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2016年12月

【ご挨拶】今年も大変お世話になりました【1年間振り返り】

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こんばんは、くりりんです。
いよいよ2016年も後わずか、皆様飲み収めは何を飲まれてますか?
(注意:フィギュアはイメージです。本体はちゃんと髪も鼻もあります。)

帰省する新幹線の中でまとめ記事を書ききって、気分はすっかり年末モードですが、最後に今年一年の「お礼と謝罪」を述べて、2016年最後の更新としたいと思います。

今年も様々な出来事がありました。
ざっくり思い返すだけでも、1ヶ月に1度、何かしら業界の動きや注目のリリースがあったように思います。(本記事最下部参照)
そんな中で、本年の当ブログは更新総数約450本(うちレビュー記事は約360本)という情報発信に対し、1年間の総アクセス数は約300万と、大変多くの訪問を頂きました。

特に当ブログが積極的に発信しているオールドブレンデッドについては、このブログの記事がキッカケで魅力に目覚めた方も少なからずいらっしゃるとの事。嬉しく感じるとともに、時折「なんだよ、このボトルの情報載ってないのかよ」という思念がモニタ越しに感じられることもあったように思います(笑)。
まだまだ掲載していないボトルもありますから、来年はさらに充実させていきたいですね。

また、活動を通じて繋がりが出来た事から、情報交換をしたり、サンプルを交換したり、ブラインドの出題を頂いたりする事も昨年以上に増えてきました。
大外しする事もあり、大正解する事もあり、まあ1番の目的は素の感想を伝える事なのですが、カウントしていた今年の正答率は20/49で、4割ちょっと。来年は5割を目指し、もう少し精度を上げたいところです。


さて、ここで本記事の目的が「感謝」だけでなく、なぜ「謝罪」か、というのもくりりん人形の背景が雑然としている事にご注目ください。
これ、今年交換等で頂いたサンプル達(一部)なんです。

「飲みきれませんでした、大変申し訳ありません!(;´Д`)」

年末にかけてさらに機会が多く、特にブラインドとして頂いたもので来年に持ち越してしまったモノは、深く謝罪申し上げます。
言い訳すると、仕事の関係で平日時間が取れない時も結構あり、ブログの更新だけで手一杯に。。。コメント返信も滞ってる事が多々ありますし。いやホント、時間が欲しい。
もちろん本業第一、趣味としての活動ですから線引きはせざるを得ないのですが、時間の確保は目下最大の課題であります。

こんな体たらくではございますが、2017年も素晴らしいウイスキーライフの一助となる活動が出来ればと思いますので、何卒よろしくお願いします。

最後に2016年の締めとして、貯蔵開始(2014年12月)から2年となった、我が家のマイ樽について、その状況を紹介したいと思います。
使われている原酒は秩父MDCサンプル、ハイランドパーク、マッカラン、クライヌリッシュで最短が秩父の2年10ヶ月のものですから、年が開ければいよいよトータル5年モノというところまできました。

写真左の小瓶が樽詰め時点、グラスが現在、色合いは追加熟成1年経過時点からそれほど濃くはなっていませんが、香りは非常に良くなりました。
まるでキャラメルを思わせるバーボン系のオークフレーバーで、余市や宮城峡の長期熟成に感じる甘い樽香にも通じるものがある。未熟なアロマはほとんどなく、正直今がピークと言えるほど、かなり良くなったと思います。
一方で味は樽材由来のウッディネス、渋みが強く出ていて、余韻もドライに。まあ5リットル樽での熟成ですから当然ですね。
重量は昨年12月の時点で8.5kg(スタート時9.4kg)だったものが7.3kg、今年1年間で1.2kg、約半分に近い計2.1kgが天使に飲まれたことに。。。
ここでボトリングするか、それとも熟成をさらに続けるか、何れにせよ美味しく頂くには来年は何かしらウイスキーをプラスして調整しないといけません。これがミニ樽の難しさですが、やはり実際に熟成の過程を経験出来ることで、飲み手として得られるものが本当に多いですね。


