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2019年07月

タムデュー 21年 1997-2019 オーシャンズ 50.8% 

カテゴリ:
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TAMDHU 
The Oceans 
Aged 21 years 
Distilled 1997 
Bottled 2019 
Cask type Hogshead 
700ml 50.8%

【ブラインドテイスティング回答】
地域:ジャパニーズ
蒸留所:富士御殿場
樽:バーボンバレル
年数:20年程度
度数:46%程度
評価:★★★★★★(6)

香り:ややエステリーでドライ、鼻腔への刺激のある香り立ち。樽由来のフルーティーさと甘味がしっかり出ており、リンゴのコンポート、モンブラン、微かにナッツのアクセント。
若干ゴムっぽい香りと溶剤のニュアンス。

味:樹液のような粘性のある濃厚なオークフレーバー。洋梨や黄桃、バニラ、好ましいフルーティーさのある甘味と合わせて、ウッディでドライ、樽材のえぐみ、スパイシーな樽材由来の過熟気味な要素が広がる。酒質由来の香味の線は細く、余韻はビターでドライ、オーキーなフルーティーさと合わせてヒリヒリとした刺激を伴う。

オーキーでフルーティー、グレンバーギーなどを思わせる近年のスペイサイド寄りの酒質だが、樽がかなり強く効いているため、好ましいフルーティーさ以外に若干ネガティブなニュアンスまで一部溶け出ている。熟成環境の違いがあるのではないかと推察。香りで感じたエステリーな要素と樽要素の出方、また通常品より高く感じるアルコール感から、ボトル予想は富士御殿場のスモールバッチ。

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ご無沙汰しております、ちょっと更新感覚が開いてしまいました。
先週末、風邪なのか疲れなのか、38度オーバーの発熱(咳、鼻水など一切なし)があり、それでも無理して出張なんて行ったもんだから余計悪化。療養に専念したので、ちょっとブログのほうまで手が回っていませんでした。
さて、気を取り直して休み明けの更新1発目は、ウイスキー仲間のK67さんから頂いていたブラインドテイスティング出題の回答。今回は非常にタイムリーなボトルの出題をいただきました。

オーシャンシリーズはウィスクイーさんのオリジナルブランド。20作目となる今回のボトルは、メーカーコメントで「完熟ピーチのフレーバーが効いたタムデュー」なんて、期待したくなるようなPRがされていたことでも知られています。
おそらく、アメリカンオーク樽由来のフルーティーさが良い具合に強く出たボトルなんだろうと予想していましたが、結果的にほぼその予想通りという味わいだったと思います。

近年のタムデュー、あるいはスペイサイドモルトの軽めの酒質に対してかなりしっかりと樽が効いた、黄色系のフルーティーさにスウィートな含み香、そしてドライでウッディな構成。フルーティーさだけなら上々の仕上がりです。
酒質と樽要素はややアンバランスですが、50%まで下がった度数はそれらをギリギリ繋ぎとめることに寄与していて、なにより今回一番注目の「完熟ピーチ」は、近いコメントをブラインドで表現しているので、概ねメーカーコメントの通りだなと感じました。
その樽の強さが少々気になりますが、ボトラーズの熟成庫での仕上げか、オフィシャルと比較して少し環境が異なっているのではとも推察します。


ブラインドテイスティングの反省を述べるなら、それはもう邪推ですね(笑)。
仮にスペイサイドモルトと限定されていても、タムデューを導き出せた自信はないですが、まさかK67さんが普通のスペイサイドのボトラーズなんて出さないよな・・・きっと変化球に違いない、なんて深読みがなかったと言えば嘘になります。

当ててやろうとすると、遠退く正解。それは度数予想にも現れていて、富士山麓は酒質がクリーンでピリピリした部分も多少あるから、これくらいの度数でもアタックはこの程度あるはず、なんて無理矢理納得してもいました。(実際は50%はともかく、48%くらいには感じられるアタックがあります。)
最近これまでよりブラインドの頻度が落ちていますが、それもあってちょっと鈍っちゃっているのかもしれません。
何事も、日々の積み重ねですね。

あかし 3年 2015-2018 日本酒カスク ゴーストシリーズ 61.5%

カテゴリ:
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AKASHI 
Aged 3 years 
Akashi Sake Cask Mtasured 
Distilled 2015 
Bottled 2018 
Cask type American Oak #101520 
500ml 61.5% 

