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2015年11月

グレンギリー スモールバッチリリース 1997年蒸留 2012年ボトリング バッチ#12

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GLEN GARIOCH
Small batch release Batch No,12 
(15 years old)
Distilled 1997
Bottled 2012
1st and 2nd fill ex bourbon barrels
56.7% 700ml
評価:★★★★★★(6)

香り:酸味を伴う蜂蜜の甘さに灰や焦げた木を思わせるほろ苦い香り、ドライパイナップル、ジャスミンティーのような華やかさ。古びた脂のような癖のある個性。
ほのかにスモーキーで、加水するとハーブの爽やかなアロマもある。

味:酸味を伴うほろ苦いオイリーな口当たり、徐々に甘さも出てきて安寧芋を連想させる。オーキーでスパイシー、余韻にかけては微かなピートと奥には黄色いフルーティーさ。
加水するとさらにオイリーで、オークの華やかさ、焦げた焚き木のようなピートが際立つ。

このBatch No,12は、1stと2ndフィルバーボンバレル原酒のバッティングで、2014年3月にヒースロー空港免税店で購入してきたものです。 
お値段50ポンド、日本に入ってないオフィシャルカスクストレングスが10000円でおつりくるならいいかなーと。 
グレンギリーの特徴(現行品)は、動物性の脂のようなアロマとハイランド系のピートフレーバー、というのが個人的な認識で、そうした蒸留所の特徴がうまい具合にまとまっているのがBatch No,12のポイントであるように思います。 
ピートフレーバーこそナチュラルな部類であるものの、前者の特徴に加えてオーク系のバニラや蜂蜜を思わせる甘みがバランスよく。 開栓して1年半ほど経過しましたが、開封時に強く感じられた酸味などのクセはこなれて、ジャスミンティーのような華やかさがメインに感じられます。 
爆発的に美味いボトルではありませんが、ギリーの将来性、可能性を感じる味に仕上がっています。 


ギレンギリーのオフィシャルボトルは、ダンピーボトルになって2000年代トールボトルのパフュームフレーバーから脱却。 今や安くてお手ごろなシングルモルトのひとつとして評価されていますね。
あのパフュームはいったい何だったのか・・・ひとつの謎であり、賛否ある部分ではありますが、個人的にオフィシャルボトルにピート香が復活したのは評価すべきところと感じています。

ただ、そのグレンギリーについて評価できない点がひとつ。
いやこれは輸入元であり親会社であるサントリーが評価できない点と言えるわけですが、現在、日本向けの正規ラインナップは12年の48%のみ。平行で免税品のファウンダーズリザーブが入ってきていますが、オフィシャルは現在この2種類のみです。 
ところがオフィシャル全体のリリースとしては上述のスモールバッチシリーズ(オフィシャルページではビンテージリリース)がリリースされており、蒸留所として精力的にシングルモルトのリリースが行われているようです。 
通常、ビンテージリリースは現地向け、免税向けとしてリリースされていますが、並行でこっそり日本に入ってくるボトルもあり、以前入ってきたBatch No,10の1995年蒸留はオーク系のフルーツ感が豊かで美味しいモルトでした。

グレンギリーオフィシャルページ ボトルラインナップ
http://www.glengarioch.com/whiskies) 

話を戻すと、こういうボトルがリリースされていて、しかも2年間以上も免税店で在庫余らせているのに、なぜサントリーはこのシリーズを正規で日本に入れないのか。サントリーに一言物申したいワケです。
個性的で扱いづらいかもしれないですが、もうそろそろこういうモルトが評価される下地は出来ているように思います。
それこそウイスキーショップWの次の限定はグレンギリーなんて良いんじゃないでしょか。バーボンバレルのバッティングなら、イケると思うんですよね。

ミシェルクーブレー イントラヴァガンザ クリアラック

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INTRAVAGAN'ZA CLEARACH
Michel COUVREUR
50% 700ml

【ブラインドテイスティング】
地域:アイランズ(ハイランドパーク?)
熟成年数:15年 
度数:50%
樽:リフィルシェリーバット
評価:★★★★★(5)

香り:若いマールを思わせるような、乳酸系の酸味を伴う香り立ち。徐々に蒸かした栗のような甘みも感じられる。時間を置くとシリアルの香ばしさと植物感、スーッとするメンソールの爽やかさも。

