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若鶴酒造 サンシャインウイスキー ワインカスクフィニッシュ 40%

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WAKATSURU
SUN SHINE PREMIUM WHISKY
Wine Cask Finish
Non-Chillfilltered & Non-Colored
700ml 40%

グラス:三郎丸蒸留所テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1~2ヶ月程度
評価:★★★★★(4-5)

香り:爽やかな若いモルティーさのある香り立ち、レモンラムネ、タブレット、お菓子を思わせる甘みや微かな酸味。少し粉っぽさもある。

味:とろりとコクのある口当たり、レモンバウム、カスタードクリーム、奥にはほのかにウッディで薬草を思わせるニュアンス、干草のような乾いた香味。単調気味だがほろ苦く、微かにスモーキーで長く残るフィニッシュ。

やや若さはあるが、モルティでしっかりとした味わいのあるブレンデッド。ワインカスクの要素はあまり強くないが、口当たりのまろやかさとドライなウッディネスにその要素を感じることが出来る。ロック、ハイボールにするとスモーキーさと少しクランベリーを思わせる酸味が強くなる。
それ以外は平均点で、肩肘張らず飲めるデイリーウイスキー。

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今年の7月、クラウドファンディング等を活用して蒸留所改修プロジェクトに成功した若鶴酒造の三郎丸蒸留所。その改修記念として北陸方面を中心に発売されたブレンデッドウイスキーが、このサンシャインウイスキー・ワインカスクフィニッシュです。

サンシャインウイスキーは、若鶴酒造が半世紀以上にわたりリリースし続けてきた地ウイスキーブランドです。
使われている自社蒸留のモルトは50PPMのヘビーピーテッドタイプ。そのため通常品の若鶴サンシャイン・プレミアムは、その他の原酒分を差し引いても、モルティーでスモーキーな味わいが強調されています。
一方限定品のワインカスクは、それらスモーキーフレーバーや原酒の若さをワイン樽と思われる香味がマスクして、甘くまろやかで飲みやすい、それでいてワインカスク由来の「露骨に濃厚な甘さ」になってないのもポイントで、結果様々な飲み方に使える晩酌向きな1本に仕上がっています。
(三郎丸蒸留所、熟成スペースにあるワイン樽。この他、バーボン、ワイン、シェリーなど様々な樽があり、今後のリリースも期待。)

地ウイスキーというと、変化球的で、ちょっと身構えないと飲めないようなボトルも少なくないわけですが、この若鶴プレミアムは王道的なスコッチタイプのウイスキーと言える構成。実は身構えていた一人なので、試飲した時は素直に驚きでした。

地ウイスキーは地域で愛されてこそのブランド、サンシャインのように今後も長く愛される製品をリリースして欲しいです。

若鶴酒造 サンシャイン プレミアム ブレンデッドウイスキー 40%

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WAKATSURU
SUN SHINE PREMIUM
Blended Whisky
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:50ml
場所:自宅
時期:不明
暫定評価:★★★★★(4-5)

香り:注ぎたてはスモーキーだが、すぐに乳酸系の酸味を伴う穀物香。食パンの白い部分、徐々にグレーンの甘みとレモングラスを思わせる爽やかさも感じられる。

味:香り同様乳酸系の酸味を伴うコクのある口当たり。軽やかな刺激、じわじわとシリアルなどの香ばしい穀物風味が広がり、モルティーで飲みごたえがある。
余韻はスパイシーでスモーキー。炒った穀物を食べているような香ばしさが長く残る。

若さは多少あるが、その中にあってバランスが良く、モルティーで嫌味の少ないブレンデッド。今時の流行りである華やかな樽香の効いたタイプではなく、その逆、どこか素朴で、無骨な印象さえあるまさに地の酒。
特筆すべきは加水しても崩れないところで、ハイボールも良い。若いリンゴのような爽やかさが開き、マイルドな飲み口でパン生地からスモーキーフレーバーへと繋がる。

