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2018年07月

ゴンザレスビアス ノエ 30年 ペドロヒメネス 15.5%

カテゴリ:
GONZALES BYASS
NOE
Pedro Ximenez Muy Viejo Sherry
Over 30 years old
2010's
750ml 15.5%

リッチで濃厚な甘い香り立ち。ややウッディなニュアンス。とろりと濃厚な口当たりは、黒蜜や生チョコ、そしてレーズンや無花果の甘露煮を思わせる甘酸っぱさがアルコールの刺激少なくとろけるように豊かに広がる。
余韻は長く、しかし序盤の濃厚さがある甘みがしつこく残らず心地よい満足感を伴う。素晴らしいPXシェリー。


ウイスキーでもお馴染み、ゴンザレスビアス社のPXシェリーブランドの最高峰"ノエ"。20年間樽熟成し、その後10年間はソレラシステムに組み込む事で、30年を最低熟成年数とする長期熟成極甘口シェリーです。
今回のテイスティングアイテムは2010年ごろに流通していたロットで、現行品の方が少しコクが軽い印象もありますが香味の傾向は同じだと感じています。

PXシェリーは原料となるペドロヒメネス種のブドウを、収穫を遅らせたり天日干しにするなどして糖分を高めたのちに仕込むため、非常に濃厚な甘みが各ブランドに共通する特徴としてあります。
グレードの低いものだと甘いだけで余韻がベタついたり、アルコール感が強かったりするので、ソーダで割ってレモンを絞るような飲み方を推奨したいところですが、このノエはストレートで飲んでも濃厚な甘みに対して程よい酸味と余韻のベタつきのなさが特徴。軽く冷やして食後酒として文句なしの1杯です。


ノエのようにちょっといいPXシェリーでおすすめしたい楽しみ方が、バニラやミルク系のアイスにかけるスタイル。ハーゲンダッツのような甘みとコクしっかりの高級タイプより、食べる牧場ミルクやスーパーカップ、雪見だいふくなんかも良いですね。(亜種では抹茶系のアイスにかけるのもGOOD)
ただでさえ甘いのに、さらに甘いものにかけて大丈夫なのかと思うかもしれませんが、そこは温度差が解決してくれます。

甘みを含む香味のいくつかは、温度が低いと感じにくくなる傾向があり、アイスクリームで冷やされることでシェリーの甘みが感じにくくなるだけでなく、もともと香味全体が濃厚である故それが適度な引き算となって・・・ドライフルーツを思わせる酸味と熟成によるコク、アーモンドのようなほのかな樽香だけが残り、素晴らしいアクセントとなるのです。(糖分とカロリーは勿論その分オンされてますがw)

こうした食べ方はウイスキーやブランデーを使った事例もあります。しかし個人的な好みで言えば、度数の高いものとの組み合わせは、よほど香味のしっかりしたものや長期熟成品をごく少量に留めない限り、アルコールが悪目立ちするだけでなく、粘度が低いためしゃばしゃばになって、見た目のワクワク感ほど美味しくないというのが率直な感想です。
やはりアイスクリームにかけるならPXシェリー、このデザートを是非オススメしたいです。

ちなみにBAR飲みでは、自分で頼むだけでなく、お店によって甘口シェリーを締めのサービスで出してくれるところがあり、これは自分のような甘党ウイスキードリンカーには最高のサービスだと考えています。
っていうか下手にスナック菓子とかのチャームが一品出てくるより、締めにちょっといいPXが出た方が嬉しいのが本音。上記のようにアイスクリームにかかって出てきたら最強かよって感じですね(笑)。

(ノエの新旧ボトル。左が現行寄りのデザイン。右が1990年頃の流通品。5〜10年単位で細々ラベルデザインが変わっており、1990年代以降でもこれ以外に複数種類のラベルが存在する。なお、オールドになればなるほど相当の澱が出ているので、取り扱いは注意。)

モートラック 1982-2002 ジェームズマッカーサー 55.2%

カテゴリ:
MORTLACH
James Mac Arthur
"OLD MASTERS"
Distilled 1982
Bottled 2002
Cask type Sherry #4174
700ml 55.2%

