキーオブザイヤーを受賞した、William Laure Wellerは飲んだことがありませんが、バッファロー・トレースの長熟となれば、一定以上のクオリティがあると見て間違いないと思います。
リミテッドであるアンティークコレクションは、小麦を主原料とする原酒のうち総じて10数年間の熟成を経てピークに到達した樽から、毎年度リリースされているシリーズのようです。
今回受賞したのは2017年ロット。スペックなどから察するに、芳醇で柔らかくドライな含みから、ボリュームのあるウッディネスと艶やかな甘み、パンチのある余韻といったところでしょうか。

そして全シングルカスクのベストかどうかはさておき、高い評価も納得出来るのが、ブラントン・ゴールドラベル 51.5%です。
今オススメのハイプルーフバーボンを聞かれたら、1万円未満なら自分でも勧めている銘柄の一つ。現行品はボディが少し細い気もしますが、オールドバーボンにある香味の共通項を備えた、熟成感あるリッチでメローな味わい。何よりもスタンダードとして安定して購入出来るのが嬉しいですね。
ラベルに書かれたボトリング日付が古いほうが香味が濃い傾向があり、2000年以前のものなど特にオススメです。


SCOTCH WHISKY
Scotch Whisky of the Year 
Glen Grant Aged 18 Year Old 
Single Malt of the Year (Multiple Casks) 
Glen Grant Aged 18 Year Old 


続いて、各区分毎の受賞銘柄からピックアップすると、今年もスコッチカテゴリーでトップながら、全体では2番手だったグレングラント18年。
これで3年連続トップ3圏内、しかしウィナーにはなれず。レベルが高いのは間違いないのですが、そろそろ永遠の2番手とか言われそうな。。。(笑)

グレングラント18年は、先日とある企画でブラインドテイスティングで飲む機会があったばかり。やや軽めの酒質にアメリカンホワイトオークの華やかさとフルーティーさ、そして少し枯れ草のようなウッディネス。加水調整によるバランスも良く、うまく仕上げられた美味しいモルトでした。
味は万人に好まれ易いタイプですし、BARでも使いやすいモルトウイスキーだと思います。

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year 
The Hakushu Paul Rusch 

ジャパニーズ区分では、萌木の村がリリースした、ポールラッシュ生誕120周年記念シングルモルトウイスキー(白州)が選ばれています。
秘蔵の長期熟成原酒とヘビーピート原酒を使い、日本的な熟成感のある多彩な香味。柔らかく角の取れた香り立ちでありながら、その味わいは内に秘めた想いが感じられるような芯の強さとピートの存在感。まるで往年のポールラッシュ氏その人を思わせるようなウイスキー。
一般市場には流通がありませんが、一部のBARと、萌木の村では飲むことが可能な1本。今日は我が家でもささやかにテイスティングといたします。
(※リリース当時のテイスティングコメントはこちら。

この他、ディアジオのスペシャルリリースからコレクティヴァムXXVⅢなど、昨年から今年にかけて話題になったボトルもいくつか、カテゴリー毎に受賞しています。
詳細は以下の通り。なお、ウイスキーバイブルの表紙には毎年度ジムマーレイ本人の姿が書かれているわけですが、今年はどう見ても精神生命体。。。あるいはハリーポッターあたりに出てきそうな精霊の類。
テイスティングすることのべ何万、ついにそのグラスの中には魂が宿ったのでしょうか(汗)。

 
SCOTCH
Scotch Whisky of the Year
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

Scotch Blend of the Year
Ballantine’s 17 Year Old

Scotch Grain of the Year
Berry Bros & Rudd Cambus 26 Years Old

Scotch Vatted Malt of the Year
Collectivum XXVIII

Single Malt Scotch
No Age Statement
Laphroaig Lore

10 Years & Under (Multiple Casks)
Laphroaig 10 Year Old

10 Years & Under (Single Cask)
Berry Bros & Rudd Ardmore 9 Year Old

11-15 Years (Multiple Casks)
Lagavulin 12 Year Old 17th Release Special Releases 2017

11-15 Years (Single Cask)
Cadenhead’s Rum Cask Mortlach 14 Year Old

16-21 Years (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

16-21 Years (Single Cask)
Bowmore 19 Year Old The Feis Ile Collection

22-27 Years (Multiple Casks)
Talisker 25 Year Old Bot.2017

22-27 Years (Single Cask)
Scotch Malt Whisky Society Glen Grant Cask 9.128 24 Year Old