以上、そんなことを実家(妻方)で考えながら、2016年のまとめを終えたいと思います。
あ、これから頂いたコメントに返事もします。遅レスで申し訳ござしません。
それでは月並みではございますが、皆さま酔いお年をお迎えください。
2017年も本ブログを、どうぞよろしくお願いいたします。


【2016年の主な出来事まとめ】
1月:本坊酒造、津貫蒸留所の建設発表。
グレンドロナック15年終売。Saga25周年記念ボトルが信濃屋から発売。
2月:ウイスキーアプリ、ハイドアウトクラブが公開。
スプリングバンク16年ローカルバーレイ発売。山崎シェリーカスク2016発売、転売騒動勃発。
木内酒造、額田蒸留所が蒸留開始。
3月:WWA2016発表、カヴァラン2年連続戴冠。
キリンがウイスキーラインナップを札新、富士山麓樽熟原酒など発売。
笹の川酒造安積蒸留所が試験蒸留を開始。
ガイアフローが静岡蒸留所の建設発表。
ウイスキーショップW閉店。
4月:ベンリアックサントリーが響やマッカランなど33品目を値上げ、黒角などが休売。
ブラウンフォーマー社がベンリアックグループを買収。
ラガヴーリン8年200周年記念ボトル発売。松井酒造が倉吉シリーズを展開開始。
5月:アードベッグダークコーヴ、ラガヴーリン18年200周年記念ボトル、ウルフバーン3年など発売。
6月:イギリス国民投票でEUからの離脱が決定、ポンド及びユーロが暴落。
若鶴酒造から三郎丸55年が発売、同蒸留所リニューアル計画始動。
7月:ウイスキーテイスター吉村氏がM's Tasting Roomをオープン。
ニッカウイスキーがラインナップ整理、蒸留所限定で鶴NAをリリース。
8月:土屋守氏がジャパニーズウイスキーの基準の整備並びに日本ウイスキー協会(JWA)の設立を宣言。
サントリーがグレンギリー12年の正規取り扱いを終了。
9月:キルケラン12年、アードベッグ21年、ラガヴーリン25年など発売。
静岡蒸留所がウイスキー製造免許取得。
10月:ジムマーレイ・ウイスキーバイブル2017でブッカーズ・ライが世界一を獲得。
笹の川酒造、安積蒸留所が本格稼働開始。京都蒸留所がクラフトジン、季の美を発売。
11月:北海道、厚岸蒸留所が本格稼働開始。鹿児島、津貫蒸留所が本格稼働開始。
若鶴酒造がクラウドファンディングで設定していた2500万円を大幅に上回る3500万円以上を集め、目標達成。
ブラックニッカブレンダーズスピリット、ジャックダニエル150周年記念ボトル、響35年など発売。
12月:滋賀県長濱蒸留所が稼働開始。
ウイスキーワールドが12月号をもって休刊。

2016年に飲んだボトルで高評価&印象に残ったものを振り返る(下)

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前回に引き続き、2016年に飲んだウイスキーを振り返る特集記事。今回は、オフィシャルリリースでエントリーグレードとなる5000~6000円クラスまでを上限として、ニューリリースの中でコスパが良いモノや、これまでと比較して味わいに良い変化が見られたボトルなどを"Interesting Release Category"としてリストアップします。

ニューリリースはともかく、これまでと比較して・・・というのは何を意味するかというと、ウイスキーは同じ味に作られているようで、ロットで結構味が変わったりします。
このブログを閲覧されている方なら、何を今更という前置きかもしれませんが、ラベルチェンジなどを挟んだ場合はほぼ確実に変わりますし、そうでなくても突然変化することもしばしば・・・。
それはいい方向にも悪い方向にも変化することが起こり得るのですが、ここ最近はいい方向に変化しているボトルが増えてきたように思います。
私を含め、ある程度突っ込んでウイスキーを飲んでいると、オフィシャルスタンダードは中々手が出なかったりしますが、1年に1度くらいそうしたボトルをチェックすると、また新しい発見が見つかるかもしれません。
今回はそんなボトルも含めて紹介していきます。


