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2018年04月

ラガヴーリン ディスティラーズエディション2017 43%

カテゴリ:
LAGAVULIN
Distillers Edition 2017
Distilled 2004
Bottled 2017
PX Sherry Cask Finish
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:濃厚で落ち着きのあるアロマ。スモーキーで少しひねたような濃い甘み、たまり醤油、だし感、ほのかにヨード。徐々に焦げたようなウッディネスも感じられる。

味:とろりとした口当たり。オイリーでスイート、ドライプルーンやケーキシロップ、コクのある甘みからじわじわとドライでソルティーな風味が開いてくる。
余韻はピーティーでほろ苦く、序盤の甘みが強く残らないスモーキーなフィニッシュ。

香味ともPXシェリーカスクらしい濃厚さに加え、それが余韻にかけてしつこく残らない。荒さも樽と加水で程よくマスクされており、ピーティーさ、ソルティな香味が開いてバランスの良い仕上がりが感じられる。


毎年のリリースの中でもこれだけは外さないという印象の強い、安定のラガヴーリン・ディスティラーズエディション。リリース全体的に、毎年香味のベクトルが大なり小なり変わっていることがDEの楽しみでもあるのですが、このラガヴーリンだけはここ数年大きな変化はなく、同じ方向性の中でしっかり仕上げられていると感じています。

強いていえば、シェリー感が年々軽く、後半に感じられる塩気も同様に軽くなったという感じですが、今年のロットはその分バランスが整ったような印象。ロット差と言われるとそれまでという感じですらあり、安心して楽しめる1本です。


ラガヴーリン蒸留所のモルトの素晴らしさは、際立った個性とか厚みのある酒質とか、評価軸は色々あるのですが、個人的にはこの安定感なのかなと感じています。
言い換えると、時代を選ばない大ハズレの無さ。他のアイラの蒸留所は「アチャー」というものが少なからずあるのですが、ラガヴーリンはよっぽどキワモノなスペックでない限り安定感抜群。特に王道を行くオフィシャルはもう、現行品16年と20〜30年前のオールドを比較して、現行品は現行品で良いよねという評価が得られる数少ない蒸留所。スコットランドの中でも際立った存在だと思います。

ラガヴーリンDEは、通常のラガヴーリンの原酒を、最後の数ヶ月(公式には3ヶ月以上)PXシェリーカスクでフィニッシュ。DE全体でも一番濃い味わいに仕上がっていることが多いですね。
その樽由来か、古酒っぽいニュアンスも備わって、まろやかでどっしりとした存在感。スペシャルボトルのカスクストレングスはシャキッとしたピートやソルティさが魅力ですが、加水には加水の良さがある。今年のロットも楽しませていただきました。

マノワール アプルヴァル ポワール(ポワレ) 4% @日本発売お披露目会

カテゴリ:
MANOIR
D'APREVAL
Poire 2016
750ml 4%

清涼感のある爽やかな香り立ちから、ドライフルーツのような甘酸っぱいアロマ。口当たりは洋梨由来の膨らみのある甘味、程よい酸味、少し強めに炭酸の刺激はあるが、雑味や炭酸由来の苦味の少ない爽やかさ。余韻は程よいキレがあってスッキリとしている。
シードル特有の発酵したような酸味が少なく、日本人の味覚に馴染みのある味わいでグイグイ飲める。チーズや肉類などとも合わせやすい、下手なスパークリングやシャンパンを凌駕する。これからの季節にマッチした、コストパフォーマンスに優れたお酒。

4月23日に日本発売となった、マノワール・アプルヴァル社のポワレ。信濃屋、田地商店さんが正規輸入を手がけるアプルヴァルブランドの商品で、ドメーヌでのみ少量販売していた限定生産品が、日本に入荷します。(信濃屋さんのWEBショップではまだ扱いがないようですが、店頭では販売されています。販売価格は税込み1500円程度。)

この発売に先立ち、同社の代表であるアガーテ・レタリー氏らがプライベートで来日。神田のシードルBARエクリプス・ファーストで新作お披露目会が開催されましたので、告知を聞いてホイホイ参加してきました。
ポワレは結構気に入ったのでその後お買い上げ。この日は生産者のみならずインポーターの皆様含め、色々なお話を伺うことが出来て非常に内容の濃いイベントでした。

