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2015年09月

ラフロイグ21年 (1993-2015) フレンズオブライフロイグ限定

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ラフロイグ蒸留所200周年を記念したリリース3弾のうちの第二弾。
蒸留所200周年よりも、1993年に設立されたFoL(Friends of Laphroaig)の設立21年を記念した色が強いように感じます。確かフレンズオブラフロイグの限定で、抽選に応募して当たった人が最大3本まで購入出来た・・・んでしたっけ。
このボトルは友人主催の持ち寄り会にて飲ませて頂きました。ラフロイグらしさがしっかりあり、変にいじっていない、蒸留所の個性からみて外連味のない味わいだったと感じました。

LAPHROAIG
Aged 21 years
For Friends of Laphroaig
Distilled 1993
Bottled 2015 ?
350ml 48.4%

暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:強くピーティーな香り立ち、甘くバニラを含んだヨード香、ナッティーなアロマはアーモンドやカシューナッツのクッキーのよう。
なんともラフロイグらしい要素に、グレープフルーツ、ライチの華やかなフルーティーアロマ。ほのかに塩のニュアンス。

味:華やかでややオイリーな口当たり、全体的にはピートとヨードのフレーバーが展開しており、そこにオーク香、薄めた蜂蜜、燻した麦芽、ナッツ、香り同様にグレープフルーツなどの柑橘系の風味、ドライパイナップル、塩水のコクが感じられる。
余韻はピーティーで、ピートの中に華やかなオーク香の戻り。柑橘の香りとスモーキーなアロマが鼻に抜ける。


第一印象として、これは引き出しが多そうだなと感じたボトルです。ラフロイグよろしく甘く華やかなピートフレーバーにバーボンオークの香味がしっかりと乗っている。そして冒頭で重みがあると表現した、いくつかのフレーバーが重なりあって塊になっている印象を受けました。
こうしたモルトはグラスを変える、あるいは環境を変えればさらに多くのフレーバーを引き出せる気がします。以前リリースされたバイセンの15年はその点非常にわかりやすく、裏表の無い性格のように感じましたが、じっくり付き合うにはこうしたボトルのほうが面白いかもしれません。

FoLでの販売は、フルボトルではなくハーフボトルで99ポンド(約130ユーロ)、若干の割高感を感じた方もいるかもしれません。実際「たけーよ」って声もあったみたいですね。
ただ、3年前に自分が購入したラフロイグ20年ダブルカスクは免税価格で225ユーロでしたので、スペックがそもそも違うとはいえ、高騰する今のモルトウイスキー相場で21年モノがフルボトル換算260ユーロですから、まだ許せる範囲なんじゃ無いかと思ったりもします。
(購入していない自分が言うのもおかしな話でございますが。)

フェイマスグラウス 1980年代流通 ”ウイスキー特級” 松下電器取扱い

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1980年代からスコットランドで一番飲まれているウイスキーは、ジョニーでもバランタインでもなく、フェイマスグラウスだそうです。 2012年の統計ではイギリスでもトップだったとか。
フェイマスグラウスの名前の由来である、「あの有名な雷鳥のウイスキーをくれ」と注文されたことがきっかけというエピソードは1900年ごろの話。この当時はローカルで有名だったに過ぎず、フェイマスグラウスが本当の意味でフェイマスになったのは、1970年~1980年にかけて。
ハイランドディスティラリー社の傘下に入り、原酒を確保して拡販路線をとったことで、1980年代に世界で100万ケースを販売。名実共にフェイマスな雷鳥のウイスキーとなりました。
今回の一本は、その1980年代の中ごろ流通のフェイマスグラウスです。

THE FAMOUS GROUSE
FINEST SCOTCH WHISKY
1980's
43% 750ml

構成原酒:グレンロセス、タムデュー、ハイランドパーク、グレンゴインなど
評価:★★★★★★(6)

