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カテゴリ:ウイスキー特級(オールドボトル)関連

ウイスキー特級時代とその魅力について(下)

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ウイスキー特級時代とその魅力について(上)はこちらから。

特級時代の、いわゆるオールドボトルに分類されるスコッチウイスキーについては現行品同様に評価が分かれるところと思います。
特級時代のウイスキーは、1989年の流通であっても26年の月日が経過しているため、経年や環境等による様々な影響を受けて「状態」という要素が関わってきます。
それはある種ワインのようなもの。きちんとした環境で熟成させたワインと、棚に常温で置きっぱなしだったワインでは味がまったく異なります。ウイスキーはワインほど外的要因の影響を受けませんが、長期間においては大きな差となって現れることになります。
状態の悪いオールドボトルはオールドボトルラヴァーであっても閉口モノです。よって以下では"一定以上の良い状態を保ったボトル"である前提条件のもと、その魅力について触れていくことにします。
また、前提条件として除外することになる"状態の悪いボトル"については、そもそも状態の悪さとは何か、そのリスクについて後述することとします。
 

4.特級時代の魅力
当時流通したスコッチウイスキーの魅力は、なんといっても黄金時代とされる1960年代とその前後、1950年代、1970年代初頭に蒸留された原酒が使われていることです。
原酒が使われているということは、シングルモルトであれば当時のハウススタイルをダイレクトに味わえます、その時代の各蒸留所の短熟が飲めるのも魅力的です。
ブレンデッドの場合は混ぜられた中であっても樽感やピートの出方など、類似の特徴を感じることが出来ます。
(特級時代と同時期のグレンゴインと、同蒸留所が使われているラングス。まろやかだがどちらも味わいに芯がある。)

ロングモーンが使われているというブレンドを飲んで、1960年代のトロピカルなフレーバーが出てくるというようなモノには出会ったことはありませんが、例えばセントジェームスのグレンロセスと思しき華やかな香味、ロイヤルサルートのストラスアイラを思わせるまろやかな甘み、キングスランサムのエドラダワー由来のクリーミーなフレーバー、VAT69のピート香、ジョニ黒のスモーキーさ等、楽しめる要素が数多くあります。

また、樽、麦芽、ブレンドであればグレーンの違いにより、当時のボトルのほうがコクやボディが厚く、香味が複雑である傾向にあるのも特筆すべき要素です。


5.特級時代のリスク 
上述でも少し書いていますが、1989年のボトルでも26年、1960年代流通ともなれば50年もの時間が経過しており、いくら蒸留酒とはいえボトルごとに状態の良し悪し、いわゆるオフフレーバーの発生に繋がるリスクがあります。
もともと味、質が悪いボトルは状態が良くてもどうしようもないのですが、その銘柄の特徴であるとしてまだ納得できます。一方で、オフフレーバーの発生によって個性や味を経験する段階にないモノはどうしようもありません。
オフフレーバー発生要因は、ほぼ保存状態によるところが多いと考えられ、キャップ臭、直射日光や気温差による香味の変化が代表的です。
ここでは見た目で判断しづらい、キャップ臭に繋がりやすい種類のキャップと採用されている銘柄を紹介します。
味や形状によってはハズレにくい(ハズレ要素に強い)銘柄があり、逆に上述のキャップやジャグボトルのようにハズレに繋がりやすい要素も存在するため、知識と経験で、事前にこれを回避することもある程度は可能です。

【ハズレに繋がりやすいキャップ】

① 金属張りタイプ(写真左)
使用銘柄:ティンキャップ採用ボトル、オールドパー1970年代~1980年代、ピンチ1960~70年代ごろ、ヘイグ5スター1960年代、チェッカーズ1970年代、ローガン1960年代ホワイトラベル、ボウモア黒ダンピー・デラックス表記、等。

1960年代以前に多いティンキャップや、1970年代に入った後も一部のスクリューキャップで使われている困った子です。仲間内ではデルモンテ臭と言っているトマトジュースを連想させる金属臭の発生に繋がる影響を与えやすいようで、自分が買ってきた中で金属臭が出ていたボトルも大概コイツです。

② 樹脂タイプ(写真右)
使用銘柄:シーバスリーガル1970年代~1980年代、グランツロイヤル12年1970年代、ティーチャーズロイヤルハイランド1980年代、ホワイトホースDX1980年代、等

