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2017年02月

サントリー 山崎10年 40%  2010年代流通

カテゴリ:
YAMAZAKI
Suntory Single Malt Whisky
Aged 10 Years
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅@マッスルKさん
時期:不明
評価:★★★★★(5-6)

香り:やや青みがかった香り立ち。乾いた木材、麦芽、ほのかにドライナッツ、時間経過でバニラの甘みが開いてくる。

味:少し粘性のある飲み口からドライ、スパイシーで青みがかったウッディネス。度数以上に強さのある口当たりで、じわじわと開く蜂蜜の甘み、乾いた植物感、青りんご。
余韻は淡くエステリーで華やかだが若干の刺々しい刺激も伴う。

ストレートでは樽香と酒質のバランスが取れているとは言い難く、加水で整えられている以上に荒さが目立つ。もう少し熟成が必要だが、ロックやハイボールなら充分楽しめる。

先日ウイスキー仲間宅で開かれた持ち寄り会で、ちょっと懐かしいボトルに出会いテイスティングさせてもらいました。
山崎10年は白州10年同様に2013年頃まで発売されていた、12年の廉価版。2012年に発売されたノンエイジに普及品のバトンを渡す形で終売となりました。
今回のボトルの流通時期は、表記がピュアモルトではなくシングルモルトであることから終売間際と考えます。

一般的な構成としてシングルモルトの山崎はシェリー、ホワイトオーク、ミズナラなど様々な樽で熟成させた原酒を使って作られる中、10年はそうした原酒の中でも特にホワイトオーク樽を軸としています。
ただ、ホワイトオークとして真っ先に連想するであろうバーボン樽のようにエステリーでフルーティーな構成ではなく、やや青みがかった木のアロマ、植物っぽいニュアンスから、パンチョンのように大ぶりな樽か、あるいはリフィル樽の比率が多い印象を受けます。
後に発売されるワイン樽などを使って甘口に仕上げた山崎ノンエイジと比較すると、ずいぶん違う系統だと言えます。

この手の構成のウイスキーは、ストレートで飲むとまだ若い印象も同時に受けるものの、ハーフロックやハイボールなど、手を加えた飲み方にするなら話は別。樽材由来の木の香味が心地よく、爽やかに飲み進められ、むしろ12年より使いやすいとさえ感じる場面もあります。
山崎10年が発売されていた当時はウイスキー冬の時代。ハイボールブームを仕込んでいたサントリーとしては、12年とは違うステージで勝負できるレシピを考えていたのかなと思うのです。


以下雑談。ちなみになぜこれが懐かしいボトルなのかというと、自分の大学院時代、教授へのギフトに山崎が送られてくる事が度々あり、夜の研究室で研究のことや他の教授の悪口とか、他愛もない話をしながら飲んでいたことから。
自分が就職して間も無く恩師は退官、あの研究室で飲み交わすことはもうなくなってしまっただけに、自分の中で山崎10年は青春時代を思い出す、ちょっと懐かしいウイスキーなのです。

グレングラント 12年 43% 2016年ニューリリース

カテゴリ:
GLENGRANT
Aged 12 Years
2016's
43% 700ml

グラス:国際規格テイスティンググラス
量:30ml
場所:BAR飲み(LIVET@新宿三丁目)
時期:開封2ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでドライな香り立ち。奥行きはあまり感じない。ナッティーな軽い香ばしさにオーキーな樽香主体。ドライアップル、バニラ、微かにハーブを思わせる爽やかさも感じる。

味:香り同様にドライでオーキーな口当たり。ややピリピリとした刺激を伴う。ボディは軽く、ドライパイナップル、皮剥きアーモンド、乾いた麦芽、洋梨の甘みも開いてくる。
余韻はドライで華やか。ほのかにウッディな渋みを伴う。

ドライでライト、近年のスペイサイドモルトを象徴するようなボトル。加水すると飲みごたえは落ちるが麦芽風味と華やかなオークフレーバーが際立つ。ロック、ハイボールなどの使い勝手も悪くない。


昨年行われた、グレングラントのラインナップリニューアルでリリースされた1本。
それまではNA、10年、16年だったラインナップで16年が終売、12年、18年が新たに追加され、ラベルもおじさん2人が樽を囲んで飲み交す歴史あるデザインから、洗練されて都会的なものに一新しました。
国内流通では在庫の関係かNAと10年が旧ラベルですが、公式には統一して変更されています。


(グレングラント16年旧ボトル。終売になってしまったが使い勝手の良いオフィシャルボトルだった。)

