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MAKER'S MARK 
PRIVATE SELECT 
BARREL FINISHED OAK SATVES
SELECTION BY SHINANOYA wtih Scott 
750ml 53.8% 

グラス:シュピゲラウテイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:トップノートは柔らかく包まれるような甘いアロマ。甘食、キャラメルコーティングされたオレンジ、スペアミント。合わせて香ばしいチャーオークとスパイシーさのアクセント。若干溶剤っぽさに通じるニュアンスもあるが、バランスは整っていて多層感がある。

味:粘性のあるリッチな口当たり。とろりとシロップのような甘味から、チェリーやオレンジなどを思わせる酸味。そしてじわじわと焦げたオークのほろ苦い香味が、ほのかな酵母のニュアンスとともに鼻腔に抜け、口内を引き締めていく。
余韻はウッディだが柔らかく、オークエキス由来の色の濃い甘味と軽いスパイス、カカオを思わせる苦味を伴って長く残る。

オーク由来のエキスがしっかり溶け込み、バランスの整った味わい深いバーボン。その柔らかい甘さに加え、焦げたようなニュアンスが悪目立ちしない範囲で主張している点が面白い。またスパイシーな要素が多層感に繋がっている。ロックにすると一瞬焦げたような苦味が強くなるが、氷に負けずバランスは崩れない。むしろほど良く延びて長く楽しめる。

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信濃屋のメンバーが、メーカーズマークのプログラムマネージャーであるScott Mooney氏とともにフレーバー構成を行った、オリジナルのメーカーズマーク。
プライベートセレクトは、恐らくメーカーズマーク46に使われるものと同等程度の熟成年数の原酒をベースに、加工、焼き具合などで変化をつけたアメリカンオークとフレンチオークの5種類10枚からなる”インナーステイヴ”を漬け込んで、9週間程度のフィニッシュを経てリリースされるものです。(詳細はこちらを参照。)

そのインナーステイヴの組合せ(レシピ)は1001通りあるそうで、ベースとなる原酒の個体差を合わせれば、文字通り世界でたった一つのオリジナルフレーバーを作り出せるのが特徴。
実際これまでリリースされたものを何種類か飲んだ印象は、必ずすべての完成度がレベルアップするわけではありませんが、バランス良く多層的なものがあれば、リッチでメローなタイプやフルーティーなタイプもある。様々なキャラクターを感じることができました。
価格もそれほど高くありませんし、香味の多様性というバーボンの課題を解消しつつ、効率的にオリジナルリリースを作り出せる革新的なプログラムといえます。

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(プライベートセレクト、インナーステイヴの種類とフレーバーの傾向をまとめた図。この原型となったメーカーズマーク46の開発エピソードは、過去記事に掲載。)

さて今回のボトルですが、純粋に美味しいメーカーズマークです。
メーカーズマークらしさは、冬小麦を原料に使うことで得られる柔らかい口当たりと言われていますが、今回のレシピはその点を潰しておらず、香味とも該当する特徴をしっかり感じます。
また近年のバーボンはえぐみや渋味を強く感じるものもありますが、これは先に書いたメローなフレーバーが主体で嫌みが少ない。選定者が何を基準にしたかが伝わってくるようです。

そしてそこから効いてくるのがインナーステイヴMo(Roasted French Mocha)と、SP(Toasted French Spice)由来の香味成分です。
味で分かりやすいのはMo由来と考えられる奥深い甘味と、焦げたようなほろ苦く香ばしいフレーバー。味わい全体に、奥行きと甘味だけだと締まらない余韻にビターなアクセントを加えています。
また、香りや余韻に多層感を与えているのが、SP由来のフレーバーと考えられるスパイシーさ。Moも仕事をしていますが、ただ濃くなってしまうだけのところを、違うベクトルの色彩を加えたような、特に柑橘系やハーブ等の要素を後押ししているのではないかと感じます。

結果、これら2種だけでインナーステイヴ10枚のうち9枚を使っていますが、飲んでみるとこれ以外ないバランスだと感じます。
そして最後に1枚だけ使われたMaker's 46は「つなぎ」として使っているとのこと。上の図にあるように、この木材がMoとSpの中間の属性をもつものであるのが繋ぎの理由と思われますが・・・これは考えすぎかもしれませんが、元々このプライベートセレクトの原型はメーカーズマーク46にあることから、作り手へのリスペクトも込められているのかなとも。いずれにせよ、良い仕事しているバーボンです。
信濃屋からのプライベートセレクトリリースは2作目ですが、個人的には今回のほうが好みでした。

ちなみに、今回のレシピを作った信濃屋メンバーのなかにはバイヤー兼WEB担当の(あ)こと秋本さんがおり、若手ながら主要メンバーの一人として本ボトルを担当されていたようです。
秋本さんとはTWDの活動や個人的な持ち寄り会などで繋がりが深く、好みはそれなりに把握していたこともあり・・・
今回のバーボンを飲んで「なるほどねー」と思う部分が多く、その点を含めてあれこれ考えるのも楽しめた1本でした。
(評価は★6ー7にするか悩みましたが、自分が楽しめた要因は上記事前情報にもあるでしょうから、一つおとして★6としています。)

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以下、信濃屋繋がりで雑談。
主催、企画運営は今回のボトルにも関わっている信濃屋の若手チームメンバー。同店による出展はもちろん最近イベントで増えてきた有志による持ち寄りブースや、プロ等によるセミナーもあり、かつ入場券が都内イベントにしては安価に押さえられているのも若手向けという感じで・・・いやぁこういう取り組みって新しいし、良いですね。

自分の頃は20代というだけで貴重がられた時代でしたが、今はどんどん若手世代の愛好家が増えてきていますから、いよいよメーカー主催で開催されるようになったのか。。。というのは些か感慨深くもあります。
昭和な自分には参加権利がありませんが、企画の趣旨には大賛成。盛会を祈念して、ここで紹介させていただきます。

Liquor Lovers 2019 →詳細はこちら
https://liqurlovers.peatix.com/