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2016年03月

富士山麓 樽熟原酒 50°ノンチルフィルタード レビュー

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KIRIN WHISKY
FUJI-SANROKU
樽熟原酒50°
50% 700ml

グラス:SK2、創吉テイスティング
量:個人所有
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★☆(4-5)(!)
※少量加水やロック、冷凍ハイボールで飲んだ場合★5評価

香り:ツンとした刺激のある香り立ち。若い原酒のニューポッティーさ、溶剤っぽい香りに栗の渋皮煮を思わせる甘さと苦味。少量加水すると若さや刺激が和らぎ、品の良い甘い樽香に加えてエステリーで華やかな熟成香もほのかに感じられる。

味:ハイプルーフらしくスパイシーな口当たり。香り同様に若いニュアンスはあるが、ライチを思わせる爽やかな酸味とねっとりとしたメープルシロップのような甘みがある。
余韻はバーボン樽、というよりバーボンそのものを連想させる樽香、焦げた樽材由来のほろ苦さ。長く続くが、度数から来るアタックの強さと比べると細い。
少量加水すると口当たりの刺激が和らぎ、ねっとりとした甘み、口当たりに。序盤はやや単調気味だが後半は樽の香味が一層引き立つ。


もはや説明不要ともいえる、キリンが3月22日に発売した富士山麓のリニューアルブランド。
ノンチルフィルタードを採用し、香味の幅を増やしたと言うのが今回の最大のウリです。
その他、詳細はこれまでの記事に加え、先日UPした、旧ボトルとの比較記事にもまとめていますので、興味のある方は合わせて参照ください。
ストレートでは旧ボトルに比べて香味の幅が出ていますし、加水、ロック、ハイボールと一般的な飲み方を試しましたが、全体的に見て良くなっていると感じます。特にロックが良かったですね。

富士山麓 樽熟原酒50% 新製品の進化を探る(3/24)
http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1054458385.html

旧ボトルと比較して良くなったことは、少なくとも自分の中では揺るがない評価ですが、単体としての評価となれば話は別です。あくまで一つのウイスキーとして、評価をしていくのが今回のレビュー。
まず中身に関してはコスパや他との比較を考慮しないで考えると、熟成感としては体感5年程度とまだまだ若く、グレーン由来の中間の単調さに加え、全体を樽で押さえつけた仕上がりの荒いウイスキーという事になります。

まあこのグレードのウイスキーでは、スコッチ含めてそうした特徴は特段珍しい話でもなく、その中でも光る要素がどれだけあるかということになるわけですが、濃い甘みや樽香は見るところがあり、キャラクターは確率されていると感じます。
加えて加水やロックなど、一般的に飲むことが多い飲み方に当てはめてると、ストレートで感じられた香味の荒さが押さえられ、飲み方に幅を感じるのは評価ポイントです。

前回の比較記事では試していなかった、酒販店推奨の富士山麓の美味しい飲み方、関西式のハイボールも試してみました。
ウイスキーを冷凍、グラスもキンキンに冷やし、冷えたソーダで割って氷を入れずに作るハイボール。アルコール度数を感じず飲める飲みやすさに加え、若いフレーバーが爽やかさに繋がって後半に樽香がふわりと広がります。
50ml分を小瓶で冷凍して作ってみましたが、ゴクゴクスイスイ飲み干してしまいました。これは夏場に飲みたい味です。 
デイリーに飲んで愛される要素は、こういう様々な飲み方で伸びる間口の広さなのかなと思うところ。リニューアル商品が前作より微妙、というのがここ最近多く見られた流れですが、新しい富士山麓は限られた中でよく作っているなと感じます。


以下、余談。
富士山麓では、特に新ボトルで余韻にかけてバーボンを思わせる香味が感じられます。セメダイン系の香味とかではなく、バーボンそのものを思わせる香味が構成要素に溶け込んでいるわけですが、一部のウイスキーでも見られる現象であり、富士山麓が特別というわけではありません。
ただこれは富士御殿場蒸留所のグレーンの作り分けで、一部バーボンに近いヘビータイプの原酒を仕込んでいること。
そこに熟成に使われたバーボン樽由来のものが加わったと考えるのが自然でしょう。新樽という可能性も考えられますが、富士御殿場蒸留所はニッカやサントリーほど自社で樽の製造を行っていないため、実際のところ関係が深いフォアローゼス社のバーボン樽がほとんどという話と聞きました。入手した樽に長期熟成用の原酒を入れる前、アク抜き的な熟成で樽に染み込んだ香味を移し、その原酒をブレンドに回すなど個性を出す工夫をしているのではないかと思います。

