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2018年12月

2018年 今年も大変お世話になりました



今年も後わずかとなりました。
2018年のウイスキー活動を振り返ると、
ブログは約300記事とほぼ毎日更新、累計1000万アクセス&1000レビューを達成しただけでなく、密かに目標としているオールドブレンデッドのレゾネ作りも、レビューの充実で確実に前進したと思います。
課題であるテイスティングスキルの向上としては、まだ穴はありますが頂いたサンプルや交流会におけるブランドテイスティングで納得のいく成果を出せているだけでなく、その考え方も記事化して整理出来たことが大きな一歩でした。

お酒を楽しむという点では、清里など行ってみたかったBARや所縁の地を訪問できたのは勿論、クラウドファンディング企画の参加や、ウイスキーを軸にシェリー、ワイン、リキュール、ラムなど他のジャンルに視野を広げることも出来た。
ブログを通じた繋がりもさらに広がり、いつも応援いただいている皆様の協力もあって実りの多い一年でした。
(私自身のキャパシティ不足で処理しきれていない話なども出てしまっていますが、本当に申し訳ありません。)


※ブラインドテイスティングの考え方について

※当ブログでのクラウドファンディングの紹介と追跡調査

※BAR訪問、Perch、サンドリエ、お酒の美術館

(今年最後のブラインド出題頂いたのはこちらのボトル。古酒ですがバチバチと強い刺激があり、GMスミスリベットのオールドハイプルーフに似てると思いきや、正解はグラント。。。なんとも締まらないw)

日本のウイスキー愛好家全体の動向としては、シングルカスクのウイスキーではなく、シングルモルトやバッテッド、ブレンデッドで安定したリリースが見直され、大手オフィシャル再評価の動きも加速したように思います。
作り手としてはクラフト系に引き続き活気があり、いくつかの蒸留所からは素晴らしい原酒も産まれています。スコッチだとキルホーマン、日本では三郎丸など、今後が楽しみな蒸留所の代表例です。来年さらなる動きがあることを期待しています。

一方、人気ブランドの終売や値上げ、あるいはバイヤーの参入等による競争率の高さで、希望するボトルを手に入れられないなど、体感ではいい話の方が少なく、殺伐とする空気が漂うこともあったのではないでしょうか。
ジャパニーズウイスキーブームも極まって、これが当たり前のように錯覚しすら感じてきましたが、ブームに伴う影響が良いことばかりではありませんでした。
逆に言えばウイスキーとはこれだけ多くの人を引きつける魅力を秘めていて、やっとそれが認知されたという訳ですが、来年も一部ブランドの終売があるようですし、今後しばらく愛好家にとっては我慢の時代になるのかなと感じています。

そんな中でいち情報発信者として思うのは、日本という国の持つ特色を活かしたお酒の楽しみ方を発信したいということです。
日本は輸入、販売、物流、あるいは専門的なBAR等の充実で、世界で1番、安価かつ手軽に多くの酒類を楽しめる環境が整っているといっても過言ではありません。
また現行品以外に一部のオールドボトルは、高度経済成長とバブル期の遺産でとんでもない数のストックが国中にあり、これほど手軽に飲める国はそうない状況です。

ウイスキーを捨てて、他の酒に逃避しろということではありません。
例えばスコッチウイスキーは様々な樽を使う訳ですが、シェリー樽熟成のウイスキーを知っていても、シェリーのことを知っている飲み手はどれほどいるでしょうか。バーボン樽のベースとなるバーボンはどうか、ワインはどうか。。。
ウイスキーを軸として、さらに広いジャンルを楽しめる環境が日本にはあり、その経験はウイスキーを理解する上で無駄にならない。ガイド役となる方々もいるのですから、関連する酒類に視点を向けてみることで、我慢の時代にあっても楽しみ方は多様にあると思うのです。

(年末に飲んだワインやコニャックの一部。ワインは木苺やクランベリーを思わせる甘酸っぱさがあり、タンニンも程い。コニャックは素晴らしい熟成香にうっとりとさせられる。どちらもウイスキーを軸にして見ることが出来る味わい。お酒の世界はまだまだ広く、出会いと可能性に満ちている。)

来年は元号が変わるとされており、平成は不況とウイスキーブーム終焉で始まり、それらはどちらも盛り返して終わるということになります。(ウイスキーについては盛り返しすぎた感がありますがw)
来年はさらに視野を広げられる1年にしたい。経験を積みつつ、前向きにお酒を楽しむ1年にしたいと思います。

