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2019年08月

厚岸 ニューボーン 第4弾 ブレンデッドウイスキー 48%

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AKKESHI 
NEW BORN 2019 
FOUNDATION #4
Malt and Grain Spirit 
Bottled July 2019 
200ml 48%

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封直後
評価:ー

香り:ツンとした刺激。ウッディでほのかに焦げ感のあるオーク。レモングラスや柑橘の柔らかい酸と、微かにニッキ、バニラや蒸かした穀物を思わせる甘さも伴う。

:口に含むとケーキシロップのような色の濃い甘味と焦げたウッディさが感じられた後で、すぐに若い原酒由来のレモンなどの黄色い柑橘を思わせる酸味、徐々に和生姜。ボディはミディアム程度、樽感で多少底上げされており、スパイシーさと共にほうじ茶や土っぽいほろ苦さを感じるフィニッシュへと繋がる。

全体的に若い構成で、余韻にかけて粗さもある。端的に言えばそうしたブレンドだが、これまでのニューボーンと異なり若いなりにバランスの良さ、フレーバーの繋がりも見られる。グレーンやシェリー樽由来の甘味が全体を整えているのが、若い原酒主体だからこそそれが分かりやすい。少量加水するとまとまり、バランスが良くなるとともに奥に潜んだピートが微かに感じられる。

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厚岸蒸留所の今を伝える、ニューボーンFOUNDATIONSシリーズの最終リリース。
これまでモルトスピリッツとしてノンピート、ピーテッド、そして北海道産の樽材を活用するミズナラ樽熟成のリリースがありましたが。これらはすべてその場限りで仕上げたようなものではなく、今後同蒸留所がリリースするウイスキー(ハウススタイル)の種とも言える、先を見据えたものでした。

一方で、今回リリースされた第4弾は、モルトではなくブレンデッドです。
これまで熟成させてきた14ヶ月から30ヶ月熟成のモルト原酒に、スコットランドから輸入した未熟成のグレーン原酒を、モルト同様に厚岸の地で熟成させてブレンドしたという、作り手の拘りが見える意欲作。
ラベルに「新しい試み」と書かれている通り、未熟成のグレーンを熟成させて使うことと、ニューボーンジャンルでブレンデッドのリリースは、自分が知る限り前例がありません。
(設備の限られるクラフト蒸留所が、グレーンを外部調達するのは当然とも言えるプロセスですが、基本的には熟成したものが調達される。)

つまり今回のリリースも、これまでの3作と同様に、厚岸蒸留所の現在を表現しつつ、将来目指す姿を見据えたものなのかもしれません。
またウイスキー業界全体を見ると、ブレンデッドよりもシングルモルトのほうが価格帯、ブランド力が高い傾向があります。そのなかで、ニューボーン第4弾にシェリー樽熟成のモルトではなく、オール厚岸熟成のブレンデッドが企画された点に、作り手のウイスキーへの考え方というか、目標というか、ある種の愛を見たようにも感じます。

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さて、前置きが長くなりましたが、厚岸ニューボーン・モルト&グレーンの構成を香味から考察していくと、全体はしっかりとモルティーな仕上がりだと感じるフレーバー構成。実際メーカーサイトによると、60%以上がモルトとのことです。
香味には若さ故のネガティブな部分も見え隠れしますが、これはニューボーンなのだから当然で、あれこれ言っても仕方ありません。今の完成度より5年後どうなるかを、消える要素と育つ要素に分けて考えるのがニューボーンの楽しみ方であり、その視点からブレンドとしても素性は悪くないように思います。

原酒構成でメインに感じられるのはノンピートのモルト原酒。基本はバーボンとシェリー樽で、後はワインか。ミズナラは・・・ちょっとわからない。メーカーサイトではシェリー樽原酒がモルトの50%と書かれていますが、熟成期間の短さからこれまでのニューボーンでも感じられた、レモンや柑橘を思わせる酸味など原酒の香味が主となっており、そこまでシェリーシェリーした仕上がりにはなっていません。あくまで口当たりでの甘やかさに作用している程度、といった感じです。

そしてニューメイクから熟成しているというグレーンは、バーボン樽というか、リチャー感の残ったアメリカンオーク樽で熟成したものが含まれていると推察。加水と合わせて若いモルト原酒の荒さを包み込み、若いなりのバランスに寄与しているだけでなく。香味の面では焦げた樽感、バニラや蒸かした穀物を思わせる甘味に繋がっているように感じられました。