当ブログでも何度か紹介させて頂いた三郎丸蒸留所の若鶴酒造が、これまで販売していた地ウイスキー、サンシャインウイスキーをリニューアル。クラウドファンディングの御礼品にもなっており、該当するプランで参加された方の手元には既にボトルが届いていると思います。(一般市場には4月下旬に展開されるようです。)

サンシャインウイスキーの発売は1953年、今から半世紀以上前に遡ります。
ウイスキーブームからの冬の時代を経て、細々と作り続けられていた銘柄。若鶴酒造のウイスキーの歴史とも言えるその味は、香味を楽しむというより、水割りなどでスッキリ酔うための晩酌ウイスキーで、決して味を楽しむモノではありませんでした。

今回、蒸留所の改修プロジェクトと並行する形で行われたサンシャインウイスキーのリニューアルは、同社で蒸留、熟成されてきたヘビーピート原酒に輸入原酒をブレンド。(若鶴酒造では創業時から50PPMという、アードベッグクラスのピート麦芽で仕込みが行われています。)
若さはありますが、使われた輸入グレーンは8〜10年熟成あたりで素性よく。モルト原酒は古くから蒸留を続けてきたメーカーの強みを活かして幅広い年次のものが使われているようで、モルティーで素朴な味わいから広がるスモーキーフレーバー、短熟のみではないバランスの良さも感じられます。

希望小売価格は2300円。モルト比率も高く、コスパで考えると近年のブーム価格ではなく、結構薄利で作ってるなという印象。 
例えば、角ハイやクリアハイボールでウイスキーを飲んで、何か物足りないと感じた人が次に飲んでいくような、あるいは「富山ハイボール」として地域の飲食店が積極的に展開して欲しい。ピーティーなウイスキーを作り続けてきた、若鶴酒造らしいキャラクターを、しっかり内包しています。

製造能力も販売力も大手メーカーには及ばないクラフトメーカーは、大手メーカーに追従して、1000円台で無個性なアルコール飲料をリリースするより、少し価格を上げて尖った商品を展開する方が、クラフトビールのようにコアなユーザーを獲得できるチャンスがあります。
他方で、2000円台はジョニ黒、バランタイン12年など有名スコッチがターゲットとなり、競争相手と比較されることも多いだけでなく、決して完成度の高いウイスキーが作れる価格帯でもない、1000円台に比べて難しいレンジ。
ただ、それを「まだまだだね」と切って捨てるより、その中でどれだけ光るものがあるか、伝わってくるメーカーの方向性を楽しんだ方が建設的だと考えます。

若鶴サンシャインプレミアムは大手メーカーの整った都会的な造りに対し、無骨で不器用な田舎的な魅力がある地ウイスキー。
機会があれば先入観抜きに飲んでみてください。この価格帯で一番の商品とは言いませんが、こんなもんかなという印象の中にも「おっ」と楽しめる蒸留所の個性を感じられると思います。

【再掲】若鶴酒造 三郎丸蒸留所の原酒とクラウドファンディング事業

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※再掲のお知らせ※
売り切れていた樽オーナー募集が再開されたとのことで、10月14日に更新した本記事の記載を変更、再掲します。
同クラウドファンディングの募集期間は残り21日、現時点で1750万円を集め、目標金額2500万円まであと30%というところまで来ています。
ここまできたら、達成に向けてラストスパートで頑張って欲しいですね!