グラス:木村硝子テイスティング
場所:自宅@借り物
時期:開封後半年程度
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:強い香り立ち。やや青みがかったニュアンスを伴うハイトーンで乾いたウッディネス。合わせてエステリーで林檎のコンポート、蜂蜜、微かにカカオ。奥には木材の燃えかすのようなスモーキーさも伴う。

味:スパイシーでフルボディな口当たり。香り同様ハイトーンでヒリヒリとした刺激があるが、蜂蜜を思わせるコクのある甘み、香ばしくスモーキーな麦芽風味が淡いシェリー感やほのかな古酒感と共に広がってくる。
余韻はピーティーでビター。微かに青みがかった樽香を伴いパワフルで長く続く。

モートラックらしい強さと個性のある酒質に淡いシェリー感。口開け直後に比べ、柔らかくなってきた印象もあるが、ストレートでは未だパワフルな印象は拭えない。少量加水すると好ましい変化があり、特にピーティーさが際立つ。

普通に美味しいモートラック。持ち主曰く、怒りのモートラック(笑)。テイスティングの通り酒質の"らしさ"が感じられ、ハイプルーフボトリングも手伝って香味に勢いがある。ジェームズマッカーサーのこのリリースは、これまで何本か飲んできたものの詰めたてが硬かったろうなってボトルが多い印象で、今回の1本も同様な構成です。

それでも15年程度の経年に、熟成年数20年程度と、樽に染まりきらないバランス型の熟成感は通好みであるだけでなく、真価を発揮するのは少量加水から。ハイトーンなアタックが落ち着き、程よい甘みを残してピートと林檎系の果実味が香ばしい麦芽風味と共に開くのが好印象です。
こういう古典的なスタイルの内陸系モルトは好みなんですよねえ。余韻の引き締めるような苦味がたまらんです。

ただ、あえて言えば裏ラベル。モートラック蒸留所のハウススタイルと思しき内容が解説されていて、このボトルを飲んで納得できる要素が多い反面、ストロングシェリーというにはさすがに樽感淡すぎという印象も。。。
香味の系統からすると、シェリー樽が不足し始め、シーズニングも今ほど一般的でなかっと思われるこの時期のアメリカンオークのリフィルシェリーだと思います。こういうもんだと思って飲めば良いんですが、シェリーだと思って飲むと「あれ?」という感じなのです。
冒頭書いた持ち主の怒りは、ここに起因しています。

それでも、近年増えてきたわかりやすくもやや露骨な樽づかいから見れば、こういうかつてのケイデンヘッドとかにありがちなタイプの樽づかいは貴重になったとも言えます。
期待したシェリー感とは違いましたが、これはこれで楽しめる味わいでした。

セイズファーム カベルネソーヴィニョン 12.5%

カテゴリ:
SAYS FARM
CABERNET SAUVIGNON 2016
HIMI TOYAMA JAPAN
750ml 12.5%

香り:スパイシーでやや硬さを感じるクリアな香り立ち。木苺やカシスの果実香、ほのかな樽香やハーブを思わせるアロマもある。

味:フレッシュで雑味の少ない口当たり。酵母発酵を思わせるプチプチとした刺激、程よい酸味の後で熟したカシス、ジャムのような果実味も感じる。
余韻のタンニンは控えめで、甘みもベタつかずさっぱりとしている。

カベルネソーヴィニョンのニュアンスはあるが、気候によるのかフランスのようにしっかり濃厚なタンニンがあるわけでもなく、新大陸のようにたっぷりとしたタイプでもない。控えめな甘みとフレッシュな酸味で、例えるなら熟していない果実のよう。数日経過すると熟れた甘みが開きポテンシャルを発揮してくる。


久しぶりのワイン記事。友人夫妻からのお土産なのですが。。。
「日本のワインってなんか手が伸びないんだよね。」
ワインの経験が浅い自分の、偏見とも言える先入観を打ち砕いてくれたのが今回の1本です。

セイズファームは2007年、富山県氷見市に創業、2009年にファーストリリースを行なったばかりのまだ新しいワイナリーです。
その特徴は、ワインづくりに用いる葡萄は全て自社で開墾した農園で生産した各葡萄品種のみを用いていることと、富山の食材の合うワインづくりを目指していること。それもほぼ有機栽培に近い、地の環境を活かした生産を行っているのだそうです。

