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2018年05月

ニッカ 竹鶴 ピュアモルト 17年 43% 2017年下期流通品

カテゴリ:
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NIKKA WHISKY
TAKETSURU
Pure Malt Whisky
Aged 17 years
2017's
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@頂き物(T野さん)
時期:開封後半年程度
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:ナッティーでモルトスナックのように香ばしさ。杏のジャム、キャラメリゼ、甘酸っぱさも伴う豊かな樽香、松の樹皮、奥には存在感のあるスモーキーなアロマも。

味:スムーズでマイルドな口当たり。キャラメルナッツ、アイスティー、徐々に缶詰のシロップのような甘みと、奥には黄色系の果実味も潜んでいる。
余韻はウッディで柔らかいタンニン、熟した果実のフルーティーさとほろ苦いピートフレーバーが感じられ、少しベタつくように長く続く。

モルティーで強い香味がありつつ、熟成感と多彩さを備えた完成度の高いブレンデッドモルト。特徴的な樽香がニッカらしさ。加水すると香味共に伸びて麦感やピートフレーバーに一体感が出る一方、ややドライな口当たりも感じられる。

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竹鶴17年は久しぶりのテイスティング。
以前家飲みしていたのはマッサン放送前に買っていたボトルで、ビックカメラ店頭で5000円を切る価格で普通に積まれていたものでした。
それから間も無く、ジャパニーズウイスキーを取り巻く状況は激変。今更説明の必要もないかと思いますが、ニッカウイスキーは原酒不足からラインナップの大幅整理などによる原酒の集約化を決断。竹鶴についても17年と21年は年二回の出荷となってしまい、店頭販売している姿を全く見なくなりました。

メーカー側でこれだけ大きな動きがあったワケですから、原酒構成も当然変わっているだろうと考えていたところ。ウイスキー仲間から「飲みます?」と嬉しい申し出が!
今回のボトルはロットナンバー:6/18G160900(6/は製品分類、18はボトリングした月の2倍、Gは西暦の下一桁数え順、16はボトリングした日付の2倍)、つまり2017年9月8日の出荷ということで、かなり直近のロットです。 
久々に飲んでみた印象は、以前に比べてまとまりが良くなっており、評価も7点とはいかないものの、6-7にしても良いかなと思ったくらいでした。

マッサン前の17年は、バーボン樽にシェリー樽に、そして新樽と、いくつかの樽で熟成された原酒が渾然となって、あるいはそれぞれ主張してややバラバラに感じられる印象がありました。
共通している熟れたフルーツのようなポジティブな要素は良いものの、ニッカのシェリー樽の特徴とも言えるサルファリーさが個人的にミスマッチ。ただ、今回のロットは該当する原酒の比率が減ったのか、サルファリーさが少なくなり、加水の変化も良好。全体の一体感や熟成感を感じやすくなったと思います。

なお竹鶴17年は、今年3月にWWA2018で通算4度目となるワールドベストブレンデッドを受賞しました。2月には国内審査も行われていて、審査に用いられたのが海外仕様でなければ、時期的にWWAに出品されたのは今回と同じロットではないかと考えられます。
スコッチブランドが作るバッテッドモルトにはない、ニッカだからこその味わい。評価されるのも頷けます。
値上げと流通量の少なさは消費者に優しいとは決して言えませんが、今後もリリースを続けて欲しい名作です。

グレンオード 12年 1980年代流通 グレンオーディー表記 43%

カテゴリ:
GLENORDIE
(GLEN ORD)
12 years old
1980's
750ml 43%

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:BAR飲み@サンドリエ
時期:開封後1ヶ月以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:香ばしい麦芽香、ザラメやカルメ焼きを思わせる甘み、若干の古酒感があるが時間経過でジャムのような重みのあるオレンジママレードを思わせる柑橘香も感じられる。柔らかい厚みのあるアロマ。

味:口当たりはスムーズでマイルド、ワクシーでコクのあるおしろいや粥っぽい麦感。バタークッキー、オレンジママレード、香り同様のニュアンスに加えてさらに麦感が強く感じられる。
余韻はほろ苦く、ほのかに土っぽい内陸系のピートを伴って染み込むよう。