ー以下、紹介記事ー

先日、富山県は若鶴酒造のウイスキー事業として、三郎丸1960の紹介をさせていただきました。
発売されたオフィシャルボトルとしては日本最長熟成となる55年原酒に、ウイスキーファンなら少なからず興味をもたれたのではないかと思います。
そしてその三郎丸蒸留所が、蒸留所の改修事業の一環としてクラウドファンディングで資金の募集を開始しています。
(クラウドファンディングって何?って方は、説明すると長くなるのでぐぐってくだせぇ。)

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北陸唯一の蒸留所を改修し、ウイスキー好きが集まる見学施設へ(11/30まで)
https://readyfor.jp/projects/saburomaru

若鶴酒造のウイスキー蒸留設備は、築90年以上という建屋で行われており、ウイスキー量産はもちろん、大人数の見学受け入れも難しい状況にあります。
蒸留行程にはポットスチルが1基しかなく、全行程をほぼ手作業で行うという、近代ウイスキーのルーツである密造時代を彷彿とさせるような製造行程で極少量のみ生産されています。
その全行程はクラウドファンディングのサイトに掲載されていますが、通常の大手蒸留所では自動化されているところは全て手作業、麦芽の計量やミルへの投入風景、麦芽カスの掃除、一つしかない蒸留器を使っての2回蒸留など、ウイスキー作りの大変さが伝わってくるようです。
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詳細はこちらから:https://readyfor.jp/projects/saburomaru/announcements/43738

今回のクラウドファンディングは、蒸留所の改修、並びに設備の新設等にかかる費用の一部を募るもので、目標額は2500万円(改修にかかる総額は6500万円)という大規模な募集となっています。

仮にファンディングが成立しない場合でも、同社はウイスキー事業から撤退することはなく、手元に準備できている資金をベースに、可能な範囲で蒸留所の修繕を行う計画とのことです。しかしあくまで老朽化した蒸留所全体の建て直しがメインとなり、見学設備の充実や、蒸留器の新規購入などはしばらく困難になりそうとのこと。

私はこれまで富山の地とは縁も所縁もありませんでしたが、友人であるモルトヤマのイケメンが富山から世界にウイスキーを広めようと活動していることや、プロジェクトリーダーの稲垣さんが同世代とあって、他人事とは思えないんですよね。
そんなわけで今回の企画、私はお小遣いで可能な範囲で参加しますが、地元富山や北陸地方の皆様をはじめ、日本のウイスキー愛好家による支援で、地元で愛されるウイスキーだけでなく、それを世界に発信する流れが出来ればと思います。

クラウドファンディングリスト
(若鶴酒造クラウドファンディングのリターンラインナップ)

さて、ファンディングに参加することで得られるのが上記のリターン。中でも、最も目を引くのは150万円コースの樽買いでしょう。
購入出来るのは新設される銅製蒸留器で生産されるニューポットで、樽はバーボンバレル、容量は200リットル程度。
熟成は5年間無料で、その後は延長費用を収めることで追加の熟成が可能となります。
ボトリング費用は150万円の中に含まれており、ラベルも自由にデザインできるそうです。
また、通常はカスクストレングスですが、オプションとして40%以上であれば加水調整して度数を下げたボトリングをすることも受け付けるそうです。

このリターンは10月末まで売り切れの状態でしたが、試験蒸留の結果、良好な成果が得られたとのことで、5樽分の追加販売が決定しました。
ご参考:来年増産に目処、樽オーナーの募集を再開します。

とはいえ、若鶴酒造(三郎丸蒸留所)のシングルモルトは過去少量しかリリースされておらず、ブレンデッドも地ウイスキー規格と言える構成。蒸留所の実力もわからない中で、樽買いというのは困難な決断と言えます。
そこで今回は、若鶴酒造で作られているウイスキーの仕様と、その味わいについていくつかのサンプルから紹介させていただきます。

熟成庫

若鶴酒造のシングルモルトは
麦芽:スコットランド産
ピート:50PPM
酵母:エール酵母
樽詰め:63-65%
使用樽:バーボン樽、古樽中心
という、日本のクラフトウイスキーには珍しい全てピーテッドタイプで生産されています。正確な時期は不明ですが、操業当初からピーテッド麦芽を使用していたという話もあります。

