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2017年11月

更新として新たに1日分の枠を使うような話でもないので、空いてしまった日にひっそりと置いておきます。

今週末は新商品発表や試飲会、そしてウイスキーフェスなどイベント盛りだくさんの週でしたが、直前に急性虫垂炎にかかってしまい、全ての予定をキャンセル。幸い入院は免れたものの、週末は自宅療養となってしまいました。

久々に会える方々へのご挨拶や、色々と情報を収集したかったのですが、無念の極みです。SNS等で見ましたが、今年のフェスは特に見所も多かったようですし、レポートしたかったですね。
まあ成人病、糖尿病などの類じゃありませんし、逆に検査でその他の臓器に異常はないという診断があったのが心強い。
1~2週間しっかり治療すればお酒のほうも復帰できるのですから、年末年始に向けた胃腸のリフレッシュ休暇だと思って治療に勤しむとします。 

現状としては既に仕事には復帰していますが、入院と変わらない食事制限でゼリーや重湯を中心に1日当たり600~700kcal程度しか取れてないので、これほど体の中から固形物がないのも記憶に無く。
今流行りのファスティングってのはこんな感じなのか。元気はあまりないですが、身体が軽くなった気がします。筋肉が落ちてしまうのだけがちょっと・・・ですが(笑)。 

しかし虫垂炎の腹痛ってめちゃくちゃ痛いんですね。間違いなく人生で一番の腹痛、発症したと思しき日は一晩ほとんど眠れませんでしたよ。
次回同じような痛みがあったら即救急車です。
こいつは本当に突然きますので、皆様もお気をつけください。

トバモリー(レダイグ) 8年 2008-2016 アーカイブス フィッシュオブサモア 60.9%

カテゴリ:
ARCHIVES
THE FISH OF SAMOA
LEDAIG (TOBERMORY)
Aged 8 years
Distilled 2008
Bottled 2016
Cask type Sherry Butt
700ml 60.9%

グラス:サントリーテイスティング
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:酸味を伴うスモーキーさ、プレーンな麦芽風味、若さに通じる微かな酵母香。奥からドライオレンジのような柑橘系のアロマも感じられる。

味:スパイシーな刺激のある口当たり。程よいコクのある麦芽風味、乳酸系の酸味、貝殻のようなミネラル感、徐々にピーティーなフレーバーが広がってくる。
余韻はクリアでほのかに柑橘の爽やかさ。ピリピリとした刺激を伴う。ピーティーでドライ、長く続く。

加水すると香ばしい麦芽風味と、塩素を思わせるアロマが開く。熟成して未熟感が取れ、樽香が付いてくるというウイスキーの分岐点。若さを楽しめる絶妙なバランス。

"フィッシュオブサモア"は、日本でもヘビーな愛好家を中心に利用者の多いウイスキーデータベースサイト「Whiskybase」がリリースするシリーズボトル。中身との関連づけは特にないですが、オセアニア、エーゲ海に生息していた魚類をラベルにしたシリーズです。
今回の中身はトバモリーのピーテッドモルトであるレダイグ。リフィルシェリー樽で熟成されたと思しきあまり樽感の出ていないニュートラルな構成で、未熟感が程よく消えた、若さを楽しめる味わいに仕上がっています。

レダイグは、アイラモルトの高騰を受け、近年ボウモアやカリラの代替品的な位置づけとしてチョイスされる事が多くなってきたように思います。
どこのキャラクターに似ているとか、ピート感はどうかとか、まず代替品ありきのような感覚と言いますか。同じ島モノという共通点はあれど、タリスカーやハイランドパーク、ジュラなど他のアイランズモルトとは違う位置づけがレダイグにはあります。
勿論、レダイグはレダイグであると考えている愛好家もいると思います。ただピーテッドというキャラクターが確立していることこそ、新しい世代のレダイグが広く認知された結果であり、トバモリー蒸留所のモルトが新時代に突入した証でもあります。

トバモリー(レダイグ)は操業の安定しない蒸留所で、1798年創業と歴史は長いものの、休止期間の方が長いのではないかという状況。近年でも1970年代に閉鎖と再稼働を繰り返し、1980年代は丸々休止。時代の良さからそれなりのモルトが生まれることもあったようですが、安定して高品質なリリースがあるとは言い難い状況でした。
また、かつてはブレンデッドウイスキー全盛の時代であるゆえ、酒質や環境を無視し、市場で求められたライトでスモーキーさの少ないスペイサイドタイプのモルトを作ろうとしていたのだとか。(ウイスキーマガジン特集記事参照)
そのため当時は今とは異なり、レダイグ表記であってもほぼピートが焚かれておらず、かといって個性の穏やかな原酒が出来たかといえば荒さのある酒質で、文字通り迷走していたわけです。

