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2019年07月

グレングラント 25年 1990-2015 BARレモンハートラベル 50.2%

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GLEN GRANT 
BAR LEMON HEART LABEL
Aged 25 years 
Distilled 1990 
Bottled 2015 
Cask type Hogshead
700ml 50.2%

グラス:テイスティング
場所:BAR 新宿ウイスキーサロン
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライでオーキー、華やかな香り立ち。洋梨、干し草やナッツのような乾いたウッディネス。レモンピールなどの柑橘系の皮を思わせるほろ苦くも爽やかなニュアンスも伴う。

味:香り同様の構成で華やかでオーキー、ファイバーパイナップルなどの甘味の淡い黄色いフルーティーさにスパイシーな刺激、干し草を思わせるウッディネスとともに広がる。
余韻はドライでスパイシー。ナッツ、ハーブ、乾いたウッディさがオーキーな華やかさと合わさって長く続く。

近年系グレングラントのオフィシャル寄りといえる構成の1本。アメリカンオーク由来の華やかさと乾いたウッディネス。フルーティーさは蜜っぽいタイプではなくドライな系統であるが、華やかかつ爽やか、好ましい要素を備えた仕上がりである。少量加水すると輪郭がぼやけ、樽感が浮わつくような印象も。ストレートで。


漫画レモンハートと聞いて連想するウイスキーをひとつ挙げるなら、グレングラントを推す愛好家は少なくないのではないかと思います。
単行本2巻収録のエピソードにて、ダフタウンの酒屋にあったというウイスキーの写真を見たマスターが、その翌日から現地に行って売ってほしい(飲ませてほしい)と交渉する話。それがマスターも見たことがないというグレングラント38年で、念願かなって飲んだマスターは、感動と旨さのあまり涙を流します。

漫画とはいえそこまでする行動力がマスターらしさであるとともに、国内では見たことがない最長熟成品であるというボトルの紹介もあって、非常にインパクトのある回だったなと思っています。
(個人的には、後日同じボトルを飲む機会に恵まれ、古典的なシェリー感とピートフレーバーに、確かに感動級の旨さだと感じたことも、レモンハート=グレングラントを結ぶシナプスのひとつとなっています。)

今回のボトルは流石に38年熟成品とはいきませんが、近年リリースが少なくなりつつある20年オーバーのグレングラント。
最近増えてきた、漫画レモンハートラベルですが、今回はBARとのタイアップではなく、レモンハートのマスターのみ。その単独リリースに、グレングラントをもってきたのは上記のエピソードを踏まえてのチョイスなのかなと推察しています。
酒質はテイスティングのとおり近年のグレングラントらしいライト寄りで、ノンピートタイプと言える極ライトピーテッド仕様。軽やかかつ華やかなオーク香とマッチしたフレーバー構成で、個人的にはもうちょっとフルーティーさが強いとさらに好みなのですが、トレンドを押さえた1本と言って間違いはないと思います。

なお1点気になるのが、ボトリング時期の表記である2015年。
ラベル審査に1年、ボトリング待ちで半年、輸送で半年と、樽から払い出した時点から最長2年くらい、国内流通が経過することがない訳ではありませんが、このグレングラントは発売時期から約3年半程度も経過しており、どうにも計算が合いません。
現地流通品が遅れて入ってきたならわかるのですが、これは日本向けのもの。原酒が樽ではなくボトラーズの原酒保管用タンクで1~2年寝かされていたということなんでしょうか。。。

ボウモア 22年 1995-2018 ハンドフィル ♯1304 48.1%

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BOWMORE 
HAND FILLED 
Aged 22 years 
Distilled 1995
Bottled 2018 
Cask type Bourbon Barrel #1304 
700ml 48.1% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:シトラスやグレープフルーツの綿を思わせる柑橘系の爽やかでほろ苦いフルーティーさと、バニラや蒸かした栗のようなオーキーな甘み、スモーキーで微かに焦げ香、塩素、消毒薬を思わせるアクセント。

