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2017年02月

フェイマスグラウス 1989 ビンテージモルト 12年 40%

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THE FAMOUSE GROUSE
Vintage Malt Whisky
(Blended Malt Whisky)
Aged 12 Years
Distilled 1989
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:個人宅(持参物@Fさん)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:スモーキーでほのかにヒネを伴う甘い樽香、黒砂糖、カラメルソース、微かにレーズン。徐々に麦芽香が開くだけでなく、華やかなモルティーさも感じられる。

味:ゆるくまろやかな口当たり、黒糖麩菓子を思わせるような甘さと麦芽風味、徐々にビターチョコレートのほろ苦いニュアンスが感じられる。度数は低く中盤まではアタックは強く無いが、ボディは比較的しっかりとしており、フィニッシュまで香味が伸びていく。
余韻はビターで染み込むピートフレーバーに加え、麦芽やシェリー樽由来の甘みが染み込むように残る。

香味にしっかりと感じることが出来るスモーキーフレーバー、そしてオールドシェリー系の甘い樽香。度数以上に感じるボディが、このウイスキーのキーモルトがハイランドパークとマッカランであることを如実に現している。
また、飲み進める中で麦芽系の香味が開いてくるのは、タムデュー由来だろうか。 少量加水すると全体のフレーバーが馴染み、さらにバランスよく楽しむことが出来る。

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最近フェイマスグラウスの上位グレードに興味があり、機会があれば飲もうと思っていた同銘柄のブレンデッドモルト、ビンテージモルトウイスキーシリーズ。
このボトルは同銘柄が2000年の記念にリリースした1987ビンテージに次ぐ第2弾で、ありがたいことにウイスキー仲間主催のホームパーティでテイスティングの機会を頂きました。 

同ボトルの流通時期の2001年、2002年頃と言えば、この時期のフェイマスグラウスのキーモルトであるハイランドパーク、マッカラン、共に旧ボトルでオフィシャルが美味しいと評価されていた時期。樽の違いもあるだろうから、一概には比較できない。。。と思っていたものの、思った以上にオフィシャル系統の仕上がりで、シェリー系の樽感も楽しめます。

自分の中でイチオシのフェイマスグラウスは、不定期に発売されていたブレンデッドモルトの30年です。
長熟ハイランドパークの個性がしっかりと感じられ、実に良くできたウイスキー。機会があればもう1本手に入れたいと考えていましたが、ここにもう一つナイスなウイスキーに出会いました。 

ビンテージモルトウイスキー1989は、その30年の系譜を受け継ぎ、やや荒削りながら 構成原酒のキャラクターがしっかりと感じられるのが魅力。
欲を言えば度数が40%と低いことで、せめて46%、いや43%あったら。。。とも思いますが、家飲み用にこういうのが1本あると落ち着くんですよね。
今後は1987、1992といった同銘柄の他のビンテージも、探して飲んでみたいと思います。

シングルモルト 駒ケ岳 30年 1986-2016 マルスウイスキー 61%

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KOMAGATAKE
Mars Whisky
Aged 30 Years
Distilled 1986
Bottled 2016
Cask type American White Oak
700ml 61%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:計30ml程度
場所:BAR飲み+自宅
時期:開封後2ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(6ー7)

香り:華やかで濃縮したようなウッディネス、ややドライな香り立ち。強い木香はまるで檜風呂、あるいはバンガローの中にいるよう。胡桃やカシューナッツなどのナッティーさ、ハーブ、徐々にアプリコット、ドライパイナップルの甘酸っぱさに加え、微かに燻したような薫香も混じる。

味:とろりとした口当たりから強くウッディー、松ヤニや無骨な木のフレーバーにドライパイナップルや林檎の果実感、ほのかに蜂蜜、徐々に土っぽさを伴う。ボディはしっかりとしており、樽香は強いが綱渡りのようなバランスを保っている。
余韻はドライで乾いたウッディネス。ピート香が木香の奥からじわじわと立ち上ってきて長く続く。

とにかく木の香味である。加水するとえぐみが多少出るものの、味わいはパイナップルやピートなどのストレートで感じた要素がそのまま伸びてくる。樽由来のフレーバーを濃縮したような香味は確実に好みを分けるが、ジャパニーズウイスキーらしさを突き詰めた形の一つであると感じる。 


