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”ジムマーレイ氏はアメリカで宝物を見つけたのかもしれない”
10月とは思えないほど暑い日々が続いていましたが、所用で1週間弱海外に出ている間に、すっかり秋らしくなっていた。。。帰ってきたら寒いしドラフト会議も終わっていたし、ジムマーレイ・ウイスキーバイブルも2020がリリースされてましたよ。なんだろう、この取り残され感。
そんなわけで少し遅くなりましたが、今年も同書籍の動向について紹介していきます。

JIM MURRAY'S WHISKY BIBLE 2020

ウイスキーバイブルは、次の1年間のウイスキーガイドとして、評論家のジムマーレイ氏がまとめている書籍。スコッチのみならず、アジア、アメリカ、カナダと世界中から約4700という銘柄が掲載されています。
この書籍の特徴はジム・マーレイ氏が、掲載されているすべての銘柄をテイスティングし、独自採点でポイントをつけてまとめているということ。そのため2018-2019年時点で最も評価が高かった銘柄が世界一のウイスキー、ワールドウイスキーオブザイヤーとして掲載されることとなるため、毎年少なからず注目されている著書でもあります。

ウイスキー特化で世界一を認定しているアワードは、愛好家団体が主催するモルトマニアックス(MMA)、ウイスキーマガジンが主催するワールドウイスキーアワード(WWA)、そしてジムマーレイ氏のウイスキーオブザイヤーがあります。
他に今年から始まった日本のウイ文研主催のTWSCや、総合酒類コンペではISCなどもありますが、ウイスキーに特化したタイトルは上の3つが愛好家間でのメジャーどころ。
それぞれ審査委員の好みというか、毛色の違いというか、受賞案件を比べてみると違いが出て面白いなと感じる反面、最近のウイスキーバイブルには些か傾向に変化があるという気がします。

というのも、このジムマーレイ氏の評価ですが、タイトルは5年前を最後にスコットランドから離れ、日本を経由してカナダから米国入り。
2017年にブッカーズ・ライ13年、2018年にテイラーフォーグレーン12年、そして2019年にはウィリアム・ラルー・ウェラーと3年連続で世界一をアメリカのウイスキーがとっているだけでなく、特に昨年は主要部門がほぼアメリカ色に染まった受賞結果は衝撃でした。

元々ジムマーレイ氏はバーボンやライウイスキーを評価していて、以前から「ライウイスキーにルネッサンスが起こる」とも発言しており、トップ評価を受けたのは初めてではありません。
中でもバッファロー・トレース蒸留所の原酒を使ったウイスキーがお気に入りという印象。そして今年発売されたウイスキーバイブル2020におけるアワードは・・・昨年の流れそのまま、またしてもアメリカ、またしてもバーボン。それも、4700銘柄のうち上位3銘柄をアメリカンウイスキーが独占するという、過去例のない結果となりました。

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■THE WINNER
・Jim murray's World Whisky of the Year 2020
1792 Full Proof Kentucky Straight Bourbon



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・Second Finest Whisky in the World
William Laure Weller 2018

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・Third Finest Whisky In the World
THOMAS H. HANDY SAZERAC STRAIGHT RYE WHISKY 2018

この3銘柄はすべて、バッファロー・トレース蒸留所の系列によって作られたものです。
これまで全17巻を発刊してきたウイスキーバイブル史上初めての出来事で、ジムマーレイ氏も「さすがにあり得ないと思ったので、トップ10の銘柄を再度テイスティングしたが、結果は変わらなかった」とSpirits business紙に語っています。
2位となったウィリアム・ラルー・ウェラー、並びに3位のトーマス・ハンディ・サゼラックは昨年のウイスキーバイブル2019から連続の表彰台。よっぽど旨いのか。。。

ちなみに1792フルプルーフは、蒸留所はバートン1792ですがここもバッファロー・トレースの系列。ビンテージ違いと思われるものを飲んだことがあり、確かに熟成感とリッチな甘味、適度なウッディネスで余韻も良くできてる。最近のバーボンにしては良い仕事してるなあ、という感じの1本でした。(レビューを掲載していたら★7くらいの評価だったと思います。)

自分はバーボンも結構好きなので色々飲んでいますし、スコッチやジャパニーズと同じくらい魅力があるジャンル、と言うことは理解しています。安定したクオリティを求めるならバーボンとも言ってるくらいです。
他方で、ここ数年で同ジャンルのウイスキーが味を向上させたという印象はなく、むしろ逆に長熟原酒と良質な樽の枯渇でスコッチ同様苦しい状況。しかしウイスキーバイブル2014でグレンモーレンジ・エランタ19年が世界一となって以来、頑なにスコッチのタイトル獲得がない不思議。。。しかも今年はTop 3もシングルカスクウイスキー部門も、一つもスコッチの名前がないのです。