そうして新しくリリースされた12年は、価格的には旧16年と同レンジ。年数と価格は関係無いと思いつつも、表記が4年下がって同価格は少々残念感が。。。
まして16年がスペイサイドモルトらしい華やかさ、ドライフルーツや麦芽の香味と価格以上に満足感のあるコスパの高い1本だったため尚更です。
そのためニューリリースはダブルパンチで見劣りしてしまうかも。。。と若干警戒していたわけですが、昨年の試飲会で飲んでビックリ。ボディは軽くなったものの樽由来の華やかな香味がわかりやすく、ボトルデザイン同様味わいも洗練された感じがあります。これはこれで悪くないと思える出来なのです。

昨年新しくリリースされたスペイサイドモルトのスタンダード品の中でも印象に残った1本で、昨年末の更新でも取り上げています。
なお、残る18年は現時点で日本に入ってきておらず、アサヒが入れるか平行が先かという状況。ウイスキーバイブル始め海外評価は高いようで、どんな系統に仕上がっているかが楽しみです。

【BAR訪問記】 BAR LIVET(リベット)@新宿3丁目

カテゴリ:
プロとはなんでしょうか。
考え方は様々であれど、飲食業であれば出してくるものが美味しいのは当たり前、そこから先にもう一つ何かがあるのがプロの仕事。それは喜びだったり、感動だったり、雰囲気だったり・・・あるいはそこでしか得られない知識、体験だったり・・・その何かがお店の魅力となり、我々はお金を払うのだと思うのです。

今回紹介するBARリベットのマスターである静谷さんは、プロの仕事をストイックに追求している若手バーマンの1人。
なんてことを書くと堅苦しい生真面目な方を連想するかもしれませんが、非常にフレンドリーで肩の力を抜くのが上手い、愛され要素溢れる方です。
プライベートでは何度か交流があったのですが、実はお店に伺ったことはなく。先日、同店が3周年を迎えられたとのことで、良いきっかけだと新宿三丁目まで脚を運んでみました。

BAR LIVET
営業時間:19時00分〜27時00分
定休日:不定休
住所:東京都新宿区新宿3-6-3 ISビル4F
TEL:03ー6273ー2655
アプリ:ハイドアウトクラブで最新情報を発信中

通い慣れた人なら、新宿三丁目駅から徒歩1分かかるかどうか。大通りから一つ路地を入った、いかにもという場所にお店があります。
エレベーターで4Fへ上がると、ドアが開いた瞬間そこはもう店内、初めて来た方は無機質なエレベーターの自動ドアからいきなり変わるその雰囲気に驚くかもしれません。
ただ、そこにあるのはまごうこと無きオーセンティックなBAR空間です。


前置きが長くなってしまいました。いい加減お酒の話に移りましょう(笑)
静谷さんはペルノリカール社が認定するグレンリベットブランドのアンバサダーであることから、BARリベットでは同社が展開するグレンリベットとアベラワー、この2銘柄の品揃えが豊富。特にグレンリベットはゲール語の"静かな谷"という意味から、ご自身の苗字とも掛けており、特別な思い入れがあるそうです。

勿論それ以外にも様々な銘柄を揃えていますが、折角ですから最初の1杯はハウスウイスキーの一つとなるアベラワー。同銘柄の12年を詰めたミニ樽から直接注ぐ、樽出しをハイボールで。
スムーズで柔らかい飲み口のアベラワーに、使い古されたミニ樽から適度な木香が追加され、バランスよく飲み易い1杯です。
2杯目はグレンリベットのハウスウイスキーで、オフィシャル18年をベースに計5種類のグレンリベットでブレンドした、オリジナルシングルモルト。これもミニ樽からの樽出しで、程よくシェリー系の樽感が効いた甘い香味に、近年のリベットらしくスパイシーな刺激が追いかけて来ます。

(おつまみにはグレンリベットを使ったお手製の生チョコ。今後はウイスキーに合うチョコレートとして、新しいメニューを検討中とのこと。)

ハウスウイスキーの2杯を飲んだところで「折角"リベット"に来られたのですから、くりりんさんこれ飲みましょうよ」と、静谷さんが出して来たのは蒸留所限定のハンドフィルボトル。
蒸留所を訪問された際に直接ボトリングされてたもので、写真左側はバーボン樽の18年モノ、蜂蜜やリンゴを思わせる爽やかな甘みとコクのある味わい。右側の逆さラベルはシェリー樽で、プルーン、チョコレートを思わせる深い甘みが広がる、王道的な構成です。

バーボン樽やシェリー樽のグレンリベットというと、ナデューラとしてリリースされているものが有名ですが、どちらもそこから頭一つ抜けた完成度で、流石ハンドフィル、良いもの出してるなあと月並みなことを感じてしまいます。

(この日は開店3周年の翌日。お客さんらと差し入れのシャンパンで乾杯することに。お祝い攻勢でマスターは既にほろ酔い気味?)

