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三鷹駅南口から徒歩5分少々。ちょっと場末感漂う夜の通りの一区画。今回訪問したお店は初めてなのですが、厳密に言えば初めてではないお店だったりします。

というのも、この場所では以前別なBARが営業していました。その店主とは結構長い付き合いだったのですが、気がつけば閉店していてお店が変わっていたという話。
内装はそのまま、ストックも一部そのままお店を売られたようで、所々に前任者の名残りを感じますが、経営者が変わればお店の空気も変わるもの。すでに別なお店として再出発していて、以前とは違うスタイルとなっています。


Bar Onsightは2017年9月にオープンした、ラムとウイスキーを中心としたオーセンティックBARです。
個人的にラムとウイスキーと言えば京都のラム&ウイスキーですが、このオンサイトも中々の品揃え。手広く揃うラム、ウイスキーは現行品よりも、少し前からオールドが中心で、これは懐かしいと思うボトルもチラホラと見かけます。

ウイスキー業界から見ると、最近コニャックと合わせてラムが新しい選択肢と認識され始めており、丁度勉強したいと思っていたジャンルでした。
マスターである赤井さんは、吉祥寺のラムバー等で修行をされた後に独立。一見すると落ち着いた紳士的なバーマンですが、その内側にはお酒の知識と情熱、そしてちょっとした遊び心も感じられ、自分のようにウイスキー一本槍な飲み手や、あるいはここを止まり木とする方々に合わせて引き出しをひらいて世界を広げてくれるような、そんな印象を受けます。


この日は少し肌寒い夜だったので、まずはラムベースのホットカクテルの一つ、グロッグからスタート。甘口のラムにシナモンの香り、ほのかにレモンの酸味。ホッとする染みるような味わいです。


ホットカクテルで人心地ついたところで、自分が好みのウイスキーや蒸留酒の傾向を伝えてオススメいただいたのが、ペールラバ ミレジム1989。
ペールラバは、そのままの意味で"古典的な製法"が採用されていることで有名。特にブラン(ホワイトラム)の方は、雨水で加水し木の棒で攪拌、時に手を突っ込んでかき混ぜてペロっと味見しちゃうという、自家消費用とも見まごう製法が逆に話題になっていたラムです。
ただその古き良き?ペールラバは、2008年にフランスの投資家に買収され、2010年からは新しい設備で生産されているとのこと。今回は貴重な1989年蒸留の熟成ペールラバと共に、1990年代流通のホワイトラム、"手作り時代ペールラバ"で飲み比べをさせて頂きました。

1989の方はリムーザンオーク樽由来のコニャック的な華やかさ、フルーティーさが濃厚で、そこにラムらしいブラウンシュガーのような甘み。これは美味しいですね、ウイスキー好きとの親和性はかなりあると感じます。
一方ホワイトラムは少し青みがかった要素はあるものの、度数ほどのアタックはなく、コクのある穀物系の甘さと淡い植物感、品のいい甘み。素性からウイスキーのニューメイク、あるいは島焼酎みたいに荒々しいものをイメージしていたので、拍子抜けしてしまったほどです。
そしてこの2つのラムを繋ぐ熟成という時間の線。ラムの熟成の変化も学べる面白い飲み比べでした。


「ラムほど多彩なお酒はないと思っているんです」というのはマスターの談。そんなマスターから"今までで一番衝撃を受けたラム"として勧めて頂いたのが、イタリアのボトラーズがボトリングした、ドメーヌ ド クルセル1972-2006。

いやこれは確かに衝撃です。梅酒、あるいは杏酒のような甘酸っぱいラムらしからぬ香味に加え、バニラクリーム、カシューナッツ、時間と共にウッディさ、華やかなオーク香、刻々と変化する香味。さらにグラスの残り香の持続力がすさまじく、この後複数飲んで店を出るまででも空いたグラスから香りがへたらず続いているほど。なんか香料添加してないかっていうくらいなのです。(笑)
なお、同蒸留所では同じビンテージのオフィシャルボトルもリリースされていますが、こちらの香味はコニャック的なタイプ。
アグリコールラムのタイプ一つにしても、ホワイトラムから、リムーザンオークやフレンチオークで熟成のさせた樽香豊かなもの、そしてこのように突き抜けた香味のものまである。確かにこれは探りがいがあるだけでなく、心酔させられるジャンルです。
自分も特にこのドメーヌ ド クルセルは1本抱えて飲みたいと、その場で探してしまいました。


さて、せっかくウイスキーも揃っているBARに来ているのに、何も飲まずに帰るのはウイスキー側の飲み手としてどうかと思うので、マスターの好きなジャンルであるバーボンから、オススメの1本、ファイティングコック8年1990年代流通を注文。


現行品のファイティングコックは樽由来の苦味やベタつきが強く、パンチのある味わいながらコクが足りない。。。しかしこの1990年代流通はオーソドックスなバーボンとして旨いと感じる甘み、コク、樽香が揃っており、飲みごたえもバッチリ。
「やはりこの時代のバーボンはスタンダードでもいいですね。」
「なんでこうも違うんでしょうね。」
「酵母って話もありますし、あるいは樽の処理も・・・」
ラムについて教えを乞う時間はひとまず終わり、ここから先はホームグラウンドに戻ってウイスキーの情報交換の時間なのです。

自分のメインはやはりウイスキー。しかしウイスキーは樽で様々な酒類の恩恵を受けることから、ウイスキーをさらに深く知るためにも関連する酒類の知識や経験はあったほうがいい。っていうか何よりたまには違う世界に触れたほうが、新しい発見があったりするんです。
昨年から意識してウイスキー以外の酒類も飲んで、勉強することにしているので、これは良いBARに出会うことができました。

旧店舗の紹介記事は書くことなく終わってしまったわけですが、終わりがあれば始まりがあり、新しい出会いもある。
地元に出来た自分にとって異文化に触れられるBAR。引き続き勉強させてもらおうと思います。

BAR Onsight
営業時間:18時00〜26時00
定休日:日曜日
TEL:0422-26-7746
東京都三鷹市下連雀3-22-19 エトワールB1F