全体的に苦しいなかに、光輝く素晴らしい一樽がたまに現れる条件は五分五分。それでこの結果は、単にそのサンプルが入らないだけかもですが、なにかを意図しているような気もしてしまいます。
例えば、クラフトバーボンブームが起こっている同国において、ブランド戦略として長熟プレミアムバーボンの市場を活性化させようとしているとか・・・考えすぎかもしれませんが。

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さて、他のカテゴリーに目を向けると、スコッチウイスキーでは今年も来ましたグレングラント18年。年数ごとのカテゴリーでもグラントのオフィシャルがウィナーとなっており、実際どのグレードでもコスパ、構成共に良くできているオフィシャルブランドだと思います。

スコッチカテゴリーはグラント18年の連覇となりましたが、同じ系統だとさらにフルーティーなグレンモーレンジ19年もありますし、麦系ならアバフェルディやクライゲラヒの20年オーバーグレードもある。ミドルグレードのスコッチモルトは拮抗してるような気がするんですよね。
さらにリストを見ていくと。。。"The Macphail 1949 China Special Edition 1"ってなんやねんそれw
中国市場はホント金が動いている。ただ70年熟成で過度な熟成が過ぎたのかもしれませんが、こういう限定品の長熟スコッチがトップに入ってこないのはジムマーレイ著書の傾向でもあります。

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(ジャパニーズ・シングルモルトカテゴリーを受賞した、シングルモルト松井・ミズナラカスク。決して悪い酒とは言わないが。。。相対評価で色々と疑問が。本ブログでのレビューはこちら

そして衝撃だったのが、ジャパニーズのカテゴリー。え、いや他にあるやろ?という結果は、TOP3以上の衝撃と言えます。
まずジャパニーズウイスキーオブザイヤーは、竹鶴ピュアモルトNASが受賞。不味いとは言いませんが。。。昨年は萌木の村がリリースしたポールラッシュ生誕120周年記念シングルモルトでしたから、落差が凄まじい。
日本のウイスキーの上位グレードにあるような強めに出た樽感が苦手なら、バーボンも同じようにウッディですし、シングルカスクウイスキーオブザイヤーを受賞したのは短熟樽感バッチリな南投オマーのバーボンバレルというのは。。。なんというか選定に微妙な違和感があるんですよね。

そしてジャパニーズのシングルモルトカテゴリーでは、松井酒造"シングルモルト松井・ミズナラカスク"がウィナーに。複雑な表情をする愛好家の姿が見えるようですが、以前レビューしたとおり、これはウイスキー単体で見るとそんなに悪くありません。
クリアで柔らかい酒質に、バーボン樽の鏡板だけミズナラに変えるという工夫(単にコスト削減目的の偶然の産物かもしれないが)もあって、風味もこの時点では良い感じにまとまってます。
ただし悪くないのであって、日本最高の一本とは。。。数年前の某ウイスキー評論家T氏の言葉を借りれば、正気とは思えない、が適切にすら感じます。

この受賞に、愛好家が祝福ムードにはおそらくならないように思います。あの松井が?という色眼鏡で見られてしまうだろうこの結果は、身から出た錆というか、企業側の問題に過ぎません。酒に罪はないのですが、親の評判で苦労する子供を見るような気持ちになりますね。


だらだら書いてしまいましたが、アメリカの蒸留所のなかに素晴らしい一樽が眠っているというのは確かにその通りで、このジャンルにもう少し目を向けるべきとも感じています。
ただスコッチに比べると、日本に入って来ていない銘柄がアメリカンウイスキーには多く、トップ銘柄をテイスティング出来る機会はまずないだろうとも思います。
ですが、このジャンルの特徴は、同じ蒸留所で作られた類似系統の銘柄が結構あるということ。
バッファロー・トレース蒸留所であれば、ブラントン・ゴールドや、ジョージTスタッグJr等、比較的入手しやすいものもあります。
また受賞銘柄以外では、最近メーカーズマークのプライベートセレクトが多数リリースされていて、これもなかなか良くできているバーボンです。
2020年は、ジャパニーズのクラフト各社から3年熟成がリリースされる年で、その成長を見ると共に、この辺りを追いかけてみるのも面白いと思います。


【ウイスキーバイブル2020 全カテゴリーウィナーリスト】
■SCOTCH WHISKY
・Scotch Whisky of the Year
Glen Grant Aged 18 Years Rare Edition

