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ニッカウイスキー 竹鶴 ピュアモルト 2020年リニューアル 43%

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NIKKA WHISKY 
TAKETSURU 
PURE MALT
Release to 2020 
700ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1~2週間程度
評価:★★★★★(5-6)

香り:軽やかな華やかさを伴う、乾いたモルティーさ。シトラス、ドライオレンジピールの柑橘香の爽やかな酸と、微かに乳酸、ラムネようなニュアンス。奥には湿った土のようなピート香。また、時間経過で生焼けホットケーキのような麦芽香も混じる。

味:厚みのあるしっかりした口当たり。若干のバニラ系の甘い含み香から、主体となるのはモルティーで香ばしい風味。香り同様の酸味が若さを連想させ、若い原酒故の粗さも一部ある。微かにオークの華やかさ、焦げたようなほろ苦いピートフレーバーが余韻にかけて広がる。

最近のニッカらしい味。若い余市を連想させる構成だが、ネガティブな要素はブレンドで上手く抑えており、酒質由来の酸味と膨らみのあるモルティーな風味を楽しめるのがポイント。
加水すると奥にある宮城峡の原酒由来と思われるフルーティーさ、オークフレーバーが顔を出す。ハイボールにしても風味が崩れず、使われている原酒それぞれの良さを引き出しているような、確かなブレンド技術を感じさせるウイスキーである。

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2週間更新していなかったので、このボトルのUPもだいぶ遅れてしまいました。2020年3月にリニューアルした、竹鶴ピュアモルトの新ボトル、通称"新竹鶴"です。

2015年にリニューアルした余市、宮城峡と同様に、原酒不足から竹鶴の既存ラインナップ4種(NAS+エイジング3種)を生産終了とし、新たにNAS仕様でリリースされることとなったのが今回のボトル。
発売前の情報だと、特に余市原酒の比率を増やしているとされていましたが、仕上がりは事前情報のとおり、全体の半分以上は余市だと感じる香味構成です。
また、余市原酒の中でもヘビーピート原酒のキャラクターを余韻にかけて感じますが、全体構成はあくまでバランス型で、がっつりスモーキーでピーティーと言うタイプではありません。

一方、比較的若い10年熟成未満の原酒が多いのか、若さに通じる酒質由来の酸味が感じられると共に、余市のキーモルトはシェリー樽とのことですが、リフィルなのか樽感はそこまで色濃くなく。かつてニッカのウイスキーは新樽原酒を筆頭に、この真逆と言える圧殺するようなオークフレーバーが特徴的でしたが、最近はあまり樽の内側を焼かないようなプレーン系統の樽使いが特徴の一つでもあります。
良い意味でもそうでない意味でも、予想通りな仕上がりでした。

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(同じNASスペックの竹鶴ピュアモルト新旧。旧のほうも若い原酒の要素はあるが、色合いは濃く、”例の原酒”の個性と言えるケミカルなフルーティーさが感じられる。ジャパニーズウイスキーとして新のバランスは悪くないものの、総合的なコスパという意味では旧のほうが上と言わざるを得ない。)

レシピを香味から推察すると、主軸は上述の通り半分以上を占める余市、あとは宮城峡が3~4割、そしてその他原酒が1割程度使われているかどうか。旧と比較してジャパニーズ系統の風味が強くでています。
宮城峡の原酒は、シェリー樽原酒は少量を繋ぎ程度で、主としてはアメリカンオークのリメード、バーボン樽系の原酒を使っているのでしょう。軽やかな華やかさに通じるオークフレーバーが酒質由来の風味の裏側にあり、多層的な香味の下支えとなっています。

一方、竹鶴ピュアモルトの構成原酒と言えば、余市、宮城峡以外にもう一つ、”その他”としてベンネヴィスの原酒を使っているという説が、愛好家の間では公然の事実となっています。
これについては賛否が分かれるところですが、少なくともベンネヴィスを買収して再稼働させたニッカと、同蒸留所の会長も務めた竹鶴威氏の存在を考えれば、”竹鶴”という銘柄に、ベンネヴィス原酒を使うことに何の問題もないとは思います。それをどう説明して売るか、広報戦略の議論はありますが。。。