古典的な麦の酒であり、王道的なハイランドスタイルであるモルト。香味とも柔らかさのある質感で、加水は不要。派手さはないが、地味に美味しい。


グレンオードと言えばデュワーズの主要原酒ですが、かつてはピーター・ドーソン社の傘下にあり、同社の看板商品であるブレンデッドウイスキー、ピータードーソンに用いられていました。
当時からデュワーズにも原酒を提供していたようですが、1982年からはそのジョン・デュワーズ社の傘下となり、リリースされたのが今回のボトルです。

(1970年代、グレンオードをキーモルトとしていた時代のピータードーソン。麦芽風味に共通点を感じる、ハイランドスタイルのブレンデッドウイスキー。ご参考。

これに伴い、ピータードーソン社時代はGLEN ORD表記だったものが、GLEN ORDIEとなって、だいたい10年ほどでしょうか、暫くリリースが続くこととなります。
グレンオードの歴代リリースを見てみると、1990年代中頃あたりでORD表記に戻っており、差別化を図ろうとした結果か、あるいは商標か何かの関係があったのか、いずれにせよ1980年代一時の特徴的なラベルとしてウイスキー好きの間では知られています。

以上のようにラベルは特徴的ですが、中身は王道的なオードのキャラクター。1970年代にリリースされたシングルモルトの12年に比べると、焦がした砂糖菓子のような甘み、淡いカラメル感が増しているようにも感じますが、基本的には同じスタイルで、加水によって整えられた麦感と柔らかくコクのあるボディが楽しめる、どちらかと言えば通好みの酒であるとも言えます。
まさに古き良き時代、古典的な麦の酒。。。

ラガヴーリン 25年 1977-2002 リミテッドエディション 57.2%

カテゴリ:

LAGAVULIN
25 years old
Limited Edition
Ntsural Cask Strength
Distilled 1977
bottled 2002
57.2% 700ml

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@サンプルMさん
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(7-8)

香り:注ぎたては少しヒネていていぶりがっこを思わせる酸味と、どっしりとしたスモーキーなアロマ。奥から強いヨード香、塩素、焦げたようなピート。オレンジママレードのような果実味も開いてヒネ系の香りを上書きしていく。

味:オイリーで粘性のある口当たりだが、ピーティーでソルティ、分厚い麦芽風味が底支えとして備わっている。ほのかにグレープフルーツのワタ、柑橘感のアクセント。余韻はスモーキーで香り同様に強いヨード香。焦げた木材を思わせるピーティーなニュアンスと共に長く続く。

麦とピートの素晴らしいモルトウイスキー。樽はリフィルタイプで、派手さはないがオーソドックスな古典的モルトの構成。ボディは厚く、少量加水するとピートフレーバーが全体に溶け込み、オイリーで塩気が引き立つような変化がある。


ウイスキー仲間のMさんと交換したサンプルから。現ディアジオのスペシャルリリースに当たる、リミテッドエディションのラガヴーリン。いつものように質感ある素晴らしい写真もセットです。

ラガヴーリンで25年と言えば、2016年にリリースされたバイセンテナリーの25年が高い評価を受けましたが、もう一つが2002年リリースのリミテッドエディション(9000本限定)。こちらはバイセンテナリーのような妖艶なシェリー系でも、あるいはラフロイグやボウモアのようにフルーティーな酒質でもなく、リフィルオークで、無骨で、それらと比べれば地味目な構成とも言えます。

そのためか、このボトルの評価は平凡とする声と秀逸とする声に分かれています。
また、このリリースを飲んだのは初めてでは無いのですが、以前はもっとバチバチして元気が良かったような。。。評価が割れているのは、上記の構成に加え、経年による変化も多少加わった結果だからかもしれません。
ただ少なくとも今回飲んだ印象では、これぞラガヴーリンのオーソドックスかつ素の部分の、熟成後の姿であると。また、ウイスキー全般において酒質が軽くなりつつある昨今、ラガヴーリンはその中でも比較的マシなほうと思っていましたが、改めて70年代の仕込みを飲むと大きな違いが感じられます。

なお、今回のボトルは経年からくる若干のヒネ要素がノージングで感じられたものの、ベースとなるキャラクターは麦とピートの分厚い香味。個人的にはこれがオールドのホワイトホースやローガンなどに感じられる香味とも共通点があり、ヒネ系に振れなければ相当ポテンシャルがあるボトルだと思います。