皆様、本年も大変お世話になりました。
来年も引き続き、くりりん及びくりりんのウイスキー置場をよろしくお願いします。

ギルビー ロンドンドライジン 1980年代 日本流通品 45%

カテゴリ:
GILBEY'S
LONDON DRY GIN
1970-1980's
Distilled from Grain & Bottled by NIKKA WHISKY
760ml 45%

グラス:スピリッツテイスティング
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:-

ジェルやトニックなどの整髪料系のニュアンスを含むシトラスなどの柑橘香。ビターかつ爽やかではあるが、どこか安っぽさ、人工的なニュアンスを伴う。
含み香は柑橘の皮を思わせるフレッシュさと苦味、香りにある人工的なニュアンス。合わせてほのかな粘性があり舌に絡まるが、フィニッシュにかけてはドライでスパイシー。キレのよさも感じられる。

ロック、ジントニック共に該当する整髪料系のフレーバーは残る。甘口タイプのトニックウォーターだとそれが悪目立ちするが、ビターなタイプのトニックウォーターと合わせるとキレよく飲み進められる。少しソーダを加えてもいい。


先日、ジンなのにパフュってやがるという衝撃の味わいを堪能?させてくれたギルビージンのオールドボトル。
しかし記事に頂いたコメントから調べてみると、期間は不明ながら当時のギルビー社は主要な消費地に技術提携という形で生産方法(ボタニカルなどのレシピ)を伝え、該当する地域のものは該当する地域の提携企業が生産・流通させていたことが判明。つまり作り手が地域によって異なることがわかりました。

コカコーラ社が、世界各地にボトリング会社をもっているようなものですね。
ジンはビールなどの醸造酒のように鮮度命というわけではありませんが、当時の物流を考えれば、かさばるガラスのボトルをイギリスなどから輸出するより、レシピを伝えて現地でつくってもらったほうが安価でリスクも少ないという考えだったのではないかと思います。


ここで先日入手したギルビー・ジンのアメリカ向けボトルを見てみると、ラベル下部分にはNational Distillery社の表記。ここはオールドグランダッドなどのバーボンを手がけていた企業で、一方日本では1963年9月にニッカウイスキーが提携しており、生産者が異なっています。

飲み比べてみると、ジェルやトニックなどの整髪料を思わせるシトラス系の人工的な香りは共通するところですが、アメリカ向けのほうに感じられる例のフレーバーが日本向けにはありません。
Distilled from Grain & bottled の表記の通り、ボタニカルのレシピは同じでも、ベースに使ったグレーンスピリッツの違いということなのでしょう。ールド グランダッドはかつてバーボンでありながらパフューミーな香味があり、そもそもの原因は不明ながら今回の違いは得心がいく整理が出来ました。


なお、今回のボトルは上記きっかけとなるコメントを頂いたサトウさんが、比較してほしいと贈ってくださったものです。
実は問題のアメリカ向けボトルと合わせて日本向けも入手していたのですが、某S社が輸送中に破損。。。
情報だけでなく貴重なボトルまで頂き、ブロガー冥利に尽きる、大変光栄な経験をさせて頂きました。
この場で改めてお礼申し上げます。

ジャンフィユー レゼルヴ ファミリアル 40%

カテゴリ:
jean-filloux-reserve-familiale-tasting
JEAN FILLIOUX
Reserve Familiale
Tres Vielle Grande Champagne
700ml 40%

グラス:リーデルコニャック
場所:自宅
時期:開封後2ヶ月程度
参考評価:★★★★★★★★(8)

香り:華やかでオーキー、アプリコットやマンゴーなどのドライフルーツ、白葡萄、林檎などの甘酸っぱさと共に、ほのかに甘栗を思わせる香ばしさ。注いだ瞬間はドライ気味だが、周囲に拡散する素晴らしい香り立ち。

味:濃縮感に加え角の取れたウッディな口当たり。合わせてピーチ、林檎のカラメル煮、熟した甘酸っぱい果実風味が樽由来のタンニンと共に広がる。粘性のある舌当たりだが、徐々にドライな刺激を感じる。
余韻はドライで華やか、強い熟成感を伴う実に長いフィニッシュ。