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(ベンネヴィス蒸留所から故竹鶴威氏の業績を称え、リリースされた再稼働直後のファーストカスク。こうしたリリースは他の蒸留所を見ても過去例がなく、ニッカとベンネヴィスの結び付きの強さを感じさせる1本。)

しかしジャパニーズウイスキーが注目される中で、日本産ウイスキーに輸入原酒を用いるべきではない、表記は整理すべき、あるいは輸入原酒を用いた疑似ジャパニーズけしからん、とする声が大きくなってきているのも事実です。ウイスキー文化研究所が中心となって、ジャパニーズウイスキーの定義づくりが進んでいるという状況もあります。
今回リニューアルした竹鶴ピュアモルトを飲むと、ニッカまたはアサヒビール側がそうした動向を意識したのでは?と感じる味わいでもあるのです。輸入原酒が全く使われていないかどうかは不明ですが。。。使われていたとしても、旧作に比べて量は相当控えめでしょう。

ちなみに現在販売されているオフィシャルシングルモルトでも良いので、余市と宮城峡を混ぜてみると、これが面白いほどに馴染まないことがわかります。どちらも酒質のしっかりとした(特に余市が強い)ウイスキーなので、バランスをとるのが難しいんですよね。個性の強く出ている蒸留所限定品や、シングルカスクの場合は特にです。
そこにベンネヴィスを混ぜると、不思議とバランスが良くなって、なんだか馴染み深い味にも。。。つまり、今回の竹鶴のリニューアルは、原酒以外の社会情勢や、我々が思う以上の制約の中で作り出されたとも考えられます。

若く個性の強い余市と宮城峡原酒に、熟成した原酒や一部シェリー樽原酒を使い、ネガ要素を抑えつつフレッシュな香味を残したブレンデッドモルト。ジャパニーズとしての竹鶴。突き抜けた味わいではありませんが、将来を考えて安定して使える材料で、ベストを尽くしたと言えるウイスキーだと思います。

しかし竹鶴ピュアモルトの新リリースは、年間22000ケース限定(海外向け8000ケースと合わせて30000ケース)での生産。これは竹鶴12年が発売されたウイスキー冬の時代、2000年当時の年間実績15万ケースの僅か1/7であり、市場の温度差を考えると吹けば飛ぶような本数です。
アサヒビールは年間60億円以上を投資して原酒増産を開始していますが、現時点で原酒をやりくりし、日本寄りのレシピで作れるのは、この本数が精一杯という現実なのかもしれません。実際のところ高い人気があるにも関わらず、2019年の竹鶴ブランドの出荷本数(生産上限)が10万ケースにまで落ちていたところからも、その厳しい原酒事情が伺えます。
一刻も早く原酒の熟成と供給が安定し、このブレンド技術のもとにさらに美味なウイスキーが誕生することを期待したいですね。

竹鶴21年 ピュアモルト 2018年ロット 43%

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NIKKA WHISKY 
TAKETSURU 
PURE MALT 
Aged 21 years 
Lot No,6/10H04104 
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティング
場所:自宅@ブランドサンプルTさん
時期:不明
評価:★★★★★★★(6ー7)

【ブラインドテイスティング回答】
注いだ時の香りでジャパニーズっぽさ。
香りに宮城峡っぽいフルーティーさ。
明らかにそれとわかる複数原酒の多層感。
竹鶴21年。今年か去年のロット。

香り:リメード樽や長熟向け新樽を思わせるメローなウッディーさと、ナッツの軽い香ばしさ。リンゴのカラメル煮や熟した黄色い果実香。グレープフルーツの綿を思わせる柑橘感を伴うほろ苦さをピート香と共に感じる。