夏の体育会系の部室の臭い、体育館倉庫の臭いと伝えればだいたい伝わるオフフレーバーで、それに繋がる傾向が強いのがこのキャップ。時期的には1970年代から1980年代にかけて一部銘柄で使われていました。特にシーバスリーガルはコルク仕様を除いて全般このキャップで、猛威を振るっています。

③ コルクタイプ(大口径)
使用銘柄:見ればわかると思いますが・・・プレジデント、ハイランドネクター、ホワイトホースエクストラ、サムシングスペシャル1960年代、モルトのクリスタルデキャンタ系のボトル、等。

オールドボトルの中でも1960年代や一部高級品ではコルクキャップを採用しているボトルが多いので、覚悟を決めて虎穴に虎児を得に行くことも。特に大口径タイプのモノは影響を与えやすく、コルク臭が発生しやすくなります。コルク臭は香りや味の中で異質な木の香味が混じります。ジャパニーズではサントリーのローヤルやインペリアル、響等も採用しており、1990年代のモノでもコルクの影響が出ているものが多いです。


こうしたキャップ以外でも、キャップ臭が発生することはもちろんあります。時間経過である程度抜ける(ごまかせる)こともありますが、これはオールドを買うリスクとして逃れられないモノです。

なお、バブル期にあっただけでなくウイスキーに関する知識も乏しかった日本には、有名無名を問わず多くの銘柄が入ってきており、中には蒸留所を持たない現地零細企業が原酒をかき集めて作ったような自称名門の零細ブレンドもあります。
加えて大手メーカー製造のブレンドであったとしても、1980年代後半の特級時代末期には大きく味を落としているものもあり、下手すると当時の国産以下の味しか出せてないモノもあるため、特級時代だからと盲信するのは、これもまたリスクと言えるかもしれません。
 


6.特級時代の楽しみ方 
昭和の時代に思いを馳せて飲んでください・・・なんてことは言いません。っていうか1984年生まれの私にそのような感情はありません。
一つは飲み方で、シングルモルトはなかなか難しいですが、流通量の多いオールドブレンデットはぜひロックやハイボールを試してほしいと思っています。

当時のボトルは現行品に比べて味が濃く、ボディも厚いものが多いため、人によっては逆にそれがネックになる場合もあります。ヒネ香といわれる古酒独特のフレーバーも好き嫌いが分かれます。
これらがハイボールにすると程よく整えられて、バランス良く味わえるように感じています。
現行品の安ブレンドなどで混じるえぐみ、のっぺりとした余韻の無さが感じられないのも魅力です。

また、飲み方としてもう一つ上げるならば、オールドボトルばかり飲むのではなく、現行品も飲み、ちょい古も飲み、ボトラーズも飲み、その中で短熟長熟も経験する・・・とするBARでの飲み合わせや家飲みのローテーションに加えるのが、個人的には一番いいかなと感じています。飲み比べをしてみるのも良いですね。
様々な時代の特徴を日ごと、グラスごとに感じて、どこに共通点があるか、どういう要素が自分の好みなのか、理解を深めていく。特級時代のオールドボトルにはそうした楽しみ方の一翼を担う、魅力があるジャンルだと思っています。

ウイスキー特級時代とその魅力について(上)

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本ブログでもたびたび登場する「ウイスキー特級」として総称されるものは、言うまでもなく日本独自の制度です。
1989年4月以前、日本におけるウイスキー販売の現場では、2つの酒税が課せられていました。
1つは使われた原酒の量によって税金を定める従量税。もうひとつは価格によって税金を定める従価税。
「酒税負担の公平性」を掲げての制度でしたが、言ってしまえば2重課税であり、当時のウイスキー価格が今よりも高かった原因のひとつでした。
ウイスキーに限らず多くの酒類は、その国の酒税関連の法律の影響を色濃く受けます。当時の日本にはスコッチに限らずバーボン、カナディアンなどのウイスキーが輸入されており、それらは例外なくこの酒税法の影響を受けました。1989年の改正から26年が経った今日でも、当時の遺産に出会うことがあります。
今回は10月18日のオールドブレンデットテイスティング会に先立ち、会で取り上げるスコッチウイスキーを中心に、この制度についてもブログ記事にまとめます。


