カテゴリ

カテゴリ:BAR訪問

【BAR訪問記】Sandrie (サンドリエ) 東京・立川

カテゴリ:
古きを学びて新しきを得る、温故知新という言葉があります。
ブラウンスピリッツやリキュールの場合は、古いものを軽々に時代遅れなどと言い切れず、ましてカクテルは昔のレシピが継承されながらも、ベースのお酒は年々香味が変わっている状況。
紡がれた先にある今を変えるには、オールドジャンルもまた知っておかねばならないのは道理と言えます。

今回紹介するBAR、東京・立川のサンドリエは、基本はしっかりと抑えつつ、時にオールドボトルや海外で流通する未知のお酒を、レシピを調整しながら取り込む。温故知新をグラスに詰めたようなカクテルと、レアウイスキーの数々を手頃な価格から提供しているBARの一つ。ドリンカーの皆様に是非オススメしたいオーセンティックバーです。

BAR Sandrie 
時間:19:00~29:00
定休日:火曜日
住所:東京都立川柴崎町3-4-4 すいれんビル2F (立川駅南口徒歩3分)

サンドリエのマスターにしてオーナーである大野さんとは、カウンター越しではなく持ち寄り会で知り合いました。
丁寧な人柄に加え、その際作って頂いたカクテルのアプローチに得心がいったと言うか、端的に言えば自分の好みにマッチした事もあり。
最近は仕事の都合でちょっとだけ寄り道しやすくなったので、時間が取れる時に寄らせてもらっています。

(先日の1杯目は完全におまかせ。出て来たのは和三盆と90年代流通のゴードンジンを使ったジンフィズ。チャームは燻製3種盛り。レモンは搾りたてを果肉が残る形で散らし、爽やかで軽快な飲み口と飽きの来ない上品な甘み。絶妙なバランスで何杯でも飲んでいられそう。。。)

(同じくジンベースで、ホワイトレディ。
組み合わせは先のゴードンジンに、1980年代流通のコアントロー。クリアな口当たりから、口内で温度が上がるにつれて骨格のしっかりした風味が広がる。) 

ジンベースのカクテルは、マスターの得意なジャンルとのこと。
しかしジンフィズはシェイクからのステアという手順に加え、砂糖、レモン、ソーダの量の調整もその都度グラス毎に必要で、手間だけでなく味を安定させる技術も必要。"バーマンの技量を試すカクテル"なんて挑戦的な二つ名も知られています。
それを狙って頼むようなモンじゃないと思いますが。手間のかかるカクテルをしれっと出してくれて、しかも 文句なく美味いのですから、これ以上ないサービスですよね。

一方で、オールドリキュールは現行品に比べ香味が強く、ボディもしっかりしてるものが多い傾向があります。
ホワイトレディだと、コアントローとジン、どちらもそのタイプに該当。ジントニックのような割るタイプはまだ調整しやすい印象はありますが、強いもの同士を掛け合わせることが多いショートカクテルだと、レシピの構成にセンスと経験が問われると感じます。

(現行ボンベイのジントニック。。。しかしただのジントニックではなく、バーマンとボンベイが共同開発した、トニックエッセンスを使用したもので、割る側の工夫がされている1杯。すっきりとした柑橘感のあるボンベイジンに、マッチする各種フレーバーを自由に調整出来る。この1杯も実にうまい。)

冒頭でも触れたように、今も伝わるオーソドックスなカクテルレシピは、リキュールの香味やボディが今より遥かに強い時代に生まれ、当時のメーカーやバーマンの創意工夫で形になってきました。
時代とともにお酒の味が変わる中で、レシピだけが残るものもあれば、それをベースに調整が行われてきたのもあると言えます。
つまり今カクテルブックに載っているレシピが最適かはわからないのです。