・Single Malt of the Year (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Years Rare Edition

・Single Malt of the Year (Single Cask)
The Macphail 1949 China Special Edition 1

・Scotch Blend of the Year
Ballantine’s 17 Years Old

・Scotch Grain of the Year
The Last Drop Dumbarton 1977

・Scotch Vatted Malt of the Year
Glen Castle Blended Malt 1990

■SINGLE MALT SCOTCH WHISKY
・No Age Statement
Glen Grant Rothes Chronicles Cask Haven

・10 Years & Under (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 10 Years

・10 Years & Under (Single Cask)
Annandale Man O’ Sword

・11-15 Years (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 15 Years Batch Strength

・11-15 Years (Single Cask)
Signatory Vintage Edradour Ballechin 12 Year Old

・16-21 Years (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Years Rare Edition

・16-21 Years (Single Cask)
Whisky Castle Glen Spey Aged 21 Years

・22-27 Years (Multiple Casks)
Glenmorangie Grand Vintage 1996

・22-27 Years (Single Cask)
The Whisky Shop Glendronach Aged 26 Years

・28-34 Years (Multiple Casks)
Ben Nevis 32 Years Old 1966

・28-34 Years (Single Cask)
Gordon & MacPhail Inverleven 1985

・35-40 Years (Multiple Casks)
Port Ellen 39 Years Old

・35-40 Years (Single Cask)
Glenfarclas The Family Casks 1978 W18

・41 Years & Over (Multiple Casks)
Glen Scotia 45 Year Old

・41 Years & Over (Single Cask)
The Macphail 1949 China Special Edition 1

■BLENDED SCOTCH WHISKY
・No Age Statement (Standard)
Ballantine’s Finest

・No Age Statement (Premium)
Johnnie Walker Blue Label Ghost & Rare

・5-12 Years
Johnnie Walker Black Label 12 Years Old

・13-18 Years
Ballantine’s 17 Years Old

・19 – 25 Years
Dewar’s Aged 25 Years The Signature

・26 – 50 Years
The Last Drop 56 Year Old Blend

■IRISH WHISKEY
・Irish Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Years Cask Strength

・Irish Pot Still Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Years Cask Strength

・Irish Single Malt of the Year
Bushmills Aged 21 Years

・Irish Blend of the Year
Jameson

・Irish Single Cask of the Year
Kinahan’s Special Release Project 11 Year Old

■AMERICAN WHISKEY
・Bourbon of the Year
1792 Full Proof Kentucky Straight Bourbon

・Rye of the Year
Thomas H. Handy Sazerac 128.8 Proof

・US Micro Whisky of the Year
Garrison Brothers Balmorhea

・US Micro Whisky of the Year (Runner Up)
291 Barrel Proof Colorado Whiskey Aged 2 Years

■BOURBON
・No Age Statement (Multiple Barrels)
1792 Full Proof Kentucky Straight Bourbon

・No Age Statement (Single Barrel) Colonel E H Taylor Single Barrel Bottled In Bond

・9 Years and Under
Russell’s Reserve Single Barrel

・10-12 Years
Elijah Craig Barrel Proof Aged 12 Years

・11-15 Years
Pappy Van Winkle 15 Years Old

・16-20 Years
Michter’s 20 Year Old Kentucky Straight Bourbon

・21 Years and Over
Pappy Van Winkle 23 Years Old

■RYE
・No Age Statement
Thomas H. Handy Sazerac 128.8 Proof

・Up to 10 Years
Knob Creek Cask Strength

・11-15 Years
Van Winkle Family Reserve 13 Years Old

・Over 15 Years
Sazerac 18 Years Old

・Single Cask
Knob Creek Single Barrel Select

■CANADIAN WHISKY
・Canadian Whisky of the Year
Crown Royal Northern Harvest Rye

■JAPANESE WHISKY
・Japanese Whisky of the Year
Nikka Taketsuru Pure Malt

・Single Malt of the Year (MB)
The Matsui Mizunara Cask

■EUROPEAN WHISKY
・European Whisky of the Year (Multiple)
Thy Whisky No. 9 Bøg Single Malt (Denmark)

・European Whisky of the Year (Single)
Penderyn Single Cask no. M75-32 (Wales)

■WORLD WHISKY
・Asian Whisky of the Year
Nantou Distillery Omar Bourbon Cask #11140804 (Taiwan)

・Southern Hemisphere Whisky of the Year
Bakery Hill Peated Malt Cask
Strength (Australia)

※上記画像、ならびに受賞リストは以下から引用しました。