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2017年07月

ラフロイグ 26年 1990-2016 ダグラスレイン XOP 49.2%

カテゴリ:
LAPHROAIG
Douglas Laing's
Xtra Old Patigular
Aged 26 years 
Distilled 1990
Bottled 2016
Cask type Refill sherry hogshead
700ml 49.2%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@リクオル
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:しっかりとした甘みを伴うシェリー香、カカオチョコ、かりんとう、合わせてスモーキーで焦がしたようなピート香。塩素、海藻を思わせる海系の癖が出汁醤油のようにも感じられる。

味:香り同様にとろりとした濃い甘みのある口当たり。キャラメル、プルーン、すぐに焦げたようなピートフレーバー、サルファリーなニュアンスも伴う。
余韻はスモーキーでドライ、ウッディなタンニンと土っぽさ。微かに葉巻の香りが鼻腔に抜ける。

しっかりと甘みのあるシェリー感を感じる1本。若干感じられるサルファリーさも含めラフロイグのキャラクターとして好みを分ける印象だが、ベースは良いので20〜30年後に大化けしているかもしれない期待値がある。ストレートで。


ウイスキー愛好家の間でちょっと話題になった、ダグラスレインのオールドパティキュラーシリーズの上位グレード、XOPラフロイグ26年。リリースから半年ほど遅れ、今更ではありますがテイスティングです。
レーズンなどの果実系というより、シロップのようなとろりと甘いシェリー感があり、そこに焦げたようなピートフレーバー、普通に美味しいボトルだと思います。

自分は濃厚なシェリー系は決して嫌いではないですが、今回のボトルのようにピートフレーバーと硫黄感が混じるボトルは好みから外れていく傾向があり、評価は辛めかもしれません。
ただし、経年でシェリー感がこなれ、硫黄が底支えになるように変化していけば、この手のボトルは化けそうだなとも感じます。
同じシェリー系ラフロイグだと、例えば昨年リリースされたメゾン60周年のマスターピースなんかは開けてすぐ美味しかったという印象ですね。

オフィシャルでしっかりシェリー系のボトルは、極少数ですが過去にもリリースされてきました。
他方、近年のラフロイグはバーボン樽を中心とした構成が多いことや、酒質的にもあまりシェリー感の濃くないリフィルシェリー、あるいはそれを含むバーボン樽とのバッティングなどの方が馴染みやすいということもあって、王道な味わいというよりは変わり種という印象があります。

ラフロイグは18年が終売となり、ボトラーズからも中熟以上のボトルが中々出てこない状況となっています。
そんな中、近日リリース予定のボトルでは、信濃屋のダンカンテイラー・ラフロイグ18年(1998ー2015)が、まさに王道というはっきりとフルーティー&スモーキーなタイプ。美味しいラフロイグというだけでなく、シェリータイプにバーボンタイプ、ボトラーズからリリースの少ないラフロイグに、偶然にも役者が揃ってきました。
今後ますますボトラーズの原酒枯渇が進むと思われる中、様々なキャラクターのラフロイグを飲み比べできるのは当面無い機会かもしれません。BAR等で是非試してみてください。

シーバスブラザーズ センチュリーオブモルト 43% 1990年代流通

カテゴリ:
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CHIVAS BROTHERS
THE CENTURY OF MALTS
Scotch malt whisky
750ml 43%

グラス:テイスティンググラスエリート
場所:個人宅(持ち寄り会@J氏)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:洋梨や林檎を思わせるフルーティーさ、華やかでオーキーでナッティーな香り立ち。奥から干しわら、ウッディネス、少し溶剤のような刺激を伴う。

味:まろやかな口当たりから徐々にドライ。香り同様に華やかでナッツ、フルーティー、林檎、牧草、蜂蜜のような甘みも感じる。中間は多彩で複雑だがまったりとしている。余韻はウッディでドライ、ほのかなピート香が現れ長く続く。
   
複雑さ、多彩さはあるが、基本的にはハイランドタイプのモルティーな香味が主体。余韻にかけてはアイラ系のピートフレーバーもある。熟成感は10~20年程度、あまり長期熟成のモルトという印象はない。ゆるくのんびりと楽しめる1杯。


