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BENROMACH 
Aged 22 years 
Finished in Port Pipes 
Bottled 2005 
Number of bottle 3500 
700ml 45% 

グラス:国際企画テイスティング
場所:自宅
時期:開封後3年程度
評価:★★★★★★(6)

香り:オーキーでドライ、熟した洋梨のようなスウィートな要素と、微かにピーティーな香り立ち。麦芽とバニラ、そこに洋梨や林檎を加熱加工した洋菓子のような甘酸っぱさ、あるいは花梨シロップを思わせる若干べたつきのある甘さを伴う。

味:序盤はスウィートでしっとりとした口当たり。麦芽風味と微かなピート、蜜っぽさのあるフルーティーさは香り同様の構成だが、徐々にドライなウッディネスが余韻にかけて存在を増してくる。
余韻はドライでスパイシー。濃い凍頂烏龍茶のような渋味、ピーティーなほろ苦さが甘味に混じり、麦芽風味が口内に張り付くように残る。

洋菓子のような甘味、麦感がしっかりと備わったボトルである。涼しい時期向きの味わいで、香りはともかく味は麦由来のフレーバーと、ポート樽由来の甘味が強く、暑い時期に飲むとしつこく感じる。それでも余韻のウッディネスなど若干アンバランスなところはあるが、甘味を引き締めるピート香、なによりフルーティーな熟成感は純粋に味わい深い。ポートパイプの樽感を除けば・・・古典的なスペイサイドとはこういうことを言うのだろう。

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ベンロマック蒸留所がDCL社の傘下にあった時代の原酒で作られたオフィシャルリリース。自分が飲み始めた頃は、結構この手のリリースが残っていた(または普通に飲めた)ので、懐かしい1本でもあります。
今回の原酒の仕込みは1982年か1983年ごろで、DCL傘下での閉鎖間際。そこから22年程度熟成されたものを、一旦バッティングした後、22ヶ月ポート樽(ポートパイプなので750リットルサイズ)でフィニッシュ。元々のフルーティーさに加えて、微妙な酸味をもった甘口かつウッディなニュアンスが付与された仕上がりとなっています。

同蒸留所は1953年にDCL傘下となり、広くブレンド用原酒として活用されてきました。この間、フロアモルティングの廃止などお約束の効率化が適用されるなど増産路線を取りますが、1980年代にかけて原酒過多となると生産調整を理由に閉鎖。その後は使われていない蒸留設備が他の蒸留所にまわされるなど、散々な扱いを受けていたようです。
1993年、ボトラーズメーカーのGM社によって買収され、大がかりなリニューアル工事が行われた後、同社傘下の蒸留所として1998年(一部資料の表記では1999年※)に再稼働して現在に至ります。
※1998年は試験蒸留、1999年が本格的な蒸留開始と推察。

再稼働後のベンロマックからは2009年にシングルモルト10年熟成が発売されましたが、このオフィシャルスタンダードが安定してリリース出来るようになるまでの繋ぎとして、買収以降不定期にリリースされていたのが、今回のボトルに使われているような、DCL時代の遺産。
なかでも60~70年代のものは当時のリフィルシェリーバットまたはホグスヘッドに詰められており、酒質の厚さと個性の強さに加え、現行のものとは異なるフルーティーさや、当時らしいスモーキーフレーバーが魅力。今回のボトルの場合はポート樽由来の要素を除けば、その片鱗は感じることが出来るといったところです。

現在のベンロマックが目指す「古典的なスペイサイドモルト」がどういうキャラクターか。かつてのそれがそうとは公式には発表されていませんが、当時のベンロマックもそのキャラクターを形成する1ピースであったことは間違いなく。
当該原酒を使ったリリースはそこそこ数が出ているので、BAR等で飲んでみると参考になるかもしれません。