「カクテルは今までの経験や気づきを思い出しながら、時に定石に囚われずに美味しさを追求したい。」というのは、話の中で出て来たマスターの言。
定石に囚われないというのは、例えば目新しさで何かをするのではなく、美味しいものを飲みたいというお客の本質を満たすにはどうしたら良いかを考えた結果、時にオールド、時に現行、様々な選択肢の中から最適なレシピを導いて提供すること。
突き詰めると、カクテルしかりウイスキーしかりは、飲む側の好みに合うかなんですよね。
どのBARにもある思想のようで、それをしっかりとした基礎の上で抵抗なくやっているのが、サンドリエの魅力と思うのです。


さて、カクテルパートが長くなってしまいましたが、ここはウイスキーブログですし最後はウイスキーを紹介して結びとしましょう(笑)。

サンドリエのバックバーには懐かしのGMコニッサーズチョイスや、ダッシーなどマスターが収集したレアなボトルが多数。ゆるいところからスタートして。。。と行くのが定石ですが、この日はすでにカクテルを飲んでいたので、いきなりマネージャーズドラムのリンクウッドから。
マネドラらしくハイプルーフで強い酒質と淡い樽香、香ばしくスモーキーな味わいで、12年と若いながらリンクウッドのキャラクターを充分に楽しめるボトルです。
(先日レビュー記事も公開した、グレンファークラス角瓶の21年、25年を飲み比べ。古き良き濃厚かつフルーティーなシェリー感。ファークラスマジックを感じる世代。)

IMG_8717
(今年の7月から提供されている、サンドリエも名を連ねる3店舗連名のオリジナルボトル。クーリー10年。パワフルでややドライだが、オーク由来の華やかさもありハイボールが美味しい。)
写真のように、ラインナップはスコッチ系が中心ですが、バーボンやブランデーも多少あり、スコッチウイスキーを軸に「それならこう言うタイプも」と繋げていけるような、要点を押さえている印象。
一人でも複数名でも落ち着いて飲めるカウンターとサービスは、ウイスキードリンカーなら失望することはないと思います。

サンドリエは今年の12月で5周年を迎えます。東京都心部が活動の中心である自分としては、都内駅前数分のところにあるBARで、よくもまあこれだけのボトルが適正価格と言えるレベルで残ってるものだと素直に驚くとともにカクテルについても前述の通り文句なし。引き続き通うであろうBARが、また一つ増えてしまいました。
大野さん、これからもお世話になります!


【BAR訪問記】お酒の美術館 神田店 「オールドボトルを堪能出来るバー」

カテゴリ:
本日、11月1日15時にグランドオープンする、お酒の美術館 神田店。
元々は関西方面のアウトレット系の企業(のぶちゃんマン)が、自社で購入した中古のお酒をそのまま販売する以外に、1ショット1コインを基本とした価格設定で、気軽に洋酒文化を楽しんでもらおうとしてはじめた事業。
これまでは京都に出店されていましたが、その5号店が東京神田に進出しました。

IMG_8960

お酒の美術館 神田店
住所:〒101-0035 東京都千代田区神田紺屋町46番地
営業時間:15時00分〜24時00分
TEL:03-3527-1746

お酒の美術館チェーン店は、先に書いたような経緯から、リユースのオールドボトルを中心に扱われています。
店内にあるボトルの半数以上は、1970〜1980年代の洋酒ブームかつ、バブル期に流通した遺産。極東の島国にはどんだけのボトルが眠ってるんだという話はさておき、こうしたボトルが発掘されて陽の目を見るのは良いことだと思います。
オールドジャンルも探求の場としている自分としては、東京進出して欲しかった店舗がついにきた、飲食業界では今年一番の嬉しいニュースです。  

開店当日に伺うつもりでしたが、グランドオープン前に10月29日からプレオープンしていますという情報。これは行かねばと、早速仕事帰りに寄り道してきました。



(日替わりのオススメボトル。この日はアルマニャックと、ハイボーラーとして定評のあるスコッツグレイ12年1980年代流通。ストレートで飲んでもハイボールで飲んでも価格は500円で変わらない。勿論ハイボールで。 )

お酒の美術館は店舗によって形態が異なっており、神田店はノンチャージで、立ち飲みというスタイル。店内の内装は写真からもわかるように、簡素で最低限、アンティーク系の要素はほぼ皆無です。
PUBの立ち飲み。あるいは酒屋の角打ちが、酒類豊富に拡張されたようなイメージといいますか。メジャーなところで例えるなら、リカー●フなどの中古酒販店の店頭で、そのまま飲んでいるような感覚です。 