また、富士御殿場蒸留所ではモルト原酒を50%で樽詰めすることで、香味をより多く引き出す工夫をしています。今回はそこにノンチルフィルターの合わせ技です。
しかし樽の中のウイスキーは、エンジェルシェアと合わせて度数も低下しており、50%で詰めればだいたいは50%以下で払い出されます。(例外的に度数が変わらない、あるいは度数が上がるという現象もあるらしいですが、あくまで特例です。)
じゃあなんで50%で大量に商品化出来るのかというと、グレーンが高度数で度数調整をしているから…ということなんでしょうね。新ボトルでもグレーンを思わせる要素が強く感じられます。
個人的には富士御殿場蒸留所のモルトで18年50%とかを飲みたいんですが、このシステムじゃ難しいのかな。

シャープ ヘルシオ スロージューサーを購入してみた

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3月25日は自分の誕生日。
さりげなくブログの説明文も"会社員(32)"と変更させて頂きました。
最近歳とったな〜と感じる点が、身体のあちこちで見られるようになってきました。ウイスキーを長く楽しむためにも、身体のケアをしながら飲んでいきたいです。

で、この3月25日は結婚記念日でもあったんです。
誕生日プレゼントとして妻からはジャケットとシャツを貰ったのですが、自分からはタイトルの「スロージューサー」をプレゼント。
息子が野菜を食べないので野菜ジュースを飲ませているのですが、香料の多い野菜ジュースより自然の味の方が間違いないだろうし。何より妻がハンドミキサーで苦労しながらジュースを作ってるのを見ると、こっちの方が楽だよなと。

購入したのはシャープのヘルシオ ジュースプレッソ(EJCF10A)。
スロージューサーとは所謂、高速で刃が回転するミキサーとは違い、石臼のように遅い速度で入れたものをすりつぶしてジュースをつくるもの。何でもこの製法のほうが甘みや栄養素が高いのだとか。またジューサーなので、搾かすがジュースとは別に排出される機構になっています。
同価格帯の商品ではパナソニックやヒューロムのものもありましたが、部品点数が少なく洗いやすいシャープに軍配。ちと高い買い物ですが、ほぼ毎日使うと思えば1日当たりの単価は安いと言い聞かせ...。
早速人参ジュースを作ってみると、聞いていた通り出るわ出るわ、ジュースじゃなくて絞りカスがw
飲んでみると皮ごと入れたからか若干臭みがあるものの、甘みが濃くて美味い。
栄養とかその辺のことは味からはわからんですが、オレンジと一緒に絞ってこりゃいいぞと。
絞りかすは水分をとったみじん切りのような感じなので、ホットケーキやハンバーグに入れて、これも中々良い感じ。
特にホットケーキは水分が出ないのでふっくら仕上がるのが良いですね。朝にジュースを作って絞りかすでケーキを焼く、こりゃー中々良いリズム。息子も喜んで食べてました。

ふと思ったのが、これってグレープフルーツ絞ればサワーに使えるんじゃね?っていう、当たり前といえば当たり前のこと。
一時期、ウイスキー仲間内でボウモアなどをベースにしたグレフルハイボールが流行った時期があり、さらに美味しいものが出来そうな予感。
なんでも酒に結びつけるのは悪い癖ですが、これで健康維持と夫婦円満、さらにはウイスキーライフの充実に繋がるなら、悪い買い物じゃなかったかなw


追記:3月24日、当ブログのレベルがライブドアブログの最高位である★5に昇格しました。
ライブドアのシステムがわかってから密かな目標にしていたので、嬉しいプレゼントになりました!

BAR Caperdonichでブラインドテイスティング三昧

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先日、新橋でとあるウイスキー関係な方々と打ち合わせをした際に、打ち合わせスペースとして使わせてもらったのがBAR キャパドニック。
個人的に一度訪問してみたかったBARであり、やっと伺うことができました。

28709295
BAR CAPERDONICH(キャパドニック)
東京都港区新橋2-11-8 小倉ビル4F
営業時間
18:00~28:00(月~金)
18:00~24:30(土)
17:00~24:30(日)
http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13168890/

マスターはウイスキーの状態に関して、良い状態のウイスキーをサーブすることを心がけていると伝え聞いて、勝手に興味を持たせてもらっていました。(オールドボトルのヒネ関するセンサーも相当感度の高いものを備えられているとか。) 
ただ、先述のとおり打ち合わせでボックスシートを使用していたため、マスターとの会話はあまりできず、濃い話は次回に持ち越し。ボックス席の注文は全品お任せのブラインドテイスティングで、ボトルを通じてマスターと会話させてもらいました。


