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AMBASSADOR 
"Embassy" 
Blended scotch whisky 
1980's 
750ml 43% 

グラス:国際規格テイスティング
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★(4ー5)

香り:ドライでライト、グレーン系の穀物感、あわせて乾いた麦芽、おこし、干し草、奥から仄かに白粉やバニラの麦芽香。淡くモルティーなニュアンスも感じられる。

味:ライトで柔らかく、あるいは少し薄い口当たり。薄めた蜂蜜、わたあめ、バニラウェハース、柔らかい甘味から徐々にドライでヒリヒリとした刺激。ほろ苦くドライなフィニッシュ。

ライトでプレーンなウイスキー。グレーンと無個性なモルトの組み合わせで、比率は7:3くらいか。ボディもモルティーさも熟成感も弱く、ピートフレーバーも乏しい。一方で若さが目立つわけでもなく、なんとも面白味のないウイスキー。
ハイボール、あるいは水割りで飲まれていたシーンは想像に難くない。

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スコッチの大使(アンバサダー)の大使館(エンバシー)という、それらしい銘をつけられているブレンデッド。ざっと調べた感じでは、日本市場向けのリリースだったようです。
流通時期にあたる1980年代後半。表記から察するに1988年頃の日本は天下のバブル景気真っ只中にあり、様々な銘柄で日本限定流通品がありましたから、元々輸出用銘柄であるアンバサダーがその市場に参入しないわけがなかったということですね。

アンバサダーは1954年からハイラムウォーカーの傘下にあり、構成原酒はバランタインと共通していると言われています。他方で、ベースで明確に同じなのはスキャパのみで、アードベッグやグレンバーギー等がどの程度使われていたかは未知数。実際、12年や25年などの上位グレードの構成は内陸寄りで、アイラの比率はバランタインに比べて控えめだったと感じます。
アンバサダーのメインターゲットはアメリカ市場だったようですから、スモーキーさを抑えてライトかマイルドな構成を目指すのも違和感はありません。

加えて今回の流通時期である、1980年代後半あたりのスタンダードグレードのスコッチウイスキーは、原料の品種改良や製造行程の簡略化など様々な要因から原酒のコクが乏しくなってきている時期にあたり・・・
このエンバシーからはアイラを思わせるスモーキーさも、熟成したハイランドモルトの華やかさもなく。ライトで無個性で、個性の弱い原酒をグレーンで引き伸ばしたような、まさに特級時代末期の量産型ブレンデッドという構成です。

ちなみにアンバサダーは、1970年代頃に”World Lightest"をキャッチコピーとして採用していたそうですが、当時はそこまでライトという訳ではなく。それが作り手の意図とは離れたところで”世界一ライトなウイスキー”にたどり着いたとすれば、なんとも皮肉な結果であると感じます。

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今日のオマケ:ポマール 2011 シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェ
先日の痛い割り勘出費のうちの一本。銘柄解説は割愛。

ベリーシロップのような甘やかさ、木材と微かに苔、マシュルーム。少し湿ったようなニュアンスがあり、しっとりとしたアロマ。口当たりはブルゴーニュのピノにしては比較的肉厚というか、ボディのある味わい。そこから熟したザクロや梅干しを思わせる柔らかい酸、染み込むようなタンニンが蓄積していく。
こちらもチーズとの相性バッチリ。肉も食べたかった・・・。

死屍累々と言われるブルゴーニュでも、それなりに値段のするのはちゃんと美味しいんだなと感じた1杯。その筋の方からすれば1万円前後のワインなんて当たり前というか、こんなのまだまだという話かもしれませんが、特にこだわりのない自分からすると、こういうのが3000円くらいで飲めたら選択肢も広がるんだろうなと思ってしまう。
普段がはっきりと分かりやすい味わいの新世界中心なので、たまにブルゴーニュを飲むと香味の組み立てというか、全体のバランスの基準点を考えるいい機会になりますね。