香り:ケーキシロップを思わせる甘い香り立ち、麦芽、植物系のえぐみと穀物の香ばしくも甘くライトなアロマもある。
奥からスモーキーさ、オレンジピールの爽やかさ。

味:マイルドでスムーズ、グレーンのニュアンスを感じる口当たりだが、後半から粘性があり、口の中に張り付くようにフレーバーが残る。
オレンジママレードジャム、薄めの紅茶、オールブラン、ピートとあわせて乾燥させた牧草っぽさ。余韻はビターで長く、ハイランド系のピート香がじわじわと鼻腔まで抜けてくる。

氷と混じることで柔らかいスモーキーさが感じられ、ハイボールはスムーズでメローな飲み口に適度な熟成感、麦芽、ピートなどのモルト由来の風味を感じることが出来るレベルの高い1杯。
兵庫県三ノ宮の名店、BARメインモルトの駆けつけ1杯といえば、キンキンに冷やしたフェイマスグラウスを使う氷無しのハイボール。ここは同BARをインスパイアしてオールドボトルも氷無しで楽しむのも良い。もちろんアテはハムサンドイッチを準備したい。

フェイマスグラウスといえば、キーモルトにハイランドパークとマッカランを連想する方も多いと思いますが、それは現行品に限った話で、こと1990年代以前はハイランドパークやタムデューが中心となったウイスキーです。
当時フェイマスグラウスを製造していたハイランドディスティラリー社(Highland Distillers)は1970年にフェイマスグラウスを、1996年にマッカラン蒸留所を傘下としています。
スコットランドでは会社、グループの枠にとらわれず原酒の融通もされていましたが、メインとなる(必然的に使用量が多くなる)原酒は、安定して確保出来る所有蒸留所が中心となります。まして上述のように消費量の多いブレンドであればなおのことです

今回のボトルはハイランドディスティラリー社時代であり、マッカランの影響はあまり期待出来ません。実際、味のほうではハイランドパークの影響をかなり感じます。
グレーン感もそこそこあり、一口飲んだだけではライトで締まりが無いと言う印象も持ったのですが、2口、3口と飲み進めるほどに口の中でモルティーなフレーバーが混ざり合い、ピートのニュアンスがじわじわ効いてきました。
バランス良く、後を引くブレンドであり、ファンが多いのも納得の1本です。

※補足※
フェイマスグラウスの日本国内への輸入は、1974年にハマヤ株式会社が、1970年代後半(あるいは1980年)頃から松下電器が取り扱いを行っています。
ハマヤ時代はボトル形状がそもそも異なっており、ネック部分が丸みを帯びています。
松下電器時代は、ラベルに特級表記が直接印字されているかどうか、特級表記が印字されているならその上にロゴが入っているかどうかで、おおよその時代を判別出来ます。
・1980年代初期、ラベルに特級表記が無い(紙で別張り)
・1980年代中期、ラベルに特級表記あり(ロゴ無し、今回のボトル)
・1980年代後期、ラベルに特級表記あり(ロゴ有り)
以上、ご参考まで。



バルヴェニー・シングルバレル 12年 ファーストフィル

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つい最近、かと思ったらモノとしては2013年にアメリカ向けを想定して新発売していた、シングルバレルの新シリーズ。バーボンバレルに12年、そこから加水調整しての樽出しで、ロット差は多少あるもののボトリングはだいたい1ロット300本前後とのこと。
日本には2014年末くらいに平行で入ってきはじめたように思います。
気になっていたボトルで、ちょうど先日の持ち寄り会で飲むことが出来ました。
(GSさんいつもありがとうございます。)

THE BALVENIE
SINGLE BARREL
Cask type FIRST FILL
Aged 12 years
700ml 47.8%

暫定評価:★★★★★(5)

香り:ふかした栗やサツマイモを思わせるでんぷん質な甘さ、林檎や少しの草っぽさ、オーク材由来のフルーツ感のみならず、渋みや木材感と合わさって、モンブランのよう。全体的にはツンとしたアルコール感がある。

味:ザラメを思わせるドライな甘さ、オーク香、バニラ、麦芽風味、ツンツンした刺激の強さを感じる酒質で中間含め勢い良く広がるイメージ。
フィニッシュはドライでオーキー。乾いた木材やドライパイナップルの爽やかなフレーバー。若干のえぐみも伴う。

