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2019年10月

ノブクリーク 2004-2017 発売25周年記念 60.8%

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KONB CREEK 
SINGLE BARREL 
25th ANNIVERSARY 
Aged 13 years 
Distilled 2004 
Bottled 2017 
750ml 60.8% 

グラス:リーデルテイスティング
時期:不明
場所:BAR Kitchen 
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:ウッディでメロー、やや艶っぽさのある甘いアロマ。メープルシロップやシナモンアップルパイ、微かにドライクランベリーやハーブのアクセント。溶剤を思わせるニュアンスも微かにあるが、全体的にはチャーオークのアロマが主体で濃厚な仕上がり。

味:メローでリッチ、とろりとした口当たり。焦がしキャラメルの甘味とほろ苦さに、バニラ、ダークオレンジからウッディなフレーバーへ。濃厚だが度数ほどのアタックはなく、熟成を感じさせる。
余韻はドライでウッディ、甘いオークとグレーンのアロマが口内に揺蕩う。微かにライムのような柑橘を思わせる酸味を感じた後、スパイシーでビターなフィニッシュが長く続く。

熟成感があってリッチな味わいが楽しめる良質なバーボン。リリースにあたって一樽ずつ特別に選定されたという前置きに違和感はなく、オークフレーバーにエグミの少ない艶やかな甘さのあるタイプ。ノーマルからただ熟成が進んだだけのフレーバーではなく、樽そのものもグレードの高いものを使っているのではないかと感じられる。作り手のこうあって欲しいという理想を形にしたような、真打と言える1本。


ノブクリークが発売された1992年から25周年を記念し、2017年にリリースされたシングルバレルの特別仕様。6代目マスターディスティラー ブッカー・ノエ氏が仕込んだ原酒の中から、7代目マスターディスティラー フレッド・ノエ氏が特別に選定した、複数のえらばれし樽(原酒)が、それぞれシングルバレル仕様でボトリングされています。

原酒のマッシュビルは通常のノブクリークと同じコーン75%、ライ13%、モルト12%の組み合わせですが、熟成年数は先に書いたように12年から13年の間で、度数もロット毎に微妙に異なる形。
その通常のノブクリークからは、シングルバレルで9年熟成60%(写真下)が通常リリースされており、バーボンの傾向からすると同じベースのロット違いで、そこまで大きく味が変わるということはないように考えられますが、今回のボトルは格が違いますね。
通常品からえぐみなどの不要な部分を少なくし、さらに樽由来の香味の良い部分を豊かにしたような、さながら影打ちと真打ちの関係にあるように感じられました。

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原酒と熟成環境が同じなら、もはや違いは樽に由来しているとしか考えられません。
熟成年数が3~4年違うじゃないかというのはその通りですが、通常品をさらに寝かせてもウッディさがや渋味が増すだけで、こういう仕上がりにはならないと感じます。
またドライなことを言えば、ジムビームに数多ある樽の中から数樽を選ぶようなことは現実的でなく、最初から特別リリース用に考えられて仕込まれていたなかで、度数60%オーバーを維持していた原酒をチェック(それでも膨大な数がありそうですが)という選定だったんじゃないかと推察します。

ボトルのデザインはノブクリーク伝統の禁酒法時代をインスパイアしたスクウェアボトルに蝋の封印と変わらず。
それよりもシングルバレルで長熟で、60%オーバーのバレルプルーフで限定品というスペックながら120から130$程度というのは、結構頑張っているというか愛好家としてはありがたい限りです。(日本の並行輸入品の価格は結構のせられてますが・・・。)
もしアメリカに行く機会があったら、お土産に購入しようと候補に加えた1本でした。


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今日のオマケ:ヴオーヌ・ロマネ 2013 ドメーヌ・ジェラール・ミュニュレ

香り立ちはいかにもというクリアなベリー感、葡萄の皮と仄かに土っぽさや湿ったような木々の香りが混じる。口に含むと赤いベリー系の果実風味からチャーミーな酸が主張。若干粘性のある質感が舌の上に感じられ、思ったよりもボディがある。余韻はじわじわとスパイシーでフレッシュさはあるが、タンニンは過度に主張せず極め細やか。
はちみつのかかったブルーチーズとの相性が抜群。。。