※本当はこれら全てテイスティング会までにまとめたかったのですが・・・。
仕事やなんやと色々あり、まとめきることが出来ませんでした。


1.従量税と従価税
当時の従量税では、ウイスキーを原酒含有率で3つの等級に分けて、それぞれの等級に応じた税金を徴収していました。この等級は、1943年から始まり、当時は第3級から第1級となっていましたが、2度の変更の末、1953年に2級、1級、特級へと変更されます。これが、皆様ご存知の"ウイスキー特級"です。
各等級で定める原酒(モルト、グレーン)の含有率は時代によって微妙に異なりますが、1962年の酒税法改定後は以下のように定義されています。

【各級別の原酒含有率】
2級:10%未満
1級:10%以上20%未満
特級:20%以上

特級であればあるほど原酒が多く使われており、一概に旨いとはいえませんが、質の良いウイスキーであるということになります。1962年以前は上から30%以上、30%未満5%以上、5%未満となっており、"3級5%未満"の響きは、マッサンを見られた方は耳に残っているかもしれません。

従価税については諸外国から厳しい批判の目で見られていたため、上述の従量税以上に多くの変更が行われています。そのためここでその税率の遍歴について語ると大変長くなるため、代表的な事例を紹介いたします。
1980年代中ごろの事例では、従価税は価格に対して150%、220%の2本立てでした。

【従価税の事例】
3000~4000円クラスの普及価格帯のウイスキー(ジョニ赤、カティサークなど)は、税率150%で徴収。
高級価格帯に該当するウイスキー(ジョニ黒、バランタイン17年等)ついては220%で徴収。

価格は外貨レートによって決まる部分もあるため、円安に振れると全てが220%になってしまうこともあり、輸入業者が通関を止めることもしばしばあったとか・・・。

これら従量税と従価税は諸外国から日本市場開放のための圧力を受けながら、多くの調整をもって続けられ、1989年4月1日の酒税法改正により、現在のアルコール度数によって税金を定める形式に変更されます。


2.ウイスキー特級の意義
1.で述べた内容は、ほぼ日本のウイスキーのための制度であったと言っても過言ではありません。
そもそもスコッチウイスキーは現地法律の下、3年以上の貯蔵年数、スピリッツカラメルと加水以外の混ぜ物不可という厳しいルールで製造されていました。2級、1級という区分は本来スコッチウイスキーには不要、今よりも輸送コストがかかる関係から従価税でもハンデがあったと言えます。
(一部なんの手違いが「1級表記」で輸入されたモノもありましたが、基本的には特級に該当します。)

ウイスキー製造の黎明期にあった当時のジャパニーズは、仮にモルト原酒やブレンド技術はスコッチと同等であったとしても、グレーン原酒は大きなハンデがありました。
日本で初めて本格的にグレーンが用いられるようになったのは、ニッカウイスキーのカフェスチル(1963年~)で、サントリーにいたっては知多の1972年稼動後です。当然そこから熟成が必要となり、量もすぐには揃いません。経験論ですが、日本の各社が真っ当なブレンデットを量産できるようになったのは、グレーンの質(熟成)と量が揃う、1980年代後半から1990年代に入ってからだと感じます。
それまではというと、荒々しいモルト原酒をブレンド用アルコールで割って香味を薄める、本場スコッチとは大きく異なる製法が取られていました。当時のブレンデットウイスキーを飲み比べると、個人の好みはさておき、同じ特級であっても風味の点、味の広がりなどでスコッチウイスキーより劣るものがほとんどです。原酒100%ウイスキーに対して、20%がモルトで80%がブレンド用アルコールと水のウイスキーってお察しくださいレベルです(もちろんふんだんに原酒を使って作られていたモノもありますが、一部高級品に限られます)。原酒含有率のさらに低い、1級、2級については比べるまでもありません。

また、1989年以前、特に1970年代、1980年代初頭は熟成年数から逆算するとほぼ1960年代蒸留となり、スコッチモルトウイスキーにとって黄金時代であったことも、ウイスキーの質に大きく影響しています。