まさにバーボン樽熟成の代表格的な味わい。すなわち、近年のモルトウイスキーを代表するタイプのひとつと言ってもいい構成。
少量加水するとクリーミーな風味も出てくる。ストレートではアルコール感が強いため、飲み方で調整したい。ハイボールは気持ち薄めが良い印象。爽やかな味わいで悪くない。

そういえば以前飲ませて頂いた、蒸留所限定カスクサンプルもこんな感じでした。ただし度数が高い分カスクサンプルの方が荒らい印象はあり、こちらのほうがうまくまとめてるなと思います。
個人的にはこういう華やかな乾いたオーク系のフレーバーより、メイプルシロップを思わせる、少しの琥珀色を帯びたバーボンバレル熟成のタイプの方が好きなのですが、そちらはあまりリリースされませんね。

もともとバルヴェニーは15年で同様のリリースを行っていましたが、15年を終売とし、そのノウハウで新しく展開した形となったのが、このシングルバレル12年です。
今のウイスキー業界の流れだと、熟成年数が若くなったり、あるいはノンエイジになる変化はお約束的展開。
それでいて値段も据え置きか若干値上がりかというところでしたが 、バルヴェニー12年に関しては、 据え置きあるいは値下げとも言えるラインで、 良心的な設定となっています。

他の蒸留所を見ても、オフィシャル、ボトラーズ含めてリリースされやすい味わいで、1杯あるいは1本買って飲んでも今後の経験として損は無いと思います。

アードベッグ スーパーノヴァ 2015 コミッティーリリース

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MHD社が3年間かけて実施したアードベッグのスペースプロジェクト。ISSにサンプルを打ち上げ、宇宙空間で熟成の解析を行ったそれの完結を記念してリリースされたのが、スーパーノヴァ2015です。2014年リリースのスーパーノヴァもスペースプロジェクトがらみの記念リリースと銘打たれており、これは宇宙に打ち上げたサンプルの帰還記念でした。
スーパーノヴァはこれまで3種類リリースされてきましたが、この4代目となるスーパーノヴァは、かなり気合いの入った構成だったように思います。

ARDBEG
SUPERNOVA
Committee release 2015
54% 700ml

暫定評価:★★★★★★(6)

香り:タールのような重みのある香り立ち。土っぽさのあるピート香に強いスモーキーさ。オリーブ、柑橘類の爽やかさとほろ苦さに、奥からヨード、海を思わせる塩素のニュアンスもある。
加水すると華やかな香り立ちで、グレープフルーツやドライパイナップルを思わせるフルーティーさ

味:全体を通してパワフルでピーティー
、強くスモーキーで中間から黒胡椒を思わせるスパイシーな刺激。バニラの甘さ、 アーモンドナッツや燻した麦芽の香ばしさ、 微かに木のえぐみと土っぽさ、香り同様に柑橘系の爽やかさも。
ピートの強さで他の味わいは少々アンバランスとも言えるが、加水すると改善される。また、オイリーな舌触りがより感じられるようになる。


100ppmものピートレベルを誇るスーパーノヴァ。ただピートの強さだけならオクトモアのほうが遙かに強いわけですが、アードベッグ・スーパーノヴァはピートが強くありつつもその他のフレーバーもあって破綻していない、全体のレベルの高さが感じられるリリースが続いています。
そして今回のリリースはこれまでのリリースとは若干方向性が異なり、これまで以上に熟成した原酒を使ったのか、重厚感があるというのがポイントであるように思います。

ハイボールやロックは試せていませんが、少量加水するほうが全体的なバランスは良いように感じました。ストレートではピートの強さに隠れてわかりにくかった、まさに燻したフルーツを思わせる香味があります。


なお、今回発売のスーパーノヴァが記念しているアードベッグ・スペースプロジェクトは、その実験結果がアードベッグの公式ページだけではなく、様々なニュースサイトで特集、公開されています。
今更感はありますが、ご興味ございます方は以下も合わせてどうぞ。