【Interesting Release Category】
【アイラモルト】

・ボウモア 12年 43%

あえて1本上げるならいつの間にか美味しくなっていたボウモア12年、らしい柑橘とグレープフルーツを思わせるフルーティーな味わいが2〜3年前のロットと比べてはっきりと感じられました。
またそれ以外にも、ここ1〜2年間のアイラモルトの品質向上は著しいと感じます。
去年はカリラ12年が美味しくなったと話題を呼び、今年は今年でアードベッグTEN、ラガヴーリン16年も良くなっていると感じました。この2銘柄は、中途半端な旧ボトルなら、好み次第で充分対抗出来るクオリティがあります。
またラフロイグ10年は向けで結構味が変わっているような気がしますが、相変わらずの安定感。特にドイツ向けの評判が良かったようです。


【アイランズモルト】
・アラン 12年 カスクストレングス

アイランズのスタンダード全体を見ると、アイラと異なりやや厳しい1年だったように思います。
ニューリリースでは、タリスカーはNAとなるスカイが展開され始めましたが、これはハイボールには使いやすいものの、ストレートは少々苦しい。スキャパのスキレンは年始に流通したバッチ1こそ好調だったものの、バッチを重ねるごとに熟成感がライトに・・・。
既存リリースを見ても、ハイパやジュラは良くも悪くも安定していますが、目立った変化はなかったように思います。
そんな中、エントリーグレードから全般的に安定したリリースで気を吐くアイルオブアラン。1本を選ぶならラベルチェンジした10年か、バッチ的には2015になりますが12年カスクストレングス。アメリカンオーク由来のバニラやドライフルーツの香味がしっかり感じられ、もっと評価されるべき1本をだと思います。


【キャンベルタウンモルト】
・キルケラン(グレンガイル) 12年 46%

スタンダードクラスの中で、今年のベストリリースを選ぶなら、このキルケラン12年は間違いなく候補となる1本です。
ちょうどキャンベルタウンモルトを基礎から勉強し直すかと、色々飲んでいた中で、手元に届いたWIP終了を告げる完成品。しっかりとした麦芽風味、後半に広がるピートフレーバー。兄貴分であるスプリングバンクの特徴を備えつつ、スタンダードではそれ以上の出来栄えでした。
蒸留所限定品の複数年バッティングを飲む限り今年1年限りの味わいではなさそうですし、来年以降も期待しています。


【ハイランドモルト】
・クライヌリッシュ14年 46%

ハイランドもニューリリース含め、中々良いボトルが複数ありましたが、1番驚きと変化があったのはこのクライヌリッシュの2015〜2016年近辺ロット。
これまでドライで ライトで・・・などと言われていたクライヌリッシュのスタンダードですが、ふと気がつけばリッチでコクのある、食前酒ではなく食後酒というキャラクターに。ハイボール向きではなくなったように思いますが、ボトラーズなどにもあるクライヌリッシュらしいワクシーで白粉を思わせる麦芽風味がしっかり感じられる、良いスタンダードボトルになったなと感じています。


【スペイサイドモルト】
・グレングラント12年 43% 2016's

アイラモルトが既存ラインナップなら、スペイサイドはニューリリースで光るボトルが多く見られた、収穫の多い1年間だったと思います。
その中で1本を選ぶなら、最近ようやく国内に流通し始めたグレングラントのニューリリース12年。ボディはライト寄りですが、華やかなオークフレーバーがしっかりと広がる、少なくとも終売になってしまった16年を惜しまなくても済みそうです。
また、この他にもグレンリベット12年ファーストフィル(写真)もグラント同様に華やかなタイプでいい出来ですし、ラインナップではミドルグレードながら価格的にエントリーに位置するノッカンドゥー15年、18年もナイスコストパフォーマンス。
また、グレンフィデック12年も今年のラベルチェンジで味が良くなったと評判です。