参照:トバモリー蒸留所休止とリニューアル工事を伝える記事。

1993年、バーンスチュワート社が新しいオーナーとなり、トバモリー(ノンピート)、レダイグ(ピーテッド)という役割が分担され、今の姿に落ち着くわけですが、1990年代は1970年代の原酒ストックから20年熟成のレダイグ表記のモルトがリリースされるなど、まだ区分が明確化されていたわけではなかったようです。
それが近年、1990年代から2000年代に仕込まれた原酒では、ピーティーでエッジの鋭いアタック、強めの薬品香、ミネラル、樽との組み合わせでは燻りがっこにも通じる香味で、キャラクターは確実に安定してきています。

需要増加から生産が追いつかず、2017年3月から2年間休止して製造工程のリニューアルまで行われるというニュースも飛び出し、過去の迷走時代からは想像も出来ない状況となっているトバモリー蒸留所。
個人的になぜか気になる蒸留所であるのも事実で、200年以上に渡る苦労の末に大きく羽ばたこうとしているこの状況を歓迎したいです。

ブラックニッカ アロマティック フルーティー&スウィート 40% ニッカウイスキー

カテゴリ:
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BLACK NIKKA
AROMATIC
FRUITY & SWEET
Limited Bottled in 2017
NIKKA WHISKY
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封直後
評価:★★★★★(5)

香り:穏やかで甘くややドライな香り立ち。最初はあまり香りが立たず、穀物系の乾いたアロマと湿ったようなウッディネスがひっそりと感じられるのみだが、徐々にバナナクレープやパンケーキ、安価なオレンジジャムのような甘みが開く。 

味:口当たりはスムーズでまろやか、薄めたケーキシロップ、洋菓子、乾いた麦芽を思わせる仄かに香ばしいモルティーさ。中間からのっぺりとした舌当たりで、鼻腔に宮城峡のシェリーオークらしいアロマが抜ける。
余韻はほろ苦く、グレーンの穀物系の甘みが去った後で若い原酒のピリピリとした刺激や若干のえぐみが残る。

評価の難しいウイスキー。通常は平凡というか癖と個性の少ないブレンデッドなのだが、ほんの一瞬輝く瞬間(林檎のカラメル煮の華やかな果実味や、キャラメルナッツの香ばしさ)が感じられる。しかしそれは持続しない。 
少量加水すると刺激が収まり、まろやかでスムーズな飲み心地へと変化する一方、奥にあった火薬のような硫黄香も前に出てきてしまう。
ロックは甘みが引き立ち、刻々と変化する香味に加え、飲み口にコクが感じられて最もバランスが良い。ハイボールも同様に良好で、夏場にぐいぐいと楽しみたい。
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ブレンダーズスピリット、クロスオーバーと続いてきたブラックニッカ3部作のトリを飾るのが、このアロマティックです。
アロマティックは宮城峡のモルト原酒やカフェグレーン、カフェモルトをベースとしたブレンデッドで、メーカーPRでは「これまでの2作と比べて最も華やかでフルーティー」とのことですが、個人的にはそこまではっきりとした個性はなく、如何にも万人向けの味わいに仕上がっている、というのが第一印象でした。

グレーンとモルトの比率は、ブレンダーズスピリットよりグレーン感が強く、クロスオーバーと同じくらいでしょうか。
ただしピートの強弱、カフェモルトなどの使われた原酒のキャラクターから、穏やかで癖が少なく、グレーンの風味も感じやすい仕上がり。特にピーティーさの際立っていたクロスオーバーとは、対極にあるようなブレンデッドです。
それ故、テイスティングの際に「今回は平凡な仕上がりのブレンドだなあ」と感じたのですが、飲み進めて行くと意外に奥行きがあり、そこにキラリと輝く要素というか、ただ平凡なだけではない何かがある事にも気がつきます。

調べてみると、構成原酒の中にはシェリー樽熟成原酒や20年以上熟成したモルト原酒も使われているとの事。主体的に感じられる熟成感はそれほど長期ではなく、平均8〜10年程度という感じですが、そうした幅広いレンジの原酒が織りなす多彩さが、「平凡なだけではない何か」と、全体のバランスの良さにも繋がっていると感じます。
特にロックにするとその真価が発揮され、飲み口のまろやかさやコク、香味に変化と伸びが感じられる。この点はハイボールも同様で、ストレートや常温加水よりも、ロックやハイボールにして飲むべきウイスキーのようです。