ブローラ 34年 1982-2017 リミテッドエディション 51.9%

カテゴリ:
BRORA
Limited Edition
Aged 34 years
Distilled 1982
Bottled 2017
Cask type Refill American Oak Hogsheads
700ml 51.9%

グラス:サントリーテイスティング
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封後数日程度
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:穏やかな香り立ちで酸味のある麦芽香、メレンゲ、ワクシーな甘みと若干の湿り気を伴うウッディネス。蜂蜜レモンやから柑橘系のニュアンスの奥から、燻したようなスモーキーさと土っぽさも感じる。

味:スムーズだがドライでスパイシーな口当たり。徐々に蜂蜜、麦芽の甘み、香り同様ワクシーでコクがある。果実味は砂糖漬けレモンピールのアクセント、やや青みがかったニュアンスも感じる。
余韻はドライでウッディ。干草、オークのえぐみ、淡いスモーキーさとスパイシーなフィニッシュ。

全体的に熟成によるまとまりの良さを感じる、ワクシーでモルティーな味わい。
アイラ系を目指したスモーキーで獣のようなブローラではなく、飼い猫のように大人しくなった頃のキャラクター。やや過熟気味なニュアンスも感じられ、熟成のピークと共に一つの時代が終わろうとしている。


1983年、グループ全体の生産調整を背景に閉鎖されたブローラ蒸留所。しかしシングルモルトとしての個性は愛好家から高く評価されており、今作でリミテッドリリースは16本を数えます。
他方、これだけリリースされていると、そろそろ使える原酒が尽きるのではと噂される中。2017年には再稼働が発表され、いよいよ閉鎖前の原酒を用いたリミテッドリリースは最後になるのではないかとも言われています。

補足:先日発表された2018年のスペシャルリリースラインナップには、ブローラ、ポートエレンの銘柄がありません。原酒不足もさることながら、同社のスペシャルリリースは閉鎖蒸留所の長期熟成原酒、あるいは稼働蒸留所の卓越した原酒を中心ににリリースすると位置づけられているためと考えられます。

(ついに再稼働に向けて動き出した、ブローラ蒸留所。どのようなスタイルの原酒が作られるのか、今後の動向に注目したい。Photo by K67)

ブローラとクライヌリッシュの関係は非常に有名なエピソードであるため、今更語るまでもないとは思いますが、今後の話含め避けて通れない部分もあるため、ざっと触れていきます。
ブローラは元々クライヌリッシュ名義で稼働していましたが、1960年代後半から1970年代にかけてディアジオの前身たるDCLが傘下蒸留所への積極的な設備投資を行なった結果、ブローラでは1968年に敷地内にまったく新しい生産設備が稼働。ここで新設された生産設備をクライヌリッシュ、元々あった古い設備は地名であるブローラとなり、両設備で原酒が生産されていきます。

この時、これまでブローラで作られていたライトピートでハイランドタイプな構成も、名前と共に新設備側へ引き継がれ。ブローラはブレンド用原酒の確保の為か、アイラモルトを模したヘビーピート路線を進むことになります。
当時のモルトは総じてピートフレーバーが強かったものの、クライヌリッシュ時代のブローラがヘビーピートだったかというと、そこまでではありません。

1970年代は、そういう意味で両蒸留所とも順風満帆だった時期。特に1970年代前半のクライヌリッシュ、ブローラの出来は秀逸で、フルボディで長期熟成にも耐える、愛好家垂涎のリリースがボトラーズ含め多数並びます。
1970年代後半のブローラは少しトーンを落としたものの、まだまだ明確なキャラクターを備えていた時期。一方1980年代に入るとウイスキー業界冬の時代の到来と、ライトウイスキー市場を意識してかブローラからピートの香味が弱くなっていき・・・そして1983年、ブローラは閉鎖されクライヌリッシュだけが残り現在に至ります。

こうした時代背景から今回のリリースを見ると、やはり1980年代のブローラ故にピートフレーバーは穏やかで、ワクシーな麦芽風味をベースにリフィルオークらしい品の良いフルーティーさが感じられる、現クライヌリッシュを思わせる構成であると言えます。
これは昨年リリースされたスペシャルリリース・ブローラ38年1977-2016とは明確に異なるスタイルで、仕込み時期の違いがキャラクターに大きく現れています。