グラス:シュピゲラウテイスティンググラス
時期:開封後半年程度
場所:BAR Harry's 高岡
暫定評価:★★★★(4→ - )

香り:小麦の焼き菓子、香木感のある粉っぽさのある華やかなオーク香。合わせて日本酒の古酒っぽさ、発酵した酸とアーモンドやくるみ、徐々に酸が強く、湿った布のようなアロマも混じってくる。

味:アタックの強い口当たり。はちみつ檸檬のような粘性と酸味、皮に混じる渋みはスパイシーさもあって和生姜のようなヒリつくニュアンスに、粗さを感じさせる。
余韻はドライでウッディ、発酵した酸、ニューポッティーな未熟感が粗さとなって若さを感じさせる。ハイトーンな刺激を残して長く続く。

樽が非常に強く出ており、粉っぽいオーク香に日本酒の古酒のようなヒネと発酵したような酸味。これが若い原酒をコーティングしており一見すると面白いのだが、酒質そのものが未熟なのだろう。一口二口と飲んでいく毎に、短熟故に取りきれなかった粗さと未熟な要素が口内、食道、胃を支配し、ボディーブローのように効いてくる。

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ジャパニーズウイスキーに関する情報のバイブルとも言える著書、ウイスキーライジング。その発売を記念して、小学舘プロダクションから限定500本リリースされたもの。
ウイスキーライジングの著者にして、ウイスキー情報発信サイト、Nonjattaを執筆するステファン氏がカスクを選定する、ゴーストシリーズの第9弾という位置付けでもあります。

この日本酒カスクは加水の50%仕様のものが別途リリースされており、仲間内でちょっとした話題になっていたボトルでした。
それは良い評価か、悪い評価かというと別れており、やはり自分で飲んで確かめなければ・・・と。結果、自分は後者のほう。
古酒に見られるヒネやキャップ臭など、後天的に付与されたネガ要素を除けば、大概のウイスキーで受け付けない、ということはないのですが、これは受け付けない類のもの。久々に、完璧に好みに合わないボトルに出会ってしまいました。


まず、日本酒カスクという新しい可能性の追求という意味では、このボトルが持つ意味は大きいと言えます。樽熟成する日本酒は珍しいですが、貴醸酒などもありますし、何より日本独自の文化である日本酒とウイスキーの組み合わせというのが、ワインカスクフィニッシュ同様の可能性、新しいブランドの確立を期待させるのです。
実際今回のリリースも樽感は面白く、ノージングのみでの第一印象は温暖な熟成環境からか3年の割りに強く出たオーク香があって、そこまで悪い印象はありませんでした。

しかし樽由来というよりも、酒質の部分で悪さをしているところが大きい。その比率は樽が3、酒質が7。
国内外問わずこれまで多くの蒸留所のニューメイクを飲んできましたが、中でも一部のクラフト系ニューメイクに感じられた若さ故の粗さ、蒸留で取りきれなかった未熟なニュアンス、渋味や辛味、あるいは発酵した野菜のような硫黄系のオフフレーバー。これが強い樽香の裏に潜んでいて、飲んでいると後から効いてくるのです。
これが、ダメな人と悪くないという人を分ける要因であると推察します。

そんなわけで、序盤は★4ー5くらいかなと思った評価は、後半にかけてネガティブな要素が目立ったため評価なしと、時間軸を分けての評価というイメージでまとめさせてもらいました。
今回のリリース、説明を良くみると日本酒?(粘性のある甘味と古酒系の酸味から貴醸酒樽?)と樽は、江井ヶ嶋のものではないようです。
どうせなら同じ酒造で作られた樽の組み合わせとかもみてみたいなと思います。

オールドプルトニー 12年 2007-2019 ウィスキーショップ向け 50.2% #1471

カテゴリ:
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OLD PULTENEY 
AGED 12 YEARS 
Distilled 2007 
Bottled 2019 
Cask type Sherry #1471 
For THE WHISKY SHOP 
700ml 50.2% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ウッディで少し焦げたような木香と、どっしりと濃厚なシーズニングシェリー香。ドライプルーン、オランジェット、生チョコレートと微かにアーモンド、合わせて溶剤的なツンとした刺激もある。

味:リッチでスウィート。序盤はとろりとしているがすぐに強めのアタック。ウッディなニュアンスとともに色濃い甘味はダークフルーツケーキ、カカオ多めのチョコ、スパイシーな刺激とタンニンの苦味もある。
余韻はウッディでビター、香り同様に奥から刺激がシェリー樽由来のウッディさと甘味を突き抜けるように最後まで残る。