28-34 Years (Multiple Casks)
Convalmore 32 Year Old

28-34 Years (Single Cask)
Gleann Mor Port Ellen Aged 33 Year Old

35-40 Years (Multiple Casks)
Benromach 39 Year Old 1977 Vintage

35-40 Years (Single Cask)
Glenfarclas The Family Casks 1979

41 Years & Over (Multiple Casks)
Tomatin Warehouse 6 Collection 1972

41 Years & Over (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

BLENDED SCOTCH
No Age Statement (Standard)
Ballantine’s Finest

5-12 Years
Johnnie Walker Black Label 12 Year Old

13-18 Years
Ballantine’s 17 Year Old

19 – 25 Years
Royal Salute 21 Year Old

26 – 50 Years
Royal Salute 32 Year Old Union of the Crowns

IRISH WHISKEY
Irish Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Pot Still Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Single Malt of the Year
Bushmills Distillery Reserve 12 Year Old

Irish Blend of the Year
Bushmills Black Bush

Irish Single Cask of the Year
The Irishman 17 Year Old

AMERICAN WHISKEY
Bourbon of the Year
William Larue Weller 128.2 Proof

Rye of the Year
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

US Micro Whisky of the Year
Garrison Brothers Balmorhea

US Micro Whisky of the Year (Runner Up)
Balcones Peated Texas Single Malt

BOURBON
No Age Statement (Single Barrel)
Blanton’s Gold Edition Single Barrel

No Age Statement (Multiple Barrels)
William Larue Weller 128.2 Proof

Up To 10 Years
Eagle Rare 10 Year Old

11 – 15 Years
Pappy Van Winkle Family Reserve 15 Year Old

16 – 20 Years
Abraham Bowman Sweet XVI Bourbon

11 Years & Over
Orphan Barrel Rhetoric 24 Year Old

RYE
No Age Statement
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

Up to 10 Years
Knob Creek Cask Strength

11 Years & Over
Sazerac 18 Year Old (2017 Edition)

CANADIAN WHISKY
Canadian Whisky of the Year
Canadian Club Chronicles: Issue No
1 Water of Windsor 41 Year Old

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year
The Hakushu Paul Rusch

EUROPEAN WHISKY
European Whisky of the Year (Multiple)
Nestville Master Blender 8 Years Old Whisky (Slovakia)

European Whisky of the Year (Single)
The Norfolk Farmers Single Grain Whisky (England)

WORLD WHISKIES
Asian Whisky of the Year
Amrut Greedy Angels 8 Year Old (India)

Southern Hemisphere Whisky of the Year
Belgrove Peated Rye (Australia)


※参照・引用
•JIM Murray's Whisky Bible
•The Whisky Exchenge

ジャパニーズウイスキー「響」のフェイクボトル報道に思うこと

カテゴリ:
いつか話題になるだろうと思っていた、ネットオークションにおけるジャパニーズウイスキーのフェイクボトル。その逮捕者が出たというニュースが、本日配信されています。

中身は別のウイスキー 偽「響30年」販売容疑で逮捕(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASL8P41T0L8PONFB006.html

自分がウイスキーを本格的に飲み始めた2010年頃、フェイクボトルと言えばスコッチでマッカランやスプリングバンク、あるいは陶器瓶のラガヴーリンなど、海外から買い付けるような一部のレアなボトルに限られていました。
代表的なものが、昨年ニュースにもなった100年前のマッカランとかですね。
国内ではマッカラン30年ブルーラベルが話題になるくらいで、よほど高額なものでなければフェイクづくりは割に合わないというのが定説だったとも記憶しています。

ところが、近年のジャパニーズウイスキーブームを受けて、まずはイチローズモルトのフェイクと思しきボトルがヤフオクなどで見られるようになり。スコッチモルトも高騰し始めた結果、近年リリースでもフェイクを疑われるボトルが徐々に増えていました。
そして極め付けが、今年発表された白州、響の休売ニュース。海外からの買い付けで流通価格の数倍という価格高騰を引き起こした結果、メルカリやヤフオクの所謂転売系の出品物に明らかにフェイクと思しき響17年以上が混じり始めたのです。(メルカリの方が多い印象。)
それは散見というほどの数はないものの、事件化することは時間の問題だったようにも思います。