【ローランド付近のモルト】
・インチマリン(ロッホローモンド) 12年 46%

ロッホローモンドはハイランドとローランドの境界線付近にあるけど、厳密には南ハイランドだろうってそうですごめんなさい(笑)。
ただここでラインナップに入れないと、ローランド地方は該当なしどころか、あんまり飲んでないことがバレちゃう事態に。(オフィシャルはキンチーとアイルサベイくらいしか飲んでない可能性が・・・。)
というわけで、今年発売したニューボトルで一気にボトラーズリトルミルやアイリッシュ系統のキャッチーなフルーティーさを取り戻し、JIS向けシングルカスクで話題となったインチマリンの12年をリストアップ。これ、良く出来てると思いますよ。
ローランド地方の探求は、来年の宿題とさせてください(汗)。

【ジャパニーズモルト】
・余市NA 45%

2016年のジャパニーズのスタンダードクラスは中々寂しい感じでした。クラフトディスティラリー創業のニュースや、既存蒸留場からリリースされる限定品が時折市場を賑わしてくれましたが・・・。
ボトルではなく、ジャパニーズウイスキーの基準の話が盛り上がっちゃったりで、色々落ち着かない1年だったように思います。
そんなわけで「該当なし」でもよかったのですが、昨年リリースされてあまり評価されていなかった余市NAが、地味に味が変わって樽感が濃くなっていたので、リストアップです。
先日、イベントでのブースで試飲したところ、なんか濃くなったなと感じて営業の方にそう告げると、自分も飲んだ当時の試飲サンプルを持って来てくださり、一緒に比較テイスティング。「やっぱり濃くなってる」ということで、劇的な変化ではありませんが、ニッカも影で色々努力しているんだなと感じた出来事でした。


【ブレンデッドウイスキー(モルト含む)】
ブラックニッカ ブレンダーズスピリット 40%

はい、もうお約束です。多くを述べる必要はないですよね。ニッカブレンダー陣の気合いと本気を見た、ブレンダーズスピリットです。
この価格帯でスコッチまで見るとジョニーウォーカーグリーンが再販するなど、リリースはありましたが、個人的な好みやコスパではニッカに軍配です。
サンプルを頂いた後、自分も1本買って飲みましたが、ブラックニッカらしく飲むシーンを選ばない「普段飲み」というバランスに、決して安ウイスキーとは言わせない多彩なアロマ、余韻にかけて広がる余市10年を思わせるピートフレーバーとほのかな硫黄がなんとも懐かしい。来年以降も、定期的にこうしたリリースを出して欲しいです。
そういえば某BAR経由での情報によると、使われた1956年の余市原酒は1樽分だそうです。


以上、長くなってしまいましたが、2016年の振り返りとして、飲んだ銘柄から高評価だったもの、印象に残ったものをいくつかの整理の中でまとめてみました。
今年は意識してオフィシャルを多めに飲みましたが、2000年代の蒸留は突き抜けて良いとは流石に言えないものの、酒質、樽の使い方、全体的なバランスなど、良くなっているなという将来の光明となる発見が結構ありました。

そうした発見のモトはありながら、今回の上下2編のまとめ記事ではボトラーズの主戦場である1〜2円台の価格帯リリースなど、設定条件の関係から触れることの出来なかったボトルも数多くあります。
また、将来への光明とはあまり関係はないですが、当ブログのウリとも言えるオールドブレンデッドも。。。
次は違う条件でまとめてみるかと反省しつつ、そして来年も新しい発見と喜びがある事を期待して、今回の記事の結びとします。

2016年に飲んだボトルで高評価&印象に残ったものを振り返る(上)

