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2018年04月

カリラ アンピーテッド 18年 1998-2017 スペシャルリリース 59.8%

カテゴリ:
CAOLILA
Aged 18 years
Unpeated Style
Natural Cask Strength
Distilled 1998
Bottled 2017
Cask type Refill American Hogsheads 
700ml 59.8%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:Y's Land IAN
時期:開封後数日程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ハイトーンでドライな香り立ち。乾いた麦芽香とウッディネス。淡くドライパイナップルやレモンなどの柑橘系のフルーティーさを伴うクリアなアロマ。

味:香り同様にクリアな口当たり、蜂蜜を思わせる粘性と甘み、麦芽風味、オーキーなトロピカルフレーバーが淡く広がる。
余韻はハイトーンでヒリヒリとした刺激。スパイシーでドライ、長く続く。

これまでのカリラのアンピーテッド同様に、クリアで強くハイトーンな酒質が特徴。加水していくとコクが出て、まろやかな甘みと麦芽風味が開いてくる。
樽感はリフィルらしくあまり強くない。嫌味なところも少なく、淡いオークフレーバーが良いアクセントになっている。

DSC08713
(アイラ島にて、K67氏撮影の1枚。カリラアンピーテッドを飲んで思い浮かんだイメージに一番近かったもの。広がる青空と吹き抜ける風のように爽やかでクリアな味わい。)

今作で12作目になるという、カリラのアンピーテッド。前作に比べ、酒質の部分は同じながら今回は淡く効いたオークフレーバーが印象的です。
このリリースは、元々ブレンデッドウイスキー向けに作られるカリラのノンピート、ライトピートといった、ハウススタイルと異なる原酒を味わうためのもので、2006年のファーストリリースから版を重ねてきました。

同じ蒸留所でピートの有無がある原酒を味わえるのは、その蒸留所の個性や、ある種癖のようなものを理解する手段として非常に有効です。
近年日本国内で続々と稼働するクラフトディスティラリーも、1年の蒸留サイクルにおいてピーテッドを仕込む前にノンピートを仕込み、酒質を確認した上でピーテッドの仕込みに移るというルーチンを採用しているところが多くあります。
ピートフレーバーは強いので、良くも悪くも酒質のネガを消してしまうのです。
また、元々ハウススタイルがピーテッドなら、多少のネガなんて気にしなくていいじゃんと思うかもしれませんが、このピートフレーバーは熟成によって減少するだけでなく、加水調整やブレンドにおいても同様です。
ピーテッドを目指すにしても、ピートの乗りが良い酒質であるべきというか、やはり素の部分が良いに越したことはありません。

こうしてピートにマスクされないカリラの素の味わいを飲んでみると、クリアでクセの少ないハイランドタイプの酒質であることがはっきりと感じられます。ピートフレーバーが通常どれだけ支配的かも認識出来る味わい。加水した上で、オフィシャル18年との飲み比べをしても面白いですね。
また、シングルカスクではないため一概には言い切れませんが、この仕様での熟成の伸び代は残っている印象も受けました。以前2014年にリリースされた15年のアンピーテッドはファーストフィルバーボンで、粘性を伴うオークフレーバーでリッチな味わい。アンピーテッドは20年未満がちょうど良いかなと思いましたが、まだ伸び代がある印象も。

ディアジオの樽使いのうまさを感じるとともに、将来は25年くらいのノンピート・リフィルアメリカンオーク熟成のスペックを飲んでみたいとも感じる内容でした。

オーバン 2003-2017 ディスティラーズエディション 43%

カテゴリ:
OBAN
Distillers Edition 
Distilled 2003
Bottled 2017
Montilla Fino Sherry Cask Finish
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライで品のいい甘み。ほのかにレーズンのアクセントと蜂蜜、オレンジピール。乾いたウッディネス、若干の干草ぽさから徐々に麦芽香が開く。

味:スムーズな口当たり、おしろいを思わせる麦芽風味が主体。柔らかいコクのある甘みが淡いシェリー感とともに広がる。余韻にかけてピートがほのかに感じられ、ほろ苦いフィニッシュに繋がる。

樽感と酒質のバランスが良く、品のいいシェリー感がハイランドらしい麦芽風味とともに感じられる。特に味わいは麦芽風味が中心で、余韻にかけてのピートフレーバーがオーバンらしさでもある。