味:ビター&スウィート。蜜柑の缶詰シロップやアプリコットジャム、あるいは焦がしたリンゴ。フルーティーさが水っぽいところから形を帯びて行くに従い、ほろ苦い麦芽風味が後を追うような多層的な味わい。味の濃さに対して少しボディが軽い気もするが、余韻はウッディーでビター、フルーティーなシロップの甘みに混じって、どっしりとしたピーティーさが口内に残り長く続く。

ニッカ的かつ日本的な樽香の中にフルーティーで熟成したモルトの存在感。濃厚ながら飲み飽きず杯を重ねられる多層的な構成で、現行品の中でも銘酒たる逸品。
少量加水すると香りで香ばしさが強く。基本的には余市にあるしっかりとして香ばしい麦芽香、甘くフルーティーな熟成した宮城峡等の原酒の要素で満たされている。

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そう言えば、ちゃんと竹鶴21年近年ロットの記事を書いてなかったなと。テイスティングの機会を頂いたので2018年ロットをレビューします。

21年の特徴は、日本的な熟成感のあるフルーティーさです。
2001年にリリースされた最初期の21年は、ブレンデッドモルトらしく個性が主張し合うというか、多少散らかったような感じがありましたが、作り手側にノウハウが蓄積してきたのか、リリースから数年でキャラを確立した印象。
加水調整されていることで、日本的な濃いウッディさがフルーティーさ、スモーキーフレーバーと混じり合った奥深い仕上がりは、国内外で高い評価を受けています。

樽構成はテイスティング中でも触れたように、リメードや長期熟成向けの新樽がメインと思われる構成。
1グレード下の17年のほうは、バーボンオークを思わせる華やかなフルーティーさのある原酒に、シェリー樽やヘビーチャータイプの新樽原酒等も使われていて、どっしりとした香味構成。同じ2018年ロットでは、シェリー樽原酒の比率が減ったのか、サルファリーさの少ない香味構成への変化があり(初期の頃は硫黄っぽさはなかったので、先祖がえりしたとも言える)。
一方、21年は安定して入手しやすい樽がメインであるからか、一番風味がリッチだった2005年前後のものに比べ、多少ボディが薄くなっているものの、全期間通じて同じ系統の仕上がりが特徴とも言えます。

出荷規制がかかっていて、なかなかお目にかかれないボトルではありますが、だからこその香味の維持と安定感。量産していたら間違いなくスカスカになっていたと思うんですよね。
見かけたらじっくり家飲みで使いたい。。。と言いつつ一晩で100ml以上は軽く飲んでしまいそう。頂いたサンプルも即完飲。昔と変わらずニッカの魅力が丸ごと詰まった佳酒でありました。

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先日紹介したラフロイグに続き、ウイスキー仲間からのブラインドサンプル。ラフロイグからの連戦で計3問挑戦。ただ、これらを順々に挑戦した時点で、出題者の策にのせられていたのです。
というのも、最初に若いラフという強烈な個性を置き。次が竹鶴21年、これはパンチはないものの、香味がしっかり残るタイプ。ラストはシーバスリーガル25年。。。度数も香味の強さも3段構えで最後の出題にかけて穏やかに、逆に繊細になっていくことで難易度を上げる策士っぷり。

結果、最後のシーバスでは「スコッチ寄りのフルーティーさメイン。ウッディで枯れた要素もある、上位グレードのブレンデッド」と前置きしつつも前の出題のニッカ味の記憶に引きずられ、ザ・ニッカ12年と回答。。。
一呼吸置いて飲みなおすとモロ長熟スコッチの味で、まだまだ鍛練が足りないなあと。
というか、今年を振り返えると去年ほどブラインドはやっておらず。年2回のとあるブラインドコンペも、直近のものは過去4回のなかで最も成績が悪かった。何事も日々鍛練が重要ですね。

