カテゴリ:
スリーシップスウイスキー
THREE SHIPS
Special Release Whisky
Bourbon Cask Finish
3.5 years old
750ml 43%

【ブラインドテイスティング】
地域:アイリッシュ
蒸留所:不明
熟成:10年程度
度数:43%
樽:バーボン樽
仕様:複数樽で加水
評価:★★★★(4)

香り:ドライでライトな香り立ち。ツンとした刺激のある淡いオーク香、植物感を伴う薬っぽい癖。干し草、溶剤、バニラ、徐々にケミカルなニュアンス。ハッカやハーブのような爽やかさも感じる。

味:やや水っぽさを伴いつつ、オイリーな口当たり。植物っぽさと共にのっぺりとしボディ。インクのような油っぽさ、蒸した穀物の甘み。
余韻はヒリヒリとしたアルコールの刺激、ほろ苦くドライなウッディネス。淡くケミカルなフルーティーさを伴う。

植物感とケミカルなニュアンスに、穀物由来のライトで独特なバニラっぽさが混じる。香味の複雑さはあるが若さを押さえつけるように加水の効いたボディは平坦で、奥行きはそれほどなく、何より王道的なスコッチではないキャラクター。
ファーストインプレッションは、最近ぽつぽつ出てきているアメリカンブレンデッドウイスキーというか、カナディアン系の何か。しかしケミカルな要素はどちらかというとアイリッシュ寄りで、アイリッシュブレンデッドの何かと予想。

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ウイスキー仲間のK67さんからのブラインド出題。
見たことも聞いたこともない銘柄ですが、正解は南アフリカ・ウェリントンのジェームズ・セジウィック蒸留所が作る、ブレンデッドウイスキーでした。
スペックは、メーカーサイトによるとアメリカンホワイトオーク樽で3年熟成した後で、ファーストフィルバーボン樽で6ヶ月間のフィニッシュ。若いとは思いましたが熟成期間はまさかの3.5年。原酒は100%南アフリカ産であることも謳っています。

酒は人生の妙薬
https://k67malts.wordpress.com/

メーカーサイト:Three Ships Bourbon Cask Finish
https://www.threeshipswhisky.co.za/fleet/bourbon-cask

純粋に銘柄当てなら、こんなのムリゲーすぎる!と文句の一つも言いたくなるところですが、このブラインドにそのような意図は無く、あくまで先入観なくウイスキーを楽しむのが目的。
特に南アフリカなど失礼ながらウイスキー作ってるとも知らなかった地域の銘柄となれば、自分ではまず飲まないでしょうし、オープンテイスティングにおいては多少なりの先入観は持ってしまうものです。

そうしてブラインドでフラットに飲んだ味の評価は・・・バーボン樽由来と思しき華やかさは感じつつ、ちょっと植物感が強く出ているのと、加水で無理やり仕上げたような良い部分も悪い部分もある荒削りな感は否めません。
他方この3年半という熟成期間での仕上がりや、酒質由来のフルーティーさを考えると、10年クラスの原酒は中々面白いのではないかなと感じたりもします。 

ブラインドの採点をするなら、流石に地域はドンピシャとはいかなかったものの、スコッチではないという地域予想に、バーボン樽の要素、43%加水で短熟、グレーンの有無というスペックの要点は抑えられたので、及第点かなと思います。欲を言えば熟成年数はもう少し寄せたかったですね。


ジェームズ・セジウィック蒸留所は、google先生の力を借りて見ると、伝統的なパゴタ屋根に、整備されて近代的な雰囲気も漂う蒸留所であることが伝わってきます。
そのルーツは1886年に遡るそうですが、同社が作るウイスキーが認知されはじめたのは最近のことのようです。
蒸留所のマネージャーは元々モリソンボウモアで1986年から1988年まで技術交換として働いていた経験があり、その経験を元にウイスキー事業を進めているのだとか。インドや台湾のようにこれから注目を集めるウイスキー生産地となっていくのでしょうか。

なお、ラベルの最下部には「International Award Winning Whisky」と誇らしげに記載されていますが、これは同スリーシップブランドの5年物が、2012年のWWAでワールドベストブレンデッドに輝くなど幾つかのコンテストでの受賞があったことからと推測。
WWAはかつてワイン業界に革命をもたらしたパリ決戦の再現でも狙うかのように、稀に新世界のウイスキーを極端に評価する傾向があり、これをもって何かを変える必要も無いと思いますが。。。思いがけぬ地域にウイスキーの可能性が育っているのを知れたのは、今回のブラインドの大きな収穫だったと思っています。