味:オイリーでとろりとした粘性のある口当たり。香り同様の柑橘系フレーバーと、熟した南国果実の魅惑的なフルーティーさ。魚介出汁のスープ。徐々にウッディでオーキー、島系要素を伴うピーティーさに、柑橘の綿や皮のほろ苦く爽やかなフレーバーがアクセントとなって余韻で長く続く。

近年希少となった90年代前半のボウモアの良い部分がしっかりと感じられる素晴らしいボトル。グレープフルーツなどの柑橘にトロピカルフルーツ、強いピート、そして全体的にフレーバーが厚く紙っぽさを感じさせない作りも、この時代の特徴と言える。少量加水すると爽やかな柑橘系のアロマ、樽由来のフルーティーさが開くような変化があり、長く時間をかけて楽しめる。ハイボールも良好。

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今さら感はありますが、昨年旨いボトルと話題になった、ボウモア蒸留所のハンドフィル。やはり90年代のボウモアはバーボン樽との相性が良いと感じる仕上がりです。
同じハンドフィルで見られるこってこてのシェリー系より、バーボン樽のほうが酒質がもつ要素を後押ししており、個人的に好ましいボトルが多いように感じます。

その好ましさの代表格が特有の南国感ですね。60年代ボウモアとの共通項とも語られる要素ですが、90年代のほうが柑橘系のニュアンス、グレープフルーツの綿のようなほろ苦さが強く、そこにピートや出汁感、そしてフェロモンを思わせる南国系のアクセントがアメリカンオークのオーキーなフレーバーと融合することで後押しされルように感じます。
アメリカンオークのシーズニングシェリー樽ではなく、バーボンバレルやホグスヘッドのほうが、オーキーさが強く出る傾向があるため、良さが際立つというか後押しされるというわけです。

今回のボトルは度数が50%を下回っているため早飲みタイプだと思いますが、基本的に酒精の強い長寿なボトルが多く、あと20年も瓶内熟成したらどうなるか。。。将来的に楽しみなビンテージでもあります。
フルーティーさで言えば1990年代後半も悪くないですし、2000年代も良いものはあります。ただ徐々に酒質が軽くなっていくのも特徴で、総じてフレーバーの複雑さと厚みがなくなって紙っぽさがでてくる傾向は否めない。
今回のテイスティングで、久しぶりに90年代の旨いボウモアを飲んで、当時の良さを再認識させてもらいました。

イ モンクス 1970年代流通 特級表記 43%

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Ye Monks Scotch Whisky 
Donald Fisher Ltd 
1970's 
760ml 43% 

グラス:
時期:不明
場所:BAR Main Malt
評価:★★★★★(5)
※イタリア向けはグリーントールは★(6)

香り:穏やかな穀物香、マイルドな甘みと古典的な麦芽香。薄めたはちみつ、ほのかなスモーキーさの奥には微かにフローラルなアロマも感じられる。

味:スムーズで軽やかな穀物っぽさと、パンケーキ、合わせてみたらしっぽい古酒の甘みと角の取れた酸、微かにフローラル。ボディはミディアムからライト寄りで、ソフトな構成。余韻は柔らかくビターでしっとりと消えていく。

穏やかで柔らかい、ハイランドモルトを軸にしたようなブレンド。グレーン感もそれなりにあり、いかにも万人向けスタンダード品という印象は否めないが、経年を差し引いて考えてもバランスは悪くない。ただ、微かに感じられるパフュームは瓶内変化からきたものだろうか。。。


近年のリユース市場でそれなりにモノはあるものの、ストーンジャグが大半で、ようするに状態がアレなものが多く、正しい評価が難しい銘柄。自分も過去にコルク臭とも抜けともなんとも言えない状態のブツにヒットした、苦い記憶があります。

イモンクスの作り手、ドナルド・フィッシャー社は零細ブレンドメーカーかと思いきや1936年にDCL傘下に入り、1980年代にはこれらウイスキー輸出の業績から女王表彰を受けたという歴史もある、イモンクスの販売を通じて実績を残しているようです。
アジア、日本市場のみならず、ヨーロッパ市場にも輸出されていたようですね。知人から当たればモノは良いということは聞いており、ジャグではないボトルを機会があれば飲んでみたいと思っていました。