ニッカ 竹鶴 21年 ピュアモルト 2000年代前半流通 43%

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NIKKA WHISKY 
TAKETSURU 
PURE MALT 
Age 21 years 
2003's 
700ml 43% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:開封後2ヶ月程度
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★★(7)

香り:ナッティーで角のとれた穏やかな樽香に加え、フルーティーな熟成香。リンゴのコンポートや黄桃、熟したグレープフルーツを思わせる多層的な果実香に、キャラメルナッツや微かに松の樹皮。しっとりとピーティーでスモーキーなアクセントが原酒の円熟を感じさせる。

味:マイルドでコクがあり、心地よくドライな口当たり。ナッツの軽い香ばしさとオレンジピールを思わせるほろ苦いフレーバー。粘性のあるオーキーな甘味が、熟した南国の果実のようなフルーティーさに繋がっている。
余韻は柔らかいウッディネスと、香り同様にピーティーなフレーバー染み込むように長く続く。

複雑で多彩、そして華やか。日本的な新樽や活性樽を中心とした印象を受ける強めの要素と蜜のような果実味が、余市や宮城峡の熟成した原酒の存在を感じさせる。ピートフレーバーが少々武骨でもあるが、加水すると熟したグレープフルーツを思わせる柑橘系の要素も。ニッカだからこそ作り出せる味わいの象徴と言える1本。

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竹鶴21年ピュアモルトは、初代ボトルが独特の角瓶デザイン(以下写真参照)で発売されたのが2001年のこと。その後アサヒビール傘下にニッカウイスキーが入り、2003年にコルク栓で丸瓶という、2000年代のニッカを象徴するデザインとも言える仕様にリニューアルしたのが今回の1本です。

裏ラベルにあるロットナンバーの左3桁は14C、つまり2003年7月の製造ということになりますが、この仕様のボトルが一般に発売されたのが2003年11月であるとメーカー側のコメントが残っていますので、初出荷に向けて製造されていた、まさに初期のロットであると言えます。

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(竹鶴21年ピュアモルト、2001年発売の初期ボトル。男性的とされた特徴的なデザインが印象的。レビューはこちら。)

個人的に、竹鶴21年が最も美味しいのが今回の時代、2003年から2008年くらいまでの5年間だと感じています。
初期の頃よりもフレーバーのばらつきが少なく、かつ近年のものよりも厚みやコクというか、全体のスケール感が一回り大きい。華やかでフルーティー、そして仄かにピーティーな同系統のフレーバーはそれぞれの時代に備わっているのですが、全体的な完成度を見ると、この時代が1ランク上という印象です。

リリースから逆算すると、原酒の仕込みは1980年代。洋酒ブームを受けて増産を行っていた時期であり、それらの原酒は1990年代の冬の時代の到来で大量に消費されることなくじっくりと熟成。ニッカに限らず、この時期のジャパニーズリリースにはレベルの高いものが多く、そうした原酒の存在が大きいように感じられます。

ただ、竹鶴の場合原酒の豊富さというだけなら、2001年の初期ボトルでも状況は変わりませんが、先に書いたようにこのボトルのほうが全体のまとまりが良い。アサヒビールという大手資本に入ったことで、マーケティングが安定してユーザーが求める味わいにシフト出来たとか。あるいは、ここに国内調達の原酒や輸入原酒が使われているならば、原酒の手配も安定するようになったのでは・・・などと推察しています。


余談ですが、今やジャパニーズ枠でブレンデッド(モルト含む)ウイスキーの顔とも言える世界的に有名な銘柄となった、竹鶴そして響。
響については、様々な樽由来の要素が十二単のように傘なりあった、多層的なウッディネスを特徴とするブレンドであり、特に21年や30年がまさにその仕上がり。一方、この竹鶴21年を同様のイメージで例えるなら、華やかで艶やかな樽由来の要素はありつつも、厚みのある酒質とピートがどこか武骨で男性的な要素でもある。十二単と男女で対を成すのは束帯ですが、それより男性的な・・・貴族が着用するような鎧兜の印象を感じるのです。