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2016年も残すところ後3日となりました。
本年、当ブログが投稿したテイスティングカテゴリーの記事は360本程度。平均すると1日1本はボトルを紹介していることになります。
また、これ以外にも書いていないボトルや、イベントでのテイスティングとしてレビュー記事に含めていないものも多数あります。そうしたモノを含めると、 おそらくはのべ500銘柄くらいはテイスティングをさせて頂いたのではないか・・・。結果、レビュー掲載が追いつかなかったものもあり、中には是非飲んでくださいとサンプルを頂いたものの、来年への宿題と成ってしまうものもありました。(ゴメンなさい。。。)
うーん、来年はペースを落としてでもちゃんとレビューまで書き終えるような形にしたいですね。

さて、これから年末にかけては2016年の振り返りをしていきたいと思います。
月並みですが、"今年飲んだボトル"の中から高い評価だったもの、印象に残っているボトルなどをまとめていくコーナーってやつです。
今回の記事では、特に多くの種類を飲んだ、スコッチ、ジャパニーズ、そしてその他のスコッチタイプウイスキーの中で、
「リリース年度問わず高評価かつ印象に残ったボトル」→<Open category>
「ニューリリースで高評価かつ印象に残ったボトル」→<New Release Category>
を選定します。

なお、レビュー記事の評価で上から順に決めていったのでは、飲んだボトル全てを振り返る作業にはならないので、「印象に残る」という要素も加え、個人的な思い入れとか、驚きとか、より一層の主観的な要素を踏まえ、今年1年を振り返りつつチョイスします。
また、1年を振り返るという位置づけから、ブログに掲載していないボトルも対象にしたいと思います。


【Single Malt】
<Open category>
・グレンギリー15年 1972-1987? Slim Cowell's Pearsonal Serection Ⅱ
・ハイランドパーク 1956-1985 or 1986 GM 54.3%
・ロングモーン 31年 1964-1996 キングスバリー 59%

<New Release Category>
・ラガヴーリン25年 51.7% オフィシャル 200周年記念ボトル
・サントリーシングルモルト 山崎ミズナラ サロンドシマジ向け
・ティーリング 24年 BAR ウォッカトニック 30周年記念ボトル

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候補多数だったシングルモルトモルト分野。今思うと各地域ごとに分けても良かったんじゃないかと思うくらいの物量で、その選定は困難を極めました。(まあ500銘柄飲んでいれば・・・w)
オールドのみならず、ニューリリースもここ最近のリリースに復調の兆しがあり、特にシェリー系のリリースは来年が楽しみという状況になってきています。
そんなシングルモルト区分ですが、新規にテイスティングした中では本年唯一10点を獲得したグレンギリー15年は文句なし。「神のギリー」という通り名まで広まったこのボトル、是非来年の名古屋のイベントのIANブースでテイスティングしていただければと思います。
また、キングスバリー・ロングモーン1964は、ベストな状態なら素晴らしい味わいであるのに、一歩間違えればソーピーに振れるという2面性の衝撃を体験させてくれたという「印象深さ」から、今年の1本にリストアップです。

ニューリリース部門ではラガヴーリン25年もまた即決。2016年のニューリリースの中でもトップクラスであることは間違いない1本で、先日改めてテイスティングしましたが、昨年リリースされたラフロイグ32年同様に「この200周年を迎える2015年、2016年に酒を楽しめる舌がと鼻があってよかった」と心から感じることが出来た1本でした。
加えてもう一つ、サロンドシマジ向けとしてひっそりとリリースされた山崎ミズナラが、2016年にリリースされたジャパニーズシングルモルトの中でもベストと言える1本。原酒の主体は公には1990年代とされながら、体感で30年以上と感じるサントリーのブレンダーの力量を感じる多層感とミズナラ樽由来の高貴なウッディネスは、一言で素晴らしい完成度。1飲の価値アリです。