一言で、こってり濃厚シェリー系。香味に残る刺激がらしさである一方、基本的にはシーズニング味である。熟成年数と度数の下がり具合から推察するに、ホグスヘッド樽の中に保存用のシェリー液が一部残ったまま樽詰し、それで度数が下がってそのまま熟成したものではないだろうか。少量加水しても構成に大きな変化はなく、クリーミーなシェリー感が持続する。


イギリスのTHE WHISKY SHOPがボトリングした、プルトニーでは珍しい濃厚なシェリーカスクの1本。日本では同店舗から個人輸入する以外に購入方法はありませんが、だいたいリフィルでプレーンなタイプの樽感、あるいはバーボン樽での仕上がりが多いプルトニーでこのスペックはまさに限定品に相応しい特別感のあるリリース。コアなウイスキーバーや愛好家は、マストバイと言わんばかりに調達しているようです。

その構成は近年のシーズニングシェリーの濃厚なタイプが全面にあり、例えば先日のウルフバーン・ジャパンエクスクルーシブ3と共通するニュアンスが備わっています。まさに圧殺、まさに樽味、といったところですね。
色濃い甘味とウッディさがしっかりあるだけでなく、12年という熟成期間に違和感のない程度に残った酒質由来の刺激。この刺激は15年熟成くらいまでのプルトニーのカスクストレングスで見られるキャラクターのひとつで、今回のボトルで唯一のらしさと言えるかもしれません。
ただ、これだけでプルトニーと言えるかと問われれば非常に難しいところでもありますが・・・(汗)。

そういう意味で、この手の振り切ったボトルは評価が別れるリリースとも言えます。
酒質由来の香味を重視する方はバーボン樽やリフィル系の樽を好みますし、この手のシーズニングシェリー味が好みという人もいれば、ダメという人もいます。個人的には、本来12年熟成ででるであろう平均的なシェリー感、ウッディさに対して色濃いクリーミーさが時系列に合わないような、違うものが混じったような違和感があって、味よりもそれが気になるところです。

あとはこれが時間経過でどう変化するかですね。この手のシェリーはこなれるというか、酒質部分と馴染むような印象があるので、10年後とか一体感と麦っぽさが出てきて面白い変化が出てくるかもしれません。

トバモリー 20年 1997-2018 モルトマン 49.8% 日本市場向けボトル

カテゴリ:
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TOBERMORY 
The maltman 
Aged 20 years
Distilled 1997 
Bottled 2018
Cask type refill sherry #800 
Specially selected and bottled for Japan 
700ml 49.8% 

グラス:テイスティンググラス
場所:萌木の村 BAR Perch
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:しっかりとスモーキーで燃えた後の薪のようなニュアンス、オールブラン、ほろ苦いモルティーなアロマのなかに、柑橘や乳酸系の酸を伴うアロマ。微かに塩素のような薬品香も。

味:香ばしくやや尖ったようなモルティーさと、合わせて土っぽいピート。それらをコーティングするような樽由来の要素。プラムの果肉、オレンジピールを思わせる微かな酸とビターなフレーバーを感じる。
余韻にかけてはピーティーな苦味とスモーキーフレーバーが強く主張し、若干の荒さ、スパイシーさを口内に残して長く続く。

リフィルシェリー樽だが、シェリー感は若干の酸味程度で、シェリーシェリーする味わいではない。むしろ樽由来の要素が酒質由来のピーティーさとうまく馴染んで全体の荒さをコーティングし、バランスの向上に一役買っているようだ。近いキャラクターではアードモアをイメージする仕上がり。


マル島にあるトバモリー蒸留所において、トバモリー名義のものは、オフィシャルではノンピートの仕込みのモルトに用いられる名称。ピーテッドモルトを使ったものはレダイグですが、このボトルはレダイグと同じピーテッドモルトを使った仕込みのようです。

ハートブラザーズをルーツに持つ、モルトマンシリーズは、マイナー蒸留所でも安定したというか、日本人好みのチョイスが多い印象が個人的にあります。そのモルトマンから日本市場向けにリリースされたものが、今回のトバモリー20年。
調べてみると結構売れ残っているようですね。トバモリーという蒸留所の人気に加え、メーカーコメントだと、どっちの属性かわかりづらいので警戒されているのかもしれません。