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(バーボン樽の木片を加工してチャーした、お手製ウッドスティック。樽を所有するのは難しいが、こういうアイテムでも由来する香味を学べる。今回のブレンドにも、この木片から香る要素と共通のものが感じられた。)

一方、厚岸蒸留所はハウススタイルとしてピーティーなアイラモルトを目指すなど、ピーテッドモルトに拘りがあることで知られています。
今回のブレンデッドはピーティーなタイプではなく、ほんの微かに潜む程度で、この点は少々意外でした。
それこそピーティーなほうが、若い原酒の嫌な部分のごまかしが効くため、完成度は上がりやすい傾向があります。それを選ばずあくまでバランス重視、多彩な系統に仕上げたのはそのほうがブレンドにおける原酒の働きが見えるからか。あるいは将来的にノンピート原酒はブレンデッドに、ピーテッド原酒はシングルモルトでメインに使っていくような計画で考えているのではと予想。
これまでいくつかの原酒を飲んだ上でのブレンデッドのニューボーンですから、今まで以上に考えるところがありますね。

2016年に創業した厚岸蒸留所は、今年2019年10月で蒸留開始からいよいよ3年となります。2020年初頭には、3年熟成のウイスキーがきっと市場で話題になることでしょう。
他方で3年熟成はゴールではなく、ウイスキーとしてのスタートラインです。そのゴールがどこにあるのかは原酒の性格と樽を含めた熟成環境次第ですが、少なくともこれまでのリリースや原酒サンプルを飲むかぎり、厚岸モルトのゴールが3年でないことは間違いなく。
まだ成長の途中、旅のと中である若い芽を同じ時間軸で見ていける楽しさを、引き続き感じていければいいなと思います。

ジョンベッグ 1970年代流通 43% 特級表記

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JOHN BEGG 
Blue Cap 
Old Scotch Whisky 
1970's
760ml 43% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかいスモーキーさと、ほのかにみたらしやオレンジママレードを思わせる古酒感と角のとれた酸。カステラやフィナンシェなどの洋菓子の甘味と、合わせて土っぽさのある古典的な麦芽香。

味:香り同様の構成で、柔らかくコクのある口当たり。ほのかな古酒感と、薄めたキャラメル。じわじわと内陸系のピートフレーバーが存在感を出し、序盤の甘味の中にほのかな灰っぽさと、柑橘の綿や皮を含ほろ苦さが染み込むように長く続く。

経年変化に加え、当時の原酒のコクを伴う柔らかい香りと飲み口。そこに内陸系のピーティーさがしっかりと感じられる。全体は熟成感のある比較的モルティーな構成で、香味がしっかり感じられる一方でバランスも良い。ストレート、ハイボール、用途は広いが個性を楽しむ意味ではストレート向き。

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ロッホナガー蒸留所の創業者であるジョンベッグ氏が立ち上げたウイスキーメーカーが、ジョンベッグ社。
現在のロッホナガーは1845年創業、ジョンベッグ社は当時の親会社にあたり、恐らくロッホナガーよりも前に設立しているとは思うのですが、いかんせん古い話しすぎて細かいことは今となっては不明。。。
その後、1916年にデュワーズ傘下となり、1925年にDCL傘下という定番の流れで大手に組み込まれ、世界的な銘柄となった後、ウイスキー冬の時代のラインナップ整理から2000年前後のアメリカ市場向けリリースを最後に終売となったようです。

よって企業としての創業と解散、どちらも時期が定かではないのがジョンベッグ社です。
たしかなのはジョンベッグのキーモルトがロッホナガーであること。同じDCL傘下の銘柄であるVAT69とは親戚のような間柄と言えます。
その特徴は、なんといっても独特のピートフレーバーと、適度な厚みのある麦芽風味。以前レビューした1950年代流通のジョンベッグでも触れていますが、灰っぽいニュアンスを含むピートフレーバーが、コクのある酒質と共に感じられる。これはかつてのロイヤルロッホナガーがブレンドされている銘柄に備わっている特徴と言えます。

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(1980年代流通のジョンベッグ。輸入元は70年代同様にコーンズである。1978年にトレードマークに関するイギリスの方針を受け、キングジョージ5世の紋章からオリジナルのロゴに変わった。フレーバーは麦芽風味が比較的しっかり備わったモルティーかつ素朴なタイプで、ピーティーなフレーバーは70年代以前のほうが強く備わっている。)