なお、ニューリリース最後の1席は最近品質を上げてきた近年系シェリーやディアジオのハイエンド各種、あるいは直近リリースのあったベンリアック1975など、本当に様々なボトルが候補として有りました。が、印象深さという点で、ティーリング24年 BARウォッカトニックボトリングを今年1番ハイボールにして旨かったボトル、ベストハイボーラーとしてリストアップさせてもらいました。


【Blended Malt Whisky】
<Open category>
・サントリー センチュリー 21年 ピュアモルトウイスキー 43%
・サントリー 清里フィールドバレエ 25周年記念 ピュアモルトウイスキー 48%
・マクファイルズ 2000年記念ボトル GM 40%

<New Release Category>
・ロイヤルマイル 40年 ブレンデッドモルト 47.1%
・サンジバー スペイサイド ベリーオールドブレンデッドモルト サムライラベル Batch No,2 46.1%
・コンパスボックス フレイミングハート 5th 48.9%

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【Blended Whisky】
<Open category>
・洛山 25年 サントリーブレンデッドウイスキー2015’s 43%
・ペニンシュラ東京 サントリーブレンデッドウイスキー2014's 43%
・ジョニーウォーカー オールデスト 15-60年表記 初期ボトル 43%

<New Release Category>
・響35年 47% 2016's
・響21年 43% 2016's
・おいしいウイスキー 36年 ハイランダーイン 46.2%
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ブレンデッド区分としてバッテッドモルトとブレンデッドウイスキーの2区分から12本をチョイス。この分野はある一定以上のクオリティを求めると、基本的にジャパニーズウイスキーが強いと言う印象で、とにかくまあ完成度の高いものが多い。今回のリストも半分がジャパニーズです。
オープンカテゴリーに唯一入ったオールドブレンデッドのジョニーのオールデスト。これは今年数々の挑戦状(ブラインド)の中で完全正解だったボトルの一つで、モルティーな熟成感とバランスの整ったスコッチらしい美味しさと思い入れから。
しかしそれ以外、洛山25年、ペニンシュラなどはブレンドらしい奥行きのある味わいに加え、ミズナラ、シェリーの各キャラクターが際立って文句なし。先日リリースされた35年なんて香りの高貴さ、バランスがとんでもないですね。味はウッディネスが強いですが、アロマだけで昇天できます。そしてどう飲んでも旨い響21年・・・「ええい、サントリーのブレンダーは化け物か!」という感じで日本勢がメインとなってしまうのです。

それだけスコッチ側で現行品を中心に魅力的なリリースが少なかった分野でもありますが、シングルモルトでのリリースが原酒的に難しいからか、あるいは多層的な味わいを求めてか、スコッチからもブレンデッドモルトウイスキーのリリースで光るリリースが少なからず増えてきたように思います。 
その代表格と言えるのがロイヤルマイルのブレンデッドモルト40年、あるいはサンジバーのブレンデッドモルト、一応スコッチ区分であるハイランダーインのおいしいウイスキー。舐めた程度なのでリストアップはしていませんが、ユナイティングネイションズ40年なども光る1本だったと思います。
後は期待していなかったのですが、往年のカリラを思わせる味わいで楽しませてくれたフレイミングハート5thは滑り込みでリストアップ。11月にリリースされたサマローリのレインボーも良かったですし、ジャパニーズが原酒枯渇で苦しむ今、来年はシングルモルト以外にブレンデッドスコッチに注目できる1年となるかもしれません。これは結構楽しみにしています。


と言う感じで高評価&印象深いボトルをリストアップしてみましたが、こうして改めてリストにしてみると、「ホント今年も良く飲んだよねぇ(飲ませて貰ったなぁ)・・・」という感想と共に、中々飲めないボトルも少なくないなと感じる内容です。
他方、2016年は昨年同様、オフィシャルスタンダードリリースの品質向上が目立った年で、エントリーグレードである5000~6000円くらいまでの価格帯で、面白いリリースや、味わいが良くなったと感じるボトルも少なくありませんでした。
そこで次回は、別枠としてコスパの良さや、品質の向上したリリースなどを<Interesting Release Category>として選定することとします。