今回のブラックニッカ・アロマティックは、20代から30代のウイスキーエントリー層をメインターゲットとしており、確かに第一印象で感じた通り、これまでのブラックニッカのリリースより万人向けで、言い換えれば広く親しまれやすい1本です。

ニッカのラインナップでは、ブラックニッカクリアから入って、リッチあたりを飲んで、次のちょっと上位グレード用という感じ。度数が43%から40%仕様となっている点も、飲みやすさを重視してということかなと。
それ故、飲み慣れた人だと物足りなさを感じる場合もありそうですし、個人的にもさらに香味のはっきりした46%仕様のアロマティックを飲んでみたくもありますが。。。エントリーユーザーで考えれば、ウイスキーを嗜み始めて強い酒を色々飲んで行く中でストンと落ちてくる「心落ち着く美味しさ」のあるウイスキー。
ブラックニッカ・アロマティックはそんなブレンデッドの一つだと思います。


以下余談。
ブラックニッカのリミテッドは、過去2作とも販促サンプルで先行してレビューを公開していました。今回もそのつもりだったのですが、ここ数ヶ月間本業のプロジェクトが山場を迎えていて、業務時間がえらい事に。あっという間に時間が過ぎて、サンプルも発売日もすっかり忘れてました(汗)。
気がついたのは、発売前にゲットした知人のSNS投稿という始末。。。
何れにせよ普通に買うんでいいんですが、ちょっと祭りに乗り遅れたような気持ちも感じつつ、本日のレビュー更新です。

グレンモーレンジ アスター 2017年リリース 52.5%

カテゴリ:
GLENMORANGIE 
ASTAR
2017 Release
700ml 52.5%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅
時期:開封後1週間以内
評価:★★★★★★(6)

香り:ツンとしたドライな刺激と軽やかなオーク香、干し草を思わせるウッディネス。淡くバニラ、あまり熟してない洋梨を思わせる甘い香り。

味:乾いたウッディネスのドライな口当たり。ほのかにオレンジ、薄めた蜂蜜のような軽いコクのある甘み、徐々にスパイシー。全体のバランスが良く、余韻にかけて綺麗に酒質と樽感が繋がる。
フィニッシュはドライでスパイシー、オーキーな華やかさを伴い長く続く。

ハイプルーフらしくスパイシーな刺激はあるが、シャープな方向に全体のバランスが整っており、洗練されている印象を受ける。加水すると乾いた麦芽風味、クリーミーな口当たりが際立つ。


グレンモーレンジの新しい旅(アスター)の始まり。5〜10年前頃から飲んでいた愛好家には非常に馴染み深く、バーボン樽と言えばコレという代表的な銘柄だったアスターが遂に復活しました。
旧ボトルとなるかつてのアスターは、2008年に発売され、2012年に終売。流通量が多かったためその後も姿を見ていたボトルですが、こうして復活するとなると感慨深い想いがあるのは私だけではない筈です。

旧アスターはグレンモーレンジの樽に対するこだわり、研究の成果とも言えるバーボン樽"デザイナーズカスク"を用いて熟成された銘柄。パワフルで華やか、はっきりとしたオークのフレーバーが魅力でした。(デザイナーズカスクの詳細はぐぐってくださいw)
思えば2008年当時、これほど露骨にバーボン樽由来のフレーバーを前面に打ち出したオフィシャルリリースはハイランドモルトにはなく、飲み手に衝撃を与えたのは勿論、その流通量から現在のシングルモルトの代表的なスタイルを広く認知させたのも、この1本だったように思います。

では今回のリリースはというと、その血脈は形を変えつつも受け継がれています。
まず旧ボトルとの違いですが「より洗練されている」と言うのが第一印象。
旧ボトルのアスターは露骨なオークフレーバーというか、バーボン混じってませんか?というくらい樽感が濃く、荒さもあって、「開封後1年した方がフルティーさが開いて美味しい」なんて意見もあったほど。
新しいアスターはその辺りの余剰な樽感が削ぎ落とされ、オーキーな華やかさがありつつも、スレンダーで綺麗なモルトに仕上がっています。

度数が57.1%から52.5%に低くなったことか、あるいは構成原酒の熟成年数が変わったか、スレンダーと評したように全体の線は細くなりましたが、このボトル単体で考えればこれはこれというバランス。あと何よりグレンモーレンジのハイプルーフは、スパイシーで華やかな味わいが麦芽風味と馴染んで美味いんです。
上述のバランスの良さと合わせ、口開けからあまり時間が経ってないにも関わらず、美味しく楽しむ事が出来ました。
国内への正規輸入はまだ始まっていませんが、並行品は入荷が始まっているようですので、そう遠くないうちに正規品も展開されるのではないでしょうか。今後のメーカー発表が楽しみです。