注文はメニューから示しても良いですが、書かれていないボトルは多数あり、ボトルを探して直接手にとって注文するのもOK。特級時代のウイスキーでもその殆どは1ショット500円均一という、破格かつチャレンジングな設定ですから、色々試したくなるのが愛好家の心情。。。
一方プレオープン中にこられたお客さんの中には、特級時代の角瓶の水割りを1コインで楽しまれて帰路に着く、そんな方も結構いらっしゃったとか。なんだか粋ですよね。


IMG_8951
IMG_8953
メニューの一部。ウイスキー以外に簡単なフードや、ビール、カクテルも1コインで楽しめる。個人的にはハイボールとタコスチップスの組み合わせがオススメ。

1shotは30mlではなく、40ml程度で提供される。古酒は飲み口が柔らかいので、酔い過ぎには注意(笑)。
当日開封したサンディーマック1980年代流通品は、キャップ臭もなく状態バッチリ。

プレミアムグレードから、ジョニーウォーカーブルーラベル1990年代流通(こちらは1shot 1200円)。※プレミアムはハーフ可。
経年から若干コルク臭を感じたが、華やかな熟成香とモルティーな味わいは健在。現行品の島系要素の強いタイプとは異なる内陸主体の熟成した味わい。

ブレンデッド以外に、モルトも懐かしいものから素性が謎なものまで。グレンリベット12年は、80年代後半の特級表記付きピュアシングルモルト表記。蜜の入った林檎のフルーティーさと麦感をしっかり感じる、爽やかかつコクのある味わい。グレンブレア12年は島系モルトのピーティーさが主体、無銘ながら味は保証。

基本500円均一である強みとも言える、ウイスキーカクテルのベースを自由に選べるシステム。例えばミントジュレップを注文する際は、自由にバーボンを指定できるのが魅力。45%時代のジャックやメンチ切りターキーなどもチョイス出来る。

樽出しのオリジナルブレンデッドウイスキー。意外にさっぱりとした味わい、先斗町の方がややコクが強いか。ハイボールに合いそう。

ワインもちょっと良いものが複数あり、こちらも1杯500円から。店長はむしろワイン派で、お任せで色々飲めるのも楽しい。

IMG_9040
洋酒以外には、かつてのブームの残滓とも言うレア焼酎も。魔王、百年の孤独、森伊蔵、全て1杯700円。今後は日本酒も入る予定であるとか・・・。


さて、これらのボトルの出元の大半がリユースと聞くと、素性は大丈夫かという気持ちがあるかもしれません。
ですが、蒸留酒はワインなどの醸造酒と異なり10年単位での保管も問題なく。
ウイスキーBARであっても、過去に購入してストックされていたボトル以外、オークションやリユースショップで買い付けるケースは増えていて、この店だけが特別というわけではないと思います。

むしろ、そうしたオールドボトルを扱う場合、重要なのは「状態の判別」にあります。
普段オークション等でボトルを調達されている方は、地雷を掴んで悲しい想いをしたことも少なくないはず・・・。注文されてから開封する場合は特に、開けてダメでしたというのも勿論あり得ます。
実際、この日新規開栓したボトルが1本死んでおりましたが、そこはオールドボトルを数多く扱う販売店にして、餅は餅屋です。

事前に怪しいボトルの除外は勿論、そうしたボトルに当たった場合、会計には計上するつもりはないとのこと。
店頭にあるボトルは未開封でも注文があれば全て開封されますし、自分のようなオールドラヴァーからすれば気になっていたボトルを気軽に試せるのが何よりのプラスと言えます。


もう一点補足をすると、お酒の美術館 神田店は、オーセンティックBARのように落ち着いた雰囲気の中で、バーマンの洗練された技、ゆったりと流れる時間を楽しむという空間ではありませんので、そうしたニーズには合わないBARと言えます。(京都に出店されている店舗は、オーセンティックに近い雰囲気の内装です。)