今年のDE(ディスティラーズエディション)を象徴するような樽使いの1本。
昨年は比較的強めの樽感でしたが、今年はフィニッシュに使われた樽が酒質を圧殺するのではなく、荒い部分をマスクしてバランスを整えるような構成が印象的。ここ数年のオーバンDEの中で最も出来がいいのではないかと感じました。

(オーバン蒸留所は港町の真っ只中にあることで知られている。写真はオーバンの埠頭から見た夕日。街並みがより美しくコーティングされる瞬間。Photo by Y.A)

オーバンのDEに使われているのは、MHDの資料によるとモンティージャ・フィノシェリーでシーズニングしたシェリー樽(原文ママ)。
シェリー酒と言えばスペインのヘレス地方のワインですが、同様の酒精強化ワインはヘレス地方に限らず、様々な地域で作られています。今回のモンティージャ地方(原産地呼称、モンティージャ・モリレス)のワインは、ほぼ同じ製法なのですが、原料が甘口ワインで知られるペドロヒメネス種であること、それ故糖度が高く度数が上がるため、フィノタイプでは酒精強化を行わないという特徴があるようです。

最も、これは通常の製法であって、今回のようにシーズニングに使われているものが、どこまで同じタイプかはわかりません。
おそらく「モンティージャ」とまで指定してるので、ペドロヒメネス種を原料としているのはそうなんだと思うのですが。そのためか、従来のフィノカスクに比べて少し甘みやレーズンを思わせる風味が感じられるのも特徴だと思います。

(スペシャルリリース2018 画像引用:

なお、オーバンと言えばここ数年オフィシャルからスペシャルリリースがありませんでしたが、来年日本に入ってくるロットにはオーバン21年がラインナップされています。
DEも悪くないのですが、やはりスペシャルリリースの樽使い、蒸留所の個性を活かす構成は別格なものがあります。個人的にオーバンは好きな蒸留所でもあるので、来年のリリースが今から楽しみです。

東洋経済 米国「焼酎ウイスキー」を笑えない日本の現状 に思うこと

カテゴリ:

先日、「ジャパニーズウイスキーの悲しすぎる現実」と題し、日本のウイスキー業界の課題に切り込んだ東洋経済社から、またなんとも刺激的な記事が公開されました。
本記事についても前回同様、徒然と思うことをまとめていきます。

米国「焼酎ウイスキー」を笑えない日本の現状
酒造会社がウイスキー免許に殺到するワケ(4/28)

今回の主題は、当ブログでも以前取り上げた"焼酎メーカーが輸出した一部の熟成焼酎が、アメリカではウイスキーとして販売されている"という、日本とアメリカの酒税法の違いで起こる輸出焼酎ウイスキーに関する話。
そしてそこから、前回の記事よりさらに踏み込んだ、日本のバルクウイスキーに関する現状と課題が特集されています。
サブタイトルなど多少煽り気味なところもありますが、全体的には事実確認と裏付けがされた内容であり、実態を把握する上でよくまとめられている記事だと思います。

参照:当ブログの輸出焼酎ウイスキーに関する記事。(深野ウイスキー12年)

まず"輸出焼酎ウイスキー"についてですが、これは法律の解釈とメーカー側のコメント、さらに国税庁の見解までまとめられていて、上記記事を書いた際、後日自分がやろうと思っていたことそのものでした。
やはりこの辺、大手メディアは強いですね。確認したかった内容だったので助かりました(笑)。

本件は国内だけなら兎に角、他国の法律にまたがる話。一筋縄ではいきませんが、この状況をどう受け取るかは我々読者の判断に委ねられているとも言えます。
ビジネスチャンスだと粗悪なものをブームに乗じて売りさばくか、上記記事にまとめたように「日本では売れない色濃く熟成した長熟焼酎」を販売する手段とするか、まさにメーカー側の倫理が問われているのだと思います。


(焼酎は光量規制によりある一定以上の色の濃さのものを国内で発売出来ない。ブレンドするかフィルタをかけて減色するか、あるいは食物繊維等を加えて焼酎ベースのリキュールとするしかない。画像はその一例である、太刀洗15年シェリーカスク。少しサルファリーだが濃厚なシェリー感で焼酎らしからぬ味わい。画像引用:amazon)


