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2016年10月

オールドラリティ 1980年代流通 43% 特級表記

カテゴリ:

OLD RARITY
De luxe Scotch Whisky
1980’s
750ml 43%

グラス:テイスティンググラス
量:30ml
場所:BAR飲み(Main Malt)
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:カラメルソース系の甘いアロマ、かりんとう、穀物の香ばしさ、かすかに植物のえぐみも感じる。徐々にモルティーな麦芽風味とスモーキーさ。

味 滑らかでモルティーな口当たり、カルメ焼きを思わせるほのかに香ばしい甘さ、干し藁、淡い塩素のアクセント。余韻にかけて染み込むようなピート、麦芽、塩分のコク、長く続く。 


かつてカリラ蒸留所を所有していた、バロックレイド社がリリースするブレンデッド。スタンダードクラスの銘柄はBL(バロックレイド)、その上位グレードがオールドラリティです。
その他には、ブレンデッドモルトのグレンイラがありましたね。

これらのキーモルトは勿論カリラで、グレンイラは100%カリラなんじゃないかという味わい。
当時のカリラは今よりピートや酒質が淡くライトで、元々ライトな構成のBLは時間とともにその要素がわかりやすく開いてきますが、オールドラリティはキャラメル的な甘みでマイルドに仕上げられており、カリラの個性を楽しむより、上位グレードのブレンデッドの一つとして全体のバランスや完成度を楽しむボトルかなという印象です。 

オールドラリティについては終売時期に関する情報が諸説ありますが、1980年代後半の12年表記あたりがラストと考えられており、会社の統合合併に伴う影響とすれば1986年のDCLがギネス社傘下となってブレンデッドのマーケット戦略が変わったことが要因でしょうか。
BLは1990年代まで売られていたようですが、おそらくUD社が1997年頃にディアジオ社となる業界再編のあたりで終売になったものと思われます。(バロックレイド社は2007年に解散しています。)

ちなみにこのオールドラリティはオークション市場で人気のある銘柄の一つですが、1980年代のデラックス表記スクリューキャップは裏面が金属張り。購入されてデルモンテ臭に泣くいた方も多い模様で、最低半年は放置する覚悟で購入されることをお勧めします。

サントリー 清里フィールドバレエ 25周年記念 ピュアモルトウイスキー 48%

カテゴリ:
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KIYOSATO FIELD BALLET
25th Anniversary
Pure Malt Whisky
Suntory
2014's
700ml 48%

グラス:サントリーテイスティング
量:ハーフショット
場所:BAR飲み(Y’s Land IAN)
時期:開封後1週間程度
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:ウッディで華やか、バニラの甘みにアプリコット、梅、オレンジなどを思わせる酸味を伴う熟成香。リッチなアロマ。
グラスの残り香はクリーミーで甘酸っぱい。

味:スムーズで華やか、とろりと複雑で厚みのあるバッテッド。アプリコットジャム、乾いた麦芽、おしろい、砂糖をまぶしたオレンジピール、鼻に抜ける香木のアロマ。
余韻は徐々にウッディ、オーキーで華やかで微かにスモーキー。ドライでジンと痺れを伴うがしっかりと残り長く続く。


山梨県北杜市の"萌木の村"で、毎年8月の2週間だけ開催されているバレエの野外公演、"清里フィールドバレエ"の25周年を記念し、サントリーの輿水精一氏に依頼して作られたオリジナルブレンデッドモルトウイスキーです。
中身は1990年代蒸留の白州を中心とした構成で、体感的には20年前後の熟成となるバーボンバレル、ホグスヘッド系の原酒がメインに使われているように思います。ジャパニーズらしくというかサントリーらしいオーキーでリッチ、多彩な原酒が織り成す複雑さと甘酸っぱく熟成感のある味わい。そこに加水が加わって、バランスの良い香味が楽しめます。

このブレンドを作成するにあたっては、同氏が"清里フィールドバレエ"のイメージを膨らませて作られたとのことで、ラベルはプリントではなく表面を削る加工で、夏夜の月灯りの下、風に揺れる木々と舞うバレリーナの姿が描かれています。
あまり比較する意味は無いですが、清里フィールドバレエシリーズは、このボトルを皮切りに3種類リリースされていますが、初版のこのボトルが一番美しいデザインだと感じます。

このフィールドバレエ25周年記念リリースは、対外的に販売された26周年、27周年と異なり、懇意の関係者に販売された以外は、萌木の村でしか飲めないボトルでした。それがこのたび、諸事情により三越前のBAR IANにて開封、置かれることとなりました。
おそらく、このブレンデッドモルトを都内で飲むことが出来るのは、IANさんだけでしょう。