ただ、上述のとおりボトルの種類は日本流通のオールドボトルを中心に豊富で、手軽な価格で様々な飲み方が出来るのは魅力。逆に肩肘張らずにワイワイとウイスキー談義や、次に購入するボトルの検討、あるいは仕事帰りに1〜2杯心のガス抜きをしてサッと帰る。そんな止まり木のような感覚で楽しめるお店かなと感じました。

最後になりましたが、この度の新店舗開店、おめでとうございます。是非今後も利用していきたいと思います。

BAR LIVET発祥 ウィスクテイル(Whisktail)で新しいスタイルのカクテルを楽しむ

カテゴリ:
いつもお世話になっている新宿3丁目のウイスキーバー、BAR LIVET。
あれは確か1年前の8月。マスターである静谷さんから是非飲んでみて欲しいと勧められたのが、「ウィスクテイル(Whisktail)」として試作中のウイスキーカクテルでした。

その直前、静谷さんは京都まで研修に出ており、何か思うところというかインスピレーションを得るものがあった模様。
「ウイスキーをもっと広めるために、ウイスキーベースのカクテルレシピを100種類開発しようと思うんです。」
僕は覚悟を決めましたと、真剣そのものの静谷さん。
100種類ってマジか、なんて思っているうちに出てきたカクテルは、タリスカーストームを使ったフローズンカクテル。
ほのかにスモーキーで柑橘系のニュアンスを伴う爽やかな味わいですが、「バランスは良いけど、らしさというかイメージ的にはストームよりスカイですよね。」なんて偉そうにもダメだししてしまったのを覚えています。 

IMG_5009
IMG_5006

ですが試みは面白く、そのグラスは可能性に満ちていると感じました。
ウイスキーというのは基本的に度数が高く飲みにくいものです。 いくらウイスキー業界的には飲みやすいと言われるブレンデッドや長期熟成のウイスキーでも、慣れない人にはどうしても抵抗感があり、数字だけで敬遠されるケースもあります。
市場では、ソーダやコーラ、ジンジャーエールなどで割って度数を落として飲むという方法が、今まさにブームの一つを作り出したわけですが・・・それはウイスキー全般が受け入れられた訳ではないとも言えます。

ウイスキー本来の魅力は、その豊かな香味と個性にあります。
真の意味でウイスキーが普及していくためには、ハイボールとウイスキー単体の間にもうワンステップあってもいい。静谷さんはBARならではのツールとしてカクテルを用いてイメージを払拭し、ベースとなるウイスキーが持つ香味や個性を判りやすく、あるいは親しみやすくすることでウイスキーそのものにも関心を持って貰えるのではないかと考えたのだそうです。
また、これはバーマンがウイスキーに対して持っているイメージの発展系として味が作られる訳ですから、既にウイスキー好きを自認する方々にとっても、「成る程こういう理解なのか」と、新しい楽しみ方になるのではないかと感じました。

そしてあれから1年。。。試作を重ねて静谷さんは本当に100種類のウィスクテイルを開発。次いでBar Private pod 、エソラデザイニングとの業務提携により、それぞれが得意分野を活かす形でWhisktail.tokyoを立ち上げ、レシピの順次公開にも着手。当時考えていた自らの理想に向けてまい進しています。 



今回、上記動画として公開されたのがWhisktail.tokyo第一弾、グレンリベット12年をベースとしたレシピ「GREEN QUIET」。早速BAR LIVETで飲んできました。 

グレンリベット12年に感じられる個性といえば、林檎を思わせる品の良いフルーティーさ、バーボンオーク由来のオークフレーバーとほのかに乾いた植物のようなニュアンス。。。あたりが上げられるわけですが、このレシピはカクテルとしてベースのそれらの香味を強調したような、クリーミーな林檎系のフルーティーさがしっかりと感じられる。作り上げようとした味わいが、メッセージが明確に伝わってきます。