疑わしきは・・・ということで、この場でWEB上に出品されている(されていた)ボトルを名指しすることはできませんが、例えば最近メルカリやヤフオクで見かけた響で、明らかに怪しかったモノの特徴は以下の通り。

①開封済みである。
②液面が通常より高い。
③撮影の影響を差し引いても、色が濃いor薄い。
④ラベルが張り直されたような跡がある。
⑤キャップシールのデザインが異なる。

はっきり言って、上述のレアなオールドボトルのそれと比べると殆どは雑なフェイクであり、個別に解説するまでもありません。ラベルをルーペで拡大したり、キャップシールを一部切り取ってコルクの状態を確認しないと認識出来ない精巧なフェイクに比べれば、あまりにも稚拙。
現時点ではキャップシールまで複製して詰め替えているようなケースは少なく、①、②、③がセットになっていたりで、笑いのネタにすらなるレベルです。

他方、④や⑤は解説の余地があるので少し述べていくと、まず④は最安価の響ジャパニーズハーモニーのラベルを剥がし、響17年以上のグレードのラベルを調達(あるいはプリント)して貼り直した、所謂ニコイチと思われるものです。
響はボトルのカットがグレード毎に変わるのと、ウイスキーの色合いもジャパニーズハーモニーと17年以上では異なるため、注意して見ればわかるのですが・・・。以前あったこの怪しい出品物は、残念ながら落札されていました。
また、⑤については、今回ニュースになっているケースが該当すると思われるもの。響のキャップシールは現行品だと斜めにカット(30年は垂直)が入り、HIBIKIなどの印字があるのですが、それらが全くないのっぺらぼうなモノがありました。

そして、このような市場状況が続くと確実に増えてくるのが、先に述べた「精巧なフェイク」です。
既に高額なジャパニーズウイスキーの空き瓶が、オークションなどで数万単位の価格でも落札されており、その行き先は純粋なコレクターだけとは思えません。
キャップシールを複製して詰め替えされると、少しでも液面の高さ、色合いをごますように見える写り具合のような、怪しいところがあれば購入しないという予防策を取る以外に手はないのです。

これまで海外から調達されてしまったオールドボトルのフェイクは、泣き寝入りするしかなかったケースが殆どであるように思います。現在は逆に、海外の愛好家がジャパニーズのフェイクを掴んでしまったという悲しい話もあります。
しかし現行品で国内となれば、明確なフェイクは責任の所在を辿ることはある程度まで可能であると思います。

今回のケースは、まさに氷山の一角。容疑者らが悪意を否定している状況(偽物と知ってたけど、騙す気はなかったって、弁明にならんがな。。。ってか何入ってたんだ)ですが、少なくとも逮捕者が出たことで、フェイクの出品に歯止めがかかってくれることを期待したいです。

ウイスキー写真作品展企画のためのクラウドファンディング ~Why do you like whisk(e)y?~

カテゴリ:
当ブログにウイスキー関連の写真を提供頂いているT.Ishiharaさんが、それらの写真を使った作品展を開催するためのクラウドファンディングを立ち上げました。
内々には今年の年始から動かれていた企画、いよいよ本格始動です。

9F42C52E-283C-4DDC-855A-921B9E616745

ウイスキー写真作品展企画のためのクラウドファンディング 
https://camp-fire.jp/projects/view/87198

Ishiharaさんはウイスキーに興味を持たれた後、ウイスキーだけで80以上(テキーラなどを合わせると100以上)の蒸留所を巡り、ただ飲むだけでなく、現地の空気や作り手の心を知ることに活動の重きを置いてきました。 
今回の作品展は、そうした活動の中でIshiharaさんがウイスキーに惚れこむ理由となった「同じウイスキーという名前でも、その土地や文化によって大きく異なる世界観」を伝えることをテーマとし、自分の作品を通じてもっとウイスキーを好きになってもらいたい、と言う想いが込められています。