ニッカ 竹鶴 ピュアモルト 17年 2000年代後半流通 43%

カテゴリ:
TAKETSURU
NIKKA WHISKY
PURE MALT
Aged 17 years
2003〜2011’s(2007’s)
700ml 43%

グラス:国際規格テイスティング
時期:開封後数日以内
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:メローでチャーオークの焦げ感漂う、しっとりしたウッディネス。キャラメルナッツ、樹皮、古いウェアハウスのような落ち着いたニュアンスに、合わせてドライアプリコットや色の濃い蜂蜜、ピーティーさも感じられる。

味:口当たりは濃厚で、しっかりと芯のある味わい。角の取れた新樽経のウッディネス。ナッティーでメープルコーティングされたアーモンドやくるみ、林檎のカラメル煮を思わせる甘みもある。徐々にスパイシーで微かなピート、奥には黄色いフルーティーさがあり、戻りとして感じられる長いフィニッシュへと続く。

力強い酒質と、エステリーさのあるソフトな酒質が混ざり合い、やや強めの樽感の中で1本芯の通った味わいに仕上げられている。基本的には新樽系統の香味であり、ニッカウイスキーらしい好きな人にはたまらない味わい。ロックにしても悪くない。また葉巻との相性が良いのも特徴。


ウイスキー冬の時代、飲みやすさのブラックニッカクリアブレンドに対して、モルトの個性を出したリリースとして、2001年にラインナップを拡充する形で発売された竹鶴17年の2世代目に当たるボトル。
ニッカウイスキーがアサヒビール傘下となり、2003年にラベルチェンジが行われたのが、今回紹介するボトルのリリース時期にあたります。

初期の頃はコルクキャップが採用されており、途中からマイナーチェンジでスクリューキャップに変わったのか、同じラベルで2種類のキャップが存在するようです。
今回テイスティングしたボトルはスクリューキャップ版で、製造番号から2007年のものと推測。ちょうど自分が竹鶴12年でウイスキーに興味を持ったころで。。。この頃は4000円しなかったんだよなぁ。。。なんて個人的な話はさておき、当時の竹鶴は新樽やリメード樽のニュアンスが主体的で、ニッカ味ともいうべき無骨な樽感、そしてオーク由来の黄色い果実味が余韻にかけて感じられる、熟成感のある味わいが特徴です。

原酒構成を余市、宮城峡だけに限定すれば、ヘビーピートな余市ではなく、ライトピートタイプの余市と宮城峡が半々くらいか、ちょっと宮城峡が多めという感じでしょうか。加水でありながら酒質的にはしっかりと強さも残っており、飲みごたえもある1本に仕上がっています。

(竹鶴17年の現行ラベルである3世代目(左)と、今回の2世代目(右)。2011年ごろにリニューアルして切り替わっている。)

上記写真に写る、2世代目と現行品である3世代目を比較すると、ラベルチェンジ後しばらくの間は新樽に加えてシェリー樽やバーボン樽など、ニッカが所有する様々な樽で熟成させた原酒をバッティングされたような、いくつかの個性が口の中で混然と主張してくるような特徴があります。
余韻の黄色い果実味は変わりないのですが、樽同士の繋がりが薄いというか、こなれてくるまで時間がかかるだけでなく、新樽要素の代わりにニッカのシェリー樽とも言える、硫黄系のニュアンスが出てくるのも3世代目からで、明らかに原酒構成が切り替わっています。

ところが、先日2017年下半期製造ロットの竹鶴17年をテイスティングしたところ。該当するシェリー感が少なくなり、むしろ新樽的な無骨な感じが増して・・・樽構成としては2世代目への先祖返りをしている印象を受けました。
近年の原酒不足から生産量を春秋の2回に絞っていることと、シェリー樽が高騰して手に入りづらくなっていたことが影響しているのかもしれません。