自分はこの1年でウィスクテイルをだいたい10レシピ弱くらいしか試せてないのですが、GREEN QUITEのように穏やかで飲みやすいレシピもあれば、バーボンベースの王道的なものや、中には下の写真のようにスモークチップで燻香を上乗せし、スパイスなどで共通する香味を増した実に個性的なレシピも有ります。
これは。。。中々衝撃的な味わいでした(笑)。
これら全てのレシピは今後専門サイトを開設して公開されていくとのことで、それこそ全国展開、あるいはさらなるアレンジが加わることも。今後どのような広がりを見せてくれるのか楽しみです。

さて、このウィスクテイルですが、先日は新宿ビックロでのイベントで提供されるなど、メーカーからも注目されて徐々に認知度が上がってきているところ。今週末7月28日(土)には、京都で開催されるリカマン主催のウイビアメッセ in Kyoto 2018においても、Whisktail.tokyoとしてブース出展があります。 
京都研修でインスピレーションを得た活動の凱旋、と言うのは過剰でしょうか。
当日は、上記動画にもあるGREEN QUITEに加え、計3種類のウィスクテイルが提供されるそうです。

リカマン ウイビアメッセ in Kyoto 2018

Whisktail.tokyo ブース紹介

Whisktail.tokyoに関する公式発表

ちなみに、イベントには自分も一般枠で参加する予定です。
普段中々遠方のイベントには参加できないのですが、前日夜にたまたま福井の友人宅に居るので「あれ?いけるんじゃね?これ」と、急遽参加決定(笑)。
当日はブースの様子と、バーマンとしての活躍をしっかり見てこようと思います!

【BAR訪問記】BAR Onsight(オンサイト) @三鷹

カテゴリ:
三鷹駅南口から徒歩5分少々。ちょっと場末感漂う夜の通りの一区画。今回訪問したお店は初めてなのですが、厳密に言えば初めてではないお店だったりします。

というのも、この場所では以前別なBARが営業していました。その店主とは結構長い付き合いだったのですが、気がつけば閉店していてお店が変わっていたという話。
内装はそのまま、ストックも一部そのままお店を売られたようで、所々に前任者の名残りを感じますが、経営者が変わればお店の空気も変わるもの。すでに別なお店として再出発していて、以前とは違うスタイルとなっています。


Bar Onsightは2017年9月にオープンした、ラムとウイスキーを中心としたオーセンティックBARです。
個人的にラムとウイスキーと言えば京都のラム&ウイスキーですが、このオンサイトも中々の品揃え。手広く揃うラム、ウイスキーは現行品よりも、少し前からオールドが中心で、これは懐かしいと思うボトルもチラホラと見かけます。

ウイスキー業界から見ると、最近コニャックと合わせてラムが新しい選択肢と認識され始めており、丁度勉強したいと思っていたジャンルでした。
マスターである赤井さんは、吉祥寺のラムバー等で修行をされた後に独立。一見すると落ち着いた紳士的なバーマンですが、その内側にはお酒の知識と情熱、そしてちょっとした遊び心も感じられ、自分のようにウイスキー一本槍な飲み手や、あるいはここを止まり木とする方々に合わせて引き出しをひらいて世界を広げてくれるような、そんな印象を受けます。


この日は少し肌寒い夜だったので、まずはラムベースのホットカクテルの一つ、グロッグからスタート。甘口のラムにシナモンの香り、ほのかにレモンの酸味。ホッとする染みるような味わいです。


ホットカクテルで人心地ついたところで、自分が好みのウイスキーや蒸留酒の傾向を伝えてオススメいただいたのが、ペールラバ ミレジム1989。
ペールラバは、そのままの意味で"古典的な製法"が採用されていることで有名。特にブラン(ホワイトラム)の方は、雨水で加水し木の棒で攪拌、時に手を突っ込んでかき混ぜてペロっと味見しちゃうという、自家消費用とも見まごう製法が逆に話題になっていたラムです。
ただその古き良き?ペールラバは、2008年にフランスの投資家に買収され、2010年からは新しい設備で生産されているとのこと。今回は貴重な1989年蒸留の熟成ペールラバと共に、1990年代流通のホワイトラム、"手作り時代ペールラバ"で飲み比べをさせて頂きました。