該当するフレーバーについては、70年代流通は60年代ほどではないにしても、まだその香味を感じることができる時期。上で触れた親戚のVAT69も60年代と70年代とで同様の変化があります。
これをロッホナガー蒸留所サイドから見ると、1963年に大規模な改修工事が同蒸留所で行われており、設備が一新されると共に、モルティング設備も貯蔵庫に改修されてしまった模様。こ該当するフレーバーが徐々に失われ、近年のライトかつ個性のマイルドな傾向となっていくジョンベッグの境界は、1960年代中頃の大改修が分岐点とすれば、時系列的には違和感はありません。

日本向けの正規品があり、夜の街にはJOHN BEGG BARがあったくらいのブランドであるにも関わらず、現存するモノが少ないのもこの銘柄の特徴。そして地味に人気があるので、ブレンデッドにしては相場が高め・・・。
特に70年代以前は見かけることも少なく、手に入らなくなりそうな1本。飲めるうちに飲んでおくことをおすすめします。

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今日のオマケ:ロバート・モンダヴィ プライベートセレクション ピノ・ノワール 2017
オーパスワンに所縁のある、ロバート・モンダヴィのエントリーグレード。やや濃いめの味わいで、新世界のピノらしい熟した果実のような甘味と、ベリーを思わせる穏やかな酸味。ここはウイスキー好きにも琴線がありそうなフレーバーですが、そこにちょっと目立つ樽香が、バニラのニュアンスと共にタンニンを加えて余韻にかけて主張する。
上位グレードに比べると仕上がりが粗く、2000円弱のワインか?と感じるのですが、本国では9ドルとかで納得。味付けのあざとい部分が安いなりなところなのでしょう。もう5年くらい経ったら馴染むかも?


J&B レア 1980年代流通 43%

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J&B RARE 
A BLEND OF THE FINEST OLD SCOTCH WHISKY 
Justerini & Brooks Ltd 
1980's
750ml 43% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:不明
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★(5ー6)

香り:ドライで穏やかな麦芽香、干し草や乾いた穀物。ハーブ、瓜のような微かに青みがかった要素に、若干の古酒感、蜂蜜、レモンピールを思わせるアクセントも。強くはないが意外な複雑さがありつつ、素朴で落ち着くアロマ。

味:口当たりはややドライだが徐々に柔らかいコク、若い原酒の酸味と麦芽風味、グレーンの蜂蜜の粘性から、じわじわと軽くスパイシー。余韻は少し焦げたカルメ焼きのような、甘味の後からほろ苦く、内陸系のピートだろうか、染み込むように長く続く。

スケールはそれほど大きくないが、ライト系のフレーバーはバランス良く、程よいこなれ具合でなんとも癒し系の味わい。ハイボールは酸味が少し出てくるが、合わせて不思議なコクも感じられ、ただ薄くなるだけではない変化も。スポーツドリンクのように爽やかに、そしてスイスイ飲める夏向きの1本。濃い味の酒類に疲れた時にもおすすめ。

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侮っていた。この一言がしっくり来るのが今回のボトルです。
J&BのスタンダードグレードであるRARE (レア)。流通時期は1980年前後から中頃と思われるロットで、オールドスコッチの感覚では特段古いわけでもない、ヤフオクだけでなく未だに古い酒屋の店頭でも見られるボトルの一つです。

先日、このJ&Bのキーモルトであるノッカンドゥのレビューを公開したところで、折角だから久々にこっちも飲んでみるかと後日注文した1杯。ただ、このJ&Bは以前飲んだ特級時代末期のものがライトでドライで・・・どうにもピンと来なかった印象しかなく。
60年代ならともかく、80年代はなぁと、途中で継ぎ足してハイボールにしてもらうくらいの覚悟で注文したわけです。

ここで冒頭の「侮っていた」に繋がるのですが、ライトでありながら決して単調でなく、香味とも若い原酒に見られるツンケンした荒さが目立たない。故にノッカンドゥやオスロスクなどのスペイサイドモルト原酒に由来する、J&Bシリーズ共通の麦芽風味が素朴な味わいの軸を作って、妙に心落ち着く。
地味だけど、意外に美味しいんじゃない?と、1杯じっくり飲んだ後でハイボールも追加で頼んでしまうほどでした。

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(1980年代流通のJ&Bとノッカンドゥ12年。お互いに流通当時はもう少し粗さがあったと思われるが、それ以上に現行品に比べて味わいに厚みがある。キーモルトとしての繋がりも分かりやすい。また、この時期のJ&Bから、74年創業のオスロスクの原酒が加わり始めたと推測される。