そして、記事では焼酎の事例が対岸の火事ではないとして、日本のウイスキー業界の現状、ウイスキーの定義とバルクウイスキー問題について再び特集する構成となっています。
ただ、今回は一般向けと言えるレベルからマニアック路線に踏み込んだ内容であり、前回の記事の反響の大きさが伺えます。

大きくは以下3点。
・松井酒造、倉吉ウイスキー騒動について。
・業界全体として増加するバルクウイスキー輸入と、ニッカウイスキーの事例。
・ジャパニーズウイスキーの定義について。

倉吉ウイスキー騒動は、当時から本ブログを読まれていた方にはよく知られた話。今となっては「そんなこともあったね」と感じるくらいだと思いますが、一般の方からすれば「なにそれ」という話が"例のメーカーコメント付き"でまとめられています。(詳しく知りたい方は以下を参照ください。)
まあこれほど日本のウイスキーの定義の穴をついてきたというか、合法の範囲で"したたか"にヤッテヤッタ事例は他にないんですよね。最近は記事中に書かれたみりんメーカーみたいに怪しいのがまた増えてきていますが、日本のウイスキーの定義が持つ問題を語るサンプルケースにおいて、これ以上はないと言えます。

参照:松井酒造 ピュアモルト倉吉に見るジャパニーズウイスキーの課題

そして、増加し続けるバルクウイスキー輸入量の統計データとともに、ついにここまで切り込んだかという話が、「モルト・ウイスキー・イヤー・ブック」掲載、ニッカウイスキーによるベンネヴィス蒸留所の原酒輸入、自社商品へのブレンドについての話です。

同書籍はウイスキー業界の動向をまとめて1年に1度発売される書籍です。日本で一般に販売されていないため、コアな愛好家を除いてあまり知られておらず、この話も知る人ぞ知るというネタでした。
同書籍のベンネヴィス蒸留所の項目では、ここ数年間「今年は日本にこれだけ原酒(ニューメイク)を輸出した」というデータを掲載しており、2017、2018ではそれぞれ以下の画像の記述が確認できます。
スコッチ法ではシングルモルトのバルク輸出を禁止していますが、ウイスキーの定義から外れる3年未満熟成のものは回避出来るようです。

最も、掲載されたデータは関係者が公開している数値であるのか、裏が取れているのかどうか含めて不明であり、実態は定かではありません。
仮に事実としても、同蒸留所は1989年にニッカウイスキーが買収。閉鎖状態にあったところから、設備を改修しつつ再稼働させた実績があります。
自社が保有する原酒の幅を広げるため、その原酒を輸入したとしても、それはニッカウイスキーに限らず保有者(あるいは出資者)としての権利とも思います。
また、ベンネヴィスで言えば、再稼働後の原酒を用いたボトラーズメーカーのリリースは、愛好家から高い評価を受けてもいるところ。これは同社による買収があったからこそ、とも言えます。


東洋経済の記事では、品質を補い、高めるために輸入原酒を使うことは悪ではないとしつつ、ジャパニーズウイスキーの定義に関する問題として、その根本は業界全体の倫理観が問われているとまとめています。
これらの話はまさに、ルールというより作り手だけの問題ではない、売り手もふくめたマナーの問題なのです。

そもそも、◯◯ウイスキーというのが、◯◯で蒸留された原酒を100%使ったものというのは、シングルモルト的な発想です。シングルモルトについては輸入原酒に関する問題には発展しておらず、該当するのはブレンデッドタイプのウイスキーとなります。

ブレンデッドウイスキーは、その風味に最も大きな影響を与えるトップドレッシング、あるいはキーモルトとされるもの以外に、複数の原酒をつなぎ合わせる役割をするものや、味の土台を作る原酒をの存在も忘れてはなりません。
自分で作ってみるとよくわかりますが、ちょっと前のどこぞの野球チームのように、4番バッターばかり集めても多彩で複雑で飲みやすい、完成度の高いブレンデッドにはならないのです。
日本の原酒は熟成環境等の関係から、個性としては4番キャラなウイスキーが作られやすい傾向があり。対して、スコットランドの原酒は熟成が穏やかで、10年〜20年熟成程度のバルクウイスキー、特にハイランドタイプのそれは繋ぎや土台に使いやすいイメージがあります。
それこそ長期熟成原酒によるブレンデッドは、日本のウイスキーだけで作るより、輸入原酒を使っていた方がバランスが良かった事例もあります。