そのため、作品展では単に蒸留所の写真を飾るだけでなく、ウイスキーを取り巻く環境や物語を紹介しつつ、そのウイスキーも同時に楽しめるように準備を進められています。
会場や日時は現在調整中で、23区内で12月中に開催。入場料は1000円程度を想定されているとのことで、ファンディングに参加していなくても来場することは可能。ウイスキーの方はオフィシャルのみならず、自身が所有するカスクサンプル、蒸留所限定のボトルなども提供できるように準備を進めているそうです。
流石に後者は物量に限りがあるので入場者全員分というワケには行かないでしょうけれど、まさに自身が感じたウイスキーの世界観を切り取って表現する"作品展"という企画になります。

インバーネス-エルギン間その1
グレンモーレンジ・ポットスチル
IMGP9205
1796702_336594883186384_8915159033234433296_n
(Ishiharaさんが撮影された写真の一部。ブログ記事用にまとめて提供頂いていますが、どれも雰囲気ありますね。しかし、猫かわいい、猫。)

Ishiharaさんとは今から約3年前にテイスティンググループを立ち上げたところからの繋がりで、以来何かとやり取りをすることが多くありました。
テイスティンググループでは蒸留所の写真や動画などを資料に、原酒の特徴、ハウススタイルを紹介されることも(下写真参照)。なんせウイスキープロフェッショナルの資格取得は勿論、新婚旅行は3回に分けてスコットランドを回っただけでなく、その後はバーボン、アイリッシュと各蒸留所を巡られていて、現地の知識は日本でも有数と言えます。
時には「訪問した蒸留所への愛」故に、喧々諤々とした議論になることもしばしば。。。それだけ真剣にウイスキーのことを見ている愛好家の一人だと感じています。

IMG_1969
IMG_1983
(以前開催されたフォアローゼズを中心にバーボンを勉強する会。メインは蒸留所の写真や動画を使ったバーボン講座と、現地調達いただいた蒸留所限定のレシピ違いシングルバレル・プライベートセレクション。)

なおクラウドファンディングの募集開始は昨日8/17ですが、なんと1日経たず目標金額を達成!作品展の開催はすでに決定しています。
この記事の更新予約をして経過を見ていたものの、とてつもない勢いに文末を慌てて書き換えている次第。。。Ishiharaさんの人望と、企画そのものへの期待の大きさが伺えます。
ただ本音を言えば目標額の20万円を飛び越えて、数倍規模でのサクセスを達成して欲しい企画だと思っていたので、ここからがスタートライン。どこまで規模が大きくなるか、12月の開催が今から楽しみです。
皆様、引き続き応援よろしくお願いします!

シングルカスクウイスキーをアイドル化するのは止めるべきという意見

カテゴリ:
FBタイムラインで、ウイスキー仲間がシェアしていた以下の記事。本件についてはこれまで自分も多かれ少なかれ考えていた内容でもあったので、ここで紹介すると共に自論をまとめたいと思います。 


STOP IDOLISING SINGLE CASK WHISKIES
Scotch Whisky .com(2018/7/10)

https://scotchwhisky.com/magazine/opinion-debate/the-way-i-see-it/19800/stop-idolising-single-cask-whiskies/

書かれている内容は、端的に言えば「シングルカスクウイスキーを過剰に評価してませんか?」という話。
シングルカスクウイスキーは樽や蒸留所などの情報は明確だし、原酒一つ一つを限りなくそのままの香味で楽しむことは出来るが、それらは決して味の良さや原酒の品質を保障するものではないということ。高品質なウイスキーの条件はシングルカスク縛りではなく、あくまで1つのジャンルであって、ブレンドウイスキーなどと平等に評価されるべきというのが記事を通しての著者の意見です。 

この記事については自分もほぼ同意見で、考察のポイント含めてよくまとめられた内容だと思います。確かにそういう傾向あるよねと。ただ、少々ワンサイド気味な主張にも感じてしまうのが、時系列と経験に伴う消費者サイドの趣向の変化を考慮していない点にあると思うのです。


自分もそうだったのですが、ウイスキーに興味を持つきっかけは個人個々としても、ある一時から
・飲む前から40%や43%の加水リリースのウイスキーを残念に感じる。(特にGMの蒸留所ラベルとか)
・ハイグレードのブレンデッドウイスキーは、なぜこの原酒を混ぜてしまったのかと感じる。
・同じ価格ならブレンドやシングルモルトよりもシングルカスクのほうを購入してしまう。 
などなど、ある種のシングルカスク・カスクストレングス至上主義的な感覚を持つ場合が多いのではないでしょうか。