思いがけず楽しめる味わいに驚かされ、常連愛好家&マスターとで「あれ、これこんなに良かったっけ」なんて盛り上がってしまったこの日の美術館。
他方で冷静に考えると、この手の味わいはたまに飲むから美味しいのであって、毎日飲むには飽きやすいという弱点もあります。リユース市場で微妙に人気がないのは、こういう背景もあるのでしょう。カナディアンなどと同じで大体1杯ちょっとで飽きがくる。ですがシングルカスクの濃いヤツとか、最近流行りのやたら華やかなラムやコニャックとか、そういうこてこてした日々の合間に飲むと、舌がリセットされ、逆に響く系統だったりするのです。(それでも、モノが悪ければ響くものも響きませんが。)

J&Bはかつてアメリカ市場の獲得を狙ってリリースされ、大きく躍進した銘柄であることは有名な話。当時のアメリカをターゲットとして展開されたリリースで、特に色合いの薄かったリリースにカティサーク、ブラック&ホワイト、そしてJ&Bの3名柄があります。この薄い(白い)三連星のなかではJ&Bが最弱、というのが自分の印象だったところ。この日その序列に変化があったことは事実で、安いし家にハイボール用で1本買っておいてもいいかななんて、考えてしまいました。

グレングラント 25年 1952-1977 シルバージュビリー 43%

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GLEN GRANT 
SILVER JUBILEE 
Aged 25 years 
Distilled 1952 
Bottled 1977 
750ml 43% 

グラス:グレンケアン
時期:開封後1年程度
場所:歩古ホール
暫定評価:★★★★★★★★(7ー8)

香り:穏やかで落ち着きのある赤みがかった香り立ち。しっとりとしたシェリー感はカラメルソースを思わせる甘いアロマとダークフルーツ、紅茶、奥から土っぽいピートに加えて焦げたような香ばしくビターな麦芽香もあり、厚みも感じる。

味:マイルドでウッディな口当たり。ベリー系の果実感を備えたシェリー感は、レーズンやダークフルーツ、じわじわとコクのある焙煎した麦芽風味から、余韻はビターでピーティー、湿ったようなウッディネスとオールドシェリーの艶やかな甘味を長く伴う。

古きよき時代のグレングラントの良いところがバッチリつまったボトル。少しシェリー感が強めに効いているが、加水でありながらボディは厚く、酒質由来の麦系のフレーバーや角のとれた土っぽいピートも樽感に負けず存在感があり、経年を経て全体として高い次元でまとまったボトルである。じっくりとストレートで楽しみたい。

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エリザベス女王の即位25周年を記念して、リリースされたグレングラントの限定ボトル。普通に70~80年代流通のグレングラント20年クラスというだけでも当たりの多いスペックであるのに、そこに女王の記念という大きな役がついて、さらに”今となっては”と後付けの裏ドラまで複数のって、数え役満か?という状況。
味も素晴らしいですね。麦とピートが織り成す古き良き時代のグレングラントの個性、そしてカラメル系の甘さと赤みを帯びた果実風味のある樽感が、経年を経て独特の古酒っぽさをまといつつグラスのなかで広がっていく。当時のスコッチモルト、特にオールドスペイサイドの魅力がしっかりと詰まっている1本ともいえます。

ただ、グレングラントはオフィシャルに加えてGMを中心に数多くモルトがリリースされており、それ以上の熟成年数であるとか、あるいは突き抜けた味わいのものとか、他のボトルも素晴らしいものが多く。純粋に中身だけ見ると、このシルバージュビリーが群を抜いて特別というわけではありません。
今回のボトルは裏ラベルに「プライベートストックからシルバージュビリーのために特別な樽を厳選した」というような記載がありますが、全体的にレベルが高かった当時のグレングラントを基準にすると、単純に25年熟成の樽を適当に選んでバッティングしただけなのでは・・・とすら感じてしまうほどです。

蒸留時期を振り替えると、1952年はグレングラントがグレンリベット社に統合(合併)された時期にあたります。
一方当時の蒸留方法等について50年代の情報は少ないものの、フロアモルティングに加えて石炭直火蒸留という古典的な手法がとられていた模様。それが70年代にはスチルハウスの増設や蒸留設備のリニューアルでガス加熱式が増え、83年(86年の説もあり)の大規模工事で新型の精留器を採用した新しいスチルを6基増設。。。精麦でもピートを炊かなくなったようで、近年のライトで洗練されて華やかな酒質のグラントと、この当時のどこか田舎臭いがどっしりとした風味の酒質の違いは、80年代を境界とした仕込み方、蒸留方法の変化によるものなのかなと推測しています。