ポワレってナンノコッチャという方は少ないとは思いますが、ジャンルとしては洋梨のお酒です。
つまりは洋梨で作ったシャンパンとでも申しますか。このアプルヴァル・ポワレは、通常のスパークリングワインやシャンパンのように酸味がしっかりあるわけでもなく、かといって同価格帯の甘口スパークリングのように、べたつく甘さがあるわけでもない。
自然な甘酸っぱさ、ふくらみ、そしてアルコール飲料だからこそとも言える余韻のキレが炭酸のしゅわしゅわとした刺激と共に心地よく感じられる。欲を言えばもう少し炭酸が柔らかいとなお良かったのですが、それを置いても飲み心地の良いワインなのです。

テイスティングでも触れましたが、林檎と洋梨の原料の違いからか、シードル特有の発酵したような独特の酸味が控えめで、そういうのはちょっと苦手。。。という人にもオススメし易いと思います。

なお、「梨」と聞いて某富山の某ウイスキーショップ店主を連想した方は、一般的に見て彼のメルマガないし日本のウイスキー環境でもコアな領域に染まりすぎている恐れがあります。
そのイメージを上書きするためにも、このワインを飲んで以下の動画を見ることを推奨します(笑)。

 
(アプルヴァル社の製造風景動画。フランスはノルマンディ地方、家族経営らしく規模は小さいが、引き込まれるような美しさがある。)

アプルヴァル社については、ウイスキー愛好家にはコスパに優れたカルヴァドス生産者としてのほうが知られているかもしれません。(アプルヴァルXOのコストパフォーマンスで、一躍有名になったのは記憶に新しいところ。)
同社の主軸は林檎を原料とするお酒に置かれており、日本国内ではこれまでシードルとカルヴァドスが展開されてきました。

そうしたブランデーと同等の原料を用いた発泡性の飲料は、数ある中でも1年に1度発売されるポールジロースパークリングジュースが有名。それはさながら、愛好家の中のボジョレーヌーヴォーのような、ある種の"祭り"。酒販店に発送業務の阿鼻叫喚を生む要因だったりもするわけですが、同じ値段で他にも面白いスパークリングがあるじゃんということに最近気がつきました。 その筆頭が、シードルやポワレなのです。


他方、750mlのスパークリングは開けたら最後、飲み切らないといけないことが普及のハードルであるように感じます。
一人で飲むなら缶ビールくらいのサイズが丁度いいと思うんですが、K社のハードシードルみたいなのないんですか?という問いに、実はあるんですという答え。

写真左側のサイダー。中身はその隣のアプルヴァルの中辛口シードル、キュベサンジョルジュと同じ製法で作られているとのこと。ただコルク栓ではないために、AOCの関係で名前が違うのだとか。早速飲み比べてみると、発酵の方法が違うのかサイダーの方がガス圧が強く、少し軽い印象を受けますが、確かに味の傾向は同じですね。
加えてこちらの方が、750ml換算で比較して価格が2/3程度という謎要素も魅力(笑)。カスケードホップを添加したチャレンジングなバージョンもリリースされており、今夏我が家の宅飲みは林檎と洋梨原料の比率が増えそうです。


以下、宣伝というか雑談。
今回イベントを開催された、BARエクリプスファーストのマスター藤井さんが、「知る・選ぶ・楽しむ、シードルガイド」というシードルの生産者やブランドを中心に紹介する書籍を監修しており、同書が4月14日に発売されました。
自分はこのジャンルはズブの初心者で書籍の良し悪しまで語れませんが、ビジュアルが非常に豊富で、読んでいてイメージが膨らむような内容になっています。

「知る・選ぶ・楽しむ シードルガイド 藤井達郎 (池田書店)」

藤井さんはノルマンディの大学でシードルの製法をイチから学んだほどの、シードル愛に溢れた変態さん(笑)。
そして先日当ブログでも紹介させていただいた"入門向けウイスキー書籍"の監修者でもあり、監修した書籍が今年2冊発売されるという、人生の真夏日を迎えようとしている大注目のバーマンです。

シードルは控えめに言って、日本ではあまりメジャーではないジャンルですが、日本には農業としても食文化としても林檎が根付いてますので、実は親和性の高いジャンルだと思っています。
ブームになる必要があるかはさておき、今回のポワレにしてもそうですが、日本にもっと現地の魅力的なお酒が展開され、良さが広まるきっかけになればいいなと思っています。