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今回、メインモルトさんの棚の奥にトールボトルを発見し注文。ヨーロッパ向けのグリーントールボトルもあったので、飲み比べをさせてもらいました。

日本向けのほうは、テイスティングの通りハイランド系の原酒のキャラクターをメインに感じる、ソフトでマイルドな味わい。なんの原酒が使われているのかはわかりませんが、ちょっとだけパフューミーなフレーバーが混じっているのも印象的です。
一方同時期流通のイタリア向けは、ボディが厚くコクがあり、なによりモルトの比率が高いのか林檎系のフルーティーさとスモーキーフレーバーも日本向けより強い。別物と感じてしまうほどの完成度の違いに少し複雑な気持ちを覚えてしまいました。

インチマリン 14年 2004-2019 Y’sカスク 静谷和典セレクト 55.1% 

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INCHMURRIN 
Y's CASK & BAR LEMON HEART 
Selected by Kazunori Shizuya 
Aged 14 years 
Distilled 2004 
Bottled 2019 
Cask type Rechard American Oak #1913 
1 of 568 Bottles 
700ml 55.1% 

グラス:テイスティング
時期:開封後2週間程度
場所:BAR 新宿ウイスキーサロン
評価:★★★★★★(6)

香り:ややハイトーンで風邪薬シロップのようなケミカルな甘いニュアンスと、微かに赤みを帯びた乳酸系の酸を伴う香り立ち。あわせてドライなウッディネスがレモンピール、干し草などの乾いた植物感も伴う。

味:香り同様にケミカルな要素と甘酸っぱくフルーティー、スパイシーな口当たり。樽由来か中間に粉っぽい舌触りがあり、シロップの甘味、グレープフルーツ等の柑橘感。
余韻にかけて微かにハーブ、スパイシーな刺激が増していくようで、ドライなフィニッシュへと繋がる。

現行インチマリン(ロッホローモンド)の酒質部分の個性がはっきりと出ている1本。開封直後はフルーティーさが足りず、スパイシーな仕上がりが強い傾向だったが、時間を置いて改めて飲んでみると、好ましい変化もあり、開封後数ヵ月単位で慣れさせると良いかもしれない。少量加水するとケミカルなニュアンスにホットケーキのような生地の甘味が加わって、スウィートで飲みやすくなる。

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今日本で最も勢いのあるバーマンの一人と言える、BAR LIVET & 新宿ウイスキーサロンの静谷氏がロッホローモンド蒸留所でセレクトしたインチマリン。
表ラベルはファミリー企画のレモンハートシリーズ仕様で、BAR LIVETのカウンターでウイスキーを飲むマスターと、静谷さんの姿が描かれています。

一方モノを扱っているのはロッホローモンドの正規代理店でもある都光で、この選定にはリカマンのスピリッツバイヤーである伊藤さんも関わっている模様。
Slected by Kazunori Shizuyaの隣には、小さく伊藤さんの名前と、上記裏ラベル(本来はこっちが表か?)にはEXCLUSIVELY For TOKO TRADING表記があり、本ボトルに関わった方々の相関図が見えるようでもあります。

それではそろそろ中身の解説を。ボトリング本数568本は約400リットル分あることと、樽由来の香味の淡さから、熟成に使われた”リチャード・アメリカンオークカスク”なる樽は、複数回使用のシェリーバットがベースであると推察。
複数回使用後であるためか、アメリカンオークといっても1stフィルのバーボン樽のような、近年のロッホローモンド蒸留所の原酒が持つフルーティーさを後押しするフレーバーは控えめで、むしろ樽由来とおぼしき酸が感じられる以外には、酒質由来のケミカルな甘味とハーブ、スパイシーな刺激が主体という構成となっています。
また、リチャーでありながら焦がした樽材由来の要素があまり感じられないのも特徴で、そこまで強く焼きを入れてないのかもしれません。どちらかといえば、サードフィルのシェリーバットという方が自然な感じのする仕上がりと言えます。

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(同じY's Caskシリーズから昨年末頃にリリースされた、バーボン樽熟成のインチマリン2002-2018。酒質のケミカルな特徴はほぼ同じだが、樽の違いでパイナップルを思わせるフルーティーさが強調されている。まさにジェネリックトロピカル。飲み比べてみるのも面白いだろう。)