現在、ピート麦芽はノーマルなものよりコストがかかるようですが、蒸留所の伝統に加え、富山のウイスキーとしてキャラクターを確立させるためにも、こだわっていきたいポイントなのだとか。
ピートの強さを表すフェノール値50PPMは、アードベッグ(55PPM)とほぼ同等。ただし仕込みで使われているのが内陸系のピートのようで、ヨードや磯臭さに繋がる香味はなく、ハイランドのほろ苦くスモーキーなタイプです。

また、同蒸留所では熟成中の樽の保管を温度管理された倉庫で行っており、熟成が穏やかに、長期的に続く傾向があります。
これまでテイスティングした熟成20年以上の原酒はスコットランド的な樽感となっていて、面白い仕上がりだと感じました。
今後の保管方法は検討事項とのことですが、ストックされている原酒にそうしたものがあるというのは、原酒が限られるクラフト系の蒸留所にとってアドバンテージに繋がります。
それでは前置きが長くなりましたが、原酒のテイスティングに移ります。


・ニューポット 2016年蒸留 仕込み第一号。
まるでおせんべいや餅を焼いたような香ばしさ。発酵した植物のような酸味と微かに温泉卵を思わせる香り。
口当たりはとろみがあるが舌を刺激するスパイシーさ、香ばしい麦芽風味、ゴムのようなニュアンスも。余韻は最初からのスパイシーさの名残を残し、焦げた麦芽のほろ苦さが染み込むように残る。

・22年熟成 1994年蒸留 サンプルA バーボンバレル 57%
蜂蜜の甘さと薬草のような香り、ウッディーな木のアロマと微かにゴム臭。
とろりとしているがスパイシーな口当たり、麦芽の香ばしさ、シリアル、薬のシロップのような甘み。徐々に土っぽくほろ苦いピートフレーバー。

・22年熟成 1994年蒸留 サンプルB バーボンバレル 57%
バーボンオークの華やかなアロマ、洋梨やバニラの甘みとハーブのニュアンス。少し溶剤っぽさ。
スムーズでじわじわとスパイスの刺激と香味が広がる。モルトスナック、バーボンオークの甘みからほろ苦いピートフレーバー、薬草のシロップ。

・22年熟成 1994年蒸留 サンプルC バーボンバレル 57%
梅のような酸味と乾いた木を思わせるアロマ。徐々にマシュマロ、薬っぽいニュアンス。
とろりとした口当たり、ドライアップル、イチゴ味の薬のシロップの甘さ。 余韻でじわりとピート。少し舌を刺激する要素はあるが、度数から考えればまろやか。 

・26年熟成 1990年蒸留 バーボンバレル 59%
きれいなバーボンオーク、地ウイスキーを思わせる酸味、ハーブ、スモーキー。個性と樽感のバランスの良い香味で、最も期待できる。

原酒の傾向は内陸系のピートに加え、薬草や薬っぽい個性。某S社が作るような、綺麗に旨いウイスキーではないです。
特にニューポットは蒸留器の関係もあってか、かなり個性的というか灰汁の強い味わい。しかしこれが20年を越える熟成を経た原酒となると、樽次第で中々面白い仕上がりとなっています。 

また、銅製の新しいスチルが導入されればニューポットの質も相当改善されるであろう点に加え。つい先日、イチローズモルトの肥土伊知郎氏が訪問され、技術指導をされたところ、それ以降の原酒はネガティブな要素に改善が見られました。つまり、まだまだ伸びしろはあるということだと感じます。

しかしそうは言ってもなおのこと、実際に飲んでみないと。。。というのは至極まっとうな意見。
若鶴酒造は今年11月20日に開催されるウイスキーフェスにブース出展されるそうです。
20日というとファンディング締め切りまで1週間強で、樽買いを含めた支援の決定には最後の確認的なスケジュール感にはなってしまいますが、そうした目的の有無に関わらず、是非ブースで富山発のウイスキーを体験してみてください。