シーバスリーガル 25年 40% ブラインドテイスティング

カテゴリ:
CHIVAS REGAL
Aged 25 years
Original Legend
2016-2017's
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@サンプル出題 ドーノックHさん
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

【ブラインドテイスティング】
地域:スペイサイド
蒸留所:グレングラント
年数:30年程度
樽:リフィルシェリーホグスヘッド(アメリカンオーク系主体)
度数:45%前後 (加水)

香り:ドライでエステリー、華やかなオーク香。ドライアプリコット、蜂蜜、奥には微かに青みがかったニュアンスも。

味:スムーズで丸みのある口当たり。オークフレーバー主体でバニラやナッツ、アプリコット、カステラ、奥から少し粉っぽい麦芽風味。
余韻はオーキーで華やか、ピリッとした刺激とウッディさを伴うが、あまり長く続かずドライであっさりとしている。

恐らく長期熟成のスペイサイドモルト。
ウッディで角の取れた酒質、熟成感を感じる味わいだが、加水と熟成経年等により個性はだいぶ穏やかで去勢されている印象。突き抜けないが、スムーズで引っかかりなく、ずっと飲んでられるようなバランスの良い上質なウイスキー。


またやってしまった。4年前のブラインドでグレーンを感じ取れなかったこの銘柄、同様のミスを今回もしてしまう。届いた直後のノージングで、長熟のスペイサイドモルトと決め打ちしたところから、一気に引きずられました。
うーん、学んでないなあ。。。
ただ、確か前回はハイランドパークとかトンデモ回答をした記憶があるので、そこからすれば成長が見られた回答だと思いたいですね。どの道凡退しちゃってますが(汗)。

さて、気を取り直してシーバスリーガル25年です。
最近自分のSNS繋がりの中で「美味いじゃん!」と、見直されている銘柄。シーバスリーガルはスタンダードグレードがストレートで飲むにはちょっとアレなんですが、流石に25年は香味から感じる原酒の本気度が違います。

ストラスアイラを中核とするモルティーさと原酒の熟成感。近年のスタンダードクラスやカスクストレングスのボトラーズリリースでは中々見られない、上品なオークフレーバー。
口当たりで少しピリッとした刺激はあるものの、自然と度数が落ちたというタイプではなく、相応の熟成年数のモルトが加水で調整されているのではないかという構成。主に使われている樽も、ギスギスしたウッディさがでやすいバーボン系の樽ではなく、年数の長いリフィルシェリー系の樽と推測。余韻はあまり強くないですが、逆に負担なく飲み続けられるバランス感だと言えます。この上質さは本当に尊い。。。
テイスティングでは、加水と合わせれば余韻にかけてこれくらい穏やかな仕上がりにもなるかなと、強引に納得していましたが、グレーンを見落としていたのは失着でした。

加えて、悩みに悩んだのが単一か複数か。途中「混ざってるんじゃないか?」と感じる要素もあったのですが、同一傾向の原酒と樽使いから、加水影響と思しき香味同士の馴染みが強く、この点は最後まで判断できませんでした。
開き直るわけではないですが、それだけ上手くブレンドされた一体感のあるウイスキーなんだと感じています。
なんとなくブレンデッドは後回しにされがちですが、シングルモルトを深く飲んでいる人ほど、このクラスのブレンドを改めて飲んで見て欲しいですね。


今回はウイスキーショップ ドーノックのHさんからのブラインド出題。
グループでのテイスティング勉強会用にサンプルを発注したり、個人的にサンプル交換をしたりと、お世話になっていましたが、昨年末からの体調不良と多忙が重なりショップも利用できていませんでした。


50ml WHISKY SHOP Dornoch

改めて紹介すると、ドーノックさんは50mlのミニボトルでウイスキーを販売する酒販店です。
昨年はスコットランドに買い付けに行かれたり、積極的にオールドボトルも仕入れられたとのことで、ラインナップも充実してきています。
一部高額なものもありますが、個人的にはオールドボトルの味見が手頃な価格からできるのが嬉しい。フルボトル買うか否か、中々この手のボトルが揃うお店も少ないですし。