それでもどちらが好みかと言われれば、やはり熟成感の強い旧ボトルが一歩リード。突き抜けて差があるわけではありませんが、経年もあってか一体感も今回テイスティングしたボトルのほうが強く感じられ、ウイスキー冬の時代の名品だよなと今更ながらに思うのです。

ニッカウイスキー 竹鶴 25年 ピュアモルト 43%

カテゴリ:
NIKKA WHISKY
TAKETSURU
PURE MALT
Aged 25 years
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後半年程度
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
暫定評価:★★★★★★★★(7-8)

香り:馥郁として甘酸っぱい香り立ち。キャラメルナッツ、ドライアプリコット、ウッディでリッチなアロマ。綿菓子のような甘み、香木系のニュアンスもある。時間経過でポン菓子のような麦芽香も感じられる。

味:マイルドでふくよか、ウッディだが滑らかな口当たり。杏子やピーチ、甘酸っぱくコクのある濃縮した味わい。奥にはナッツの香ばしさ。
余韻は乾いた麦芽風味、シロップのような甘み、染み込むようなピートのほろ苦さが一体となって長く続く。

濃厚でいてバランスが良く、美しく整えられたウイスキー。さながら職人の手で磨かれ、組み上げられた木工のようなウッディネス。甘酸っぱい風味は竹鶴17年以上に見られるニッカ味だが、円熟味を帯びてよりリッチに仕上がっている。構成原酒には30年クラスも使われているのではないか。。。ストレートをじっくりと楽しみたい。


実は初テイスティングとなる竹鶴25年。
日本の熟成環境におけるピークと言える熟成年数、ブレンドによる複雑さと加水によって整えられた飲み口。濃厚でありながら負担なく、それでいて充実した香木香、甘酸っぱい香味を伴うアフターテイストがもたらす確かな満足感。。。先日レビューした40年の熟成感も素晴らしかったですが、25年は全体のバランス、一体感が特筆モノ。正直、ここまでとは思っていませんでした。

これまでも何度か触れていますが、日本のウイスキーというか熟成環境は、スコットランドに比べて時に温暖で、時に寒冷で、結果酒質の成長に対して樽感が強く出るのが特徴としてあります。
そのため酒質が育ち切らず、パワフルで荒々しい状態のままボトリングの時期を迎えてしまうものがしばしば見られるわけですが、それをカバーするのがバッティング(ブレンド)であり、加水であると感じています。

上述のように酒質が育ち切るのを待つと樽が強くなりすぎるのは、あくまでシングルカスクのカスクストレングスでリリースした場合です。
それはそれで美味しいウイスキーもありますが、加水することで酒質の荒さや樽感をある程度軽減しつつ、奥行きや多彩さをバッティングで作り上げることが可能。樽感の強い日本の原酒は言い換えれば削りしろが多く、これがカンナがけで美しく整えられたようなウッディネスとなり、スコットランド的なバッテッドモルトと異なる日本独自の味わいへと繋がっていくのだと思います。

先日発表されたWWA2018で竹鶴17年が4度目のワールドベストを受賞し、21年も合わせると合計8度目の受賞と、同ジャンルにおいて圧倒的な存在感を発揮し続けている同ブランド。ブレンデッド部門では響シリーズが常連で、こちらも先人たるスコッチブランドを圧倒しています。
勿論このコンペの評価が全てではありませんが、他のバッテッドモルトウイスキーを見ても、瞬間最大風速的に素晴らしい限定品はあっても同系統の風味を持つ代替品が見当たらないんですよね。

日本が持つブレンド技術と、目指すべき方向性の一つを見るような味わい。匠の技で美しく整えられたウイスキー。
ちなみにこのウイスキーを家飲み出来たら良いなとは思うのですが、自分の場合はむしろ飲む側も少し襟を正すような、例えば美しく整ったホテルのラウンジや調度品の揃うオーセンティックな空間で味わいたい、という特別な気持ちにもさせてくれるのです。

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