<つづく>

トマーティン 25年 43% 旧ボトル オフィシャルリリース

カテゴリ:
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TOMATIN
Highland Single Malt 
Age 25 Years
Matured In North American Oak Casks
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:自宅持ち寄り会@Tさん
時期:開封後1週間以内
評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでリッチなフルーティーさと、すぐに機械油を思わせる特徴的なケミカルフレーバーを伴う香り立ち。オーク由来のバニラやバタークッキーの香ばしい甘さ、パイナップルキャンディー、風邪薬シロップ。香りは徐々にドライになっていく。

味:お菓子のフルーツキャンディーや熟したオレンジのような甘みを伴うまろやかな口当たりから、すぐにドライに変化。ボディは軽く、奥に乾いた牧草を思わせるウッディネスが余韻にかけて存在感を増してくる。余韻は華やかでドライ、ウッディーで強いタンニンを感じる。

ラベルに書かれた"Matured In North American Oak Casks"はバーボン樽とシェリー樽のバッティングの意味か。香りはフルーティーでふくよかだが、味はややドライで軽い。かなりの長期熟成が使われていると考えられる。加水すると特に味が水に負ける印象があり、ストレートで時間をかけて香りを開かせ、楽しみたい。
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最近大幅なボトルデザインチェンジをした、トマーティンの旧ボトル。
このボトルの最大の特徴は、何と言ってもトマーティンの当たり年といわれた、1976年蒸留を思わせるフルーツフレーバーがしっかりあるところにあります。
ただ、流通時期をざっくり2010年として計算しても、25年原酒の蒸留時期は1980年代半ばとなり、この時期は酒質の系統が中性的になってきていて、これほどのケミカルフレーバーは感じられません。
とすると、最も若い原酒として25年は使われつつも、ブレンドには1970年代蒸留の原酒(35~40年)が相当量使われているのではないか・・・というのが個人的な印象です。

それを裏付けるように、香りはフルーティーでややケミカル、バタークッキーのような甘みもあって充実していますが、味はややドライ気味で特にボディが軽く、余韻にかけては強くタンニン。長期熟成のウイスキーに見られる傾向が感じられます。
43%加水であることも、この構成となる要素の一つなのでしょう。トマーティンはそこまでボディの強い酒質ではないので、長期熟成原酒を使ったことで出てしまう渋みやウッディネスを加水で整えた結果、こうした仕上がりになったのだと思います。
これらは自分の推察で実際のところどうなのかはわかりませんが、これだけの原酒を使っているとすれば、同時にメーカー側の気合も伝わってくるようです。

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(1972年蒸留のトマーティン30年。この頃になると特徴的なケミカル系フレーバーは無く、柔らかい口当たりで個性はそれほど強く無い内陸系モルトという印象。1960年代も同様。)

また、最近はリリース高騰と原酒枯渇により、貴重になってしまった1970年代中ごろのトマーティンの味が感じられるという意味でこのボトルもまた貴重な1本であるように感じます。
こうした背景からネット市場では既に在庫がないボトルですが、トマーティンを扱う国分は個人経営の酒屋やスーパーマーケットなどにも商品を卸していましたので、ひょっとすると当時価格で店頭に残っているモノもあるのではないかと思いますので、見かけたら懐と相談ですね(笑)

グレンリベット ナデューラ ピーテッドウイスキーカスクフィニッシュ

カテゴリ:
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GLENLIVET
NADURRA
Peated Whisky Cask Finish
Batch No,0715
1000ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★(5)

香り:香りのキックが強く、若いニューポッティーでレモングラスなどの爽やかさと乳酸系の酸味、パン生地や、ほのかに乾いた植物感を伴う香り立ち。徐々にビスケットやレモンキャンディーの甘みに加え、焦げたようなスモーキーフレーバー。少量加水すると麦芽香が開き、刺激も和らいでくる。