自分はこれまでも、誤解を招くような記載は企業のマナーの問題であること。他方、最終的には「美味いは正義」。高品質なものを作るためなら、一定の整理の上でバルクを使うことも手段の一つとする考え方で、記事を公開してきました。
ベンネヴィスにしても、大手やクラフト含むその他の企業のバルク使用にしても、使うことは否定しないまでも誤解を招かないようにする工夫は必要と言えます。例えば、イチローズモルトのワールドブレンデッド表記などは、非常にわかりやすい整理と説明で、工夫の一つだと思います。


記事中には、せっかくブームで業界が盛り上がったのに、新たな定義、規制を作ることで悪影響が出ないかを懸念する声もありました。確かにそういう影響がないとは言い切れませんが、一方で100%日本蒸留オンリー!とすれば解決するほど単純な話でもありません。(そもそも原料となるモルティング済みの麦芽は、ほぼ100%輸入という実態もあります。)
また、今後日本の企業が販路を広げていかなければならない海外の有識者からは、既に「ジャパニーズウイスキーって何?」とする声が一部上がるなど、先送りにしてもそう遠くない未来さらに大きな問題となる可能性も否定できません。

現在ウイスキー文化研究所らが中心となって進められている、ジャパニーズウイスキーの定義の議論。部外者である私はその進捗は存じませんが、この手の話は、ある程度一般に認知されて初めて議論が進むこともあります。
東洋経済の一連の記事については、賛否含め様々な意見があるものと思いますが、こうした記事が議論の後押しとなって、さらに大きな動きとなることを期待したいです。

ジャックダニエル Old No,7 1990年代流通 45%

カテゴリ:
JACK DANIEL'S
Old No,7
Tennessee Whiskey
1980-1990's
750ml 45%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Ambrosia
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:ややドライだが柔らかい甘みとウッディな香り立ち。カラメルソース、甘食、メローでチャーオーク系の焦げたニュアンス、微かにえぐみ、ゴムっぽさもある。

味:スムーズでメロー、バニラやカラメルソース、微かにシロップ漬けチェリー、まろやかなコクの奥にはカカオのような苦味のアクセント。
余韻はドライでビター、トースト、クラッカーの軽い香ばしさを伴い、染み込むように長く続く。

溶剤的な刺激やウッディーなえぐみといったネガ要素が少なく、香味共スムーズでマイルドな甘みが主体。余韻は苦味が強くなるが、全体的には飲みやすくメローなウイスキーである。人によっては少々単調気味に感じるかもしれない。


連邦アルコール法上はバーボンであり、テネシー州法でテネシーウイスキーとなるジャックダニエル。チャコールメローイングに代表される、そのこだわりの製法等については今更なので割愛させていただくとして。。。今回の主題はそのオールドボトル。
「45%時代のジャックダニエルは、現行品と比べ物にならないほど旨い。」
あれは自分がオールドボトルにハマり始めた頃、誰かに言われたのか、どこかのサイトで見たのか、そんな情報が頭にあって必死に探した1本だったのを覚えています。

今覚えば、オークションでポチればよかったじゃんとか、そもそももっと他に探しておくべきボトルがあったのではという感じなんですが、なんだかスタンダードのオールドに憧れてしまったんですね。
しかし酒屋を巡って探しても探しても、見つかるのは仕様違いばかり。ジャックダニエルは現行品は80Proof 40%仕様ですが、1990年代後半から2000年代にかけては86Proof 43%仕様、そして1980年代の特級時代から1990年代初頭にかけては90Proof 45%の仕様でリリースされていました。

目当ての品は、この3仕様の中では最も古いタイプのジャックダニエル。探すこと数ヶ月、見つけたのは片田舎の古びた酒屋ではなく、意外にも街中、自分の実家のすぐそばにあった材木屋兼雑貨屋兼オマケで酒屋みたいなところ。
特級表記なし、サントリー時代の45%。まさに今回と同じボトル。喜び勇んで家に持ち帰り、即日開封して・・・確かに現行品に比べて濃くて旨いんだけど、そんな言うほどでもないかなぁ。なんて結論に至ったところまでがこの話のオチだったりします。
(この後、延長戦として特級時代は違うのかもと探し出し、結局大差ないという結論に至ってオールドジャック探求の旅は終わりを告げたのです。)