前置きすると、あくまで自分の主観的な分析であって、全ての愛好家が必ずそうとは思いません。また仮にそうであっても、それを否定するものでもありません。
ただ、そうした趣向を持った上で様々なリリースを経験した結果、最終的にその道を貫く方も居れば、「加水には加水のよさがある」「ブレンドの面白さに気が付く」という趣向の変化を経験する人も居るという点が、シングルカスクの位置付けを考える意味で重要なポイントだと思います。


ブレンド全盛だった1980年代に比べ、近年のウイスキー市場は多様さを増し、バッテッド、シングルモルト、シングルカスクなど様々なリリースが増えて勢力図が変わりつつあります。
では、シングルカスクウイスキーを一つのジャンルとして捉えた場合、シングルカスクウイスキーは、混ざっていない単一の原酒であるが故に蒸留所や樽の個性を認識しやすく、ウイスキーを学ぶ上で重要な経験がわかりやすく得られることが強みであると考えます。

例えば、オーケストラやコーラスを普段聴かない人に、CDを聞かせてあの楽器が良かったとか、あの人の声が良かったとか、ある特定の要素を切り出して感想を求めても答えづらいのではないかと思います。これは不慣れ故に音の聞き分けが追いつかないためで、指揮者の役割についても同様です。

しかしソロパートについてならどうかというと、これなら明確に認識できます。
そして様々な楽器について学んだ上でオーケストラを聞くとどうか・・・。当然それぞれの音にピントが合いやすくなり、全体の中で指揮者の意図にも気が付きやすくなると期待出来ます。
この話をウイスキーにそのまま当てはめると、シングルカスクはまさに上記のソロであり、ウイスキーを学ぶ上では最初のステップに位置づけられると思うのです。
(実際、ブラインドテイスティングでも、シングルカスクを中心に飲んでる方は予想が的確な印象がありますね。)


なお、認識のし易さは逆にごまかしが効きづらく、荒さも目だってしまうというデメリットと言えるかもしれません。
総合的な完成度と言う点では、ブレンド、バッティング、加水と手を加えるほうが上がりやすくなるのも事実。 その為、シングルカスクリリースは必ずしも美味しさが保障されるものではないのですが、稀に単独で完成度の高い突き抜けたリリースもあります。
ブレンドとは異なる香味の広がり方は快活にして明瞭であり、そしてその存在を知ってしまうと、熟成の神秘という大きな謎に触れるが如く次の邂逅を求めて沼にハマってしまうわけです。
そういう突き抜け系のウイスキーを飲んだことがある身としては、シングルカスクをアイドル化してしまう心も非常によくわかります。

何だかとりとめなくなってしまいましたが、時代が変わった今、シングルカスクにはシングルカスクで活かすべき要素があり、シングルカスクもシングルモルトもブレンドも、全部飲んで今の市場を楽しむような飲み方を推奨したいのが自論であります。
また、そのためにはリリース側のみならず販売側も、そのボトルの個性をわかりやすくPRしてほしい。なんか結論はあまり変わってない気もしますが、シングルカスクを無条件で迎合する必要はないとしても、それがどんな特徴を持っているかを正しく発信出来る。製造元を含めた売り手側のスキルが求められているようにも思うのです。

若鶴酒造関連会社がリラックスとウイックを子会社化 洋酒部門強化へ

カテゴリ:
今朝のニュースで興味深い記事があったので、紹介させてもらいます。
北陸コカコーラボトリングの協力会社であるGRNが、洋酒等の並行輸入・販売における国内主要企業のリラックス、及びその子会社でウイスキー業界ではお馴染みのウイックら2社を子会社化したという話題です。

洋酒、ワイン、仕入れ拡大 GRN輸入卸売2社子会社化(6/5 北陸新聞)

ウイスキーを飲み始めたばかりの方々には馴染みがないかもしれませんが、ある程度飲んでいる方や業界の方なら必ず一度は手にとっているであろうウイック社卸売のボトル。
今回ピックアップしたいポイントは、今後同社の販売の拠点が北陸に移る可能性・・・というより、GRN社が三郎丸蒸留所を操業し、ウイスキー製造を手掛ける若鶴酒造の親会社でもあること。そして今回の子会社化を経た後のグループ全体としての規模にあります。
各社の正式な役割分担等は株式取得前でまだ不明ながら、調達・販売の機能と選択肢が強化され、大きな動きに繋がることは間違いありません。