気になっていたボトルだったので、テイスティング出来て良かったです。
今回は口開け近くで様子見のハーフショットテイスティングでしたが、時間をおいてもう一度飲んでみたいと思います。

ブラックニッカ ブレンダーズスピリット 60周年記念 43% レビュー

カテゴリ:

BLACK NIKKA 
BLENDER'S SPIRIT 
NIKKA WHISKY 
2016's 
700ml(50ml) 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:50ml(販促用サンプル)
場所:自宅
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★☆(5-6) (!)

香り:注ぎたての瞬間はバナナクリームを思わせるような若干の若さ。スワリングするとリンゴや洋梨を思わせるエステリーで華やかな熟成香、その奥からクッキーやシリアルを思わせる甘さと香ばしさに、ピートスモークと微かな硫黄も感じられる。時間経過でこれらは馴染んでいく印象もあり、変化もありそう。

味:甘くまろやかな口当たり。香り同様に一瞬若さを感じたあとで、キャラメル、香ばしい麦芽やナッツの風味、淡く硫黄。中間からはグレーンの甘み、じわじわとピートフレーバーが存在感を増してくる。
余韻はピーティーでほろ苦く、葉巻のような甘いスモーキーさを感じた後でゆっくりと消えていく。

まろやかで嫌味の少ないブレンデッド。
ロックにすると非常に飲みやすく、味わいに感じられた香ばしさや甘さはかりんとうのようでもあり、抵抗無く飲み進められる。
ハイボールも良さそうだが、粘性のある甘さと煙草を思わせるピートフレーバーが、ソーダと馴染むまで少し時間が必要な印象。発売後に再挑戦したい。
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ニッカファン期待の新商品、ブラックニッカ誕生60周年を記念した、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリット。この商品は11月1日発売ですが、発売日まで1週間を切ったところで販促用サンプルのレビューを掲載します。

まず、関連する薀蓄は後回しにし、香味の部分にフォーカスして紹介していきます。
伝え聞く様々な情報から期待は膨らみつつも、「で、味は?」というのが、きっとファンの本音だと思います。
端的に言うと「お世辞抜きにブラックニッカの60周年に相応しい、作り手の気合を感じる1本」で、後々「あれ、良かったよね」と言われるリリースだと感じました。

熟成原酒由来の華やかさ、グレーンの甘さ、穀物感。シェリー原酒由来のコクのある甘味とほのかな硫黄。
余韻にかけて存在感を増す余市原酒のスモーキーフレーバーに、今は亡き余市10年を感じる。思っていた以上にテイスティングの楽しさがあり、充実した構成です。 

もちろん実売2000円から2500円前後という価格設定であるがゆえ、色々と制約があったと思われる原酒のフレーバーも感じますが、この価格帯のブレンデッドとは思えない複雑さ、しっかりしたアロマとスムーズでまろやかな飲み口、安いブレンデッドにありがちな後半以降のべたつき、嫌味が少なく、すっきりと消えていくスモーキーな余韻。。。
個人的な好みを言えば、シェリー樽原酒由来の硫黄は若干気になりますが、その他の要素の中でフレーバーの一つとしてバランスを保っています。

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さて、味の話を一区切りしたところで、薀蓄パート。
このブレンダーズスピリッツの位置づけを語る上で欠かせない、ブラックニッカ60年の歴史に触れていきます。

誕生は1956年、当時ニッカには本格的なグレーンウイスキーを製造する連続式蒸留器はなく、また当然宮城峡のモルトもなく。限りなく制約の多い中で作られたウイスキーでした。
その後、ニッカを代表する要素の一つとなるカフェ式連続式蒸留器が兵庫県西宮工場に導入され、1965年にはカフェグレーンがブレンド。1969年に操業した宮城峡の原酒も間もなく使われはじめ、現在の姿に近づいていきます。

ブラックニッカはあくまで手軽に楽しめる本格ウイスキーとして、普及価格帯の千円台に拘り、今は残らない様々なリリースを行ってきました。
近年では、より多くの人々にウイスキーの魅力を発信するべくブラックニッカクリアブレンドが誕生。ウイスキーブームとして本格的なウイスキーの需要が増え始めた昨今は、リッチブレンド、そしてディープブレンド、復刻版などをリリースしたのは記憶に新しく、文字通りスクラップ&ビルドを繰り返し、賛否両論を積み重ねた先に、今のブラックニッカの姿があります。