味 :口当たりはニューポッティーな酸味と麦芽の甘み主体、甘みは蜂蜜やスイートポテトのようでもある。
樽感は乏しく、香り同様に乾いた牧草のような植物感も感じられる。 
フィニッシュはスパイシーで香ばしい麦芽風味、内陸系のピートを伴う。


ウイスキー勉強会ことThe Whisky Divers(TWD※)でのブラインドテイスティング 。
このサンプルはのっけから熟成感の少ない若い香味が満載で、荒さというかハイプルーフらしいフレーバーの強さも感じられます。しかし甘みは強い部類であり、最低限テクスチャーの荒さは取れている印象もあったため、樽感の薄いリフィルシェリーバットで10~15年くらい熟成させたんじゃないかと予想。
地域は内陸系のピートが余韻で強く感じられるところや、上述の甘さなどからアイランズ、ハイランドパークが筆頭候補。ただし中間のクセが無さ過ぎるところで違和感を感じていました。 
メンバーからも同様に若さを指摘する声が強かったですが、人によってはポジティブな要素として取る人も居て面白かったですね。地域の予想はスペイサイドやハイランドなど内陸系が中心でした。

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そのボトルはフランスのボトラーであるミシェルクーブレーが2013年ごろにリリースした、イントラヴァガンザ クリアラック。
同ボトラーズではスコットランドで蒸留した原酒を、自社が買い付けた樽に詰めてフランスで熟成させているため、スコッチ法の関係で熟成年数も記載できず、スコッチとも表記されません。
基本的にはしっかりシェリー系のウイスキーをリリースすることが多いですが、クリアラックはシェリー感がライトタイプな仕上がりのシリーズで、熟成期間も相応に若いとのこと。
まぁ、ライトタイプっていうかもはや無いに等しいレベルの樽感でしたけどね(笑)。
熟成年数はわかりませんが、おそらくはサードフィルのシェリーバットとか、その辺だろうなと思います。
自分のテイスティングを見てみると、度数、樽はOKですね。蒸留所や地域はというと、これは同社が以下のこだわりから蒸留所を記載しないため、熟成年数同様に不明ということになります。ただハイランドパークというのはあながち間違いではないかもしれません。

ミシェルクーブレー社の代表であるクーブレー氏は、ウイスキーの香味が作られる要素として「95%を樽が決める」と豪語する、MHDのラムズデン氏も真っ青の樽信者です。(ラムズデン氏は60%を樽が決めると言っている。)
その考えに至る背景として、同氏がかつてリリースした、かの有名なシングルシングルベレバーレイがあります。
同ボトルは、オークニーで栽培されていた希少な古代大麦のベレ種をハイランドパークでフロアモルティングして仕込み、エドラダワーで蒸留し、自社で準備したシェリー樽に詰めて熟成させたこだわりのモルト。
そのこだわりのウイスキーを造った結果行き着いた考えが、「樽が良けりゃ良い」というものだそうです。

シングルシングルベレバーレイのエドラ感あふれる味わいや、何でそんなにどぎついカラメル添加してんねんという疑問はさておき、以上の背景から同社は「ウチの樽使ってるんだから旨いにきまってんだろ、蒸留所とか5%程度の細かい要素は気にするな」とばかりに蒸留所は明かさないのです。
まあこれはフランスで作っている以上、スコッチに対して明確に強みと出来るのは、蒸留所でも熟成環境でもなく自分が準備できる"樽"であることからきてる部分もあるんだと思います。 
ちなみに現在も同社が上述のこだわり仕込みを行っているかは不明で、実際は「ただ原酒を買い付けているだけ」という情報もあります。
そう考えると以上のような過去のつながりから、ハイランドパークの原酒が使われている可能性はありますし、熟成環境の違いが違和感に繋がったと考えれば納得です。
わずか5%に過ぎない話ではありますが・・・。


※TWDはウイスキーのテイスティング方法の確立を目的としたグループです。 
共通のフォーマットを用いた評価分析をブラインドで行い、ボトル発表後は再度同じボトルを飲みながらテイスティングコメントを振り返る。テイスティングからフィードバックまでを共同で行うことで、より深くウイスキーを理解することを目指しています。
名前の由来はウイスキーを深掘りする、深く理解することを"潜る(ダイブする)"と掛けていることから。現在1ヶ月に1回の頻度で活動を行っています。
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ウイスキーバイブル2016、ワールドベストウイスキー発表 今年はカナディアンウイスキーに光!?