ご参考:https://readyfor.jp/projects/saburomaru/announcements/43685

若鶴酒造と三郎丸蒸留所の挑戦 日本最長 55年熟成原酒が販売へ

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富山県の若鶴酒造から、日本最長熟成となる「シングルモルト三郎丸1960 55年熟成 700ml 47%」の発表が行われました。


この発表に先立つこと約1週間前の6月15日、若鶴酒造の関係者であるIさんと意見交換の機会を頂いておりました。
今回の記事では、その意見交換の内容から、ウイスキー業界に本格参入する若鶴酒造の動きと、発売されるシングルモルト三郎丸1960について紹介します。


若鶴酒造は、サンシャインウイスキーなどの地ウイスキー的なリリースを行っているメーカーで、実は現在も蒸留を続けている長い歴史を持つ蒸留所です。 
その若鶴酒造が蒸留所ならびに設備を新設・拡張し、ウイスキー業界への本格参入を狙っていることは、先日発行されたWhisky World誌にも掲載されたところ。
今回の意見交換では、今後の計画ならびに蒸留の方向性などを詳しくお聞きすると共に、こちらからも資料をお持ちして、狙うべき酒質やターゲット層など、今後の展開について熱く語り合いました。

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(五郎丸?いえいえ、三郎丸蒸留所です。若鶴酒造のある富山県の地名です。)

飯田橋にあるIさん行き着けのお店で始まった今回の会談。 
見た目は下町の一品料理屋的な感じなのですが、ここのお店、魚介系のレベルがめちゃくちゃ高い。
今が旬のいわしのなめろう、マダイの刺身に若鶴酒造のお酒である「苗加屋 特別純米」をあわせ、お互いに関する雑談に花を咲かせたところでいよいよ本題、今後の蒸留計画についてです。

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(同社の蒸留設備。現在稼動しているのは30年ほど前に設置したもの。
ウイスキーでは珍しいステンレス製のポットスチルです。)

若鶴酒造は1952年からウイスキーの生産を開始。通常は日本酒の仕込みをメインとし、それが終わる7月から10月にかけてウイスキーの製造を行ってきました。
通常毎年仕込みを行っていますが、ウイスキーの消費量が落ちた時期などは製造しないこともあったそうです。
この辺は江井ヶ島と同じですね。違うのは間にブランデーを挟まないことでしょうか。
ポットスチルはステンレス製の単式1つのみで、初留が終わった後で一度蒸留器を清掃し、同じ蒸留器で再留するというシステム。そのため、生産量は決して高くなく、年間2000リットル程度しか製造していないのだそうです。 
正直、よくもまあこれで長く続けてきたものだと、関心してしまったくらいです。 


熟成に使われてきた樽は、ここ最近はバーボンバレル中心で、過去にはワイン樽なども使われていたようです。
ピートレベルを示すフェノール値はジャパニーズでは驚きの50PPM。これはアードベッグとほぼ同じということになります。
ここでIさんが持参された平成6年蒸留の20年熟成のカスクサンプル(50%)をいただきましたが、甘く華やかでアプリコットなどを思わせるフルーティーさに、ちょっと焼けた樽材のようなクセ。
ピートは50PPMも感じないほど穏やかで、後半にかけて染みこんで来るタイプ。何より樽感が程よい感く、熟成のバランスは悪くありません。 
以前製品版のサンシャイン若鶴20年を飲んだときは、ゴムのような強いクセを感じて閉口モノだったのですが、このサンプルは普通に美味しく、びっくりしてしまいました。

日本の熟成環境(特に特別な熟成庫を持たない地ウイスキー)でバーボンバレルの20年というと、気温の高さなどから通常はもっとウッディーなモルトになることが多いのですが、同蒸留所は樽を日本酒の酒粕等の保管庫と同じ場所に置いており、夏場は冷房を入れて温度管理をしているのだそうです。 
樽熟中のウイスキーは、温度の高い夏場を越える度に樽感を濃くしていく傾向にあり、その夏場の温度が空調によって上がらない。それならこの地ウイスキーらしからぬ熟成感も納得です。 