たまには仏モノ・・・というわけではなく、お付き合いでボトル1本割り勘飲み。結構痛い出費だが、事情により致し方なし。
正直自分のワインの知識だと、ヴォーヌ・ロマネは作り手名が把握しきれていないレベルなのですが、ファンの多い銘柄のようですね。「これ旨いんですよ!この店のセラーにあるなんて!」と嬉々として語られていた、相手方の反応が非常に印象に残っています。
2013年は平均的な年という評価ですが、それに加えて格付け無しのグレードというのも、早飲みにちょうど良い仕様だったのかもしれません。
酸の主張はやや強めでしたが、全体のなかではクドいものではなく楽しめる範囲で、全体の作りは上質というか丁寧。食事と合わせて堪能させてもらいました。

フェイマスグラウス セントアンドリュース オープン 2000 記念ボトル 40%

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THE FAMOUS GROUSE 
ST ANDREWS OPEN CHAMPIONSHIP 2000
RESERVE SCOTCH WHISKY 
500ml 40%

グラス:国際規格テイスティング
場所:自宅@BAR 1two 3さんから頂き物
時期:不明
評価:★★★★★(5)

香り:華やかでオーキーな熟成香が前面にあり、合わせてはちみつや穀物系の甘味、これがあまり持続せず、干し草やおが屑、ドライで軽い香味要素があとに残る。

味:飲み口はスウィートで蜂蜜や白粉っぽい麦芽の要素、加熱したリンゴ、微かにオークの華やかさ。合わせてドライでピリピリとした刺激を伴う。余韻はほろ苦く、後半に感じられた刺激がそのまま残るが、同時に熟成したグレーン由来か穀物系の甘味のあるフレーバーが張り付くように感じられる。

トップノートに若干キャップ系のニュアンスがあるが、それを除くと熟成したハイランドモルトを感じさせるモルティーさと熟成感。飲み口もマイルドでバランスがとれていて、良いグレーンを使っていることが伺える。単なるNASのフェイマスグラウスではないようだ。一方でモルト由来の要素が長く続かないのは、やはりブレンデッドだからなのだろう。

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5年に1度開催されている、全英オープンゴルフ、その2000年大会の記念リリース。
先日はホワイトホースのアメリカズカップ(ヨット)の公式ウイスキーをレビューしましたが、今回はゴルフです。ただ、元々ゴルフはイギリス発祥、あるいはスコットランドに起源説もあるくらいで、当然ウイスキーとの関連エピソードは少なからずあり。。。フェイマスグラウスに限らず、ゴルフに関連するボトルはこれまでも数多くリリースされてきました。

中でもセントアンドリュースの存在は特別なもので、ゴルファーにとっては憧れのひとつ。
そのブランド価値たるや1970年代にセントアンドリュースという銘柄が輸出をターゲットにリリースされたところ、中身はどうってことない普通のブレンドなのに日本市場で大人気となって、ウイスキー冬の時代を乗り越えて現在も販売され続けていることからも伺えます。

さて、今回の記念ボトルですが中身は普通のフェイマスグラウスかと思いきや、どうもそうではない印象。当時のスタンダード品より熟成感があり、内陸系モルト由来のフルーティーさが備わっています。
フェイマスグラウスというと、ハイランドパークやマッカランがキーモルトとして有名ではありますが、該当するフルーティーなフレーバーはどちらとも異なるタイプ。2000年の同銘柄は業界大手グループのひとつエドリントン傘下に移っていて、同社の所有するグレンロセス等の内陸原酒がキーになったブレンドではないかと考えます。

以上のように味はそれなりですが、全英オープンゴルフの記念ボトルであることと、ミレニアムリリースでもあることも合わせてレアリティが高く、海外のオールドボトル市場ではそこそこの値段がついているようです。
他方でこのボトルに使われているキャップの裏地は例の白い悪魔(樹脂)であるだけでなく、下の写真のように外箱が横置き前提のようなデザインであることから、現存するボトルはかなりの確率でキャップ臭がついているのではと。。。
今回のボトルもほんのりとそれらしいニュアンスはありましたが、許容範囲内だったのは外箱がどこかの段階でなくなって、縦置きに切り替わっていたからだと考えられます。
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以前トロピカルなバラン17年というレアなロットを経験させていただいた、愛知県安城市のBAR 1 two 3さんから
「面白いボトル手に入ったんですが、飲んでみますか?」
とまたも声がけいただき、頂いたままになってしまっていたフェイマスグラウス。
レビューの通り、普通のフェイマスグラウスかと思ってましたがそんなことはなく、ワンランク上の雷鳥だったのは素直に驚きでした。
また外箱とキャップの難点がクリアされた偶然の1本であったことも、さながらアタリのオールドパーのよう。今回も貴重な経験をありがとうございました。

