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MACALLAN 
CLASSIC CUT 
LIMITED 2019 EDITION 
Cask type Sherry Seasond Oak Casks 
700ml 52.9% 

【ブラインドテイスティング】
地域:スペイサイド
蒸留所:グレンファークラス
熟成年数:20年程度
樽:シェリーカスク
度数:53~55%程度

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1~2ヶ月程度
場所:サンプル@TDNさん
評価:★★★★★★(6)

香り:近年のシーズニングシェリー系統。カカオチョコレートにローストアーモンド、微かにドライオレンジピールやハーブ。ウッディーで若干のえぐさを感じさせるビターなアロマ。

味:香り同様のシェリー感に加え、オレンジやハニージンジャーを思わせる甘みがシェリー感を支え、複数のフレーバーがバランス良くまとまっている。ボディは骨格がしっかりしており、余韻にかけてそれらのフレーバーの奥からひりつくような刺激も伴ってフィニッシュは長く続く。ほのかに樽材由来の生っぽさもあるが、嫌味に感じるほどではない。

アタックが強く、酒質のしっかりしたスペイサイドの蒸留所というイメージ。使われている樽は近年系のシェリーらしく、また量産されているためかそこまで良いモノではないように感じられるが、蒸留所が大手というか、クオリティを維持する工夫をしている印象がある。
比較的バランスの取れたシェリー系のモルトウイスキー。加水も少量なら悪くなく、香りで柔らかい甘さ、比較的綺麗に樽由来の香味が伸びてくれる。

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というのが一昨日、ツイッターでリアルタイムに書き連ねた今回のブラインド回答のまとめ。
いや、答え見えてるんであれですが、はい、また引っ掛かりました。マッカランです。
昨年11月、2017年リリースのマッカランクラシックカットをブラインドテイスティングして、グレンドロナックのカスクストレングスと答えたばかりなので、まるで成長していない結果に・・・(汗)

非常に悔しいのが、選択肢には入ってるのに除外してしまうんですよね、この蒸留所は。
今回はシェリー感やフレーバーから、クラシックカットの新しいやつか?と候補にはなったのですが、後述する理由から除外し、ひょっとしてリリースされたばかりの日本向けグレンファークラス・カスクストレングスのバッチ2かも、と直前方向転換。(よくよく見ると、ファークラスの該当リリースとは度数が合わないので、そこで気がつくべきだった。)

ブラインドではファーストインプレッションが正解って結構あるんですが、直感に対して後追いする知識、情報をいかに正しく使いこなせるかが本当に重要ですね。。。

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(マッカラン・クラシックカットのファーストリリース、欧米向けの2017年リリース。終売となったカスクストレングスを思わせるリッチなシェリー感と、本来のマッカランらしい口当たりの強い酒質が楽しめる。2019年リリースに比べると、シェリー感は濃いが、平均熟成年数は若いか。レビューはこちら

さて、マッカラン・クラシックカットについては、上記2017年のファーストリリースのレビューで商品解説もしているので詳しい説明は省略しますが、毎年異なるブレンダーが異なるレシピで仕上げる、伝統のヘレス産シーズニングシェリー樽100%、カスクストレングス仕様のリミテッドリリースです。
これまでは少量平行品が入る程度であまり話題になっていませんでしたが、2019年リリースからサントリーが正規輸入を開始しています。

2019年リリースの特徴から触れていくと、スタンダードのシェリーカスク18年で感じられた程度の熟成感。口当たりは骨格がしっかりしていて、シェリー樽の由来のフレーバーを受け止めてバランス良く仕上がっているというもの。シェリー樽はリフィルタイプも一部混じっているのか、味に幅があり、良い部分はダークフルーツ、チョコレート、そして柑橘系ドライフルーツという感じ。
余韻や香りはちょっとえぐいというか、甘さよりもビターなウッディネス、ドライオロロソのようなシェリー香が主体ですが、トータルでは悪くないですね。

正直、これが1本15000円というのは、マッカランやれば出来るじゃんという感じです。(直近のウイスキー相場に毒されているかもですがw)
複数樽バッティングだからこそのシングルカスクにはないバランス、幅のある香味。樽の質の問題というべきか、ネガティブな部分は少なからずあるのですが、市場にあまりない50%OVER仕様のシェリー系シングルモルトでは見るべきところがある1本だと思います。

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(先日”酷評”した、現行品2019年リリースのマッカラン12年と18年。シェリー感よりもボディの薄さ、特に12年はトワイスアップで飲んでるのかと思うほどのシャバシャバ系で、この印象が今回のブラインドに影響することに・・・。)

同時に、色々察してしまったのが、今回ブラインドでマッカランを除外する理由ともなった、通常リリースのシェリーオークの存在です。
何が違うって、度数が違うにしても明らかに酒質の厚みが違い過ぎるんですよね。香味の成分はアルコール成分と結び付く部分があるため、度数が高ければ香味は強く、そして厚みも感じやすくなる反面、加水すれば当然それらが失われていくのは仕方ないことですが、それにしたって薄い。その印象から、ブラインドではマッカランじゃなくてファークラスかも・・・と。

マッカラン・クラシックカットは数量限定で、ブレンダーが味を”安定させない”ことを選んで毎年毎年リリースしていくものです。そのため、原酒についてもある程度選べるのでしょうし、何よりカスクストレングスでのリリースです。
一方で、オフィシャル通常リリースは、マッカランの規模ともなれば何百万本と作り出さなければなりません。当然、ロット差を無くすため樽の誤差を吸収していく必要があるわけですが、なかには微妙なものも混じるでしょう。混ぜて加水すればある程度誤差は分散しますが、どうしても違いは出ます。となると、残る選択肢はフィルタリングしかありません。

強烈なチルフィルをあえてかけてリリースされたウイスキーに、オールドパー・シルバーがあります。あれもボディはかなり軽かった。
ある意味での去勢をあえてして、良い部分を犠牲に悪い部分を削り、安定に繋げたのが通常リリースで、それをしていないリリースの一つがクラシックカット。なんの裏付けもありませんが、1年前に飲ませてもらった近年のニューメイクはそれなりに厚みのあるもので、この仮説がに腑に落ちてしまうのです。
マッカランは原料と仕込みから死んだわけではなく、大量生産故の弊害であると。

ブラインドの結果そのものは非常に悔しいものでしたが、それ以上に上記仮説と共に、自分のなかで新しい気づきもあった、得るものの多いテイスティングとなりました。