濃厚にして繊細。うっとりするような艶のある熟成香、樽感、長期熟成のボトラーズスペイサイドモルトにあるようなフルーティーさが広がる。大振りのグラスに注ぐとグラスの中にそれらが凝縮し、より芳醇なアロマを堪能できる。じっくりと時間をかけて楽しみたい。


コニャックの中でも最高峰の格付けを受けるグランシャンパーニュ地方。その中でもポールジローやラニョーサボランなどとともに、近年ウイスキー好きに認知され始めている作り手がジャンフィユーです。

ジャンフィユー社の商品には様々な熟成のレンジがあり、今回のレゼルヴ・ファミリアルはブランド通常ラインナップ最上位に位置する長期熟成品。使われている原酒の熟成期間は50年以上で、リムーザンオーク由来の華やかさと、多彩さを含む熟成香が魅力である一方。香味には熟成由来のウッディネス、ドライさも感じられるわけですが、それはギリギリ自然な範囲に収まっており、時間をかけて温めながら飲んでいくと香味の蕾が開くように、あるいは煮込み料理で材料が柔らかくなっていくように、グラスの中で好ましい変化が得られていきます。

ぶっちゃけ、近年のモルト。。。特にスペイサイド系はどんどん若さやボディの軽さが目立つ状態にあるわけですが、かつてのモルト(ピアレスの60年代のグレングラントとかストラスアイラとか)にあった熟成感に近いニュアンスを備えているのは、樽材の種類は違えどオーク由来の香味と熟成がもたらすものに共通項があるからでしょう。それなりに値段のするボトルではありますが、飲む価値はあると思います。

なお、このコニャックをはじめカルヴァドスなど熟成したブラウンスピリッツは、お湯割りとの相性が素晴らしいのです。(上の写真の紅茶っぽい構図、あれはお湯割りですw)
50〜60度くらいの温度で割ってやると、香りは柔らかく芳醇に、口に含む味わいはドライさがこなれて、華やかさとジャムのような果実味、体の隅々に染み込むような美味しさ。。。ただしこれ、初見のBAR等で注文する場合はマークされる危険を伴う諸刃の剣、素人にはオススメ出来ない。
また飲みやすさから杯が進み、気がつけば記憶をなくすという副作用も報告されているので、合わせて注意が必要です。

デュワーズ 12年 アンセスター 1980年代流通 43%

カテゴリ:
DEWARS
AGED 12 YEARS
ANCESTOR
SCOTCH WHISKY
1980's
750ml 43.5%

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封直後&開封後1週間程度
場所:お酒の美術館 神田店
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:柔らかい香り立ち。はじめは角の取れたエステリーさに加え、おしろいっぽさのある強い麦芽香。蜂蜜やオレンジママレードの甘み、奥にはポン菓子、淡いピーティーさと土っぽさ。

味:マイルドな口当たりから香り同様に強い麦芽風味、干草、蜂蜜、コクのある口当たりで余韻にかけてしっかりと広がる。余韻はややドライでオレンジピールを思わせるほろ苦さ、柔らかいスモーキーさで長く続く。

しっかりとしたモルティーさがあるブレンデッド。キーモルトたるオードとアバフェルディを思わせる個性を主体に感じる。少量加水でよりマイルドな麦芽風味と、フルーティーさも開く。ハイボールも悪くないが、これじゃなくてもという印象も。。。作るなら濃いめで。


古くはDCL傘下にして、米国市場で売り上げ3位という高い評価を受けていた、デュワーズブランド。その原動力はクセが少なくコクのある味わいに加え、スタンダード品につけられたホワイトラベルという名前にあったのは、時代を感じさせる要素であります。

ただしデュワーズ・ホワイトラベルのオールドは、古いものほど原酒由来の要素が強く魅力ではあるのですが、70年代ないし80年代になるとベースの若さか口当たりの荒さが目立ちはじめ、スタンダードスコッチの枠を越えない、というのも本音だったりします。
加えて60年代以前はティンキャップで地雷率の高さも・・・まあ80年代あたりはハイボールで飲むには良いんですけどね。

一方でデュワーズの上位グレードは別格。ブレンドに使われているハイランドタイプの原酒が良さを出すには、一定期間の熟成が必要ということなんでしょう。
このアンセスターの香味は、愛好家から高い評価を受ける同時期のデュワーズ・ピュアモルトの系統。70年代のデラックス表記の方がモルティーな風味が際立っている印象はありますが、80年代でも充分美味い。シェリー感とか華やかさとかピートとか、そういう目立った系統じゃない、厚みのある麦芽風味と蜂蜜を思わせるコクのある甘みを楽しめます。