1問目:フレンズオブオーク キャパドニック21年 (1992-2014) 46%
回答:フレンズオブオーク キャパドニック22年(1991-2014)46%

マスターから、まさに名刺代わりという出題。
ほのかに青みがかったオークと麦芽香、植物感とオーク由来のフルーティーさに、後半は淡いピートフレーバー、ほろ苦い余韻。実は飲んだことがあったボトルで、ラベルを記憶違いで覚えていた結果の回答。加水、20年熟成、1990年代蒸留あたりでこのフレーバーのボトラーズ・・・と絞り込むと、自然とフレンズオブオークが出てきて、まああとはBARの名前とかけてるのかもと、ちょっと邪推してしまいました(笑)。
凡ミスでニアピンになってしまいましたが、こちらとしても名刺を返せたかなという回答でした。


2問目:アラン プライベートカスク 18年 (1996-2015) 51.7%
回答:スペイバーン 21年オフィシャルボトル

オフィシャルでシングルカスクですよ、と大ヒントがあった上での出題だったのに、ボトルはおろかアランにすらたどり着けなかったボトル。個人的に認識しているアランらしさが無く、逆に10年程度瓶内でこなれたような麦芽風味があり、2000年頃にリリースされたオフィシャルの高度数かなと迷走してしまいました。
樽感は淡く、熟成はリフィルシェリーホグスヘッドによるものと思います。


3問目:ダグラスオブドラムランリグ ラフロイグ14年 (1999-2013) 46%
回答:ラフロイグ、15年程度の熟成、46%程度、リフィルホグスヘッド

マスターからはこれは蒸留所だけでいいんじゃないですかねーというコメントと共に運ばれてきたボトル。
確かに香りの段階であらかた絞られますし、飲めば度数や熟成年数はそこまでひねりのある要素でもないので、一口飲んで確かになと。その蒸留所当ては、ラフロイグか、アードベッグか、この2択で悩みました。
ラフロイグのボトラーズだとフルーティーなタイプを期待するところ、このボトルはピートが前に出ており、そこからヨードやグレープフルーツ系のフルーツ。アードベッグでも似たようなボトルが出てきそうなのです。以前飲んだカーディスにも似た傾向があったため、直感を信じてラフロイグとしました。加水で調整されているため、染み込むような余韻が好印象、良い状態だと感じるボトルでした。


4問目:クーパーズチョイス リトルミル30年 (1985-2015) 44%
回答:ベンネヴィス、20年熟成程度、46%程度、ホグスヘッド

非常に悩まされたボトル。香りは落ち着いた熟成香から徐々にケミカルなニュアンス、少しの紙っぽさ。味は香り同様ケミカルな部分があるものの、官能的な要素も感じるフルーティーさが全開で、なんだこれはと素直に驚きました。
アイリッシュとは違うと感じだったのでスコッチでこの辺が出そうなところ・・・と悩みましたが結局地域すら絞れず。正解を見てこんなフルーティーなボトルもあったのかと、この蒸留所に自分の中で設定しているフレーバーの枠を見直すきっかけともなった、大変勉強になる出題でした。
(発売直後に瞬殺となったボトルとのことですが、これは納得ですよ。みんなこういうの好きですもんw)

そんなわけで、ブラインドテイスティング4問、しっかり楽しんでしまったわけですが、肝心の打ち合わせのほうはというと、ブラインドして、終わったらまた打ち合わせして注文と、ローテーションしながらいい感じに集中して進めることが出来ました。
今回出題されたボトルは比較的近年よりのところでしたが、次はオールドボトルでも注文しつつ、マスターと濃い話をしてみたいと思っています。

江井ヶ嶋 あかし ホワイトオーク15年 58%

カテゴリ:
AKASHI
White Oak
Single Malt Whisky
Aged 15 Years
Spanish Oak Sherry Cask 12・1/2 years
Japanese Oak Konara Cask 2・1/2 years
700ml 58%

グラス:グレンケアン
量:ハーフショット
場所:BAR飲み(Rasen)
時期:開封後2年程度
暫定評価:★★★★★(5)

香り:ねっとりと甘いシェリー香、そしてスモーキーでピーティー。徐々に油絵の具のような癖、魚粉、ほのかに梅干しのような酸味も感じられる。

味:口当たりはリッチなシェリー感だが、甘みよりも無糖コーヒー、カカオチョコを思わせる苦味とほのかな酸味が主体的。そこにピーティーで粘性のある煮干や古びた油を思わせる口当たり。
余韻はドライで渋みが強く、長く続く。