トバモリー(レダイグ)といえば、1990年代より前のそれは香味がとっちらかっているというか、飲み疲れるようなまとまりの無さが特徴でした。
1993年にバーンスチュアート社が買収、テコ入れした結果、近年リリースされたオフィシャルのうち、短熟はそれなりであるものの、近い熟成年数であるオフィシャルのレダイグ18年はこれまた煩い味わいで、酒質がそんなに強くないのかなと思っていたところ。
これが案外悪くない。何より20年という熟成が近年の短熟アイラにはないバランスのよさで、日本向けにインポーター側の選定者が選んだ理由がわかるような構成でした。

ただ同じモルトマンからはレダイグ1997もリリースされているため、なぜこの味でトバモリー名義なのかは・・・疑問が残るところです。単に重複を避けただけか、あるいはサンプル事故とか・・・?






ロブロイ 12年 1980年代流通 特級表記 43%

カテゴリ:
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ROB ROY  
Years 12 old 
Fine Old Deluxe Quality 
Scotch Whisky 
1980's 
750ml 43% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1週間以内
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(6)

香り:ピーティーで薄めたみたらし、干し藁のような乾いたニュアンスと若干の紙っぽさ。仄かにハイトーンな刺激を伴うが、時間経過で微かな古酒感と、オレンジママレード、スモーキーなアロマに変化する。

味:ねっとりとしてコクのある口当たり。べっこう飴の甘味とオールブランやオレンジピールのほろ苦さ、土っぽいピートフレーバー。徐々にスパイシーでヒリヒリとした刺激が感じられる。
余韻はみたらしのような粘性のある甘味が舌に残りつつ、スパイシーで焦げたようなピーティーさ、張り付くような余韻で長く続く。

グレンギリー系の強いピーティーさ、オーヘントッシャンの3回蒸留らしい尖った風味。そこに熟成したグレーン。ボウモアよりもこの2つのモルトの影響を強く感じる。少量加水すると刺激が和らぎカラメル系の甘味が広がってバランスが良くなる。開封後時間が必要かもしれない。

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1980年代にボウモア、オーヘントッシャン、グレンギリーの3蒸留所を傘下としていた、モリソンボウモア社がリリースしていたブレンデッド。先日レビューした10年の他、12年があり、1990年代以降ブランドとして残るのはこの12年のほうです。
もっとも、日本には1990年代中頃ないし後半あたりから輸入されていなかったようですが。。。

ロブロイ12年は、1990年頃に角瓶からなで肩のデキャンタデザインに変更。日本に流通しているボトルはこれが最後となりますが、この頃のロブロイはボトルのキャップが樹脂製で、キャップ汚染の進んだロットが複数見られること。
また、蒸溜時期1980年代は、ボウモアだけでなくグレンギリーにもパフュームフレーバーが出ることから、それらを構成原酒とするロブロイにも同様の変化が出ているロットがあり、ダブルで注意が必要。オフフレーバーと石鹸を好むマニアックな趣味が無い限り、角瓶時代のロブロイを狙うのがオススメです。

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(同時期に流通していたロブロイ10年、トップの写真は照明の関係でわかりづらいが、色合いは10年も12年も同じ。やや12年のほうがマイルドかというくらいだが、フレーバーの系統も同じ。ロブロイとモリソンボウモア社については「ロブロイ10年」のレビュー記事を参照。)

”ロブロイ”と言えば、日本ではウイスキーよりもウイスキーベースのカクテルが有名。かつてウイスキー冬の時代は、「ロブロイをソーダ割り、氷無しで」なんて注文したところ、首を傾げながらカクテルのロブロイをソーダで割られそうになったこともあったとか。(某有名バーマンの経験談)
ですが近年はボウモアの評価と人気の高まりから、愛好家を中心に「ボウモアが使われているブレンドとして知られてこの銘柄も知られて来ているように思います。

ただ、この角瓶時代の10年、12年はどちらもグレンギリーを中心にローランドモルトをブレンドしたような、ボウモア比率が低めの構成であるところ。ボウモアが使われている=トロピカルフレーバーという構成にはなっていません。
また蒸溜時期としては1970年代の前半あたりですが、当時ピーテッドモルト代替のためグレンギリーのピーティーさが強く、またボウモアはギリギリパフュームが出ていないものの、フルーティーさは控えめに変化していた時期。このブレンドをそれらの構成原酒のキャラクターから分解すると、得心がいく部分が多く感じられるのです。






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