宇宙で熟成させた3年もののウイスキーのお味は?(ギズモードジャパン)
http://www.gizmodo.jp/2015/09/space_wiskey.html

ARDBEG IN SPACE(Official)
http://www.ardbeg.com/ardbeg/the-results

ザ・モナーク6年 1970年代流通

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モートラックではなく、モナーク。ブレンデットウイスキーです。
ボトル形状等から、1970年代の流通と思われるもの。素性はほぼ不明ながら、ラベルのデザインとその雰囲気に惹かれてしまう、ミステリアスな魅力があります。
実際、オークションに出た時の価格は他のブレンドに比べても高めです。

気になっていたブレンデットでしたが、中々手元に来ることは無く。しかしこのたび、ウイスキー仲間からのご好意でテイスティングの機会をいただきました。

THE MONARCH
6 Years old
LAMBERT BROTHERS
1970-1980’s
75Proof  26 2/3FL.OZS
(750ml 43%)

構成原酒:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:焦がしたカラメルのようなほろ苦い香り立ち。乾燥させた麦芽、ザラメ、微かに植物のえぐみ、ほのかにスモーキー。時間経過でモルティーで華やかなアロマが開いてくる。グレーン感が少なく非常にモルティー。

味:一瞬水っぽさを感じる口当たりだが、すぐにブラウンシュガーと乾煎りした麦芽の香ばしさが開いてくる。微かにレーズン、スパイス。フィニッシュはまったりとしたほろ苦さ、長く残る。  

6年表記ということもあって長熟感はないが、極端な若さも感じない。オールブランを思わせる香ばしい麦芽の香味主体のウイスキー。 
ロックは可もなく不可もなく。ハイボールもまた特筆する何かがあるわけではなく、あっさりとした飲み口と思いきや、モルト由来か意外にコクがあり上品なフレーバーの開き方。薄くなるのではなく伸びている印象。だしをしっかり引いた汁物のようで、不思議な満足感がある。
うーん、やるなあモナハイ!

 
注ぎたて香りが弱い印象があったので、テイスティング時期をフライングしてしまったかなと思ったのですが、グラスに入れて飲み進めると、しっかり開いてくれました。 
特段ヒネている印象も無く、アルコールも立っている。微かに異物感はあったもののオールドなら許容範囲のレベル。おそらく、こういうタイプのウイスキーなのでしょう。
何よりこのビカビカのラベル、外観から見た状態は完璧です。

モナークと名の付く商品は他にもいくつかあるのですが、"君主"というウイスキーの銘柄らしい大層な意味を持つ単語であるがゆえに複数のブランドが採用しただけの話で、そもそもこのブレンデットとメーカーは現在存在しません。
ザ・モナークの製造元はLambert brothers。ゴルフシリーズやジュエルオブスコットランドなどで有名なボトラーズのロンバート(Lombard)とは関係無いようです。
モナークのほかに手がけているブレンドはタリスマン、スコティッシュリールなど。ブレンデット大全によるとスコティッシュリールは別企業が販売しているのですが、Lambert borthersは海外の企業情報では1996年に会社を閉じているようですので、ライセンスを買い取ったのかもしれません。
こうして書籍や海外サイトをまわってみたものの、結局このボトルの素性、構成原酒が判明するまでには至りませんでした。
モルト含有率が非常に高いという情報もありましたが、確かに飲んでみると相当モルティーであったことは上述のとおりです。
あまりスモーキーでもなく、アイラの特徴も見られなかったので、ハイランド、あるいはローランドのそうした蒸留所になるとは思います。
(ご存知の方、ぜひ教えてください!)


来月10月中旬ごろ、テイスティング会を都内で開催します。テーマはオールドブレンデット。総勢50〜60名ほどの会で、今から開催が楽しみです。
このボトルは、その会で使ってくださいと、別件でサンプル交換をしていたウイスキー仲間から提供頂きました。
自分はつくづく人に恵まれていると思っているのですが、今回も恩恵を受けることとなりました。
皆様、いつもありがとうございます!

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