なんだか昔話になってしまいました。
さて、今回と久々にジャックダニエルの1990年代流通品を飲んでみたわけですが、やはり当時感じたイメージの通り。現行品のほうが甘みというかコクが薄く、ウッディーさ、樽由来の苦味とトゲトゲした要素が強く感じられる一方、オールドボトルはスムーズでマイルド。穀物由来のフレーバーと、ふわりとした甘みが鼻腔に抜けていく、程よくメローな味わいです。
今から7〜8年前は、多くのスタンダードバーボンにまだ濃さとコクがあったので、このレベルでは目立つものがありませんでしたが、今飲んでみるとこの飲み口は中々。個人的にはボディにもう少し厚み、パンチがあるといいのですが、スタンダードの加水ですしこれはこれで上出来だと感じます。
そんなわけで、久々に懐かしく楽しませてもらった1杯でした。

コンバルモア 32年 1984-2017 スペシャルリリース 48.2%

カテゴリ:
CONVALMORE
Natural Cask Strngth
Aged 32 years
Distilled 1984
Bottled 2017
Cask type Refill American Oak Hogsheads
700ml 48.2%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:柔らかく白粉を思わせるような麦芽香、ふくよかな香り立ち。華やかでオーキーなフルーティーさ、熟した洋梨を思わせる甘いアロマが広がってくる。

味:柔らかくコクがある口当たり。香り同様におしろいを思わせる麦芽風味、バニラ、オーキーなトロピカルフレーバーが、膨らむように広がる。
余韻は少し枯れたようなウッディネス。パイナップルや洋梨などのフルーティーさが戻るように感じられる。

麦芽風味とオークフレーバーの綺麗な融合。やや枯れ気味ながら熟成感がしっかりとあるだけでなく、リフィル樽を使ったスペシャルリリースの傾向らしい、酒質と樽感のバランスが取れた仕上がり。
今回のスペシャルリリースの中で、純粋な美味しさで一番印象に残った1本でもある。


コンバルモアは、1985年に閉鎖された蒸留所。DCL(現ディアジオ)関連のブレンド銘柄では当時のブラック&ホワイトの主要原酒の1つ。1980年代の蒸留所閉鎖はグループ全体における生産調整の一環であり、特にコンバルモアのようにブレンデッド向けだった蒸留所が、この時期に複数クローズされています。
そうしたDCL傘下の蒸留所に共通するのは、今飲んで没個性的と感じるものはあっても決して味が悪かったわけではないということ。コンバルモア含め、多くの蒸留所では60〜70年代に拡張工事が行われるなど、製造環境が整備されていたとも言われています。

今回のリリースは1984年蒸留。あ、自分の生まれ年のモルトじゃないですか、なんて個人的な話は置いておいて、これは上述にあるように閉鎖間際の原酒にあたります。
同蒸留所はオフィシャル加水の通常リリースがなく、そのスタイルは一概に語れないところはありますが、1978年蒸留のレアモルト、1977年蒸留で2005年・2013年詰の2作のナチュラルカスクストレングスや、ケイデンヘッドなどのボトラーズからのリリースが一つの指標。共通しているのは癖のない柔らかさを感じつつも、そのものはハイトーンで強い酒質。特にオフィシャル扱いの1977は、50度後半の度数も合わせて非常にパワフルです。

他方、今回のリリースにあるのは柔らかい飲み口。使われた樽の影響の違いに加え、閉鎖間際で酒質の勢いが衰えていたのかもしれません。
特に組み直しのホグスヘッドを使うことで、例えば使い古したバットサイズのアメリカンオークカスクで熟成するより、わかりやすい華やかさと柔らかい飲み口が備わりやすい傾向があります。
こういう癖の少ないモルティーな原酒がブレンドに使われていたのであれば、トップドレッシングというより、ベースになるモルトとして使いやすい印象もあります。

そして何より、自分の生まれ年のモルトで美味しいボトルに出会えたことが嬉しいですね。ディアジオのスペシャルリリースらしい仕上がりに熟成感の備わったナイスリリース。
先に触れた1977自体(特に2009年詰)はマイナーなボトルなので、今でもあるところにはあると思いますが、それこそ今回のボトルと比較すしながら飲んでみると、酒質の違いや熟成の経過が伝わって面白いと思います。

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