昨年、本坊酒造ことマルスウイスキーが発売した、シングルモルト駒ケ岳の最長熟成品となる1本。
1986年に蒸留され、アメリカンホワイトオーク樽で熟成されてきた原酒4樽をバッティングした、同蒸留所の歴史が詰まったリリースです。
というのも、信州蒸留所は1985年に竣工、操業を開始しており、今回リリースされた原酒はほぼ創業当時から貯蔵され続けてきた原酒が使われているという事になります。
その間、1992年には信州蒸留所が操業を休止し、2011年に再び蒸留を再開、そしてウイスキーブームの到来・・・紆余曲折を経ているわけですが、そのあたりはまた別な機会にまとめるとして、肝心の香味のほうに触れていくとします。

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(2011年2月、蒸留を再開した当時の信州蒸留所の蒸留器。現在は新しい蒸留器に交換されており、この蒸留器は屋外に展示されている。どこか余市のそれに近い形状で、今回テイスティングした駒ケ岳は、この蒸留器の初期の原酒に当たる。)

テイスティング中にも書いたとおり、基本的には熟成に使われたアメリカンホワイトオーク樽由来のフレーバーが非常に濃く、樽材を舐めているような印象すら受けます。
スコッチモルトではあまり見られないこの熟成感は、使われた樽もさることながら、やはり熟成環境の気温、湿度の違いだろうなと感じるところ。余市、宮城峡、羽生、いくつかの国内蒸留所にも同様の傾向が見られ、この熟成感がジャパニーズウイスキーらしさの一つと言えます。

その濃いフレーバーをなんとか受け止め、ギリギリ形にしている駒ケ岳の酒質は、癖は少ないが厚みのあるタイプ。度数が高いこともプラスに作用し、この30年はギリギリのところでバランスを保っています。
また、複数樽バッティングであることが複雑さ、味わいの奥行きに貢献しているように感じます。
樽香の強さゆえ、多くの量を一度に飲もうとすると鼻も口もすぐに飲み疲れてしまいますが、少量を口に含んでゆっくり転がすと奥から果実味が開き、ピートフレーバーと合わさって味わい深い構成。 1分1年、信州の森の中に佇む蒸留所の姿を思い浮かべ、30分くらいかけてゆっくり飲んで良い、そんなウイスキーだと思います。


かつて本坊酒造は、竹鶴政孝の実習ノートを元に、鹿児島、山梨の蒸留所でピーティーでヘビータイプのウイスキーを製造。この信州でウイスキー事業を行うにあたっては、日本人向けのライトな味覚に合わせたスタイルのウイスキーを作るつもりだったそうですが、出来上がっていたのはこれまでリリースされた様々なボトルの通り、中長期熟成向けの原酒だったようです。 

蒸留に関するノウハウも確立していなかった時代だけに、手探りで行うことも多かったのでしょう。
確かに鹿児島時代に比べて癖は少なく洗練されていますが、ライトスタイルを目指しながらピーテッド麦芽が使われているのも、蒸留所の系譜と、同タイプの麦芽の方がノンピートより安かった、この2つの側面に時代を感じます。


このボトル、最初は日本橋のIANさんでテイスティングしたものの、日本で30年という予想通りあまりの樽の強さに閉口気味。その後ウイスキー仲間のIさんから小瓶を頂き、改めてゆっくり家飲みしたところ、熟成年数が織りなす味わい深さ、上述の様々な要素を感じ取ることが出来ました。ありがとうございます!

