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SPRINGBANK 
Local Barley 
Aged 10 years 
Distilled 2009 July 
Bottled 2019 Oct 
700ml 56.2% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:香ばしい麦芽香と微かに柑橘、やや焦げたようなピートのスモーキーさ。奥には若いモルトの酸からオーク由来のバニラ、華やかさはアクセント程度にあり、あくまでもモルティーなアロマが強く主体的に感じられる。

味:少しざらつくような口当たりだが、コクがあってオイリー、麦芽風味はしっかりと濃く、スパイシーで微かにニューポッティーな若い酸が香り同様にある。合わせてじわじわと潮気に加えて焦げたようなピート。余韻にかけてトロピカルな要素がオークフレーバーに混じり、ピートフレーバーと共に長く続く。

若さはあるが、バンクらしい麦芽由来のフレーバーを軸として、余韻のフルーティーさはトロピカル系統の味わいに繋がっている、麦芽風味の魅力が全面にあるボトル。荒削りながらドキッとさせられる存在で、将来どれだけの飲み手を魅了するだろうか。しかしなぜシリーズの最初からこれを出さなかった。。。最後にこれを持ってくるあたり、作り手の作為というかドヤ顔が見えるようである。

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恐らく多くの愛好家が唸らされただろう、新生ローカルバーレイシリーズ5作にして最終リリース。ファーストリリースを除くと、10年前後熟成で類似スペックのものが4作続いたことになりますが、間違いなく最後のこの1本こそローカルバーレイに求める味わい、理想系に近かったのではないかと思います。
(過去リリースについては、”ローカルバーレイ”のタグを参照。)

2016年、新たにリリースされたローカルバーレイシリーズを飲んだ時、真っ先に感じたのは「良くも悪くも麦の地酒」という印象でした。
かつて、スコッチウイスキーは地酒的なものであり、それがブランデーに対抗する形でマイルドで飲みやすいブレンデッドが主流となり、最終的には世界的に認められる主要な輸出品になっていきました。
その間、香味は飲みやすく市場の好みに合わせて変化。結果、量産の過程で効率化の名のもとに失われていったものもあると考えられます。実際、近年はシングルモルトであっても麦の味が細くなり、樽しゃぶり系のリリースが増えてきていることに異論はないと思います。

一方、ある程度ウイスキーに慣れ親しんだ愛好家は、シングルカスクやカスクストレングス等のより香味の強いものや、”麦の酒”を求めるようになっていく傾向があります。求めるのは圧殺するようなシェリーでも、口の中でピートを焚いているようなヘビーピートでもない、麦の味が分厚いウイスキーなのです。

その点でこのローカルバーレイ10年は、若さ故に全体的に粗さがあるのは否めませんが、これくらいの粗さは香味の強いウイスキーを求める愛好家にとっては許容範囲でしょう。
厚みのある麦芽風味はローストしたようなほろ苦さと、スプリングバンクらしさと言える個性的なニュアンス(個人的には、蝋っぽい麦感)、土っぽいピート香とほのかな塩気、余韻にかけて広がるトロピカルなフルーティーさ。バーボン樽由来のオーキーさではなく、あくまでも昔のハイランドモルト等に感じられるニュアンス。。。
これらの要素はすべて麦由来のキャラクターであり、まさに麦の地酒であり好ましい要素もある。ローカルバーレイに求める味わいとして、理想系に近いように感じられたわけです。

なお、前作となる9年のレビューでも書きましたが、このローカルバーレイに使われている麦芽品種はオプティックで、ベアなどの古代品種ではない、普通の近代品種です。
スプリングバンクは100%フロアモルティングなので、麦と精麦に特殊な要素は見られません。なぜ新生ローカルバーレイからは、こうも強いフレーバーやオールドモルトに通じるフルーティーさが感じられるのか。
樽構成はバーボン77%、シェリー30%、ポート3%とのことですが、特段特別な組み合わせではなく。恐らくシェリーはリフィルで、特殊なところでポートの役割は全体の繋ぎ、バランサー。ですがこの麦由来の風味の強さとはあまり関係なく。。。

作り手がローカルバーレイたる味わいを意識して、試行錯誤を重ねてきたからとは思いますが、新生ローカルバーレイシリーズ5作の最終リリースにして、集大成として納得させられる美味しさの一方、最後まで謎は残ったままでした。