自分が日本のワインに手を出さなかった理由は、一部銘柄がブドウジュースやレーズンなどを使ってワインを作っているという話を聞き、日本はまだその程度なのかなという先入観を持ってしまっていたため。
勿論そうした銘柄が一部あるのも事実と思いますが、ボトル片手に調べてみて、本格的にワインを作ろうとしている醸造家もいらっしゃるんだなと。香味から細かいところまでわかるほどの経験値はありませんが、その景観と味わいに、是非訪問してみたいなと感じるようなワインづくりが富山の地で行われていたのです。

(セイズファームのカベルネソーヴィニョン。以下の記事は現地の雰囲気がわかりやすく、俄然興味が湧いてきました。
ご参考:

ラベルはシンプルで、それが逆にセンス良く。味は少しライト気味ですが、カベルネらしいニュアンスと、雑味の少ない丁寧な作りが感じられる構成で、時間経過での変化も合わせて充分本格派なワインだと思います。
日本の環境では赤よりも白の方が良いと聞きますので、次は同社がメインとしているシャルドネを試してみたいですね。
ちょうど暑い時期ですし、軽く冷やして飲んだら美味しいだろうなー。

なお話は少し変わりますが、富山と言えば若鶴酒造の三郎丸蒸留所も改修工事を経て昨年再稼働したばかりです。
そして富山には一定以上の品質の赤ワインがあるのですから、三郎丸からすればワイン樽も地元で調達出来る可能性があるということでもあります。
セイズファームと三郎丸のピーテッドモルトの組み合わせも、将来的に期待したくなる国産ワインとの出会いでした。

バランタイン 17年 1960年代流通 43% 赤白紋章

カテゴリ:
BALLANTINE'S
Liqueur blended scotch whisky
17 years old 
1960's
760ml 43%

グラス:グレンケアン
場所:個人所有スペース
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6ー7)

香り:存在感のあるスモーキーさと燻した麦芽や土っぽいピートフレーバー。古びた家具を思わせる古酒感、色の濃い蜂蜜。奥には干し藁、バニラウェハース、モルティーだが軽い穀物感も混じる。

味:モルティーでコクがあってピーティー。中間にはべっこう飴やほのかにサトウキビを思わせる甘み、カラメル的なニュアンス、アーモンドナッツとピーティーなほろ苦さ。
余韻は少し埃っぽさを感じるが、スモーキーで染み込むように長く続く。

しっかりとピーティーで、作られた時代を感じるオールドスコッチ。このボトルはこのボトルで美味しいのだけど何かが物足りない。単に開ききってないというより、例えばもう少しシェリー系のニュアンスが強ければ・・・。


1937年に誕生したバランタイン社を代表する銘柄であり、日本ではThe Scotchの通り名を持つ17年。昨年の2017年は誕生80年の節目を迎えたことを記念し、当時のラベルデザインを模したバランタイントリビュートが発売されていたことから、この「赤白紋章ラベル」を新旧どちらかでも知っている方は多いのではないかと思います。

今回テイスティングしたボトルは、その1960年代流通。この時期のボトルは、Ballantine'sの下に書かれたIn use for over表記でおおよそ流通時期の判別がつくことで知られていますが、今回のロットはコルクキャップではなくスクリューキャップなので、60年代でも後期のモデル。
すなわち、伝統の赤白紋章ラベル時代の17年としては最後の流通時期に当たります。

バランタインの赤白紋章時代は味が良く、流通時期もわかりやすいことからオークションでも高い人気がある銘柄です。
特に30年はこれぞブレンデッドスコッチと言える、熟成したモルトとピートフレーバーのハーモニーが絶品ですし、逆にファイネストであっても若いなりに良さがあり。そしてその中間である17年もまたバランスが良く、しっかりとスモーキーで素晴らしいブレンデッド。。。であるわけですが、今回テイスティングしたボトルは特段状態が悪いわけではないものの、美味しいのだけれど樽由来の厚みが足りないのか、以前飲んだボトルに比べて少し物足りない印象も受けました。
当時は結構ロット差も大きかったと聞きます。リスキーな話ですが、これもオールドボトルと言えるのかもしれません。