このブレンダーズスピリットは、そうした同ブランドの軌跡を全て込めたブレンド、という位置づけ。
構成原酒には、
・ブラックニッカが誕生した1956年蒸留の余市原酒。
・余市の新樽原酒。
・余市のヘビーピート原酒。
・宮城峡のシェリー樽原酒。
・グレーンは1999年まで西宮工場で造られたグレーンから最長25年以上熟成した原酒。
・宮城峡で作られた長期熟成グレーン。           
など、これまでブラックニッカのターニングポイントやコンセプトにもなってきた原酒が使われていながらも、「おいしいウイスキーを、より多くの人に」という同ブランド従来からの方針はそのまま、12000箱(144000本)と十分な生産本数が確保されています。

その香味には、先にも書いたように幾つかの原酒由来と思しき要素を明確に感じることが出来ます。
1956年蒸留の60年熟成原酒がどの程度入っているかは少量だとは思いますし、新樽と思しき若い原酒も相当量使われているのでしょう。       
ただ、"長期熟成原酒"を使ったという話はただのセールストークではないようで、強めた個性の要所要所をまとめ上げて全体のバランスを向上させています。
まさに、ブレンダーの技(魂)を感じる構成です。


竹鶴21年のような華やかな味わいでもなく、鶴17年のようにリッチなブレンデッドでもなく、ブレンダーズスピリットはあくまでブラックニッカなのですが、これは言うならばスーパーブラックニッカ。
おそらくボトルを予約されている方も多いと思いますが、購入された後、是非1杯はテイスティンググラスでストレートを楽しんで欲しいですね。
ウイスキーって、おもしろいですよ!

【BAR訪問記】GOSSE Meguro (ゴス) @目黒

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今回紹介するGOSSEさんは、9月にリニューアルオープンしたばかりの新しいお店です。

リニューアルと書いたのは、お店としては2000年頃から目黒にあったのですが、以前はお姉さんのいるカジュアルバーで、ウイスキーは我々ウイスキードリンカーからすればお察しくださいという内容だったとのこと。
それが今年6月に一度閉店。現在のオーナーがご兄弟で店を引き継ぐに事となり、そのお一方がウイスキー愛好家だったため、ウイスキーも楽しめるお店に劇的ビフォアアフター!
オーセンティックバーというよりカジュアル ウイスキー バーとして、9月1日に晴れてリニューアルオープンされた、という流れになります。


BAR GOSSE Meguro (ゴス)
営業時間:19:00〜23:30
定休日:日曜日
WEB:https://m.facebook.com/pg/gosse.meguro/about/?mt_nav=1
TEL:03-3779-9779 

お店の立地は目黒通りと山手通りの交差点すぐそばという、駅からもほど近いところ。看板が小さく、外観ややカジュアルなので見逃してしまうかもしれませんが、よくある路地裏一本入るような迷う場所ではありません。
また、以前は豹柄の壁に赤い照明という「いかにも」なルックスだった店内は、木目調でカジュアルな空気を残しつつ、何よりバックバーに鎮座するウイスキー群で旧店舗との違いは明らかです。 

 
オーナーである油井さんとはFacebook繋がりで、BARオープンについて伺っていたものの、中々伺えておらず不義理を詫びにいざ来店。
まずはお約束のハイボールから。こちらのスタンダードはジョニーウォーカーですが、ただのジョニーではなくオールドボトルの特級時代。いいですね、オールド好きの自分としては嬉しくなってしまうチョイスです。


ハイボールを美味しくいただきながら、今日はどんな組み立てで飲もうかなとバックバーを物色していると、「そういえばこの辺は飲まれてないですよね、イギリスでは相当人気みたいですよ」と、出てきたのは意外な1本。アイリッシュウイスキーはレッドブレストのシェリーカスク。
アイリッシュらしい素直な酒質に、こってりとしたシェリーカスクで、確かにいかにも本国で人気が出そうな感じです。

油井さんは、ウイスキー愛好者としての活動はそれほど長くないものの、ここ数年間で購入された量はかなりのもの。上記レッドブレストのように、海外からの個人輸入もされていました。
そのため、バックバーのウイスキーはここ5年間でリリースされたシングルモルトが中心となっており、そこにオールドはオフィシャルやブレンデッドの間違いないところが少々という陣容です。