記事の前置きで「プロとは」なんて大層なことを語ってしまいましたが、こうして少ないながらBARを巡っていると、バーマンの皆様は様々な形で努力され、プロの仕事をされようとしているのが伝わって来ます。
静谷さんについて少し書くと、ウイスキーBARを名乗る以上、関連する知識はあって当然。その下積みとして、ウイスキー文化研究所主催の検定1級、2級、3級、を全受験者中1位で合格。シングルモルト級は唯一1位を逃し2位だったそうですが、この他にもソムリエ、ウイスキーコニサーなどの資格も有しています。
また、知識だけでなくテイスティング能力の向上にも余念がなく、相当訓練を積まれており、その上で、自分としてさらに何か出来るのか、今年は考えていきたいとのこと。
これだけのバックホーンですから、我々客側もまさに"勉強"させて貰えそうですね。

この日は開店直後から来店していたのですが、気がつけば週末でもないのにお店は満席。常連と思われる方々の雰囲気もまた良く、相乗効果でお店の空間を作り上げています。
眠らない街新宿で4年目のスタートを切った静谷さんとBARリベット、そこからどのようなプロの仕事が生まれ、個性ある空間を作っていくのか、愛好家の1人として今から楽しみです。

(写真上:グレンリベットベストアンバサダーに選ばれた記念品、ファウンダーズリザーブ21年。シェリー樽の香味にオークのフルーティーさが余韻にかけて広がる。)
(写真下:カクテルで締めの1杯と言うオーダーで出て来た、あまおうとグレンリベットを使ったフローズンカクテル。ふわりとした口当たりにイチゴミルク、微かにオーク、春の味。甘党の自分にはぴったり(笑))

追記:静谷さんは資生堂のWEBマガジンTreatment & Grooming At Shimaji Salonで島地勝彦氏による取材を受けており、記事は3月にも公開される予定。
当ブログの記事を読んで同店に興味を持って下さった方、常連の皆様。プロのライター、カメラマンが写すBARリベットとマスターの姿は要チェックです!

グレングラント 10年 1970年代流通 43% スクウェアボトル

カテゴリ:
IMG_3320
GLENGRANT
Aged 10 Years
1970's
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:50ml
場所:自宅(サンプル@マッスルK氏)
時期:開封後3ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(6-7)

香り:乾いた牧草、ローストしたような香ばしさ、ほろ苦い香り立ち。どこか田舎っぽさを感じさせるアロマ。時間経過でシトラスや白葡萄、洋梨などの爽やかな要素も感じられる。

味:ややドライだが、柔らかくもボディをしっかり感じる口当たり。グレープフルーツの綿を思わせるほろ苦さと柑橘系のニュアンス。白葡萄、後から乾いた植物感、粘土のような土っぽさが麦芽風味とあわせて開いてくる。
余韻は軽くスパイシー、トーストの香ばしさ、ほろ苦くビターな麦芽風味とあわせて長く続く。

少量加水すると、土っぽさと麦芽やオークの華やかな香味が開く。特に麦芽由来のバニラや粥っぽい甘さが香味の厚みに繋がり、加水してなお飲みごたえが持続する。現行品も良く出来ているが、この厚みのある味わいと独特な麦芽風味はこの当時ならでは。


グレングラントのオールドボトルと言えば個人的にはこの角瓶です。ラベルデザインは先日ストラスアイラの記事でも触れたGM蒸留所ラベルを参考にしたデザインが採用されており、最近飲み始めた方でも見かけたことがある人は多いのではないでしょうか。

ラインナップは。。。5年、8年、10年、12年、20年など短熟から長熟まで色々あり、半端な熟成年数や限定品を含めると本当に色々ありすぎて不明(笑)。
5年などの短熟はトールボトルでもリリースされ、1970年代から日本にも一部輸入されていますが、やはり流通の大元は海外。特にこのグレングラントはイタリアで高い人気があったことから、同国周りの流通品が現在もオークション等で数多く見られます。
(同時期流通、プラスクリューキャップの20年、21年。スコッチオデッセイによると、20年は当時シェリー樽の最高傑作との評価を受けていたという。)