グレンエルギン 32年 1971-2003 リミテッドエディション 42.3%

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GLEN ELGIN 
32 YEARS OLD 
POT STILL MALT WHISKY 
Distilled 1971 
Bottled 2003 
700ml 42.3% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:華やかでフルーティー、熟成を感じさせる角の取れたオーク。蜂蜜レモン、あるいは林檎のコンポートのしなやかな甘みと酸。ナッツ、乾いた麦芽、徐々に淡いスモーキーさも伴う。

味:香り同様のフルーティーさで、林檎の蜜や熟した洋梨、しっとりとしたオーク由来の甘味と適度なウッディさが広がる。口当たりは柔らかいが、ボディ感は程よく備わっていて、奥には麦芽風味とピートフレーバー。
余韻は軽やかにドライ、華やかさと淡いスモーキーさが染み込むように残る。

リフィルのオーク樽系統のフレーバー主体で、エステリーさも伴うフルーティーなモルト。ただの度数落ちという感じではなく、香味とも柔らかくボディもそれなりで、枯れた感じは強くない。むしろ穏やかな麦芽風味と微かなピートフレーバーが長い熟成期間を経て混じりあい、オールドスペイサイドらしさを形成している。手入れは不要、ストレートで。

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ディアジオがモルトウイスキーのブランド価値向上を狙って、2000年代前半に所有する銘柄の中からリリースした、現在のスペシャルリリースのはしりと言えるリミテッドエディション。1970年代という黄金時代の余力を残す蒸留時期と適度な熟成年数、そしてディアジオらしい酒質を活かす樽使いとバッティングで、この時期のものは出来の良いボトルが多いです。

このボトルをスペックだけで見ると、度数落ちでドライな刺激と線の細い枯れた味わいを予感させますが、実際は甘味と口のなかで膨らむ酒質のボディを適度に残しており、長期熟成で低度数ながらバランスのいい仕上がりです。
樽はサードフィルくらいのアメリカンオークのシェリーバットや、リフィルのホグスヘッド等のバッティングと推察。ファーストフィルのように過度な主張がないだけでなく、一方で加水で仕上げたような中盤以降のフレーバーが潰れたような構成ではないので、度数は自然に下がったが元の酒質が厚いことが、削りしろとして作用した結果ではないかと推察します。

かつてのグレンエルギンはワームタブによる古典的な作りもあって、麦芽風味に厚みのある味わいが特徴でした。手に入りやすいところでは、1990年代に流通していたホワイトホース表記のグレンエルギンを飲むと、それがわかりやすいと思います。
なお、現代のグレンエルギンは酒質が軽くなっただけでなく、ノンピート仕様にも切り替わっていて、1980年代以前時の仕込みのものとはキャラクターが異なります。
いつから切り替わったかは不明。ただ1992年に蒸留所の改装工事が行われており、その辺りからなら時系列的には違和感ありません。

いずれにせよこのボトルに感じられる古典的なフレーバーを構成しているのは当時のピート、そして適度に厚みを残した酒質。突き抜けないが、いぶし銀な存在感があるエルギンらしい1本です。

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今日のオマケ:トロ・コールセッコ・モンテルプチアーノ・ダブルッツォ・ルビーノ 2005

メーカー表記は中濃とあるが、飲んだ印象はしっかり濃いめで、ブラックチェリーやプルーンのような甘味とほのかに梅干、じわじわタンニン、湿った落ち葉と若干鰹節っぽさに通じる熟成香。経年を経て果実味を残しつつも、まとまった味わい。
新しいヴィンテージだと、酸味にもう少し勢いがあり、タンニンもしっかり主張する感じではないだろうか。何れにせよ、イタリアらしく気軽に楽しめるワイン。

イタリア、アブルッツォのデイリークラスワイン。コスパの良さが魅力と評判で、国内でも広く販売されています。
そして個人的にこれは"やってしまったワイン"。何がというと、通常品は750mlで販売されているところ、このボトルがダブルマグナムサイズ(3000ml)だったため。
シャンパンならわかりますが、よもや赤ワインでこのサイズがあるとは。。。購入はヤフオクで3本セット2000円弱。通常サイズのボトルを買ったと思っていたので、届いたボトルを見て驚愕。。。まさかの3リットル3本。
酒3本にしては過剰な大きさのダンボールとその中身は、なかなか衝撃的な光景でした。
ただし味は問題なかったので、会社の飲み会等でありがたく使わせて貰った次第です。

