カテゴリ:
IMG_20200501_090455 
HIGHLAND PARK 
For WU DRAM CLAN WHISKY SOCIETY 
Aged 15 years 
Distilled 2003 
Bottled 2019 
Cask type 1st fill European OaK Sherry Butt #6162 
700ml 58.2% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@サンプル
評価:★★★★★★(6)

香り:サルファリーさと湿ったウッディネス。合わせて粘性のあるダークフルーツシロップ、焦げた樹液やみたらし、くるみのほろ苦さ。時間経過で古びたウェアハウスのような、古典的なニュアンスも漂う。 

味:シェリーオーク由来の甘酸っぱいダークフルーツのフレーバーと、かりんとうや黒飴の甘さ。リッチな口当たりから、スパイシーな刺激、サルファリーさ、椎茸の出汁のようなエキスも微かにある。フィニッシュはウッディなタンニン、ドライ。硫黄香はあるが、香りほど気にならず、奥には微かにモルティーなフルーティーさも。

第一印象は、ハイランドパークのその他リリースでも度々見られる硫黄を含んだ濃厚シェリー系。”現時点”では、特筆して素晴らしいボトルとは言い難い。ただ、このモルトの本質はシェリー感よりもその奥にある。スワリングした時に混じる古典的なアロマ。口直しで水を含んだ時の口内に残るフルーティーな香味の残滓。加水の変化に加え、硫黄はグラスのなかで比較的早く抜けていく印象で、間違いなく瓶熟推奨。将来の確たる可能性に満ちた1本。

IMG_20200419_204754
IMG_20200426_075715

先日Kyoto Fine Wine & Spiritsの店主O氏からサンプルをいただいていたうちの1つ、Wu Dram Clan向けのハイランドパーク。
このグループは、もともとドイツの愛好家2名で構成されていたものですが、そこにO氏が後追いでジョイントし、先日の”鹿バンク”のリリースに続くという流れです。

今回のハイランドパークはというと、飲んだ印象ではまず違和感。店主の好みは古典的なモルトで、なかでもグレンモールが大好きというちょっとマニアックな趣向があったりするのですが。今回のハイランドパークのどシェリーで多少サルファリーでも許容しちゃうのは、モルトマニアックス受賞系というか、欧州の愛好家っぽいチョイスなんですよね。
この点については、選定の経緯を聞いてみて納得。カスク選定にO氏は関わっておらず、選定者はドイツの2名。リリースが決まっていたあとで、グループに加わったのだそうです。

ハイランドパークを傘下とするエドリントングループは、ここ数年15年熟成前後のシングルカスクや、ヴァイキングソウルなどを含めた樽売りを、比較的積極的にやっているような印象があります。
それも一般市場向けのオフィシャルスタンダードではなく、免税向けや、専門ショップ向け、あるいは欧州やアジアの愛好家向けなど、誤解を恐れず言えば「お金がありそうなところに特別感のあるリリースをピンポイントで投入している」ような戦略が見えるのです。
この辺りは、同グループ傘下のマッカランでも類似の動きを見ることができますね。

IMG_20191029_220925
(ハイランドパークのシングルカスクリリース。免税店向け、ショップ向けの一部。これら以外にも今回の愛好家向け、台湾やシンガポール向け等多数存在する。)

ただ、近年のハイランドパークのシングルカスクをいくつか飲んだ印象としては、安定感に乏しいというか、クオリティは結構ピンキリであるように感じます。
サルファリーさが目立つものが多いのは好みの問題もあるのでさておき、シェリー感を突き破るようなベース部分の荒さ、シェリー樽由来のフレーバーの濃淡、傾向の違いは現代のファークラスマジックか?というくらいにばらつくのです。
樽売りにあたり、意図的にキャラを変えているとしても、玉石混合の玉になかなか当たらない印象もあり、現代のシェリー系故の難しさなのかもしれません。

ではこのWu Dram Clan向けはどうかというと、先に触れたようにモルトマニアックスが好みそうな、スパニッシュオーク材のエキスの色濃く混じった、濃厚シェリー系・・・で終わらない。今後、時間と共に磨き抜かれた”玉”に変化する可能性を秘めた、カスクリリースであると言えます。

度数高く、熟成年数もそこまで長期ではないので、口内を酒質由来の刺激が強い部分もありますが、言い換えれば開封後年単位で経過しても、経年変化に耐えられる可能性があるということ。硫黄感の抜けは比較的早そうで、グラスの中の変化で将来の姿を感じることができる点もポイントですが、なにより特筆すべきはベース部分の味わいと言えます。
樽材由来のエキスやサルファリーさの裏に、熟成したハイランドパークが持つフルーティーで、古典的な麦芽風味に通じる要素が潜んでおり、瓶熟、開封後変化させることで、数年程度で大きく進化する可能性があります。

ハイランドパークは、過去にも「10年前は全然ダメだったけど、瓶熟で変化した」というボトルがいくつかあり(昨年末、某ストイックな人にブラインドで出されたばかり(笑))、その兆しが現段階で見えている今回のボトルには安心感すらあります。
難しいリリースが多い中でも、光るモノは集まるべきところに集まるんですかねぇ・・・。今後はレダイグ、そして他数種類のリリースも予定されているそうで、その引きの強さ故に今から楽しみです。