(ウイスキー愛好家の間で評価の高いアバフェルディ28年やシガーモルト・モートラック18年。オーナーの好みでシェリー系のボトルが多いが、アードベッグ21 年、マスターピースのラフロイグ等話題のアイラモルトも揃えている。カティサーク25年 やロイヤルマイル40年はオススメの1本。)


先述の前店舗の経緯もあり、このBARの客層はウイスキー好きというより「ライトなお酒好き」の方が多いそうです。
もちろんウイスキー好きもオーナーの交友関係や口コミから徐々に増えているものの、GOSSEでは、そうしたウイスキー入門者に位置付けられる方々から、我々愛好者クラスまで広くウイスキーの楽しみを広めたいと、様々な工夫をされています。

その一つが以下、ウイスキーのメニューで、ボトル仕様や1杯の価格に加えてテイスティングノート、さらにはボトルを番号で注文できるというシステム。


これが結構ハマっているそうで、旧店舗 時代からの常連が、ウイスキーの美味しさを覚えて「今日は〇〇番で」と注文されることも多く、1番人気は41番、ダンカンテイラーのダルユーインなのだとか。
テイスティングコメントは、オーナーご自身のもの以外に、日本有数の飲み手である"ストイックドリンカーの日々"のT.Matsukiさんと、僭越ながら私くりりんのブログから引用されています。
自分の書いたコメントが、実際にお酒と飲み手の架け橋となっているのを見ると、光栄であり嬉しいですね。

この他、お客さんが注文されたボトルから、似たような味のモノや比較してほしいボトルを少量サービスでサーブされることも多く、価格もかなり勉強された設定になっているため、ついつい飲み過ぎてしまうことも(笑)。
これまで2回伺いましたが、どちらも終電間際までお世話になってしまいました。


BAR GOSSE Meguroはウイスキー愛好家はもとより、昨今のブーム等でウイスキーに興味を持ち始めた方々が、色々飲んで世界を広げていける、そんなきっかけの一つになれるお店だと思います。
雰囲気のあるアンティーク、洗練されたカクテルなどを求める空間ではありませんが、その分間口が広く、肩肘張らずにお酒を楽しむことができると感じます。

なお、オーナーは別業がある関係で日によってお店に出ていない場合もあり、もしウイスキー目的に来店される場合は、事前に電話やFacebookなどで確認されると良いと思います。

グレンギリー 23年 1990-2013 マキロップチョイス 53.8%

カテゴリ:
GLEN GARIOCH 
Mackillop's Choice 
Aged 23 Years
Distilled 1990 
Bottled 2013 
Cask type Hogshead 
700ml 53.8%

グラス:サントリーテイスティング
量:30ml程度
場所:BAR飲み(GOSSE)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:華やかな香り立ち、梅を思わせる淡い酸味、ピートスモーク、えぐみのあるウッディーなニュアンスから徐々にオーキーなバニラやフルーティーさが開いてくる。

味:スムーズでオイリー、粘性を感じる口当たり。徐々にピート、蜂蜜の甘み、スパイスが舌を刺激する。
味わいは後半にかけて広がるイメージ。
余韻は華やかで、乾いたウッディネスと内陸系ピートの苦味、スモーキーさ。パイナップル、オレンジピールなどのドライフルーツを伴い長く続く。


個人的にグレンギリーはプッシュしたい蒸留所であるものの、1990前後はちょっと躊躇してしまうビンテージ。そんな印象に待ったをかけてくれたのが、このマキロップチョイス1990です。

グレンギリーはピーティーなフレーバーと酒質のバランス、オイリーさが時に素晴らしい味わいにつながるのに対し、何故か1980年代を中心にパフューミーなボトルがあるという地雷持ち。確か1989にもその系統があったような。。。勿論それを地雷と取るかギフトと取るかは人それぞれですが、私はどうにもダメなタイプです。

また同蒸留所のリリースは、1995年あたりからフルーティー、1997年以降はノンピートですが安定した印象で、おっと思わせるリリースに幾つか当たっているものの、変化の途中にあった1990年前後は樽の使い方も違うのか、酒質的にもあまりいい印象がありませんでした。

このマキロップチョイスは、今のギリーにはない内陸系のスモーキーさにナチュラルな酒質。そこにオーキーなフルーティーさが広がると共に、ギリーらしいニュアンスも感じられ、樽次第とは言いつつも中々楽しませてくれる1本に仕上がっています。
某富山の生きがいを与えるプロ酒販が太鼓判を押しているボトルですが、飲んで「なるほど、こういうことね」と納得する構成でした。

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