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さる11月19日のこと、ウイスキーバイブルにおいて今年のワールドベストウイスキーおよびいくつかのアワードが公式発表されました。
ウイスキーバイブルはライターのジムマーレイ氏が世界中のウイスキーを飲み、テイスティングやスコアをまとめて毎年発行している書籍であり、ウイスキーバイブル2016には4600種類のウイスキー(うち1000種類がニューボトル)が掲載されているそうです。
昨年発行されたウイスキーバイブル2015においては、山崎シェリーカスク2013がワールドベストウイスキーとして掲載され、日本国内が大いに沸いた(というよりブームに乗じてメディアが騒いだ)ため、ご存知の方も多いと思います。
 
あれから1年、そういやぼちぼち発表されてるんじゃないかと思い出して調べてみたところ、つい1週間ほど前にウイスキーバイブル2016の発売と、ベストウイスキー等の各タイトルが決定した旨のプレスリリースが出ていました。
今年のワールドベストウイスキーは、カナディアンウイスキー、クラウンローヤルのライウイスキー、だそうです。
重要なことなのでもう一度言います。
今年のワールドベストウイスキーは、100点満点で97.5点を獲得したカナディアンウイスキー、クラウンローヤル ノーザンハーベスト ライ だそうです。

CROWN ROYAL Northern Harvest RYE 
90% Rye Whisky 45% 750ml 

 
これはもはや事件です。
一切報道しないジャパニーズメディア各社はいつもの通りですが、海外のWEB媒体等は精力的に本件を報道。特にカナダ系メディアは相当テンション上がってる感じです。
カナディアンウイスキーと言えば、ジャパニーズウイスキーブームの中でのキリンウイスキーくらいというか、それ以上に鳴かず飛ばずで、個人的にはコーラで割るモノとかカクテルのベースくらいにしか考えておらず。
ジムマーレイ氏も「ぶっちゃけカナディアンって近年アレだから、カテゴリー無くそうかなって思ってたんだよね。」とリリース中にて語っているほど、その存在感は味同様にライトで希薄だったわけですが、それが受賞したとあれば気にならないわけがありません。
同銘柄は現時点で日本には入っていないので、キリンさん早く輸入してくれないかなー。

とはいえ、前回の受賞がそうであったように、これは影響力のある一個人による評価でしかないものです。ただでさえ海外の飲み手の好みと日本人の好みはずれているなと感じる部分が多い中で、"旨い"と感じるかは未知数です。
実際これまで飲んできた中で、カナディアンウイスキーはアルバータスプリング等オールドボトルには多少見るモノがあると思いますが、古いから良いというわけでもなく、かといって現行品はもっとアレなので、近年のWWAが迷走しているような「壮大なリップサービスじゃないか」という気持ちが無いわけでもありません。
評価される下地としてはアルコール飲料じゃ話になりませんから、認められる何かはあるんだろうなと思います。
 
Jim Murray's 2016 World Whiskies of the Year
1.Crown Royal Northern Harvest Rye (Canada) - £47 a bottle
2.Pikesville Straight Rye (USA) - £33 a bottle
3.Midleton Dair Ghaelach (Ireland) - £180 a bottle
4.William Larue Weller Bourbon (Bot.2014) (USA) - £65 a bottle
5.Suntory Yamazaki Mizunara (Bot.2014) (Japan) - £45 a bottle

以下に全カテゴリーの詳細情報が掲載されています。公式からの引用ではありませんが、ご参考まで。
Scots left reeling as Canadian whisky named world's best 

【イベント】第二回史上最大(?)のウイスキー持ち寄り会でのスペシャルステージについて

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12月13日(日)に開催するウイスキーの持ち寄り会。
おかげさまで当初予定していた人数70名を大幅に上回る、80名以上の参加申し込みを頂き、早々に申し込みを締めさせて頂きました。
イベントまで後2週間となり、調整中だった会場、進行など具体的なところはほぼ決まったところです。
今回はイベントの中で開催する、有志によるスペシャルステージの概要について以下の通り公開させていただきます。