また、近々父親の誕生日なので、体が不自由で中々夜の街にいけない父にウイスキーセットを贈ろうと考えています。自分で小瓶に詰めるのはなんか違うし、かと言ってフルボトルで何本も送るのも大げさで・・・。そういう時にこのショップのスタイルはありがたいですね。

ストラスアイラ 35年 1937-1973 GM コニッサーズチョイス 43%

カテゴリ:
STRATHISLA
Gordon & Macphail
Connoisseur's Choice
Over 35 years old
Distilled 1937
Bottled 1972-1973
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティング
場所:KUMC
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★★★(9)

香り:ウェアハウスを思わせる古く落ち着いた香り立ち、キャラメルナッツ、熟したオレンジ、燻した麦芽から土っぽいピート香、存在感のあるスモーキーさ。ほのかに貴醸酒のような古酒感や、陶酔感を感じる。グラスの残り香も素晴らしい。

味:まろやかでコクがあり、どっしりとした麦芽風味主体の口当たり。サルタナレーズン、林檎のカラメル煮。後半にかけてじわじわとピーティーでスモーキーなフレーバーが開き、鼻腔にも抜けていく。
余韻はカラメルソースやローストした麦芽風味、染み込むようなほろ苦さが長く続く。

ピートと麦芽風味の素晴らしい一体感。そこにリフィル系の枯れたオールドシェリー樽のアクセント。アルコールも立っており、状態は素晴らしい。少量加水するとスモーキーさが穏やかになる一方、陶酔感あるシェリー香、麦芽香が主体的になり、うっとりとするようなアロマが広がる。ただし味は水っぽさが強くなり、加減が難しい。


エドワード&エドワード表記、ジャッコーネ向けのコニッサーズチョイス。これはもう時代と経年がもたらした贈り物と言える、オールドモルトの良さが結実したようなボトルです。
懐古厨と言われようと、ラベル酔いと言われようと、良いものは良い。やはりスコッチモルトは麦とピートの酒なのだという、そのものの本質と、格の違いを感じさせられてしまう1本でした。

ストラスアイラは1950年にシーバスリーガル社の傘下となり、現在はペルノリカールグループにおける文字通り"キーモルト"を提供する、主要蒸留所であり続けています。
今回はその買収遥か前、当然設備や製法なども旧式だったと思われる時代の作。1940年代、30年代のモルトは平均して語れるほど多くの蒸留所を飲めていませんが、これまで飲んだモノに共通してあるのは分厚い麦感、そして内陸とは思えないほど存在感のあるピートの層。
おそらくボトリング当初はもっと強い主調があったものの、経年によってまとまった香味の形が、この時代のウイスキーを飲む醍醐味だと感じています。

また、コニッサーズチョイスは単一ビンテージで複数樽バッティングがあるのもポイント。バッティングによる香味の複雑さと安定化、今の原酒はそうでもしないとってのはありますが、香味の強いこの時代でそれをやってたらもう反則ですよ。
それをオフィシャルではなくボトラーズ1社が定常的にリリースしている点が、GM社が様々な蒸留所の準オフィシャルとして機能する、圧倒的な原酒保有量を垣間見る要素とも言えます。
いやはや、本当にスケールが違うメーカーです。

(今回のヤッテヤッタデス事例。主犯は自分では無いが、結局一口便乗したので同罪か。美味い、美味いがこれじゃなくても。。。あまりの罪深さに手が震えて、写真のピント合わせもままならない(笑))

なお、GM社は今年から既存ラインナップの全面的な見直し、リニューアルを始めています。
この動きは、GM社の100年を越える歴史の中で初めてのこと。近年のGM社は物凄い勢いでラインナップを拡充してきましたので、差別化がわかりにくいものや、継続しているのかもわからないシリーズもちらほら。ここで一気に整理して、選択と集中を行うのもアリだと思う一方、こういうのは大概値上げとセットになりがちですから消費者としては一抹の不安が。。。(JISさんの発表ではディスカバリーなるシリーズも誕生するようですし。)

既にリニューアルが発表されたのが、今回の記事でもあるコニッサーズチョイス。1968年にリリースが開始され、今年で半世紀、節目の年のリニューアル。
ラインナップにおける基本的な方針はこれまでと変わらずですが、カスクストレングスとウッドフィニッシュが正式の加わる模様。ラベル下部の色でラインナップを分けており、ゴールド:従来通り46%加水、シングルカスク並びにスモールバッチ含む。グレー:カスクストレングス。レッド:カスクフィニッシュタイプ。と整理されるようです。