カミュ XO ボルドリー 40%

カテゴリ:
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CAMUS 
COGNAC 
Borderies XO
700ml 40% 

グラス:リーデルコニャック
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:微かに溶剤を思わせるアルコールのアタックはあるが、ベースは甘やかでキャラメルや紅茶、熟した杏子、オーク由来のマスカットを思わせる華やかさもあり、ベタ甘いだけのコニャックとは異なる上質さを感じさせる。

味:柔らかくスウィートな口当たり。軽い粘性とコクのある甘さが舌に絡み、薄めたオレンジママレードやケーキシロップ、ほのかに甘栗。鼻腔には華やかさと同時に少し土っぽさに通じる熟成香を運んでくる。
余韻にかけて徐々にウッディでビター。軽くピリピリとした刺激とあわせ、香り同様に華やかなフルーティーさも感じられる。

一口目は物足りなさを感じるが、徐々に甘みとウッディさが蓄積し、口に含む毎に満足感が増す。負担なく飲み進められるバランスの整った仕上がり。まさに癒し系。ウイスキー好きの琴線で言えば、アクセントになっているオーキーなフルーティーさも魅力で、秋口に飲むには丁度良い。
なおコニャックソーダにすると、品の良い甘い香りと共に、薄いけど薄くないような、不思議な飲み口の食中酒へと変貌する。

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コニャック特有とも言える派手な外装が目を引く、カミュのシングル・クリュ・コニャック。同社がボルドリーに所有する畑でのみ取れた葡萄を使って仕込まれ、リムーザンやフレンチオークの樽で20年程度の熟成を経てリリースされているそうです。
大手銘柄らしくカラメルやウッドチップでの調整と加水を経ており、華やかでフルーティーというよりは、それらを内包しつつも甘口で主張の穏やかな仕上がりです。

先日、マーテル・コルドンブルーのレビューを書いた時に触れましたが、我が家にある癒し系なボトルはこれ。定価は15000円弱とそれなりですが、リユース市場では送料入れても半額以下のケースがほとんどで。。。一時期5000円を下回る時もあって、それは流石に安すぎだろって感じでした。ただ現在の相場だと、ボトルの装飾代を除外して純粋に中身の価格としては妥当だなと感じています。
おそらくギフトでもらって飲まずに流出というパターンなのでしょう。死蔵するような酒でもなく、ありがたく頂いております。

さて、ウイスキーとは異なり、コニャックは土壌等の違いから6つの生産地域で格付けが存在していて、ボルドリーは第3位にあたります。
それよりも上位は、プティット・シャンパーニュ、そして最上位のグランシャンパーニュ。勿論生産者や葡萄品種による作りの差もあって、グランシャンパーニュだから必ずしも良いコニャックになるというわけではありませんが、個人的にはボルドリーまでが単一で楽しめるクオリティの生産者がいる印象。今回のボトルで面白いのは、それを大手メーカーがリリースしているという点にあります。(カミュは生産規模的に中堅メーカーである、というツッコミはさておき)

量産品であるためカラメル等での調整、誤差補正はそれなりに行われていますが、舌を包み込むようなコクが杯を重ねる程に適度な重みを感じさせ、熟成由来の華やかなフルーティーさも感じることが出来る。ボルドリー地域特有の「スミレの香り」は、この重さのある熟成香のことなのか。。。?
この辺はよくわからないのですが、上述の甘やかな味わいのなかでウッディさが強く主張せず、大手メーカーらしいバランスでクイクイ飲めてしまうのも癒し系らしい魅力だと思います。

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以下余談。甘味の強いコニャックあるあるが、どうしても折れてしまうコルク。
っていうかカミュ・ボルドリーは2000年の誕生で、日本流通はそこからさらに近年となるため、そんなに古いボトルはないから大丈夫と油断してました(汗)

口径の大きなカミュはシャンパンコルクがジャストフィット。ですが見た目も大事なので、折れたコルクを取り除いて、シャンパンコルクの中をくりぬいて接着剤と共に装着。
無事にリペア出来ました。
先日のブラントンもそうですが、シャンパンコルクのストックはウイスキー飲み必須のアイテムですね。

ホワイトホース 12年 アメリカズカップ 1987 記念ボトル 43% 特級表記

カテゴリ:
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WHITE HORSE 
AGED 12 YEARS 
RPYC AMERICA'S CUP 1987 
LIMITED EDITION SPECIAL BLEND 
750ml 43% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:ザラメやキャラメリゼを思わせるスウィートでドライなアロマ。合わせて干し草を思わせる軽い植物、おこし、淡いスモーキーさを伴う。