さて、バランタイン17年といえば有名なエピソードが「魔法の七柱」です。
バランタイン17年を作るにあたって、レシピに用いられたという7種類の主要モルト原酒の総称ですが、これはバランタイン社を傘下とする企業の推移等によって時代毎に変わっており、常に当時と同じ銘柄が維持されてきたわけではありません。ただあまりにも有名すぎて一人歩きしている感があり、今尚当該レシピで紹介されていることも・・・。

一方、あまり知られていない話がそもそもこの「魔法の7柱」は、バランタイン17年が誕生した1937年の時点で崩壊していた可能性があるということ。
7柱である「アードベッグ」「プルトニー」「グレンカダム」「バルブレア」「グレンバーギー」「スキャパ」「ミルトンダフ」各蒸留所の操業期間を見てみると、例えばプルトニーは1930年から1951年まで閉鎖されていたという記録が残っています。
また、グレンバーギーは1925年にオーナー企業が清算手続きに入っていただけでなく、少なくとも1927年から1935年の間閉鎖されていたため、1937年にブレンドが完成した当時は原酒を使えても、すぐにこれらの原酒が調達できなくなる恐れがありました。

こうした背景を踏まえ、さらにオーナー企業等の関係を見ていくと、魔法の7柱が同一企業の傘下で安定するのは1960年代のハイラムウォーカー社時代。今回テイスティングしている17年がリリースされた頃のロットが該当します。
勿論、稼働時に作られたストックから20年、30年熟成の原酒がブレンドされていればレシピは維持できますが、そこまでしていたかは疑問。むしろ、7柱の話が積極的にPRに用いられて定着したのは、実はこの時代からだったのではないかとも考えられるのです。

グレンキンチー 24年 1991-2016 スペシャルリリース 57.2%

カテゴリ:
GLENKINCHIE
Special Release
Aged 24 years
Distilled 1991
Bottled 2016
Cask type Refill European Oak Butts
700ml 57.2%

グラス:サントリーテイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y’s Land IAN
時期:開封後1年程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:青みがかったウッディさ、ドライな麦芽香、ハイプルーフらしくアタックは強く鼻腔を刺激する。奥から蜂蜜を思わせる甘み、ほのかに林檎のようなニュアンスも。

味:ややぬめりのある口当たり。麦芽風味、洋梨、中間はクリアで雑味が少なく徐々にドライ。シロップのかかったホットケーキ、微かにレモンジャム。
ツンとした刺激が感じられ、ジンジャーエールのようなヒリヒリとした余韻へと繋がる。

ディアジオのリフィルオーク熟成らしい、ニュートラルでトーンの高い味わいのモルト。軽くスパイシーさを伴う酒質由来の香味を感じつつ、樽材そのものが溶けたような要素も伴う。アメリカンオークのようなフルーティーさは控えめなあたり、材質の違いを感じる。


昨年のリリース時に飲み損ねていたグレンキンチーのスペシャルリリース。
グレンキンチーの通常リリースは12年のみで、限定品のダブルマチュアードも同等程度の熟成と、近年はボトラーズリリースもほとんどない中、久々にリリースされることとなった20年オーバーは、いちウイスキードリンカーとして純粋に興味をそそられていました。

1990年前後において、蒸留所に特段大きな変革は無かったようなので、ロケーションや蒸留環境云々の話は省略。
熟成のバランスは充分。元々そこまで強い酒質ではないので、近年蒸留では25年前後がちょうど良いかもしれません。
軽い麦芽風味やスパイシーさをそのまま伸ばしたような香味に、ディアジオのスペシャルリリースらしいリフィルオーク由来の樽感がそれを邪魔しない。ファーストフィルシェリー樽のように、圧殺するような構成ではないため、丁寧な作りとも感じる「面白みはないが、個性は楽しめる」といったボトルだと思います。

グレンキンチーは現存する数少ないローランドモルトとして、もう少し日が当たってほしい蒸留所。
企業側の方針もあるので難しいでしょうが、ディアジオ傘下にはそうした蒸留所がいくつかあり、今年はグレンエルギン、来年はオーバン。。。普段はブレンデッド向けに位置付けられている蒸留所のハイエンドリリースの中で構成される酒質の個性が、こうしたボトルを飲む楽しみです。

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