近年、日本全国で産声を上げるクラフトディスティラリーにとって、ウイスキーづくりの技術向上は勿論重要ですが、製品の販路に加え、樽や各種物資、ブレンド用原酒などの調達先の確保も同じくらい重要です。
GRN社のニュースは、若鶴酒造がそれを商社経由だけでなく関連会社も含めて行える事になり、ルートが今まで以上に広がるという事が一つ。加えて、その企業の特色として例えばリラックスは各種ワインの輸入にも実績があるわけですが、グループのバックホーンで並行品ではなく正規代理店契約も結べる状況となると、ウイスキーの熟成に使えるシェリーやワイン樽などの調達ルートの開拓にも繋がり、ウイスキーづくりの選択肢が広がることも期待出来ます。

さらにGRN社側に目を向けると、グループとして元々持っていた機能を合わせれば、酒類全般の輸出入・製造・提供を可能とする一大勢力が誕生する可能性も。。。今回の記事は若鶴酒造視点メインで書きましたが、興味がある方はGRNについても調べて見てください。


"ジャパニーズウイスキーブーム"と言っても、一般市場で消費される大半は大手製品。特に居酒屋で飲まれるような、角、トリス、ブラックニッカなどが中心であり、残された市場をクラフト勢が取り合う状況に変わりはありません。
その為、クラフト勢は地元の市場に基盤を作りつつ、ローカルアイドルがメジャーデビューしていくようにじわじわ支持を広げていく必要があるわけですが、主要な市場、酒販店や飲食店への販路が確立しているということは、大きなアドバンテージとなります。

今回のニュース地方紙5面のローカルな記事ですが、酒販関係者を中心に業界としては何気に大きな話じゃないかと、  朝からテンションが上がってしまいました
記事全体を通してふわふわした書き振りになっているのは、未定な部分があるのもそうですが、純粋に規模感が大きすぎて書ききれないのです。
自分としては今後、北陸からウイスキー業界に新しい流れが出来てくることを、いち愛好家として楽しみにしています。(コアユーザー向けはモルトヤマもありますし、ウィック社製品の扱いが増えるかな?)


さて、その三郎丸蒸留所ですが、2年目の仕込みに向けて、マッシュタンとその関連設備を新調する工事が行われました。
昨年のリニューアルと合わせ、これでぐっと製造環境が近代化しましたね。過去の密造時代一歩手前のような設備を知っている自分としては、中々感慨深いものもあります。


若鶴酒造では次週11日から試験的な仕込みを行い、準備を整えていくそうです。
まだ具体的なリリースがないため、同社の原酒は市場的に未知数なところはあるものの、昨年仕込みのニューメイクを飲んだ限り、ヘビーでピーティーで、どのジャパニーズとも異なる面白い原酒が生まれています。
ここに生産設備が新調され、発酵過程が安定すれば、さらに洗練された原酒を作ることができるという期待もあります。

ウイスキーの仕込みは夏場のみである同社ですが、通常の見学対応は勿論、レセプションホールである大正蔵で、映画「ウイスキーと2人の花嫁」の上映会を行なったり、5月には同社敷地内でバッカス富山も開催されるなど、活動は広く行なっています。
また、ウイスキーのリリースとしては先日レビューした蒸留所限定のブレンダーズトライアルをはじめ、ムーングロウのセカンドリリースLimited Edition 2018がリリースされたばかり。
関東にいるとどうしても情報が届きにくいのですが、活動実態はなかなかどうして精力的なのです。


2018年は若鶴酒造にとって、創業100周年となる大きな節目の年でもあります。
その年に今後に向けた動きの一つが、今回のニュース。
思い返せばプロジェクトリーダーの稲垣さんの熱意に共感し、蒸留所改修のためのクラウドファンディングを紹介をさせて頂いた時から2年目少々、気がつけばどんどん大きな動きになっていく北陸のウイスキームーブメント。
今後どのような形を成していくのか、その動きに引き続き注目していきたいです。

※当記事の写真は撮影者の許可を得て使用しています。

このページのトップヘ

見出し画像
×