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2018年08月

ローズバンク 11年 1980-1992 ケイデンヘッド 150周年記念 60.1%

カテゴリ:
ROSEBANK
CADENHEAD'S
AUTHENTIC COLLECTION
150th Anniversary Bottling
Aged 11 years
Distilled 1980
Bottled 1992
700ml 60.1%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
場所:KuMC@NYさん
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:一瞬チョコレートクッキーやキャラメルアーモンドを思わせる甘いアロマを感じるが、すぐにハイトーンで鼻腔を刺激する鋭いエッジ、微かにメンソール。奥にはベリー系のニュアンスもあり、徐々に前に。樽の良さを感じる。

味:スパイシーで強いアタック。ドライベリー、チョコレートや黒砂糖、微かに青みがかったウッディネス。舌へのアタックは強く、ヒリヒリとした刺激が樽由来の甘みの後に続く。
余韻は程よくドライでビターだが、それ以上にハイトーンで強いキレ上がり。

良質なシェリー樽で圧殺した原酒。とはいえ、比較的若いうちにボトリングしたためか、シェリー感はリッチだが蒸留所の個性と言えるアタックの強さも残っている。少量加水すると多少樽と酒質の距離が縮まって一体感が増すものの余韻のキレは残る。


ボトラーズメーカーのケイデンヘッドが創業150周年を記念してリリースしていたオーセンティックコレクションシリーズの一つ。

同社からは昨年、175周年として様々なリリースが行われていましたが、この150周年のラインナップは長熟至上主義ではないというか、スコッチモルトでは70年代から80年蒸留で10〜20年熟成というマニアが唆るようなスペックが主体。
50年熟成近い不思議な味のタラモアとかも一部ありましたが。それこそこの時期なら60年代の原酒はまだまだ手に入る中で、原酒が潤沢だったというか、手探りだったというか、ウイスキー業界をにおける"時代"を感じる部分でもあります。

このローズバンクもその例に漏れず、11年熟成という短熟ハイプルーフでのリリース。
テイスティングの通り、3回蒸留原酒の鋭くハイトーンな香味が短熟ゆえに去勢されておらず、ファーストフィルシェリー樽と思しき濃厚な樽感が付与されていながら、それを酒質が突き破ってくるような感覚があり。このリリースの評価は、その若さというか、酒質とのバランスをどう捉えるかが大きいと思います。

自分はローズバンクというと、ちょっとやんちゃでキレの良いクリアな麦芽風味という印象から、このボトルはシェリー感に加えてそのらしさも一部感じられる点が面白いと思いますし、ボトラーズメーカー・ケイデンヘッドの1990年代ごろといえば、グリーンケイデンを筆頭にこういう酒質ピチピチのカスクストレングスが多かったですから、そういうらしさも備わったリリースだと感じています。

今回のボトルは、ウイスキー仲間の定例会、国立モルトクラブでテイスティングさせて頂きました。NYさん、いつも貴重なボトルをありがとうございます!

厚岸蒸留所 ニューボーン2018 ピーテッド 58% FOUNDATIONS2

カテゴリ:
IMG_8380
AKKESHI NEW BORN 2018
"PEATED"
FOUNDATIONS 2
Single Malt Spirit
Bourbon Barrel
200ml 58%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封直後
評価:-

香り:フレッシュな香り立ち。シトラスやレモングラスを思わせる柑橘のアクセント、淡い潮気、酵母香と焼き上げたパイ生地のような香ばしい麦芽香。土っぽいピート香に穏やかなスモーキーさを伴う。

味:香り同様にフレッシュな口当たり、ヒリヒリとした刺激から薄めた蜂蜜の甘み、レモンバウム、香ばしい麦芽風味。中間以降はピートフレーバーが存在感を出してきてほろ苦くスモーキー、塩水のコク、荒い刺激と微かなえぐみを伴うフィニッシュ。

要所要所でバーボン樽由来の淡くオーキーな香味がアクセントになり、甘みや柑橘感など、若いなりに飲めるまとまりのある香味に仕上がっている。加水すると一瞬香り立ちが荒くなるも口当たりのコクと塩気が感じやすく、ハイボールにするとピートフレーバーが引き立つ。スモーキーでソルティー、さっぱりとした味わいを楽しめる。