ベンリアック 12年 シェリーウッド ついに終売へ

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シングルモルトウイスキーの入門者向けとして、あるいは愛好者のデイリーユースとして親しまれてきた「ベンリアック12年シェリーウッド」が、メーカー生産終了に伴い、国内在庫限りで終売となるという知らせが先日届きました。

BENRIACH
Aged 12 Years
Matured in Sherry Wood
46% 700ml

【テイスティングノート】
ややドライでウッディーなニュアンスがあるが、スワリングしているとホットケーキシロップのような甘い香りに微かにレーズンを思わせる酸味が混じってくる。口に含むとキャラメルやカステラを思わせる甘み、ドライプルーン。ボディはやや軽めだが、度数があるので安定している。余韻は序盤の甘みに適度にウッディーな渋みを伴いゆっくりと消えていく。


ベンリアック蒸留所を買収したビリー・ウォーカー氏によるブランド一新の流れの中、シェリー樽100%の同銘柄が発売されたのは2009年のこと。
当時オフィシャルの同価格帯でシェリー系と言えばマッカラン、そしてグレンファークラスの12年。味が落ちたと評されて久しい両銘柄の"ポスト"として、時に比較されながら、らしい甘みとウッディーな香味で「コスパの良いシェリー系ウイスキー」の地位を確立していきました。

その後、2014年頃のラベルチェンジで、シェリー樽由来の甘みがドライでスパイシーな傾向に変化こそしましたが、それでも「初めに飲むならこの1本」と、オススメボトルの一つに挙げる愛好家も多かったと認識しています。
そんな人気ブランドが終売となる背景には、昨年の売却で経営母体が変わったことによる方針変更、あるいはシェリー樽の高騰・不足が顕著ということなのでしょうか。。。
まさに惜しまれつつ引退する名選手となってしまうわけですが、事実は受け止めるしかありません。この記事では今後愛好家が求める"ポスト・ベンリアック12年シェリーウッド"の候補となるボトルをいくつか書き出して、結びとします。 

まず同系列のグレンドロナック12年。ペドロヒメネス樽を使っている関係か、甘みが強く少し椎茸っぽいニュアンスが混じるようにも感じますが、紹介するまでも無く鉄板です。
後はシェリー樽100%ではないものの良い仕事をしているダルモア12年、飲みごたえは少し緩いですがシェリー樽の香味が豊富なアベラワー12年、タムデュー10年がその次点に続く。
また、ベンリアックのポストというには多少癖がありますが、クリーミーさが魅力のエドラダワー10年も悪くない。ブレンデッドではネイキッドグラウス12年もオススメです。

もし上記のボトルの経験が無いという方は、ベンリアックの在庫を買い求める以外に新しい発見のきっかけとして、色々試して見る良い機会ではないかと思います。


キングオブスコッツ 17年 ウェッジウッド 1980年代流通 43%

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KING OF SCOTS
Douglas Laing
Aged 17 Years
1980's
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:不明
評価:★★★★★(5)(!)

香り:こってりとリッチで甘い香り立ち。カラメルソースやコーヒーチョコレート、古酒感、ほのかに油絵の具を思わせる癖。そしてグレーンの穀物系の甘いアロマが交じり合ってくる。時間経過でオロロソシェリーの酸味、ローストアーモンドを思わせる微かな薫香とほろ苦さ。

味:とろりとした口当たり。チョコレートフィナンシェの洋菓子を思わせる濃い甘さから、香り同様にコーヒーチョコレートの甘くビターなフレーバーが主体的に。余韻はドライでビター、序盤の濃さから比べれば余韻は軽く、グレーンの穀物感を伴う。

基本的にグレーン主体の構成で、その系統の癖はあるが、とにかくこってりとしたカラメル系のシェリー樽感・・・というかシェリー酒をそのまま押し付けたような印象すらある構成。
ブレンドとしてバランスが良いとは言えないが、この判りやすさは現行品では得難い魅力とも評価出来る。
オールドモルトカスクでおなじみ、今は分社してしまった旧ダグラスレインが展開していたブレンデッドウイスキーブランドの一つ。
ダグラスレインはボトラーズに転身する前はブレンデッドウイスキーメーカーで、様々な原酒を買い付けてブレンドし、リリースを行ってきました。

キングオブスコッツの生い立ちについてはWEB上または書籍を参考していただくとして、同銘柄にはノンエイジ3種類、17年、25年とラインナップがあり、その中でも17年、25年は同系列のどっしりとした甘みの濃い味わいが特徴です。
先日直接飲み比べる機会があったのですが、17年の方がシェリーを直接添加したような濃さで、同じ濃い味わいでも25年のほうがバランスが取れている印象を受けます。