シーバスリーガルを製造するシーバス・ブラザーズ社が1995年に発売したとされるブレンデッドモルトウイスキー。センチュリーと書かれたそれは、100周年などの記念的な要素を感じさせるものの、特段これと言う話はなく。1度限りの限定品ではなく、何年間かリリースは続いていたようで度数違いや容量違いもリリースされています。
シーバスブラザーズ社発足は1801年、シーバスリーガルの発売は1891年、少なくとも100年前の1895年、何か記念すべきことが同社にあったというような話はありません。

ラベルの通り100蒸留所の原酒をブレンドしたウイスキーで、当時J&Bがモルトとグレーンで120を越えるほぼ全蒸留所の原酒をブレンドした、J&Bウルティマをリリースしていたことから推察すると、対抗馬と言える商品だったのかもしれません。
ブレンデッドウイスキーではなく、あえてシーバスブランドの通常ラインナップにないバッテッドモルトウイスキーでリリースしているあたり、販売量でシーバスリーガルの上を行くJ&Bへの対抗意識が滲んでいるようにも感じます。   

比較的オールド市場に多く流通している本銘柄、完品の場合付属する冊子には、使われたとされる100銘柄についての解説もされています。
そのリストにはアイランズ、アイラ、北ハイランドからローランドまで、スコットランド全土から満遍なく原酒が使われていることが書かれていますが、そのバランスはテイスティングの通り、内陸系主体のバッティングに隠し味としてアイラという感じ。シーバス社所有の原酒で考えると、そうしたタイプの原酒が主体になるのは当然のこととも言えます。

ご参考:シーバスブラザーズ社所有のウイスキー関連設備(2009年度版)

他方、使われた原酒には、かつてシーバス社が試験的に仕込んだとされるピーテッドモルト、クレイグダフ、グレンアイラの名前もあり、余韻にかけて感じられるピート香にそれが含まれていると考えると、中々興味深いと感じる味わいでもあります。
ちなみにこのボトル、持ち寄り会ではブラインドテイスティングで出され、そのキャラクターの多彩さというか混ざり具合から悩みに悩んでバランタインのオールドと答えた記憶があります。出てきたボトルを見て、これなんてムリゲーだと(笑)。しっかり楽しませてもらいました。

メーカーズマーク プライベートセレクト 萌木の村 ポールラッシュ生誕120周年記念 55.5%

カテゴリ:
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MAKER'S MARK
PRIVATE SELECT
Paul Rusch's 120th Birthday
Barrel Finished With Oak Staves
750ml 55.5%

グラス:木村硝子テイスティンググラスの後バカラロックグラス
場所:自宅
時期:開封直後~
評価:★★★★★★★(6ー7)(!)

香り:バニラやバタークッキーを思わせる甘い香り立ち、ブルーベリー、植物や穀物の軽やかさ、ウッディーでスパイシーなアロマが続く。

味:濃厚でコクがあり、度数を感じさせないまろやかな口当たり。メープルシロップ、チェリーのシロップ漬け、オレンジママレード。序盤は甘酸っぱさの有る甘みから中間から後半はバランスの良いウッディネス、ほろ苦さが微かな焦げ感を伴って長く残る。

樽感が強く濃厚な味わいだが、余韻にかけて収束し、軽やかであまりしつこさがない飲み心地がメーカーズマークらしさとして感じられる。ストレート、ロック共に良好。テイスティンググラスよりはロックグラスやショットグラスで楽しむほうが香りのネガが少ない。夏のバーベキュー、野外で飲みたい1本。 シガーとの相性もいい。

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この7月、オーナーの元に届いたばかりの萌木の村オリジナルボトリング、メーカーズマーク・プライベートセレクトです。
ボトリング本数は237本。戦後、萌木の村がある清里の地の発展に大きく貢献した、ケンタッキー州出身の牧師、ポール・ラッシュ氏の生誕120年を記念したボトルでもあります。
同氏の生誕記念としては、今年の4月に先立ってシングルモルト白州もボトリングされており、生まれた地と、復興に尽力した地で育まれたそれぞれのウイスキーとのコラボは、同氏の生誕を祝うに相応しいチョイスと言えます。