<追記>
11月21日、MHDからグレンモーレンジ・アスター2017の限定展開の発表がありました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000268.000006986.html

価格は11000円、近年のウイスキーの相場からすれば標準的な設定かと存じます。平行品はもう少し安いかな?
数量限定品で、どの程度流通しているかはわかりませんでしたが、グレンモーレンジらしい旨さのあるボトルを、しばらくは安定して楽しむことが出来そうです。

若鶴酒造 ムーングロウ 10年 ファーストリリース2017 43%

カテゴリ:
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WAKATSURU
MOON GLOW
Blended Whisky
Aged 10 years
First Release 2017
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1~2ヶ月程度
評価:★★★★★★(5-6)

香り:華やかでドライな香り。レモンピール、微かにドライアップルを思わせるオーク香、ツンとした杉の木のようなアロマもある。時間経過でオリーブオイルのような癖のあるオイリーさもほのかに感じられる。

味:香り同様華やかで乾いたウッディネス、バニラウェハース、ドライパイナップルのアクセント。時間経過でオイリーで微かに薬草キャンディのような甘み。余韻はドライ、ピリピリとした刺激を伴いあっさりとしている。

モルティーでバランスの良いブレンデッド。一見すると癖が少なく華やかで中性的なブレンデッドだが、奥にあるオイリーさや原酒由来の癖が、味わいにらしさと奥行き、個性を与えている。少量加水すると華やかさはあまり変らないが、フレーバーが分離するような水っぽさが出てしまう。ストレートで。


若鶴酒造が1960年代蒸留の自社原酒に加え、自社貯蔵していた輸入グレーン原酒等を用いたブレンデッド。「現時点で作れる究極のブレンデッドウイスキー」というコンセプトで、何を基準にするかという疑問点はありますが、スコッチスタイルのウイスキーとしては確かに悪くない出来のブレンデッドだと思います。 

リフィルタイプのアメリカンホワイトオークの華やかな樽香に、体感ではモルト7:グレーン3程度と、あまりグレーンが主張しないモルトベースのブレンド構成。
同社のモルト原酒はそこそこ癖のあるタイプのものが多いですが、それを多少残しつつも自然な感じで、余韻までバランス良くまとめ上げています。
おそらくこれ以上グレーンが少ないと、もっとバラツキのある味わいになっていたでしょうし、その逆ではグレーンが悪目立ちしていたように思います。

日本のクラフトディスティラリーは、グレーン蒸留設備を持たないため、ブレンデッドづくりではグレーンの外部調達が必須となります。(あるいはブレンデッドを買い付けて、それをグレーン代わりに混ぜる手法もあります。)
そのルートとしては、国外から買い付ける場合は商社を通じての輸入がありますが、先日某社が取り扱い先となっている8年と10年熟成のサンプルを飲んだところ、華やかで軽やか、スムーズなバニラと穀物風味で決して悪くない、むしろおいしいグレーンでした。
同じタイプのものを熟成のベースとして今回のブレンデッドにも使われているとすれば、このバランスの良さは納得です。

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(若鶴酒造、三郎丸蒸留所の一画にある貯蔵スペースの一つ。若鶴酒造は約60年前からウイスキーを製造していた歴史があり、少ないながら原酒のストックもある。)

ムーングロウ(月光)は、若鶴酒造のウイスキーブランドであるサンシャインウイスキーの対を成す言葉で、味わい的にも構成的にも、その意味がぴったり当てはまるようなブレンデッド。
中身とあまり関係はないですが、外箱に施された加工は富山県の名産である高岡銅器を模しており、ラベルと相まって美しい仕上がりです。

若鶴酒造といえば、Readyfor社のクラウドファンディングで蒸留所改修工事のプロジェクトを達成した事が有名ですが、昨日、そのクラウドファンディングの中でも特に大きな成果を達成した事業者を対象にコンテストが開催され、若鶴酒造は大賞候補にノミネートされていました。
商業色の強さからか惜しくも大賞は逃したようですが、同社が果たした成果の大きさを改めて感じます。

今後は更にマッシュタンや蒸留設備の改修、新設を進めていくだけでなく、ムーングロウの第二弾も予定しているとのこと。北陸初のウイスキー蒸留所のさらなる発展を期待したいと思います。

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