スペシャルステージのイメージはマガジンライブでいうマスタークラス的なモノになりますが、参加に当たって追加の費用は発生せず、主催する方の持ち寄るボトルで開催する形になります。
なお、Stage①②は参加人数に上限がありますので、希望者多数の場合は抽選とさせていただきます。
参加希望は当ブログへのコメント、または皆様に開催場所等の情報共有でお送りしておりますメッセージに返信する形で申し込みください。(①、②とも申し込みいただいてもOKです。)
③は会の流れの中で開催いたしますので強制的に全員参加となります。

参加申し込み締め切り:12月4日(金)17:00
抽選となった場合の発表:当日 

なお参加の申請を頂いている皆様には、記載いただきました連絡先に、会場の情報等についても通知しておりますので、あわせてご確認ください。




【スペシャルステージ概要】
①Whisky hard core出張版

開催時間帯(1) 14:00~14:50
開催時間帯(2) 16:00~16:50
募集人員:各回5~10名程度
司会:Whisky link
概要:タケモトカツヒコ氏が主催するWhisky hard coreの出張版。
同氏のスペシャルな持ち込みボトルをガッツリ深堀りテイスティング。
多くの方にボトルを共有出来るよう、希望者多数の場合は入れ替え制となりますのでご了承ください。
参考:http://www.whiskylink.com/?cat=159

②ウイスキー勉強会出張版
開催時間帯 15:00~15:50
募集人員:8名程度
司会:The Whisky Divers
概要:テイスティングのスキルアップを目的として、1本のウイスキーを共同作業で深堀り(テイスティング&振り返り)していく勉強会。当ブログでも記事にしてるテイスティングのフレームワークです。
楽しみながら「おいしい」をもうちょっと言語化してみませんか?当日は2本のウイスキーにダイブしてもらいます。
参考:http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/cat_1148988.html

③当日の総括、並びにブラインドテイスティング決勝
開催時間帯 17:00~17:50
募集人員:会場にいる皆様とブラインドテイスティング正解者
概要:当日印象に残ったボトルを振り返るとともに、会場に設置されたブラインドテイスティングブースの正解発表と、正解者による決勝ステージなどを実施。
参加者全員でイベントを振り返り、そして盛り上げて1日のフィナーレとしましょう!

追記:当方からのメッセージは本日15時ごろに送信しております。
参加コメントに記載したアドレスに届いていない場合、お手数ですがコメントにてお知らせください。

マッカラン25年 アニバーサリーモルト 1990年頃流通 オフィシャルボトル

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The MACALLAN 
Anniversary malt 
25 years old 
1990’s 
43% 750ml 
評価:★★★★★★★★(8) 

香り:スムーズでスィート、しっとりとした上品な甘さ。黒蜜、カラメル、ナッツ、皮付き葡萄、微かにベリー。腐葉土のような土っぽさもある。
強く発散する香りではないが、引き込まれるような妖艶さ、奥行き、深みを感じる。まるで長熟のコニャックのよう。

味:スムーズな口当たりからシェリー樽由来の落ち着きのあるフレーバー、ナッツ、カラメルソース、チェリーのシロップ漬け、熟したベリー。その奥には黄色いドライフルーツの香味が見え隠れする。
徐々に微炭酸系のスパイスを伴う広がり陶酔感があり、余韻は上品なウッディネス、タンニンが染み込むように残る。


やはりマッカランは特別な蒸留所です。
とげとげしくない味わいの43%加水、普通のモルトならすいすい飲めてしまうようなスペックでありながら、不思議と手が止まってしまうのです。1杯の満足感が高いということでしょう。
特段風味は強く無いですし、フルーティーとかピーティーとか際立ったフレーバーがあるわけでもないのですが、その奥行き、バランスは素晴らしく、気が付けば1ショットを1時間近くかけてテイスティングしてしまいました。


このマッカランの25年はラベルに蒸留年が記載されているものが多いのですが、今回のボトルには記載がなく、付属の箱も違います。輸入元はサントリーで、住所から1990年頃だろうと推測。したがって使われている原酒は最も新しい蒸留時期でも1965年頃、文句なしで黄金時代です。
経年によるヒネなどはなく状態が素晴らしいことは勿論、スムーズで奥行きのあるシェリー感に、 その奥には60年代らしいフルーティーなフレーバーが潜んでいます。

最近のマッカランの質、相場を考えたら二度と出てくること(少なくとも自分の手が届く範囲で)は無いだろう、マッカランがロールスロイスと言われた時代の逸品。
オフィシャル25年は久々に飲みましたが、良いものは良いですね。素晴らしい時間を過ごせました。

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