1989の方はリムーザンオーク樽由来のコニャック的な華やかさ、フルーティーさが濃厚で、そこにラムらしいブラウンシュガーのような甘み。これは美味しいですね、ウイスキー好きとの親和性はかなりあると感じます。
一方ホワイトラムは少し青みがかった要素はあるものの、度数ほどのアタックはなく、コクのある穀物系の甘さと淡い植物感、品のいい甘み。素性からウイスキーのニューメイク、あるいは島焼酎みたいに荒々しいものをイメージしていたので、拍子抜けしてしまったほどです。
そしてこの2つのラムを繋ぐ熟成という時間の線。ラムの熟成の変化も学べる面白い飲み比べでした。


「ラムほど多彩なお酒はないと思っているんです」というのはマスターの談。そんなマスターから"今までで一番衝撃を受けたラム"として勧めて頂いたのが、イタリアのボトラーズがボトリングした、ドメーヌ ド クルセル1972-2006。

いやこれは確かに衝撃です。梅酒、あるいは杏酒のような甘酸っぱいラムらしからぬ香味に加え、バニラクリーム、カシューナッツ、時間と共にウッディさ、華やかなオーク香、刻々と変化する香味。さらにグラスの残り香の持続力がすさまじく、この後複数飲んで店を出るまででも空いたグラスから香りがへたらず続いているほど。なんか香料添加してないかっていうくらいなのです。(笑)
なお、同蒸留所では同じビンテージのオフィシャルボトルもリリースされていますが、こちらの香味はコニャック的なタイプ。
アグリコールラムのタイプ一つにしても、ホワイトラムから、リムーザンオークやフレンチオークで熟成のさせた樽香豊かなもの、そしてこのように突き抜けた香味のものまである。確かにこれは探りがいがあるだけでなく、心酔させられるジャンルです。
自分も特にこのドメーヌ ド クルセルは1本抱えて飲みたいと、その場で探してしまいました。


さて、せっかくウイスキーも揃っているBARに来ているのに、何も飲まずに帰るのはウイスキー側の飲み手としてどうかと思うので、マスターの好きなジャンルであるバーボンから、オススメの1本、ファイティングコック8年1990年代流通を注文。


現行品のファイティングコックは樽由来の苦味やベタつきが強く、パンチのある味わいながらコクが足りない。。。しかしこの1990年代流通はオーソドックスなバーボンとして旨いと感じる甘み、コク、樽香が揃っており、飲みごたえもバッチリ。
「やはりこの時代のバーボンはスタンダードでもいいですね。」
「なんでこうも違うんでしょうね。」
「酵母って話もありますし、あるいは樽の処理も・・・」
ラムについて教えを乞う時間はひとまず終わり、ここから先はホームグラウンドに戻ってウイスキーの情報交換の時間なのです。

自分のメインはやはりウイスキー。しかしウイスキーは樽で様々な酒類の恩恵を受けることから、ウイスキーをさらに深く知るためにも関連する酒類の知識や経験はあったほうがいい。っていうか何よりたまには違う世界に触れたほうが、新しい発見があったりするんです。
昨年から意識してウイスキー以外の酒類も飲んで、勉強することにしているので、これは良いBARに出会うことができました。

旧店舗の紹介記事は書くことなく終わってしまったわけですが、終わりがあれば始まりがあり、新しい出会いもある。
地元に出来た自分にとって異文化に触れられるBAR。引き続き勉強させてもらおうと思います。

BAR Onsight
営業時間:18時00〜26時00
定休日:日曜日
TEL:0422-26-7746
東京都三鷹市下連雀3-22-19 エトワールB1F

【BAR訪問記】萌木の村 BAR Perch(パーチ) @山梨県 清里

カテゴリ:
山梨県北杜市清里にあるリゾート施設「萌木の村」。この施設内にあるホテル・ハットウォールデンのバーラウンジとして整備されているのが、今回訪問したパーチです。