メーカーズマーク・プライベートセレクトは、一度払い出したメーカーズマークのカスクストレングスを、フレンチオークを主体とした5種類10枚の木材(インナーステイブ)と共に再び樽詰めし、数ヶ月間後熟したものです。
この方法は既に市販されているメーカーズマーク46でもお馴染みであるだけでなく、蒸留所や現地ショップではオリジナルボトルも展開されていて、どの樽材を組み合わせるかで味に変化を与える狙いがあります。

今回のボトルのインナーステイブの比率は裏ラベルの通り、甘みの強いP2とCuに、スパイシーな香味の46が10枚中8枚となっており、濃厚で甘みが強く、苦味のニュアンスが少ない味わいが付与されているようです。

バーボンウイスキーは樽に新樽縛りがあり、連続式蒸留も行われる関係から、ともすれば香味が単調などという声も少なからずあるところ。近年では香味のライト化も著しく、長期熟成原酒も枯渇気味と聞きます。
そんな中で現地ウイスキー業界としては、原料比率や酵母を変えたり、メーカーズマークのインナーステイブだけでなくフィニッシュに異なる樽を使用したり、あるいは最初の熟成からアメリカンオークでなくフレンチオークの新樽を使うなど、多様性を生み出す様々な試みが行われ、これまでの常識が変わりつつあると感じます。

このメーカーズマークは、通常の熟成とは異なるニュアンスはありますが、それ以上に狙ってこの味わいを作り出したというところに、ポールラッシュ氏の「最善を尽くせ、そして一流であれ」とする開拓者精神が体言されているように感じます。 
本ボトルは萌木の村ホテルバー・パーチだけでなく、一部繋がりのあるBAR等にも展開されている模様。是非バーボンの新しい可能性に触れてみてください。


以下、余談。
今回のボトルのオーナーであり、萌木の村の代表である舩木上次氏が、Forbes Japan誌による"日本を元気にする88人"に選ばれました。
舩木氏は、ウイスキーに限っても清里ウイスキーフェスの開催で中心的な役割を果たすだけでなく、清里フィールドバレエ・オリジナルボトルでご存知な方も多いはず。
ご本人は「自分は88人目ですから」と謙遜されていましたが、選定の有無に関わらずその実績は疑いようもないところ。
自分も舩木氏のようにウイスキー業界を元気に出来るような、そんな活動をしていきたいものです。

マッカラン 10年 2000年代初頭流通 40%

カテゴリ:
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MACALLAN
10 years old 
Sherry oak casks from Jeres
2000's
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:黒砂糖やレーズンの甘いアロマ、おが屑、ほのかに香木っぽさ、アーモンドのほろ苦さを伴うウッディネス。スワリングするとツンとしたアルコール感を伴う。

味:甘くスムーズな口当たり、香り同様黒砂糖、プルーンの甘味から徐々にドライで口内の水分が奪われていく。
中間はやや荒さがあり、余韻はキャラメルやシロップを入れた紅茶のよう、ややべったりとしており、甘くビターでタンニンが染み込む。

バランスの良いシェリー感でスイスイと飲めてしまう。多少若さとして感じられる荒い部分もあるが、加水でうまくバランスがとれている。評価はギリ★6。ストレートで。


2000年代前半、ラベルデザイン等で細かく見るなら2005年前後で流通していたオフィシャルスタンダード。ゆるく家飲みしたくなり、久々に開封しました。いやーなんとも懐かしい味わい、同時期の12年と比べると荒さは多少ありますが、バランスの良いシェリー感を楽しめる1杯に仕上がっています。

当時はこのボトルで味が落ちたなんていわれていた訳ですが、懐古厨といわれようが良い時代だったなと。なんせ、これで3000円しなかった訳ですから素晴らしいコスパ、当時のデイリーウイスキーは化け物かって感じです。
あとマッカランの旧ボトルはラベルデザインも雰囲気あるんですよね、古き良き時代のデザインを踏襲しつつ、新しさもある。今の角張ったボトルより良いと思うのはきっと自分だけではないはず・・・。
と、なんだか随分美辞麗句が並んでしまいましたが、そうした想いは自分だけではないのかオークションでの価格はうなぎ登り、もうあの価格を見たら中々旧ボトルのマッカランは開けられません(笑)。

外観の話はこれくらいにして中身の話に移ります。振り返ると、この当時のオフィシャルマッカランのシェリー感は、同時期流通の他のスタンダードと比較して独特なニュアンスがありました。
今ではウイスキー業界で一般的になりつつある、スパニッシュオークのそれ。
例えばシェリー系リリースの筆頭たるグレンファークラスと比較しても、だいぶ違うシェリー感の方向性に、マッカランが進めてきたシェリー樽開発のノウハウを見るように思います。