ただその濃厚さゆえ、構成原酒の出元はさっぱり不明。まあモルトとしてはハイランドやスペイサイドが中心で、それ以上にグレーンが多いことは間違いないと思わせる香味が、この時代の同銘柄、全ラインナップで感じられます。
おそらく蒸留所を持たない旧ダグラスレインは、ブレンドの品質維持と飲みやすさを目的として、グレーンを多め(6から7割くらい)に加えていたのではないでしょうか。
現在のリユース市場に多く出回っていボトルでもあり、甘口のオールドブレンデッドが好みの方は試してみても良いかもしれません。

なおボトルに描かれたスコットランド国章のライオンにいくつか色違いがありますが、流通時期には関係がないようです。
ボトルはウェッジウッド系列のデキャンタ、未開封時はコルクがワインのように直打ちされ、変えコルクが付属。(今回のボトルはコルクを別なものに交換してあります)
1990年代になると容量が700mlになり、コルクが直打ちからボトルデザインと一体になるキャップにチェンジ。ネック部分のデザインにも、熟成年数がプリントされるなど変化がみられます。

グレンファークラス 25年 43% オフィシャル

カテゴリ:
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GLENFARCLAS
Highland Single Malt Whisky
Aged 25 years
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★(5)

香り:青みがかった甘い香り立ち。アロエを思わせる植物感、バニラ、ウッディーなえぐみが追いかけてくる。徐々に乾いた木、オレンジピールのアロマが開く。

味:色は薄いがウッディーでカカオパウダー、じわじわとサルファリーで苦味とえぐみを伴う口当たり。ボディは厚みがあり、苦味の奥には色の濃い蜂蜜を思わせる甘みもある。
余韻はスパイシーでウッディー、ビターで長く続く。
   
酒質そのものは決して悪くは無いが、出がらしのシェリー樽をさらに強引に絞ったようなニュアンスを連想させる苦味やえぐみが強く、良質なシェリー樽特有の深い甘みや果実味がほとんど感じられない。
加水するとまろやかでえぐみも収まり飲みやすくなるが、多少ピンボケしたような印象も。


圧倒的ストック量から、シェリー樽中心のリリースを貫くグレンファークラス。
最近はメインモルト&キャンベルタウンロッホの1989、信濃屋プライベートボトル10周年記念の1991、といった1990年前後のビンテージが話題になったところで、じゃあオフィシャルラインナップの同年代蒸留あたりのボトルはどうだろうと、25年を改めて飲んでみることにしました。
思い返せば試飲で何度か飲んだ記憶はありますが、腰を据えて宅飲みするのははじめです。

蒸留時期はほぼ同じとしても、オフィシャルは量産品ゆえ、評価された2銘柄のように飛びぬけてよい原酒ばかりで構成されてはいない。という認識の下、最低限これくらいだろうと想定はあったわけですが・・・正直これほど上記2樽の"選ばれし"感が際立つとは思わなかった、というのが本音でした。

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(グレンファークラス蒸留所外観。かつては2本の煙突の奥にキルン塔があったようだが、それ無き今はまるで何か別の工場のように見える。雄大なスコットランドの大地の中に、溶け込むように建っている。Photo by K67)

もちろん好みの問題も多分にあると思いますし、そもそも樽の種類も異なります。
上述2本はどちらもファーストフィルのスパニッシュオークですが、この25年のキーとなっているのはセカンドやサードフィルのアメリカンホワイトオークが多めの印象。
全体的に樽に苦労した時期なんだなという事が想像できます。

グレンファークラスは酒質が強くフルボディであり、濃いシェリー樽にも負けずにバランスが取れるところが魅力の一つです。
また、そうした酒質であるため加水でも中間から後半にかけてヘタらず、シェリー樽以外の樽香のノリも良い。バーボン樽熟成で稀にリリースされるボトラーズなどにも、結構美味しいボトルが多かったりします。
ただ、それは当たり前のことですが、樽が一定品質以上であれば、と言うところ。
やはり樽なんですね。販路を広げれば良質な樽が不足する。生産を絞れば経営が苦しくなる。現在のスタンスのように特別なリリースにのみ良い樽というのはある種正しいですが、全てを解決できる方法はないものでしょうか・・・。

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