味:香り同様若く、レモンなどの柑橘系のニュアンスを感じる口当たり。中間から後半にかけては、序盤で感じられなかったピートフレーバーが突如顔を出し、口内を一気に支配してくる。少量加水すると序盤は随分軽くなるイメージだが、全体のバランスは良くなる。
余韻はピーティーでピリピリとスパイシー。木材が焦げたようなフレーバーも感じられ、ほろ苦くスモーキーなフィニッシュ。

香りはそれほどでも無いが、味はしっかりとピーティー。全体的に若さが感じやすく、近年のスペイサイド、グレンリベットのライトでスパイシーなフレーバーが目立つが、少量加水するとバランスが良くなる。
他方、ハイボールは口当たりで酸味が感じられ、ストレートでは開いてくるピートと焦げたニュアンスが抜け落ちて、中間は随分と軽くなってしまう。飲み込んだ後はジワリとピーティーで、言うならば爽やかな味わい。夏場にゴクゴク飲むなら良いかもしれない。
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2017年1月16日から国内での正規販売が開始されるグレンリベット・ナデューラのピーテッドウイスキーカスクフィニッシュ。既に2015年に製品が発表、現地ショップや免税店などでは発売されていたもので、遅れること1年で日本でもリリースという流れです。
今回のボトルはその免税向け、48%加水規格のボトルになります。先日海外旅行に行った友人経由でお土産として買ってきていただきました。
(お願いしたときは国内リリースの発表はまだ無かったのですが、受け取るまでに正規品の流通が発表され、価格的にも仕様的にも複雑な気持ちに・・・なんてオチもあったりしますw)

グレンリベット・ナデューラは、ナチュラルの意味、その名の通り「自然な味わい」を一つのテーマとしています。
かつてはバーボン樽熟成された、現代のグレンリベットのキャラクターが樽出しに近い度数、味わいで楽しめるという意図でしたが、その後、シェリーカスクが発売され、今度はバーボン樽でノンエイジとなり、ついにはピーテッドウイスキーカスク"フィニッシュ"です。
グレンリベットのラインナップはハイエンドに向かうとシェリー系の原酒が増えてくる傾向があるので、シェリーカスクは百歩譲ってナデューラだとしても、流石にフィニッシュで"ナデューラ"というのは、苦しいんじゃないかなーなんて思ったり。
まあ元々グレンリベットは全ラインナップでピートをしっかり焚いていた蒸留所。今でも一部銘柄からはピートフレーバーを感じるわけですから、ファウンダーズリザーブも発売されたところで、古きよき時代に思いを馳せたのかもしれません。

なお、その味わいは全体的に若く、ピリピリとした刺激もあって熟成感に欠ける印象。その分ピートは感じやすいのですが、それならハイボールだと炭酸に逃げると、肝心のピート部分が薄くなってしまう。色んな意味で近年のリベットらしいウイスキーですが、このピートには2つの疑問があります。
まず一つは本当に"ピーテッドウイスキーカスク"でのフィニッシュだけなのだろうかということ。確かに味わいでややアンバランスにピートフレーバーが顔を出すあたりはフィニッシュらしい感じもしますが、とても樽由来のみとは思えないほどピーティーです。
そしてもう一つの疑問は、どのウイスキーの空き樽を使ったのかということ。このピートフレーバーが全て樽に染み付いたモノから移ったものだとすると、相当ヘビーピートなウイスキーでなければならないと感じます。
ヨード系のニュアンスはないので、アイラを除外すると内陸系でヘビーピートを扱う蒸留所は限られてますので、自社でなければアードモアやレダイグ辺りでしょうか。でもどれも系列が違うんですよねえ(汗)
ひょっとすると自社で試験的に仕込んでいるのか? 日本での発売後は、こんなことも考えながら飲んで見るのもシングルモルトの楽しさと言えるかもしれません。

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