ヘーゼルバーン 13年 2002-2016 DUTY PAID SAMPLE 55.9%

カテゴリ:
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HAZELBURN
DUTY PAID SAMPLE
Aged 13 years
Distilled 2002
Bottled 2016
Cask type F Conac Butt
700ml 55.9%

グラス:サントリーテイスティング
量:50ml以上
場所:ホテルラウンジ(個人所有ボトル)
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6-7)

ヘーゼルバーンはスプリングバンク蒸留所で作られるノンピート麦芽と3回蒸留が特徴、スプリングバンクの兄弟銘柄です。かつては実際に操業している蒸留所でもありましたが、こちらはキャンベルタウンのウイスキー産業衰退を受け1925年に閉鎖。1997年から、スプリングバンクの1銘柄として生産される形で復活しています。
閉鎖されたほうのヘーゼルバーンは、マッサンこと竹鶴政孝が修行した蒸留所の一つとしても有名ですね。

実は個人的にヘーゼルバーンはこれという良い印象は持っておらず、スプリングバンクやロングロウの陰に隠れているようなイメージすらありました。というかその元凶は、かつて販売されたヘーゼルバーンCV(初期のセット販売向け200mlボトル)にパフューム香を感じたり、当時リリースされていた8年のもっさりしたような味わいにピンとこなかったため。 
その後、スプリングバンクやロングロウは飲む機会がある中で、ヘーゼルバーンはほぼないまま時間だけが過ぎていきました。

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(スプリングバンク蒸留所のフロアモルティング風景。切り取られた1枚から伝統的な美しさを感じる。同製麦工程の効果について科学的な報告はないが、麦の乾燥が機械式と比べて均一でないことが香味の多様性に繋がるのではと推察。Photo by K67)

そして今回、偶然にもテイスティングの機会が巡ってきたのが、このDuty paid sampleです。
この見慣れないボトルは国内未流通はもちろん、基本的には現地ケイデンヘッドのショップと、スプリングバンク蒸留所(あるいはケイデンヘッド)と繋がりのあるショップで販売されている、まさに愛好家のための1本。
樽を全て払い出すのではなく、一部をボトリングして文字通り"税金支払い済みサンプル"の下に販売している・・・といった感じでしょうか。樽違いで複数種類がリリースされているだけでなく、ヘーゼルバーン以外にもロングロウ、スプリングバンクのリリースもあり、そのマニアックさ故か購入された方曰く、現地のショップには普通に在庫が残っているとのことです。


今回の1本はバーボンやシェリーではなく、フレンチオークのコニャックカスクとは変化球な・・・モノを見た瞬間から出来栄え以上に、どのような個性が感じられるかが楽しみでもありました。

麦芽系の素朴な香り立ち、干し草、微かにライチや洋梨のような果実香が混じる。3回蒸留だからローランドモルト的な個性というほど、エッジの鋭い飲み口や、ライトな味わいというワケではなく、スプリングバンクに共通する蝋っぽさを伴う麦の旨み、柔らかいコクとほのかな酸味があるしっかりとした造りのモルトです。
ともすればギスギスした味わいに感じられるような舌当たりや、コニャックカスク由来の酸味やウッディーさの強い樽感もなく、しみじみ旨い、バランスの良いところに落ち着いています。
この日、写真の分量で2杯も飲んでしまったことから、度数を感じさせない飲みやすさや美味しさは伝わるのではないかと思います。

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余談ですが、こちらは同じDuty paid sampleのロングロウです。
ヘーゼルバーンを飲んだ次の日の夜、偶然にも頂きました。
フレッシュシェリーカスクのホグスヘッド樽で、出汁っぽさのあるシェリー感が出ている一方、ピートや塩素、そして独特の麦感に樽由来のサルファリーさも混じり・・・随分やんちゃでそれぞれの個性がぶつかり合うような味わいでした。 

こうした個性豊かな味わいを楽しめるのも、単一原酒であり単一樽だからこそ。 現地でショップを訪れた方など、機会がありましたら是非このシリーズのボトルを試してみてください。 

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