北海道、厚岸蒸留所のニューボーン第二弾。創業年である2016年と2017年に仕込まれたピーテッド原酒をバッティングしたもので、熟成期間はバーボンオークで7ヶ月から16ヶ月となっています。
発売は8月27日でつい2日前ですが、イベントなどで先行試飲もありましたし、既に飲まれている方は多いかなとも思います。

創業者である堅展実業の樋田社長は、かつてアードベッグ17年に衝撃を受け、アイラモルトのようなウイスキーを日本でも作りたいと、ウイスキーづくりに厚岸の地を選んだ経緯があります。
また、現在は自身が作ったウイスキーを牡蠣にかけて食べるという夢も持たれており、厚岸蒸留所が目指すハウススタイルはこれ以上解説するまでもなく「ピーティーなアイラモルト」なのです。

一方、先日リリースされたニューボーンの第一弾がノンピートだったことは記憶に新しいところ。
これはピートフレーバーは良い意味でも悪い意味でも、酒質のネガティブな部分をマスクするため、まずはノンピートで蒸留所として作り出せる酒質を確立することが重要であるとの考えから。厚岸蒸留所では1年間のスケジュールの中で、まずノンピートを仕込み、得られる酒質の状態を確認・調整した後で、ピーテッドの仕込みに入る流れを採用しています。

つまり我々飲み手側も、ノンピート原酒で素の酒質に触れて、第二弾としていよいよハウススタイルに掲げるピーテッド原酒をテイスティングする準備が整ったというわけです。
どちらもバーボン樽で熟成された原酒が使われており、同じ環境でほぼ同じ熟成期間、ピートの有無による影響の違いを感じやすいリリース順とも言えます。

(厚岸蒸留所のポットスチル(上)は、コントロールしやすさを狙ってラガヴーリン蒸留所(下)と同型のスチルが導入されている。ただラインアームの角度はフォーサイス社曰く水平から少し角度を下げれば皆同じとのことで、ラガヴーリンほどの角度はつけられていない。)

先日更新したニューボーン第一弾の記事では、初年度の試験的なニューメイクの仕込みで熟成に耐えるボディを出すために苦労をしたというエピソードを紹介しました。
そうした試行錯誤を経て仕込まれた2016年のピーテッド原酒は、厚みのあるボディとは行かずとも、クリアで綺麗な酒質にしっかりとしたピートフレーバーが感じられ、イメージとしてはラガヴーリンとキルホーマンを足したような印象。
以前ニューメイク単体をテイスティングし、初年度から洗練された味わいにびっくりしたのを覚えています。

このニューボーンもそうした特性を引き継ぎ、若いながらも樽香をアクセントにして5〜6年熟成くらいのアイラモルトを思わせるような仕上がりを感じます。
ピート由来か熟成場所の関係か、微かな塩気を伴うのも益々アイラらしく、コクがあってハウススタイルとして求める原酒が育っているようです。
いくつか加水のパターンを試したところ、45%くらいまで加水すると、その真価を感じやすいですね。他方、原酒の若さか、樽の処理の関係か、余韻に蓄積するようなえぐみが微かに感じられ、その点が今後熟成が進むことでどうなってくるかは気になる要素でもあります。

現時点ではトライ&エラーで調整する点も多く、仕込む原酒はノンピートの比率が高いそうですが、最終的には1年の仕込みの中で8割以上をピーテッド原酒に切り替えていくだけでなく、麦、ピート、樽、全てが現地産の原酒を仕込む目標も。
今作のニューボーンは、まさに厚岸蒸留所が目指すハウススタイルの産声。可能性を秘めた味わいを、先の姿を思い浮かべながら是非楽しんで欲しいですね。

三郎丸蒸留所 ブレンダーズトライアル EX-1 IPAカスクフィニッシュ

カテゴリ:
WAKATSURU
BLENDER'S TRIAL EX-1
Imperial Porter Ale
700ml 43%

グラス:オープンナップスピリッツ アンビアント
場所:BAR ハリーズ高岡
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★(5)