3.スコッチにおける特級
ではウイスキー特級がスコッチウイスキーに対してなんら意味を成さないかと言うと、それは現代において大きな意味を持ちます。
上述のとおりウイスキー特級を位置づける従量税(及び従価税)は1989年までの制度であり、この表記があるボトルは1989年以前の流通であると言うことは、もはや説明するまでもありませんが、それ以外にも度重なる酒税変更がもたらした変更点が、ラベル遍歴を追わずとも、各銘柄の流通年代推定を容易にしています。
ここではそうした変更点のうち、大きなものをまとめて紹介します。

(1)ウイスキー特級(~1989)
上述のとおり、"ウイスキー特級"は1989年4月1日をもって廃止されるため、特級表記があれば同時期以前の流通となります。また、日本市場向けとして1980年代以降にラベルに直接ウイスキー特級表記が印字されるボトルが多く出てきます。
それまでは現地向けボトル等に紙で特級表記を貼り付けるのが一般的でした。

また、1962年の酒税法改正以前は、ウイスキーの区分が日本の酒税法に無く、雑酒区分であったため、"雑酒特級"の記載が用いられています。 


(2)通関コード(仮称) (~1987あたり)

Y○○○○、などアルファベット1~2文字と数字1~5桁、または漢字1~2文字と数字の組み合わせが級別表記とあわせて記載されています。正式な名称がわからないため、ここでは通関コードと呼んでいます。
アルファベットと漢字は税関の略称で、OK:沖縄、K:神戸、NY:名古屋、Y:横浜、T:東京となります。
漢字の場合、東:東京、大:大阪、沼津:沼津がそれぞれあったように思います。


これは税関作業を管理する際に、企業と品目を簡易表記するために割り当てられていたものですが、先着順で割り当てられたため、数字が若ければ輸入元とボトルの歴史が長いということになります。
ただし、ホワイトホースなどは昔から企業とボトルの組み合わせが変わらないため、1980年代のボトルでも数字が3桁と若い記載になる例があるなど、必ずしも古いボトルとはなりません。

なお、1987~1988年ごろからこの記載が省略されます。
同時期にバーコードが普及していたことなどを見ると、税関の管理システムに変更があったと考えられます。


(3)従価表記について(物によっては ~1980頃)

従価税を納めた証としてラベルに記載されていますが、1980年代に入ると記載されたラベルと記載されていないラベルが出てきます。
1979年には国税庁に洋酒輸入協会が従価税表記の記載の省略を求めています。
以下は同じ時期、コールドベック時代初期の流通のジョニ赤とジョニ黒ですが、従価表記の有り無しが見られます。
この後、色々なボトルを見ていくと、概ね高級価格帯のものは1980年代に入っても記載が続きます。
推測ですが、上述の高級価格帯の税率を納めたものは記載されて、普及価格帯の税率のものは記載を省略したのではないかと考えています。

時代判定材料としては弱いですが、記載があれば高級価格帯であったか、1980年代以前の古いボトルであるということになります。


(4)容量の推移について(760ml 1980年ごろ)
スコッチが採用するヤードポンド法と、日本が採用するメートル法の関係で、代表的なウイスキーの容量(4/5QUART)がリットル換算すると約760mlであったことから、日本では流通したボトルは概ね760ml表記となります。
1980年代に入り、メートル法の普及で容量が750mlに統一されると、日本でも750ml表記の裏ラベルとなります。またこの頃流通していたリッタークラスやガロンボトルも容量に変更が見られます。
しかしこれはモノによっては1970年代でも750ml流通のものも存在するため、そのほかの要素とあわせて判断することになります。


(5)JAPAN TAX(1953~1974)
(1)のウイスキー特級と並んで決定的な判定材料になる要素のひとつです。
酒税法上は酒税証紙制度と呼ばれるもので、1953年に制定され、洋酒輸入自由化で輸入量が増えたことを背景に1974年にその役目を終えました。 

この証紙は該当期間に通関した洋ウイスキー全てに貼られており、時代を見極めるうえで大きな指標となります。

こうした(1)~(5)以外にも細かい変更点はありますが、ネット上に多くの情報もあるためいろいろ調べてみてください。
また、これら旧酒税法の影響を受けたのはスコッチウイスキーだけではなく、当時輸入されたバーボン、カナディアンなど全ての酒類が対象であり、これらについてもほぼ同様の整理が適用されています。(4)以外はほぼスコッチと同じ見方が出来ます。

長くなりましたので。。。続く!

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