このBARはウイスキー愛好家の中でも隠れ家的な環境として知られ、業界内の著名な方々はもとより、自分のウイスキー仲間の何人かも都内から足繁く通っているところ。
都心部から各種交通機関で約3時間、今の時期だと新緑の山々と鮮やかに咲く桃の花を見ながらの行程で、それはそれで優雅なものではありますが・・・おそらくこのブログを見ている方の過半数以上は、電車を一駅二駅乗ってふらっと行くようなBARではないと思います。

しかしだからこそでしょうか。この場所には、リゾート特有とも言えるゆったりとした空気と、都心部のBARにはない居心地の良さ、それを作り出すスタッフのホスピタリティ。そしてオリジナルボトルを含む素晴らしいお酒の数々があり、一度訪問すればファンになってしまうだけの環境が整っているのです。

まずはホテルにチェックインし、BARオープンまで隣接するレストランROCKで簡単に食事・・・のつもりが美味しくて結構がっつり。萌木の村で醸造しているビールと地元産のグリルソーセージ等を味わい、満たされた気持ちでBARに向かうと、"村長"である舩木上次さんが仕事終わりに立ち寄ってくださいました。

「やっと来ることが出来ました、お待たせしてしまい申し訳ございません。」
「良いんだよ、それより今日はお酒のことをいっぱい勉強させてもらうよ。」

舩木さんとは2年ほど前から交流がありたが 萌木の村には訪問機会を作ることが出来ずにいました。 
そんな中、舩木さんと二人三脚でこのBARパーチを育てて来た、バーマンの久保田さんが退職され、新天地でさらなる修行に励まれるという報せ。私もまたそろそろ公私とも忙しくなる時期で、これは行くなら今しかない、無理してでも行くしかない!と妻にも頼み込んで都合をつけ、やっと訪問することが出来た訳です。

この日は偶然団体のお客様が入られていて、BARラウンジには開店早々から美酒に酔う愛好家の歓喜と、静かな熱気が漂っていました。

自分はウイスキーやワインが眠るセラーを案内して貰った後で、ラウンジへとチェックイン。
パーチはラウンジという位置付けから、写真の通り広い空間があり。そこは煉瓦造りの暖炉に加え、舩木さんが集められたアンティークのオルゴールも特色の一つ。
普通ならBARに行ったらカウンター席一択なのですが、今回は窓際のテーブル席に着席。窓の外は名残雪、暖炉の火を眺めながら、時折聞こえて来るオルゴールの高く優しい音色の中で、運ばれて来るお酒を楽しむ。そんな贅沢なひと時を堪能しました。

この記事ではそのうちの一部を紹介させて頂きますが、後日メモが残る限り個別のレビューもまとめていきます。

パーチのバックバーは、地元清里ゆかりとも言える白州に加え、その近隣のウイスキーである駒ヶ岳、軽井沢、イチローズモルト・・・ほか各種ジャパニーズウイスキーのラインナップが豊富。
もちろんスコッチウイスキーやバーボンも、都心部ではすっかり見られなくなってしまったような銘柄まで多数あり、文字通り愛好家垂涎、1杯目の注文から目移りしてしまいます。

オープニングドリンクは、そんなジャパニーズウイスキーから軽井沢1960年蒸留 21年43% "岩田久利 吹き硝子ボトル"。
天に昇っていくかのような、幻想的な美しさを備えたボトル。。。っていうか、今の時代にこれが開いてるBARは初めて見ましたよ。
驚く自分の隣で、「酒は開けて飲まないと!」と笑う舩木さん。
経年と加水で柔らかい飲み口から、ナッツを思わせる軽い麦感に、軽井沢らしからぬ上品なシェリー感。少し抜けたような印象はありますが、オープニングにはちょうど良いくらいです。

