マーテル コルドンブルー 1990年代流通 40%
MARTELL
CORDON BLEU
OLD LIQUEUR COGNAC
1990's
700ml 40%
グラス:
時期:開封後半年程度
場所:お酒の美術館 神田店
参考評価:★★★★★★(6)
香り:ふくよかで柔らかく広がる香り立ち。カラメルソースやチョコレート、熟した葡萄の甘いアロマ。奥にはウッディな要素と、仄かにオークの華やかさもあるが、基本的には色濃く甘やかなアロマが主体。
味:香り同様の構成。まろやかでスムーズな口当たりから、リッチな色濃い甘味が広がる。まるでカラメルで煮詰めた葡萄等のフルーツのよう。そこから角に主張しないきめ細かいタンニン、ウッディさがあり、序盤の甘味と共に口内で収束していく、引っ掛かりの少ないフィニッシュ。
こってりと甘口、カラメル系。フルーティータイプとは対極の、ある意味でコニャックらしいコニャック。濃厚で複雑さに欠ける部分はあるが、長期間の熟成を経た原酒がふんだんに使われたまろやかさ、重厚さ、引っ掛かりのないスウィートな味わいは、強い味わいのモルトを飲み疲れた時におすすめしたい。
今日は珍しく、コニャック。それもいわゆる甘口系のコニャックです。
現存するコニャックメーカーのなかで創業300年以上ともっとも長い歴史を持つマーテル社。有名大手のレミー、ヘネシー、カミュらのリリースと比較しても、現行品だけでなくオールド市場で一つ高い評価を受けている印象があり、そして同社の象徴とも言えるブランドが今回のコルドンブルーです。
コルドンブルーの意味するところなどは、メーカーサイトや酒販のPRを参照いただくとして・・・後の話への繋ぎで、まずは全体論から。
コニャックにおいて、コルドンブルーが該当するXO相当クラスの商品は、甘口で引っ掛かりの無い重厚な方向性のものと、フルーティーで華やかな方向性のもの、乱暴に分類すると香味構成は2系統のどちらかとなります。(勿論そこまで重厚じゃなかったりその両方の特徴を持つものもありますが)
上に名前をあげた大手の通常ラインナップは前者のタイプが多く、複数の地域の原酒をブレンドしてカラメルか樽で整えるような仕上がり。一般にコニャック、ブランデーと認識されているのはこっちのタイプです。
後者のタイプは、原料由来の甘さやフルーティーさと、オークの華やかなウッディネスが効いた単一地域の少量生産品・・・代表的なブランドがポールジローやラニョーサボラン、ジャンフュー等。これらは長期熟成したスペイサイドモルトのようなフルーティーさから、近年ウイスキー好きにも認知されて愛好者が増えてきています。
一方、同じようにウイスキー側の視点で語ると、前者のタイプはモルトに比べて甘味メインで香味のメリハリに乏しいというか、緩くて飲みごたえに欠ける部分がネックとしてあり、特段評価されてこなかったと感じます。
とはいえ、そのものに魅力が無いわけではなく、前者のタイプをウイスキーで例えるならGM長熟の40%加水のような系統なんですよね。
そして近年のウイスキーから、シェリー系のマイルドでスウィートな加水タイプが減りつつあることを考えると、いよいよこのあたりのジャンルにも注目が集まって、その中でも香味のしっかりしてるタイプとか、重厚なタイプが見直されて来るのではないかと予想しています。
前置きが長くなりましたが、その筆頭と感じているのがマーテル・コルドンブルーです。ヘネシーも甘味濃厚なタイプですが、それがちとしつこい印象。
特にコルドンブルーのオールドは、コクのある濃厚な甘味がありつつも、柔らかい口当たりから余韻にかけてそれがまとまっていくような構成で、多少ウッディな感じもあり、濃厚さに反してべたつきが少ないように思います。
メインで使われている葡萄はボルドリーのものとのことで、同地区の葡萄はグランシャンパーニュほど突き抜けたフレーバーは出ないものの、その分甘味と重みがある印象から、なるほどという構成です。
オールドのざっくりとした時代判定は、1980年代流通のものはラベルが黒で、1990年代は白地に斜めに書かれたMatellが目印。さらに古い1970年代以前はラベルが白地ですが、ラベルが2分割されているものと、ボトルがグリーンカラーのものとがあるようです。
この手のタイプは家に何本も必要なく、1本あれば十分。近年主流のバーボンバレルや作為的ホグスヘッドのドライな香味のなかでは、癒しとも言える位置付けです。
季節は秋、そろそろ涼しくなって甘いお酒が美味しくなってくる時期ですから、XOクラスのものを1本家飲みローテーションに組み込んでみるのはいかがでしょうか。
なお、画竜点睛を欠くようで大変恐縮ですが、我が家では現在カミュXOボルドリーが癒しパートです(笑)
コメント
コメント一覧 (3)
マーテル・エクストラには70年以上保証とあり・・ほんとだったのかな?
朝日新聞社の75年出版「世界の洋酒」での輸入代理店からの商品紹介ではコルドンブルー30年、コルドンアルジャン50年、エクストラ60年となっていて。
さらに90年頃の資料にはコルドンブルー20~30年とかエクストラ35年以上とあったりまちまちです。
かつての樽熟成年数保証が信用できたのかはわかりませんが、同じ等級名を名乗るコニャックの熟成年数は短くなったメーカーが多いように感じますね。
コルドンブルーは75年頃2万5千円で、現在の5万から10万円くらいの贅沢品でしたよ。
貴重な情報ありがとうございます。
おっしゃる通り、コニャックの熟成年数は短くなってきていて、さらに上位のグレードをリリースするというような傾向があると感じています。
ただ、これもフランスの協会が定める、各グレードの熟成年数基準が年代によって異なっているということも関係しているのだと思います。
この辺は詳しく調べていないのですが、2018年4月からXOの最低熟成年数は、それまでが7年以上だったのが、11年以上に増えたようで、基準側は長熟を推奨しているという意外な結果がわかって新鮮な驚きでした。
戦後に公立コニャック協会が発足してから協会管理の在庫台帳への登録が業者の義務になりました。
公式熟成年数は収穫翌年の3月31日を0としその翌年4月1日で1になりさらに翌年4月1日で2というように増えていくもの。
導入された1960年には最長5年までの登録で、78年に6年となかなか保証できる年数は増えず・・XOやナポレオン表記が6年以上とされたのはそのためらしく。
それから登録年数が徐々に増えたため2005年にXO表記は10年以上に改訂する決定がなされ18年から実行されました。
ところが17年にヘネシーがXXOという商品を発売したところ、公式表記とまぎらわしいのでやめるよう通告される事態が。
しかしヘネシーは力業で押し切り、熟成14年以上にXXO表記を認めるという新基準まで導入させることに成功。
今年はマーテルもXXO表記商品を発売したようで。
でも有名銘柄のXO表記商品は20年以上熟成が主体と言われていますし・・はっきりしない状況はこれからも変わらないんでしょうね。