香り:若さからくるフレッシュさと荒さのあるアロマ、ホップ、グレープフルーツピールを思わせる柑橘香、微かに酵母香。ピートスモークも合わせて感じられる。

味:穀物や麦芽系の素朴な口当たり、香ばしさとバニラウェハース、微かにグレープフルーツ、後半は少しのっぺりとした舌あたり。余韻はピーティーで淡くスモーキー。染み込むように続く。

ビール樽由来の要素がグレープフルーツを思わせる爽やかな柑橘系のアロマに繋がっており、若い原酒の荒さ、酵母系のニュアンスを伴いつつも不思議と飲み進めることができる。値段なりの部分は少なからずあるものの、工夫で飲ませるウイスキー。


三郎丸蒸留所(若鶴酒造)が、蒸留所限定品として作っているブレンダーズトライアル。今回は、京都ウィビアメッセ2018限定ボトルとしてのリリースで、蒸留所の地元富山のクラフトメーカー城端麦酒が作る、インペリアルポーターエールの樽で後熟したグレーンを使用したブレンデッドウイスキーです。
イベントの現地記事は書いたのに、このボトルのことをすっかり忘れていました(汗)

(ご参考:リカマン・ウィビアメッセ限定ボトル紹介ページ)

ビール樽熟成のウイスキーはまだ数が少ないものの、秩父のIPAカスクを筆頭に、上手く使えば決して悪い影響を与えるものではないと感じています。
それはIPAに感じられるホップや麦芽の苦味と柑橘系の香味がウイスキーに付与され、若いなりにも飲めるようになるなと。ただ、IPA樽は一般的なウイスキーのそれとはベクトルの違う香味が良くも悪くも目立つため、ブレンドの1ピースとするには難しさもあると感じます。特にシェリーやワイン系とは致命的に合わないのではないかなと。

今回のブレンダーズトライアルは、その個性の強い原酒を敢えてブレンドに用いた、トライアルの名に相応しい意欲作。
ブレンドの1ピースであるグレーンをフィニッシュしていることや、その他の樽感がプレーンな感じであることから、全体をフィニッシュにかけた時の上から覆いかぶさるような香味の出方にならず、程よく感じられる程度にまとまっています。

あくまで値段なり、な構成ではありますが「ビール樽熟熟成のウイスキーの味」を手軽に感じられるのは、いい位置付けだと思います。

サントリー シングルモルト 山崎 25年 43%

カテゴリ:
YAMAZAKI
SUNTORY WHISKY
Aged 25 years
700ml 43%

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後5年程度
場所:BAR Perch 萌木の村
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:華やかでコクのある香り。香木系のニュアンス、チョコレート、レーズンやベリーのドライフルーツ、あるいは熟した柘榴。深みを伴う甘酸っぱい馥郁としたアロマ。

味:スウィートでとろりとリッチな口当たりだが、すぐにビターでドライ、強いタンニン由来の渋みを感じる。
果実味は香り同様にベリーやプルーン、カシスとフルーツソースのような濃厚さだが、余韻は香木を伴うウッディネス、果実味のあるシェリー香が鼻腔に抜け、タンニンが強く染み込むように長く残る。

濃厚なスパニッシュ系のシェリー感に加えミズナラを思わせる香木香も伴い、香りだけでご飯3杯いけるようなウイスキー。ただし味はストレートだと濃厚な甘みの後にウッディーでタンニンが強く、色々な意味でのジャパニーズらしさもある。少量加水すると香味ともさらに開き、タンニンも軽減される。


ああ、山崎のシェリー樽だなぁと感じる1本。
近年、世界的なジャパニーズブームを受けて山崎25年の価格は青天井。加えてモノも品薄ときて蒸留所での試飲以外は飲む機会がなくなっていたのですが、どうも最近のロットはシェリー感が薄い印象があり、今回ブーム到来前のロットをテイスティングしてその構成を探ることにしました。