次は1960繋がりのスコッチモルト、GMのグレングラント1960-2001へ。これは純粋に美味い。古き良きGMらしくふくよかで、少し土っぽさを伴う豊かなシェリー感がたまりません。
そしてこれぞ地元、NAから25年までバックバーに一通り揃う白州ラインナップからは、久々に旧ボトルの12年を。もちろん、響や山崎も揃っているのですが、シェリーシェリーときたところで方向転換。今の白州12年より香味に存在感があり、厚みのあるウッディネスとスモーキーさがじんわりと広がっていきます。

macphails40&50
間髪入れずにオススメされるまま、なつかしのマクファイル40年&50年。ああ、もう順番はめちゃくちゃ。。。だがそれがいい(笑)。
中身はマッカランとしてウワサされているマクファイルズシリーズ。この長期熟成を普通にリリースしていたのですから、GMの規模と歴史がどれほどのものかが伝わってくるというもの。40年のほうがシェリーが効いており、スウィートでリッチな味わい。50年はリフィル系の華やかでドライなオークフレーバーが中心。

などなど、この他にも秘蔵のボトルも含めウイスキーを楽しんだところで、久保田さんにパーチの看板メニューとも言える"季節のフルーツを使ったカクテル"を作ってもらいました。
完全お任せ、雑な注文でしたが「そこそこ飲まれてますので、ここはクールダウンのために・・・」と作られたのが、ジンと柚子とトロピカルフルーツジュースのカクテル。

これがメチャ美味い。自分のコンディションに合っていたというのもあると思いますが、ジンと柚子の柑橘系の爽やかさが一体となり、ともすればクドくなりがちな双方の柑橘感、強いアタックはトロピカル系の果実味で丸みを帯びて穏やかに。
爽やかでありながら、満足感もある素晴らしい仕事の1杯でした。


この日は、舩木さんの友人であり、清里在住のNさんも来られていて、お二人から色々とこれまでの話しを伺うことができました。
曰く、パーチはかつてこのように整った環境ではなく、特段こだわりのないスペースだったそうです。それこそ、ウイスキーも数種類しか無かったという。。。
自分もこれまでの旅行先で立ち寄ったホテルのバーラウンジは、広く浅くを満たすが多く、特に地方の観光地のそれに突き抜けて凄いものは少ないという印象を持っていました。(先日宿泊した箱根の某ホテルラウンジは、カタログで売りの一つにしているのに荷物置き場になっていたほどで・・・。)

そこにバーマンとなる久保田さんが入社、当時ウイスキーに興味が無かったという舩木さんは、ラウンジを拡充する中で徐々にウイスキーの沼へ。。。この時、一人の常連客の後押しが二人に大きな影響を与えたとも聞きます。
ここからは清里の父・ポールラッシュ氏の言葉にある「最善を尽くせ、そして一流であれ」の精神の元、久保田さんは技術を磨き、舩木さんはウイスキーを集め、バーラウンジの環境を整えるだけでなく多くの人との繋がりをこの地に呼び込んでいきました。
そしてそれは、清里ウイスキーフェスティバルの開催をはじめ様々に結実。清里フィールドバレエやポールラッシュ生誕120周年記念ウイスキーといった、単なる記念品ではないウイスキーを産み出す事にも繋がっていくのです。
これが僅か10年に満たないうちの出来事だとすれば、信じる人は少ないのではないでしょうか。今後、この萌木の村、並びにBARパーチからどのような物語が生まれていくのか、楽しみでなりません。

(萌木の村発の記念ウイスキー達。一部はBARパーチでなければ飲むことが出来ないものも。各ボトルのレビューはこちら。)

こうしてオープンからクローズまで、すっかり長居をさせて頂き、ラウンジから徒歩1分未満の寝室でベットイン。翌朝には地元食材を使った美味しい朝食が待っている。
ああ、これは素晴らしい贅沢ですよ(笑)。
清里はこれからが新緑芽吹く春の訪れ、そして妖精の舞う夏へと続く、観光地としてのメインシーズンを迎えます。
次はいつ来れるかな、出来ればシーズン中にもう一度来たい、なんて考えながら満たされた気持ちで東京へと戻りました。
萌木の村の皆様、お世話になりました!

ホテル ハット・ウォールデン
バーラウンジ パーチ 
営業時間:20:00〜02:00
定休日:月曜日
住所:〒407-0301 山梨県北杜市高根町清里3545 

このページのトップヘ

見出し画像
×