気になる店頭価格は70ドルから500ドルの間くらいとのことですが、日本だと諸々込みで1万円弱くらい〜でしょうか。
後はどんな中身で来るか、続報を待ちたいです。

ニッカウイスキー 竹鶴ピュアモルト 21年 初期ボトル 43%

カテゴリ:
IMG_6959
NIKKA WHISKY
TAKETSURU
PURE MALT
Aged 21 years
2000's
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:萌木の村
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:甘く香ばしい香り立ち。アーモンド、熟した洋梨、蜂蜜。奥から軽いケミカルなニュアンスを伴うフルーティーなアロマ、新樽系のビターな樽香やスモーキーさも開いてくる。

味:スムーズでマイルド、薄めたキャラメル、オレンジママレードのほろ苦い甘みから、トロピカルフルーツを思わせる熟成した果実風味、ナッツのアクセント、コクのある味わい。奥にはほのかに蜜っぽい甘みのあるケミカルなフレーバーも感じる。
余韻は軽やかにドライ、シロップのような甘み、じわじわとほろ苦いピートフレーバーと樽香を伴い長く続く。

複雑で奥行きとコクのあるモルトウイスキー。加水で柔らかさが飲み口に感じられる分、バランス寄りの香味に振れているが、しっかりとした熟成感と共に余市の香ばしくピーティーなモルティさ、宮城峡の華やかなフルーティーさが混ざり合う、多彩な香味が備わっている。

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今や世界に名だたる日本製ウイスキー銘柄の一つとなった、竹鶴ピュアモルトシリーズ。今回のテイスティングアイテムは、その最初期のリリース品に当たる1本です。 

竹鶴シリーズは12年が2000年にリリースされ、17年、21年が翌年2001年3月から発売。この当時のボトルは"男性的"と例えられたずんぐりとしたシルエットで、違いは外観一目でわかるもの。そこに加えて、今回のボトルはニッカウイスキーが2001年4月にアサヒビール傘下となる前、1ヶ月だけのニッカウイスキー時代に発売された、貴重なロットという事になります。(もちろん、味はその後のものと大きく変らないとは思いますが。) 

竹鶴シリーズのブレンド傾向は、17年が比較的樽感が強くある一方、21年は柔らかく上質な味わいをブレンドの方向性としている印象。フルーティーさと樽感のバランスが取れた、完成度の高いピュアモルトウイスキーがリリースされていました。
今回21年の初期ボトルを初めて飲みましたが、スッと入るスムーズな口当たりの中に非常に多彩な香味が感じられ、熟成感も豊富。しいて言えば、近年寄りのリリースのほうが香味にまとまりがあるとは感じたものの、今まさに高い評価を受けるブランドが産声を上げた当時の味わい、中々感慨深いですね。 


さて、竹鶴シリーズにおいては、必ずセットとなるウワサのひとつが、ベンネヴィス蒸留所の原酒を使っているのではないかという話。今回の21年も、この多彩な香味の中には、確かに余市とも宮城峡とも違うように感じる要素が、無いわけではありません。
当時は国産メーカー同士の原酒のやりとりに加え、バルクウイスキーも安価で今以上に良質なものが購入できたとされる時代。ニッカの国内蒸留所以外の原酒が使われている可能性もあるわけですが、ことベンネヴィスについては蒸留所の稼動期間として、1978年から1984年まで生産停止、さらに1986年から1989年まで再度停止という記録が残っており、稼動が不安定だった時期に当たります。
加えて原酒はロングジョンなどのブレンデッドウイスキーに使われていた背景もあって、1980年代以前のベンネヴィスはボトラーズリリースからも少ない。そんな不安定稼動な時期の原酒を、2000年代に安定して確保できたかというと微妙な時期ではないかと思います。 

いずれにしても確かなのは、当時のウイスキー冬の時代だからこそ産み出された、逆境を打破するための気合いが込められたリリースであるということ。そして、その想いが作り出した未来が、今に繋がっているということ。このままリリースが続いて欲しい、ニッカウイスキーの名作です。

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