味:スムーズな口当たり。鼈甲飴や薄めた蜂蜜のような甘味からドライでスパイシーな刺激。序盤はプレーンなフレーバー構成だが徐々に染み込むようなピートが主張し、ほろ苦いスモーキーフレーバーが長く続く。

近年寄りな構成のブレンド。同じ12年熟成のローガンとは異なる構成で、ボディはやや軽くグレーンの主張と、モルトはクレイゲラヒやグレンエルギンがメインという印象で、ラガヴーリンは隠し味。言わば同時期のスタンダードのホワイトホースをそのまま12年熟成にしたようでもある。

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ヨットレースの世界最高峰と言われる、アメリカズカップの公式ウイスキー。ゴルフなどではこの手のリリースがよく見られますが、ヨットの大会では珍しい・・・というか、調べる限り後にも先にもアメリカズカップでウイスキーがリリースされたのは、この1987年だけのようです。
なぜ1987年のアメリカズカップなのかというと、それはおそらくこの年の大会運営が、オーストラリアのRPYC(ロイヤル・パース・ヨット・クラブ)だったことと、大会そのものの話題性の高さが経緯として考えられます。

当時のイギリスとオーストラリアの関係の強さは言わずもがなですが(1986年までオーストラリアはイギリス国籍であり、完全に独立していなかった)、話題性についてはこの大会の歴史に少し触れる必要があります。
そもそもアメリカズカップはアメリカの大会ではなく、1851年の万国博覧会で開催されたヨットレースで、アメリカのチームが優勝してヴィクトリア女王からカップを下賜されたことがルーツにあり。その後、この優勝カップは優勝したチームが次の大会まで保持するものとして、国際大会に発展してきた歴史があります。

アメリカ号のカップ争奪戦(AMERICA'S CUP)として大会が初めて開催されたのが1870年。以降、この優勝カップは100年以上アメリカチームが保持し続けていましたが、連勝記録がはじめて途切れたのが1983年の第25回大会。ニューヨークヨットクラブをオーストラリアのRPYCが破ったことで、大会史上はじめてアメリカ国外にカップが流出することとなり、1987年第26回大会はアメリカ側にとってのリベンジマッチとして注目を集めていたのです。
この大会はアメリカのチームが勝利し、カップを奪還。絶対王者の敗北から勝利へ、苦難の物語は小説や映画にもなっています。

そんなわけで、本ボトルはヨット競技が好きな人にとってはたまらない1本と言えますが、ウイスキー愛好家視点で注目すべきは12年表記とブレンド構成です。
当時ホワイトホース銘柄から12年熟成のウイスキーはリリースされておらず、使われていたのは上位グレードのローガンのみ。少し後、1987~1988年頃には日本市場向けでラガヴーリンの効いたデラックス12年が発売されますが、デラックス12年がローガン系統だったのに対し、こちらは当時のホワイトホースのベクトルそのままに、スモーキーさを抑え、内陸原酒とグレーンを主としてバランスよく作ってあるように感じます。

ラベル張り替えではなく、特別にブレンドされたものなのでしょう。ホワイトホース社(UD)の本気が感じられるようでもあります。
ただ当時のホワイトホースはアメリカ市場で苦戦していた傾向があり、表記から流通時期を推察するとボトルが日本に流通したのは大会後。。。ということは、在庫になってしまったのかもしれません。
1988年の第27回大会でホワイトホースがリリースされなかった理由は、推して知るべしといったところですね。

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今日のオマケ:ジャクソンエステート・アンダーソンヴァレー ピノ・ノワール 2015

口当たり柔らかく、チェリーやクランベリー、ザクロら赤い果実の熟したようなフレーバーはシロップのような甘味も感じさせる。飲みやすいしらしさもある美味しいカリピノだが、水っぽさというか、やや変化に乏しい。余韻のタンニンも口当たり同様に柔らかく、ほのかにハーブ香を伴うソフトなフィニッシュ。完全に早飲み系で、あまり熟成向けではないのかも。

ケンダルジャクソンの単一畑のリリースで、上位グレードがジャクソンエステート。単一故に骨格のしっかりした味わいかと思いきや、一口目の印象はかなりソフトでちょっと肩透かし気味。その後時間経過で酸も出てバランスが取れてきましたが、全体的に穏やか過ぎるかなぁと。
例によってアメリカンな肉料理と合わせましたが、これはちと肉が勝ってしまったような(汗)

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