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同社は今後、蒸留設備を拡張し、ビジターセンターも整備していく予定です。 
古くなった設備を一新し、銅製のポットスチルも入れるなどして、ウイスキー業界に本格参入しようとしているわけです。

ただクラフトウイスキーメーカーは、その規模や生産量から大手メーカーのように幅広く原酒を作ることは出来ません。どんな原酒を作っていくか、将来的にどのような味を目指すかというマイルストーンと、最終目標を定めておくことは最重要事項と言えます。 
ターゲットとする客層も重要です。所謂居酒屋でハイボールを飲んでいるだけの層を狙うのか、それともウイスキーにこだわりを持っている層を狙うのか。
前者の場合はクセなど不要で飲みやすい味わいを目指していけば良いですが、待っているのは大手との熾烈な競争です。営業力が低く、どうしても割高になるクラフトには勝ち目の薄い戦いです。
後者の場合は質で勝負ということになりますが、こだわり層に認められる個性を出すことが出来れば、大手とも勝負できます。

このあたりはお互いの問題意識と意見が一致しており、50PPMという麦芽を活かしてヘビーピートで仕込もうということ。現クラフトウイスキーメーカーにない重めなタイプを目指していくことで、差別化を図るという狙いから、富山という地方のイメージを込めていければ良いのではないかという話になりました。
すなわち、どこか不器用で、無骨で若干とっつきにくさはあるけれど、根はまじめで一皮向けば親しみやすいという、クセを楽しめるようなウイスキーです。 
仕上がるには長い時間が掛かると思いますが、日本酒などで経営基盤のしっかりしている企業だけに、腰の入った大物手を狙う打ち回しで勝負して欲しいと思います。

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同社は60年以上前から蒸留を続けているため、多少原酒のストックも残されています。
その中でも最長熟成となるのは1960年蒸留の55年オーバーで、樽は赤ワイン(ポートワイン)樽とのこと。そう、今回リリースされるシングルモルトの原酒です。
熟成庫にはこの樽が複数残されており、これらをバッティングし「シングルモルト三郎丸1960」として発売する運びとなったわけです。 
(上の画像右側がその原酒。濃い色をしていますが、50年クラスとは思えない透明感もあります。)

本品は、発売されたジャパニーズウイスキーとしては山崎50年や軽井沢1960を越える日本最長熟成のシングルモルトという事になり、話題を集めそうです。
既にNonjattaが「三郎丸!?なんだそれ!?サイトは日本語かよ!俺たちも飲みたい!(意訳)」と、興奮気味なポストを投稿しています。
また、残されたその他の原酒をどうリリースするかも注目どころ。少なくとも同社の場合はシングルモルトウイスキーとしての知名度があまり高くなく、評判も決して良いわけではないというハンデがあるため、この辺を払拭するための戦略も必要かなと感じています。 

この後、場所を日本橋に移し、樽のことや原酒のことなど、終電過ぎまで長々と濃い話をさせていただきました。
もう一つ面白い話もあるのですが、これは別な機会にお伝えできればと思います。
ウイスキーブームの中、今後熾烈な競争に身を投じることになる若鶴酒造(三郎丸蒸留所)。地域に根付いた「富山ウイスキー」を発信する蒸留所として、注目していきたいと思います。


追記:最近、ブロガーくりりんとしてウイスキー業界関係者とお話する機会が増えてきており、私のようなただのオタクにこのような機会、恐縮しております。
そろそろブロガー名での名刺もつくらなアカンですかね・・・。なんか恥ずかしいですけど。
なお、この記事で使用している写真は、Iさんならびに富山の腐った梨ことモルトヤマのしもの君からご提供いただきました。
同(梨)氏も先日若鶴酒造を見学したそうで、Iさんの熱意と今後の計画に感銘を受けていました。
今後は富山コンビでウイスキー業界を盛り上げていって欲しいですね!

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