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カナディアンウイスキーのオールドボトルには、漏れなくキャップ部分に独自の酒税証紙(通称:TAXシール)が貼られています。
このカナディアンTAXには、以下の写真のように西暦が表記されているものがあるわけですが、酒税証紙は国に税金を納めた証明であることから、記載されている年数は【酒税を納めた年=ボトリング年≒流通年】と認識されているケースが多いように思います。
※海外酒販店の有名どころだと、Master of Maltはボトリング年表記と説明しています。

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実際、自分もそういうものだと思い込んでいました。
が、実はこれ【蒸留年】なのです。
重要なことなのでもう一度言いますと、流通年ではなく、【蒸留年】だったのです。

参考資料①:https://www.drinksplanet.com/dating-canadian-bottles...-1411.html
※海外の超ド級カナディアンコレクターの記事。スピリッツの蒸留年でありボトリング年ではないと記載あり。
参考資料②:http://www.esjvandam.com/Canada%20Liquor%20stamps.pdf
※資料中、該当する数字4桁は「CERTIFIED MANUFACTURED IN THE YEAR」と記載あり。

この件は、約1年前から記事にしようと思っていました。ただ材料は揃っていたのですが、次オールドカナディアンをレビューするときで良いかと先送りしたところ、肝心のレビュー機会がなくすっかり忘れていたというオチ(汗)。
それが先日、まさにカナディアンTAXシールの表記について、秩父令和商会さんとSNS上でやり取りする機会があり。このタイミングになりましたが、実物での検証も踏まえて記事化していきます。

cc1983tax

実際のところ、TAXシールに表記された西暦を流通年とした場合、違和感がないわけではありませんでした。
代表的なのが写真のカナディアンクラブ(CC)で、TAXシールに1983や1984と書かれたもの。
当時の日本市場向けボトルは、サントリー・アライド社が扱っていたため、現在の日本市場にもかなり在庫がありますが、流通年とすれば当然旧酒税法による「ウイスキー特級表記」があるはず。しかし、ラベルにあるのは1989年4月以降の整理となる「ウイスキー表記」です。

また、そもそもサントリーアライドの設立は1988年なので、83年や84年にウイスキーを輸入・販売できるわけがなく。「海外で余ってた在庫を設立後に持ってきてラベルを張り替えたってこと?でも6年以上も経過したボトルを、そこまで手間かけて販売するか?」と、疑問には感じていました。
それが冒頭述べたように、表記が流通年ではなく蒸留年として整理すると、CCは6年熟成なので1989年・1990年の流通となり、酒税法の整理としても、企業の設立年次としてもピッタリ当てはまります。

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(90年代以前のカナディアンやアメリカンウイスキーのボトルの底には、ボトルの製造年・西暦下2桁が表記されているものが多い。上の写真は、CCのTAX表記1967のもの。CCの熟成年数を足すと1973となり、これも合致する。)

CCの場合は6年熟成ですから、蒸留と流通年でそこまで大きな誤差にはなりませんが、アルバータスプリングやクラウンローヤルのような10年熟成以上のリリースとなると、これまで考えられていた時期は大きくずれることになります。
このブログでも過去記事で数件オールドカナディアンを紹介しているため、本記事公開と合わせて全件修正(汗)。後は初期のブログである深夜時代の記事も・・・。
オールドボトルにおいて当ブログを参考にしていただいている方は、少なくないものと思います。誤った情報を発信してしまい、大変申し訳ございませんでした。
今後は、カナディアンTAXの表記は”蒸留年”で認識いただければと思います。


なお、この整理で考えると、カナディアンウイスキーは(少なくとも表記のあるものについては)、複数年にまたがる原酒がブレンドされていない、単一蒸留年のウイスキーであることにもなります。
ただしアメリカンウイスキーやカナディアンウイスキーは、そこまで幅広い年数のものを混ぜているという印象は無く。禁酒法前後では蒸留年とボトリング年をTAXシールに示していた時代もあるくらいですから、仮にスコッチ同様に”最も若い”原酒の蒸留年”と整理しても、誤差の範囲と言えるかもしれません。

最後に、本記事をまとめるにあたり、参考資料②は秩父令和商会様より頂きました。今回の記事の裏付けとなる情報だけでなく、カナディアンTAXシールの歴史がまとめられた貴重な資料です。重要な情報を頂き、ありがとうございました。