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今日のオマケ:メルヴィル エステート ピノノワール2008
カリピノです。入手したときはビンテージ的にギリギリかなーと思っていたもの。飲んだ印象はやっぱりギリギリ、飲めたから良いかと思いつつ、でももう2年早く飲みたかったですね。

アロマは新世界系の甘味しっかり、ではなく穏やかでありながら比較的複雑、奥からじわじわ来る感じ。口当たりはスムーズでクランベリーやザクロ、微かに土っぽさや皮の渋味。度数やタンニンは熟成を経て穏やかで、タンニンは元々そんなに強くなかっただろうものが、さらに落ちたという感じ。
これでもうちょっとベリー系の果実味が強ければなーと思いつつ、料理には案外合わせやすいかも?
とりあえず1本まるっと楽しませてもらいました。

アバフェルディ 12年 40%

カテゴリ:
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ABERFELDY 
HIGHLAND SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 
GUARANTEED 12 YEARS IN OAK 
700ml 40%

グラス:SK2
場所:自宅
時期:開封後2ヶ月程度
評価:★★★★★(5ー6)

香り:ややドライだがすりおろし林檎のような酸と果実香、華やかなフルーティーさのなかにほのかにおしろいのような麦芽香と干し草、スパイスも感じられる。

味:少し水っぽさのあるスムーズな口当たり。薄めた蜂蜜や林檎、品の良い白系の果実味と麦芽風味。オーキーな華やかさも備わっているが、合わせてドライでナッツや籾殻、多少の荒さが徐々に口内を刺激し、ほろ苦くウッディなフィニッシュへ。

加水が効いているため各フレーバー毎の主張はややぼやけた印象もあるが、アバフェルディらしさとモルトとして好ましい部分は充分感じる事が出来る。ストレートではその加水で抑え込んだような構成で、仕上げの荒さが多少気になるもののハイボールにはちょうど良い。

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現行品5000円以内で購入出来るハイランドモルトの中で、オススメの一本がアバフェルディ12年です。以前からリリースされていたオフィシャルですが、2014年頃にリニューアルされ、香味を大きく落とすことなく(むしろ良さがわかりやすくなって)近年に至っている。リカル7月号のでもオススメボトルとして紹介させていただきました(以下、画像参照)。

樽構成のメインはバーボン樽。アメリカンホワイトオークに由来するオーキーな華やかさは、過度に主張せず全体の1ピースとして備わっている程度で、それ意外に酒質由来の麦芽風味、熟成によって生まれる蜂蜜を思わせる甘味、ドライなウッディネス・・・。
オールドのアバフェルディに比べてボディの厚み、麦芽風味が控えめになっているのはスコッチ全体に見られる流れで仕方ないとしても、近年のスコッチモルトに求められているフレーバーや、アバフェルディ蒸留所のハウススタイルを味わえる、良くできたスタンダードリリースだと思います。

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(酒育の会発行、リカル7月号。連載企画でオススメのオフィシャルスタンダードを紹介していく。王道的な良さがあるアバフェルディは、デュワーズのキーモルトとしても馴染みがあるため、迷わず第一弾のラインナップに加えた。ロッホローモンドとでは対極にあるような並びだったと思う(笑))

ただし加水が強めに効いているためか個性がぼやけている部分もあり。これは万人向けリリース故仕方のないところですが、12年のみを飲むと、まあこんなもんかという感想を持つこともあるかもしれません。今回の評価で★5というのは、そうした視点も含めて、単体の香味のみで見た基準になります。
ですが上位グレードである21年とフレーバー構成が同じベクトル上にあるため、12年を飲んだ後で21年を飲むと、類似のフレーバー構成で熟成感と完成度の違いが分かりやすく。またその逆で21年を飲んだあとで時間を置いて12年を飲むと、感じる事が出来る良い部分にピントが合いやすくなり、デイリーに使える1本としての魅力に気づく。。。これが、アバフェルディ12年の総合的な評価になります。

そのまま飲んでもそこそこ美味しいけど、他のグレードも経験すると、さらに美味しく感じられるようになる。間口広く奥深い。オフィシャルスタンダードのあるべき姿ってこういうのだよなと思える1本なのです。

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