(BRORA Aged 38 years 48.6% 700ml オイリーでドライアプリコットや少し発酵したような酸味を伴う麦芽風味と、土っぽさに通じるピートフレーバーが主体。萌木の村 Bar Perchにて。)

とちらのキャラクターが良いかというと、今回のリリースはまさに閉鎖間際のブローラのスタイルが行き着く先として楽しめるもの。リフィルオークの熟成でじっくり時間をかけて作られた、さすがディアジオさんのハイエンドというバランス感です。一方、これは好みの問題もありますが、やはり"ブローラ"はヘビーピートスタイルも味わいたいと思うのは、自分だけではないはず。。。

今後稼働する新生ブローラはどのようなスタイルを目指すのか。60年代のキャラクターは麦の品種や様々な要因から多くの蒸留所で失われて久しいわけですが、願わくばブレンド向けでニュートラルな酒質にならず、70年代のブローラを思わせる構成を目指してほしいと思っています。

グレンエルギン 18年 1998-2017 スペシャルリリース 54.8%

カテゴリ:
GLEN ELGIN
LIMITED RELEASE
Aged 18 years
Distilled 1998
Bottled 2017
700ml 54.8%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y’s Land IAN
次期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ツンとしてドライ、ハイトーンでナッティ、乾いた木材を思わせる香り立ち。クリアなアロマだが時間経過でバニラの甘みと洋梨やレモンクリームのようなフルーティーさも感じる。

味:香り同様にクリアな口当たりから、ほのかに青みがかった麦芽風味、乾いたオーク、フレッシュでアタックが強いが徐々に蜂蜜を思わせる甘みとコク。
余韻はドライでスパイシー、乾いたウッディネスと黄色い柑橘香を伴うフィニッシュ。

一言でかつてのレアモルトシリーズを彷彿とさせるような、フレッシュなアタックと、やや青みがかった甘みを伴うクリアでハイトーンな香味構成。今となっては懐かしさを感じる味わいである。少量加水しながら楽しみたい。


個人的にグレンエルギンは好きな蒸留所というか、気になる蒸留所の一つ。麦系の甘みと内陸系の柔らかいピート香が特徴で、素性の良い酒質がもっと認知されてもいいのにと思うものの、オフィシャルは12年のみで大半ブレンド向けだし、ボトラーズもスタープレイヤーが出るほどじゃない。
なので、今回久々にスペシャルリリースが行われると知って、早く日本に入ってこないかなーと思っていました。

時代を遡ると、同系列のリミテッドリリースとしては、2008年に16年と32年熟成のシェリー樽熟成の2種類がリリースされており、特に32年はグレンエルギンならぬグリーンエルギンとして知られているボトル。それらのリリースから10年経ったのかと、時代と市場の変化を感じて複雑な気持ちにもなります(汗)。

では今回のリリースはというと、メーカー資料によればシェリー樽熟成。。。なのですが、あまりシェリーシェリーした樽感は見られないリフィルシェリーバット主体の構成。所謂かつてのレアモルト味に近いタイプですね。
メーカー資料によると、使われているのは2パターンの原酒に2種類の樽。ブレアソール23年でも出てきた「元ボデガ樽」と「ヨーロピアンオーク樽のリフィル」で熟成した原酒を、バッティングしているとのこと。ただ先述の構成のように、どちらもセカンドないしサードフィルの樽であると考えられます。

また、2パターンの原酒というのが、発酵の際に用いる酵母の違いからくるもので、ポンベ酵母(スワヒリ語でビールの意味、分裂酵母)を用いた原酒は元ボデガ樽。通常のセレビシエ(出芽酵母、こちらはエール酵母かディスティラリーイーストかは不明、おそらく後者)を用いた原酒は、リフィルヨーロピアンオーク樽でそれぞれ熟成させているとのこと。

近年、ウイスキーの製造は樽の種類や蒸留器の形状のみならず、発酵が注目されており、そこに用いられる酵母も酒質に影響を与える要素として研究されています。
ウイスキーの製造現場で主に使われるのは、出芽酵母セレビシエです。ポンベ酵母が属する分裂酵母でのウイスキー製造については前例を認識していないので、自分の中で一切整理できていませんが、メーカー資料によると青リンゴ系のフルーティーさを与えるとされています。
今回のリリースはやや青みがかった品の良い果実味が、その酵母由来なのかなと色々考えさせられる構成であり、またどこか懐かしさを感じる味わいでもありました。

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