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BLANTON 
SINGLE BARREL 
KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKEY 
Distilled 1978-1981
Bottled 1989 
Cask No,433 
750ml 46.5% 

グラス:國際企画テイスティング
開封後:半年程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香:ハーバルな華やかさとスパイシーな刺激。合わせてキャラメルソースやビスケット、微かにシナモンやオレンジピールのアクセント。濃くはないが程よい甘味が感じられる。

味:口当たりはスムーズでメローな甘味から、スパイシーな刺激が口内に広がる。薄めたメープルシロップやべっこう飴、紅茶の出涸らし、酸味は少し発酵したようなニュアンスを伴う。ボディは度数相応のボリュームがあり、余韻はスパイシーでウッディ、ドライなフィニッシュが長く続く。

樽感はそこまで濃厚ではないが、香味とも程よく熟成を感じさせる味わいが、あとに続くスパイシーなフレーバーを邪魔しない。恐らくライ麦由来の特徴だろう。また、ちょっと牧場っぽいニュアンスがあるというか、オールドのブラントンには独特の特徴がある。個人的な好みを言えば、もう少し樽が濃ければ。。。ロックは及第点、ハイボールまたはミントジュレップがオススメ。

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現在のバッファロー・トレース蒸留所が、かつてエンシェントエイジ蒸留所として操業していた時代にリリースされた1本。ブラントンは1984年に誕生したブランドで、今回のものは初期のボトルに当たります。
名称変更が行われたのは1999年、合わせて結構な改装もしている模様。その影響だけの問題ではないとは思いますが、現行のブラントンとは良くも悪くも別物な仕上がりだと感じます。

ブラントンの最大の特徴は、シングルバレルであるということ。加水とは言えバーボンバレル一つからは300本程度しかボトリングされないなかで、万単位の出荷を行うスタンダードグレードをブレンドしないでリリースするというのは、余程原酒をしっかり選定しているか、フィルタリング等で細かい誤差を取り除いてるか、そのどちらかだと感じます。(コストと時間を考えると、後者と推察・・・)
熟成行程では4年程度熟成した原酒のうち、ブラントンとして相応しいとされる樽を専用の熟成庫Hに移し、さらに4~6年熟成させるという情報が日本市場では広く使われていますが、現地では専用のマッシュビル(コーン75-78%、ライ12-15%のハイライ仕様)で仕込んだものを、最初から熟成庫Hで6~8年とされています。

また熟成に使われるウェアハウスHについても、該当する熟成庫である理由は験担ぎのようなもの、というのが日本側で説明されている内容ですが、実際はAからZまである熟成庫のうち、Hだけが木造ではなく屋根や外壁が一部金属で作られていて、室内温度が屋外とあまり変わらなくなる(むしろより温度差が大きくなる)。これによってさらに熟成が進むため、とする明確な理由があるようです。
なぜ日本と現地で異なる素性説明が存在するのか。それは恐らくですが、ブラントンがリリースされた直後は、原酒の状況に応じてあてがうブランドを変えるため樽を移す作業が行われていたものの、近年はプロセスを簡略化し、最初から専用の原酒を作り、かつ温度差の大きい熟成庫であることを考慮してトータルの熟成年数を2年程度短くしたのなら、効率化の観点に加え情報の違いがあっても違和感ありません。

この手の変更は資本や体制が変わった時に行われることが多いので、1999年の蒸留名称の変更と合わせて仕込み方法を変えた。。。とかでしょうか。もしそうであれば、この1989年ボトリングのブラントンは原酒を選定していた時代のもので、現行のブラントンとは異なる作りだったことになります。
まあ、それが味のどの部分に作用しているかというと、これがこうと断定は出来ないですが(汗)。
ただ2000年代くらいまでのブラントンは、良い意味で野暮ったいところが魅力としてあります。特に度数の高いものはそれがボディの厚みと共に際立っており、ストレートフロムザバレルやゴールドラベルらハイプルーフのものは、オススメしたいバーボンの一つです。

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なお、ブラントンは個人的に思い入れの深い銘柄でもあります。
リリースが1984年で生まれ年というのもありますが、話は10年以上遡って大学院時代。1学年上の先輩と研究室の帰り際にBAR飲みすることが多かったのですが、その先輩が好んで飲んでいたのがブラントンでした。
当時の自分はまだスコッチとバーボンの違いもよくわかってないような状態でしたが、独特のボトルデザインがかっこよく、カウンターで研究の相談をしながらロックで飲んでいたのです。

そういう意味で、自分にとってブラントンは青春の味というか、大学の思いでの一つ。
こうして飲む度に、あの頃の景色を思い浮かべ、初心に戻れる。まさに特別な1本と言えるのかもしれません。

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今日のオマケ:ブラントンのコルク修復について。
バーボンのオールドボトルは、コルクが折れやすいものが多い印象があります。
バーボンそのものに含まれる樽成分(樹液、糖分に類するもの)が、時間と共にコルクとボトルを固着させてしまうからと考えられますが、中でも大口径のブラントンのコルクが折れると、替えが効きにくいので困ったことに。。。
そんなブラントンは、シャンパンやスパークリングワインのコルクがフィットするのでオススメです。(ロイヤルサルート等にもフィットするので、1つ持っておくと便利。)

ただ、ブラントンと言えばキャップトップの競走馬が象徴でもあり、それがなくなるのはビジュアル的に。。。という声も。
ご安心(?)ください。実はオールドのブラントンはコルクをネジ止めしているので、写真のようにもとのコルクを取り除いて、新しいコルクを接着剤をつけてねじ込むと、キャップを再生できるのです。
万が一があっても安心、気兼ねなくオールドブラントンをお楽しみください(笑)