ボトルは萌木の村で開封されていた、2013年ごろの流通と思われるロット。
シェリー感はスパニッシュオークのオールドタイプ。そこにミズナラ、ホワイトオークといくつかの樽が混じり合っているようですが、比率はシェリー7、ミズナラ2、ホワイトオーク1くらいと感じるほど、濃厚なシェリー感が主体の構成です。
その香味はジャパニーズらしさと言うか山崎の到達点の一つと言えるものですが、最低25年という熟成期間の縛り故、樽由来の渋みが強く出て、極上のチョコレートケーキとエスプレッソを合わせているような、深い甘みと苦味の層を感じる味わいが特徴的です。

他方、今回のテイスティングのきっかけとなった、山崎蒸留所で試飲した25年の近年ロットはシェリー感が若干ライトになっており、ホワイトオークの比率が上がっていた印象。ざっくりとした比率でいうと、シェリー5、ミズナラ2、ホワイトオーク3くらいでしょうか。
年間製造本数1000本強と本当に限られた数しか作られないハイエンドでも、近年のブームの影響を見るようです。

シェリー感が薄くなったことは賛否分かれると思うものの、上述のタンニンが穏やかになって、逆にバランスが取れたかなという印象もあります。
山崎18年や響21年も同様の変化が見られたことは先日記事にもした通りですが、それらのラインナップ一通りの背後に、ブレンダーの努力を見たようにも感じるのです。

リンクウッド 25年 1984-2009 サマローリ 45%

カテゴリ:
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LINK WOOD
SAMAROLI
Aged 25 years
Distilled 1984
Bottled 2009
45% 700ml

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後1年程度
場所:BAR Perch 萌木の村
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:しっとりとスモーキーな香り立ち。燻した麦芽、プレーンでスパイシーなウッディネス。徐々にエステリーなニュアンスがあり、洋梨のような淡いフルーティーさも。

味:やや乳酸的なアクセントを伴うプレーンな口当たり。洋梨のペースト、ドライオレンジ、モルティでほろ苦く、合わせて焦げたようなピートフレーバー。
余韻はスモーキーでドライ、プレーンオークの自然なウッディネスは、微かに柑橘やジンジャーを感じさせ、長く続く。

オールドスタイル系統のリンクウッド。リフィルシェリーバットあたりの熟成か、樽感はプレーンでモルティーな香味が主体となっている。ややピートが強い印象も受けるが、加水が効いて一体感のある香味が印象的。


リンクウッドと縁の深いサマローリから、その中でも比較的リリースの多いビンテージである1984年蒸留のリンクウッド。
この原酒はかつてのオフィシャル系統というか、自分の好きなオールドスタイルで、ピートが感じられるタイプでした。
過去に飲んだものも含めると、総じて同様の系統であり、ボトラーとしてまとめて購入したロットがこのタイプだったのかもしれません。

スモーキーなリンクウッドと、淡麗なリンクウッド。この違いにかかる蒸留設備云々の話は、これまでの記事で度々触れてきていますので割愛しますが、開封してみないとわからないのがリンクウッドのガチャ要素です(笑)。
ただ、1980年代前半は蒸留所の閉鎖が相次ぎ、酒質的はドライな傾向が強く、樽的にはバーボン樽への切り替え時期で迷走する蒸留所も少なくない。スコッチ業界全体をみるとこの時期はそうした傾向があるわけですが、そんな中で生まれ年で自分の好みなモルトがあるというのは、嬉しい要素だったりします。


ちなみに、1970年代から1985年、そして2000年以降はガチャ要素の強いリンクウッドですが、1987年蒸留でピーテッド名義のモルトがリキッドサンからリリースされています。
オールドスタイルのリンクウッドを作る蒸留棟は1985年から生産を休止しているため、これは普段端麗なタイプの原酒が生み出される新しいほうの蒸留棟のピーテッドタイプということに。
同じようにオールドスタイルな仕上がりかと思えば、ピートの種類が違うのか、設備の違いか、ピートが浮ついていて異なる仕上がり。同じ設計とされている蒸留棟で生み出される酒質の違いが、ウイスキーづくりの神秘を感じさせます。

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