正直、12年表記でこのレベルなら、ティンキャップのホワイトラベルを買わずに、アンセスターを年代問わず複数本調達した方が幸せになれると思います。
最近オールドブレンデッドの世界に足を踏み入れた方など、一度飲んでいただきたいボトルです。

スペイサイド 43年 1973-2017 アーカイブス 46.8%

カテゴリ:
ARCHIVES
A Speyside Distillery
Aged 43 years old
Distilled 1973
Bottled 2017
Cask type Refill Sherry Butt
For Whiskybase
700ml 46.8%

グラス:テイスティンググラス
場所:BAR Kitchen
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(6-7)

香り:ツンとしたエッジの立った刺激、ドライで華やかな香り立ち。ココナッツやバニラを思わせる甘いアロマ、華やかさに混じる黄色い果実香は、ドライパイナップルやアプリコット、かすかに金柑、ハーブを感じさせるニュアンスも。

味:エステリーでドライ、薄めた蜂蜜、バタースコッチを思わせる甘みと麦芽風味。合わせてオーキーで、ドライパイナップルなど香り同様のフルーティーさ。余韻は心地よくドライで華やか、リキュールのようなシロップ系の甘みを感じつつ、長く続く。

近年のトレンド、スペイサイドリージョン系統の香味構成と言って差し支えない。ドライで華やかで、アメリカンホワイトオーク由来のバニラや黄色い果実味がある。長期熟成と度数落ち故に酒質が削られ、それらがより一層際立っているのも特色。時間経過でこなれる印象もあり、時間をかけて楽しみたい。


コアな愛好家にとっては所有ボトルやテイスティングコメントの管理ツールとして、また、トレードや情報収集の場として重要な役割を果たしているWhiskybaseがリリースしているアーカイブス。
近年、同リリースから日本に入荷しているのは「フィッシュオブサモア」シリーズがありますが、今回のは「オーストラリアのヒトデ」シリーズで、同時に1996年蒸留のスペイサイドもリリースされていました。こちらは並行品がWEBショップなどで販売されたようで、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

1996と1973、同じ組みわせのリリースが別ルートからもありましたが、度数や樽番号から別物というより同じ一族と見るのが自然。中でも近年のニューリリースにおいて、40年を超える長期熟成スコッチのトレンドの一つとなっているのが、蒸留所不明な"スペイサイドリージョン"であり、今回のボトルはスペイサイドディステラリー表記ですが、これまでいくつか飲んだものと同系統な構成と感じます。

その香味はエージェンシーあらため、スペイサイドリージョン味。古くはダンカンテイラーでよく言われていた、ピアレス香の派生のようなものですが、こちらのほうが熟成が進んでいる分、樽感的にボトル毎に共通するニュアンスが強くなっています。
蒸留所はファークラスというのが定説ですが、熟成を通じてベースとなる酒質が削られるとともに、2〜3回目のリフィルシェリー樽(アメリカンホワイトオーク)由来の華やかな香味が強く付与されているため、何を飲んでも同じような香味に感じてしまうため、正直よくわからないないですね。
結局、ボトル毎の差は度数の違いからどれだけアタックやドライさが強いか、余韻が持続するか・・・というところだと思います。

ちなみに、この手のリリースの楽しみ方は、ストレートの場合は長期熟成のコニャックに近いものがあると考えています。
それはまず、グラスの中で時間をかけること。どうしても樽が強く、ドライさが抜けきらないので、手で温めながら華やかな香りを楽しみ、じっくりグラスの中でなじませていくのです。

テイスティングは熟成1年につき1分かける、とも言われていますが、少なくともこのボトルは1ショット30分はかけていい
思います。
ドライで刺々しかった樽感が丸みを帯び、華やかさはそのまま、全体的に一体感も伴ってくる。度数のないスペイサイドリージョンでは、こなれる前にへたってしまって難しいのですが、今回のボトルはギリギリ可能な範囲。
後はハイボールか、お湯割りですね。原価が原価なんで、かなり貴族な飲み方ではありますが、割った後でブラインドしてもそれとわかる個性は、ある意味すごいです(笑)。

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