2010年頃から2013年にかけてリリースされた、江井ヶ嶋酒造では珍しい10年オーバーのボトル。
12年、14年、14年、15年とリリースされましたが、少量あったストックが使われただけで、同蒸留所にはこれを越える熟成年数の樽は無いという。現時点で江井ヶ嶋ブラインド最長熟のウイスキーが、この15年コナラカスクフィニッシュです。
記載の通り、12年と半年をスパニッシュオークシェリーカスクで熟成され、残る2年半は日本のコナラ樽で熟成させたもの。以前聞いた話では、このコナラ樽とは同社が焼酎の熟成に使用していたものだという話で、使い古した樽でシェリーの濃さを慣らすイメージだったのだと推察します。

事実、同社が15年に先立ってリリースした14年2種類は、どちらもスパニッシュオークシェリーカスクの後で白ワイン樽でのフィニッシュがされており、蒸留所スタッフからその"狙い"を聞いたことがあります。同じ目的でフィニッシュをかけていった結果、15年ではコナラ樽を使ってみようということになったのだと思います。
なんだか場当たり的に決めているというか、トライ&エラーの匂いを感じるかもしれませんが、かつての江井ヶ嶋蒸留所とはそういうところなのです(汗)。
(今は違うと思いますよ、今は。)

さて、その味わいですが、スモーキーでピーティーな酒質にシェリー系の濃厚な甘味、後半にかけて苦みやドライな余韻が強く残り、併せてテイスティングコメントに記載したような独特の癖も感じられます。
今でこそ江井ヶ嶋は極めてライトピーテッドですが、この当時はピーティーなスタイルだったようで、12年から続く一連のリリースは、全てピーティーな味わいとなっています。
また、温暖な環境下では樽からエキスが出やすく、12年は樽の系統の違いか比較的バランスが取れていたものの、14年~15年の3本はとにかく樽感が強く、ドライな仕上がりが特徴的です。
開封後の時間経過でだいぶこなれたように感じますが、余韻の渋みやドライさ、癖のある味わいは変わりませんね。

グランツ スタンドファスト 1980年代流通 ウイスキー特級

カテゴリ:

GRANT’S
STAND FAST
Finest Scotch Whisky
1980’s
43% 760ml

グラス:創吉テイスティング
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後1か月程度
評価:★★★★★(5)

香り:鼈甲飴や蜂蜜を思わせる甘い香り、ほのかに焦げたような香ばしさが雷おこしのよう。東京沢庵を思わせるヒネ香も感じられる。

味:とろりとした口当たり。カルメ焼きを思わせるザラメ系のお菓子の甘み。ほのかな植物感、バニラウェハース、後半は麦芽と蜂蜜の甘み、ほろ苦さもある。
バランスの良い味わいでグレーンとモルトが良い塩梅。

ブレンデッドウイスキーの定番品とも言えるグランツ。今回のスタンドファストは現在販売されているファミリーリザーブの旧ボトルに当たり、1980年代初頭流通品と思われるボトルです。
このラベルデザインのボトルは1970年代中頃、あるいは後期あたりから流通していますが、表ラベルの特級表記と日本向け表記、裏ラベルでは従価表記が上張りされて消されており、760mlの容量であることも考量すると、1980年や1981年あたりが濃厚かなと推察します。

ラベルに書かれた"Independent family distillers"が意味する通り、ウィリアムグラント社は大手メーカーに属さない家族経営の企業と蒸留所。グランツの構成原酒は同社が所有する三角形のボトルの形状に代表されるグレンフィディック、バルヴェニー、そしてこの時代はレディバーン。グレーンはガーヴァン蒸留所のものが中心とされています。
これらの蒸留所はアンピート寄りのハウススタイルであり、グランツもまたスモーキーさを抑えたコクのあるモルトとグレーンの甘味が主体的。やや単調気味ではありますが、グレーンか、はたまたローランドモルトのレディバーンあたり由来か、ツンとした刺激も感じられます。


 ハイボールはオールドボトル特融の甘みを淡く感じるあっさり系。ストレートで感じられたコクのある甘味がソーダで伸びて、がつがつくるピートフレーバーに疲れてきたときに飲みたい味。ロックで飲んでも悪くない、まさに何も考えずにダラダラ飲むのに向いているような印象です。

ブレンデッドとしては決して悪い出来ではないものの、ピーテッドタイプではないことに加え、蒸留所そのものもキーモルトとして目立った評価を受けている訳ではないためか、中古市場では結構不遇な扱いを受けています。モノによっては現行品よりも安い値段で落札されているのでは(汗)。
確かに自分も、これ飲むならジョニ黒の1980年代後期で良いかなって思っちゃう部分はあるものの、たまに飲むとこういうのも良いよねと感じる。ローテーションの一角というより谷間の登板役として一役買ってくれると思います。

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