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セントジェームスはBBR社(Berry Bros & Rudd Ltd )がリリースした、当時ハイエンドクラスのブレンデットウイスキーです。
リリース期間10年ちょっと、これは1980年代のウイスキー不況の後、シングルモルトブームが始まったことから同社における原酒の使い方が変わっていったからだと思われます。
ちょうどバブル期にあった日本には比較的在庫があるようで、オークションを中心にぽろぽろと出物があります。
知ってる人は知っている。はっきり言って美味いボトルです。

St.James's
12 Years old
Blended Scotch Whisky
Berry Bros & Rudd Ltd
1980's
43% 750ml

構成原酒:グレンロセス など
評価:★★★★★★★(7)

香り:爽やかでモルティーな香り。麦芽とナッツの香ばしさ、ドライフルーツ、シェリーオークのニュアンス。
フルーツはドライアップル、サルタナレーズン、ほのかに洋梨や青肉メロン。
最初は少しちぐはぐな感じがあったが、時間と共にまとまってきて非常に華やかなアロマ。

味:モルティーで華やか、林檎や白ぶどうの爽やかな香味、薄めた蜂蜜、乾燥した麦芽の香ばしさ。
心地よいドライな口当たりでコクもあり、微炭酸のを思わせるスパイスが口の中を刺激する。
フィニッシュはドライで華やか、オーク系のウッディネスとほのかなピートがほろ苦い余韻に繋がる。

ほとんどモルトウイスキーなんじゃないかという、モルト含有率の高い構成のブレンデットウイスキー。
注ぎたては少し荒さが香りにも味にも見らるものの、飲み進めていくうちにまとまって、華やかな香味が引き出されて、ある種の陶酔感も感じる。
飲み方はストレートで時間をかけて飲んでも良いが、ロックも中々悪くない。ハイボールは非常に爽やかですっきりとした飲み口。上等なスパークリングワインのようで、風呂上りや暑い日の1杯目にゴクゴク飲みたい。


シェリーでカラメルでスモーキーでこってりしたブレンドも好みですが、こういう華やかで原酒の旨みそのままというブレンドのほうが、自分の中で高得点が付きやすい傾向があります。
構成原酒はBBR系の蒸留所と思われますが、BBRそのものが多くの原酒を持っているので、キーモルト以外は何が含まれているのかわかりません。おそらくキーモルトはグレンロセスでしょう。独特なドライさ、アーモンドのようなナッティーなフレーバーは、グレンロセス由来と言われると納得です。ちょうど自宅にオフィシャルボトルのグレンロセス1975が開いてるのですが、飲み比べると共通点を感じます。最近BAR飲みしたオフィシャル1972にも近い華やかさがありました。
かつてグレンロセスはブレンド用原酒として非常に高い評価を得ていました。推測どおりなら、それをふんだんに使ったセントジェームスは同社のフラグシップにふさわしく、ブレンダー垂涎のブレンデットウイスキーだったといえます。

BBR社から当時リリースされていたブレンデットは、カティサーク、セントジェームス、ベリーズベスト。それぞれキャラクターは異なるのですが、どれも品質の良いブレンドだったように思います。
どれがいいかと言われると悩ましい話ですが、入手しやすさと完成度ではカティ12年の1970年代流通と、このセントジェームス12年1980年代流通は双璧。
ベリーズベストは歴史もある旨いブレンドですが、流通量の少なさと価格がネックで・・・。
ちなみに1970年代流通のセントジェームスはノンエイジでしたが、12年表記の序盤に感じられる荒さがなく、よりスムーズで華やか、こちらも文句無く旨いウイスキーです。市場流通価格を見ると少々値段はしますが、機会があればお試しください。

BBR社はロンドン、セントジェームス街にショップを構えており、その点でもBBRにとっては特別な銘柄だったことが推察されます。なお、セントジェームスという銘柄は、このほかイングリッシュウイスキーやラムでもありますが、本品とは無関係です。