このグレングラントの角瓶は先に書いたように本当に様々なラインナップがあるだけでなく、スタンダード品は同年数でもロット違いでだいぶ味にバラツキがある印象。
まるで人の手作りの体温を感じるような、おおらかな当時を象徴する作りですが、それでも大体のボトルで外れがなく、旨いから良いだろ?細かいことは気にするな、という味わいが、このグラントを飲む楽しみだったりします。

それこそ、今回テイスティングしたボトルも、以前飲んだものと比べて。。。だったり(笑)。
このボトルはウイスキー仲間のマッスルKさんが「良いグラントの当たった」と送って下さったモノ。
グラントの味わいとダブルで暖かさを感じる夜のひとときでした。

グレンファークラス 31年 1976-2007 ブラッカダー 48.7% 信濃屋PB

カテゴリ:
 
GLENFARCLAS
BLACKADDER RAW CASK
"Blairfindy" 
For Shinanoya Ginza
Aged 31 Years
Distilled 1976
Bottled 2007
Cask type Sherry 
750ml 48.7%

グラス:グレンケアン
量:30ml以上
場所:BAR飲み(個人所有ボトル@S兄さん)
時期:開封1年程度 
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:濃厚で華やか、ベリージャムのような甘酸っぱさを伴うリッチなシェリー香。カカオや焦げたような硫黄のニュアンスも感じられるが時間経過で収まって、黒蜜やベリー香主体のアロマに。

味:とろりとしてリッチな口当たり。香り同様にベリージャム、レーズンチョコレート、リンゴのカラメル煮。序盤は果実味を伴うシェリー樽風味だが、じわじわとウッディーな苦味が広がってくる。
余韻はドライでウッディー、ほのかにサルファリーで焦げたような苦味を伴い長く続く。

やや荒削りな印象はあるが、大変充実しているシェリー樽熟成のグレンファークラス。 グラスチョイスによっては硫黄が強く感じられる傾向がある。グレンケアンや木村硝子など、小さく空間を作れるグラスの方が向いている模様。


2009年、信濃屋銀座店がオリジナルボトルとしてリリースしたグレンファークラス(ブレアフェンディ)。
グレンファークラス名称が記載されていないのは契約上の都合で、その場合業界的によく使われているのがブレアフェンディ、他にはバリンダロッホなどの例もあります。

このボトル、今から約1年前の開封直後にも飲ませて頂きました。
シェリー感はリッチ、ボディにも厚みがあって当時の蒸留らしい良いウイスキーだったのですが、硫黄が比較的強く出ていて「惜しい」と感じていたところ。つい先日、そのボトルと久しぶりの再会。飲んでみると「あれ?これ良いじゃん」というくらいに硫黄が抜けており、その分ベリー系の香味やフルーティーさが感じやすくなっていました。

ボトリング後の変化で硫黄が抜けて、むしろ良さが出てくるボトルもあるということは、ウイスキー仲間の間でも度々話題になり、そうしたボトルを頂く機会も少なくありません。(逆にそっちに行ってはいけない、という方向に進んでしまったボトルもあるのですが。)
瓶内での変化を見極めて、ボトルを育てていく。ある種ワインのような楽しみ方もまた奥が深いですね。BAR等でこの点を見極めてサーブしてくれたりすると、「このお店いいな」と感じるポイントだったりします。


さて、信濃屋さんのグレンファークラスと言えば、先日リリースされたプライベートボトル10周年記念の1991が記憶に新しいところ。
そこからまだ1ヶ月という短期間で、先日開催された秩父ウイスキー祭りに向けの新しいプライベートボトル、グレンファークラス2004-2016、2005-2016の2本がリリースされました。

双方を試飲させていたいたところ、2004はホグスヘッドらしくバランス型。先日テイスティングした台湾向け178周年のボトルに近い甘酸っぱいシェリー感で、オフィシャル直系の味わいという印象。少しサルファリーですが、嫌な部分が少ない親しみやすい味わい。
対して2005は黒蜜やプルーンを思わせるウッディで濃厚なシェリー感が特徴。2005ビンテージでは昨年リリースされたWhisky Hoopの特濃シェリーカスクが話題ですが、そこまでではないものの、しっかりとした味わいが楽しめるフルボディな1本でした。

70年代のファークラスと比較するのは野暮というものですが、ファークラスの原酒ストックがお世辞にも好ましい状況とは言い難い中、一定レベル以上のボトリングを当時も、そして今も続けられているのは頭が下がる思いです。
これからも様々な原酒を発掘し、日本のウイスキー業界を盛り上げて欲しいと願っています。

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