そのため、開封直後の印象ではインチマリンに求めるジェネリックトロピカルというか、アイリッシュ系統のフルーティーさがあまり感じられず、ハーブや植物感のような癖と、人工的なシロップの甘味、スパイシーな刺激といった酒質由来の部分が目立っており、時間置いた方が良いと判断。
2週間ほど間を置いて改めて飲んでみると、フルーティーさが開いてきているように感じられ、テイスティングの通りポジティブな変化が見られました。

静谷氏のテイスティングコメントでは”青パパイヤ”という表現が使われていますが、大概の果実は売られている段階から少し置いて食べ頃を待ちます。つまりこのボトルもまた、熟していくのに多少時間が必要といったところでしょうか。
いっそ3本くらい同時に開けておいて時間経過後をサーブするようにしたら?なんて話をカウンター越しにしながら、半年、1年後の姿をイメージして楽しんだ1杯でした。

グレングラント NAS 1980年代前半流通 43% 特級表記

カテゴリ:
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GLEN GRANT 
HIGHLAND MALT SCOTCH WHISKY 
1980's
750ml 43%

グラス:国際企画テイスティング
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1週間程度
暫定評価:★★★★★★(6ー7)

香り:おしろいやバニラ、洋梨の品の良い甘味、微かに苺の白い部分を思わせるような酸も伴う。厚みのある麦芽香主体のふくよかなアロマ。

味:香り同様に厚みのある麦芽風味。すりおろし林檎とパンケーキの軽やかな香ばしさ、干し草、徐々にほろ苦くスパイシー。余韻はほのかなピートとエステリーさが麦芽風味とあわせて感じられる。

若い原酒主体だが充分旨い1本。麦芽風味が厚く、多彩で、この点が現代のグラントNASグレードとは大きく異なる要素である。
なお注ぎたては情報量が多いが、それが次第に失われてやや単調気味に変化する。香味に対する慣れもあるだろうが、樽から得られる香味がまだ少ないからかもしれない。

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1980年代当時、角瓶のエイジング表記有りのグレードを含めて、数あるグレングラント・オフィシャルラインナップのなかでもスタンダード扱いだったと思われる1本です。
香味から察するに熟成年数は5年~8年程度で、比較的若い原酒がメインと思われる構成。樽はあまり効いておらず、リフィル以降のバットあたりでの熟成と推察。ですが、だからこそ当時の酒質の良さと厚みがダイレクトに味わえる佳酒に仕上がっています。

同じ時期にリリースされていた、トールボトルの5年モノとの香味の共通点もありますが、今回の年数表記無しの方が、序盤は複雑で多彩。麦芽風味のなかに情報量が多く備わっています。
ボトルの状態の良さでしょうか。以前同じものを飲んだものより多彩さと、好ましさを強く感じました。単一年度ではなく、複数の熟成年、多数の原酒を使って作った輸出向け大量生産ロットだからこそ、逆に序盤で感じた複雑さに繋がったのかもしれません。

流通時期等については、輸入業者であるキリンシーグラムの住所が八丁堀であることと、容量の表記が750mlであることから、1980年代前半の国内流通と推察。他サイトでは、1984年の洋酒図鑑から掲載され始めるとの情報もありますが、例えば1982年ないし1983年からキリンシーグラムが国内販売を開始し、掲載のタイムラグが1年程度あったとすれば違和感はありません。
以上の流通時期、熟成年数考察を前提に考えると蒸留時期は1970年代中頃。そりゃあ美味しいわけですよ。

一方、どれだけ多くの原酒を組み合わせて加水調整で整えても、若さ故の刺激は多少残ってしまうもの。余韻にかけてそうした刺激が感じられただけでなく、香味が単調気味であるというか、序盤の多彩さが持続しないようにも感じられました。
またグラスのなかで香味が抜けていくのも早く、ベストなポテンシャルを発揮できる期間が短いようにも・・・。以前飲んだボトルが今回よりも単調に感じたのは、飲み頃のピークを外してしまっていたからかもしれません。
今回は最後の2杯のうちの1杯でしたが、良いタイミングでテイスティングすることができました。



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