オールドパー 1950年代流通 雑酒特級 43%
REAL ANTIQUE AND RARE OLD
Scotch Whisky
1950's
750ml 43%
グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★★(6ー7)
味:しっとりとしてマイルドな口当たり。古典的な麦芽風味とカルメ焼、色の濃い蜂蜜。続いてピリッとする刺激とオールブランのほろ苦さ、合わせてどっしりと強いピートフレーバーが感じられ、スモーキーなフィニッシュに繋がる。
経年で角はとれているがかなりピートフレーバーが強く、当時のモルトの特徴とされるキャラクターがこのボトルからも感じられる。モルト比率も高く、当時のジョニーウォーカーなどと比較しても決して劣らない。むしろレベルの高いオールドブレンドである。金属臭さえなければ。。。
奇跡的なオールドパーを引き当てることが出来ました。輸入はミリオン商事で、同社は1952年に西八丁堀に東京本社を開業しているため、雑酒表記の期間と合わせると本ボトルの流通時期は1952~1960年ということになります。外箱にも雰囲気がありますね。
オールドパーと言えば金属キャップによる状態の悪いものが多いボトル。古ければ古いほどリスクが高まるため、10本中8本はハズレではないかという宝くじ的ボトルであることは過去の記事でも度々触れてきたところ。加えて、そもそもモノが少ない1950年代流通品で金属臭のないボトルに当たるというのは、ボトルの相場以上に価値と幸運のあることだと思います。
オールドパーの主要原酒であるグレンダランは、1964年に蒸留所の建て替えに着手。以降旧設備と新設備の2蒸留所が稼働する状況となりますが、今回のボトルの流通時期は建て替え前であり、原酒は100%旧設備によるもの。また、使用原酒を12年熟成相当と考えれば、蒸留は1940年代前半から中頃で、戦時中ないし戦後の仕込み。
テイスティングで触れた通り、ピートフレーバーが60~70年代流通のオールドパーと比較してもどっしりと強く感じられるのが特徴で、これはグレンダラン含めブレンドに使われている蒸留所の原酒に、世界大戦の影響から無煙炭の入手が困難となってピートが多く炊かれていたためと考えられます。
いやーこのオールド系統のピートフレーバーがたまらんのですよねえ。
※1960年代以降のオールドパー、香味とラベル変移についてはこちらを参照
さて、オールドパーと言えば、かの総理大臣吉田茂が愛飲していた酒として知られています。こだわりの強い人だったとされ、ウイスキー、葉巻、車、スーツ。。。それぞれこれであると決めた特定の銘柄があり、ウイスキーはオールドパーだったというのです。
それはもう有名なエピソードであり、オールドパー、吉田茂、で検索すると出てくる出てくる数々のコラム記事。同氏が飲み残したとされるオールドパーは、高知県にある所縁の旅館城西館に残されており、いつもチーズをアテに楽しまれていたのだそうです。
ではいつ頃ハマったのかというと、自分の知る限り2つ説があります。
1つは戦前の外交官時代に現地で飲んで気に入っていたというもの。そしてもうひとつが戦後総理大臣に就任し、高知県から立候補して国会議員となった後、遊説で城西館に宿泊した時。ウイスキーが飲みたいと言い、旅館社員が現地の酒屋を方々探して手にいれてきたものという話。
もし後者なら、ちょうど今回の流通時期である1950年代のボトルである可能性が高いのです。
当時の吉田茂総理のもとに相談や挨拶にいって、オールドパーの水割りやロックが出たら気に入られた証拠であると。その後多くの政界関係者に愛飲され、あやかろうとギフトとしても一般にも広く扱われるようになったわけですが。。。
この現行品以上にスモーキーな時代のオールドパーを飲んで気に入るというのは、一般的にピートフレーバーが受け入れられていなかった時代であるにも関わらず、随分日本人離れした味覚を持っていたんだなとも思います。
当時と今では経年変化で味は違うでしょうが、こうして経過した時間の分だけ密度を増すオールドボトルのエピソードこそ、瓶熟によって増していく魅力と言えるのかもしれません。
コメント
コメント一覧 (9)
ティンキャップのオールドパーは戦績3勝1敗です。1敗も許容範囲でした。
ごくたまに透明ボトルのティンキャップオールドパーを見かけますが年代不詳。
3勝のうちの1本が透明ボトルでした。
この手のボトルで3勝1敗は相当な戦績!
その剛運、あやかりたい・・・。
透明ボトルは向けが違うのか、1970年代のスクリューでもたまにありますね。
この記事とはあまり関係のない質問になってしまうのですが、ティンキャップというのはキャップ周りのシールが剥がれている場合、未開栓かどうかを判別する方法というのはあるのでしょうか。
いつもありがとうございます。
正直、判別する方法はないと思います。
ヤフオクとかで、シールが剥がれたティンキャップのボトルを「未開封」といって販売しているアカウントがたまにありますが、むしろその人にどうやって判断したのか聞いてみたいくらいです。
返信ありがとうございます。
やはりわからないんですね。まさにその表記のものを落としに行こうとしてたので助かりました笑
スクリューキャップより古く、値段も高くなりやすいものの方が良物の見分けがつきにくいと言うのは難儀なものですね。
いつもブログを楽しく読ませていただいて、勉強させていただいております。
実はこれと同じボトルを最近入手したんですが、スモーキーな中に少し漬け物っぽいオフフレーバーがあったんですが、飲めない程ではなく、美味しくいただいております。
ただティンキャップのボトルは初めてで、これからの保管は冷暗所で縦置きならこのままティンキャップで保管してても平気でしょうか?
余ってるコルクに変えたりした方がいいのでしょうか?
以前の記事への書き込みですみません、お忙しいとは思いますが、お時間のある時に教えていただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
コメントありがとうございます。
まず、状態の問題ないオールドパーに当たったとのこと、おめでとうございます!
沢庵のような酸味を伴う場合は、経年劣化によるオフフレーバーの一種ですね。シェリー系の原酒に見られる特徴だと思うのですが、多少ならこなれていくので気長に楽しんでみてください。
保管は開封済みかつ縦置きなら基本的には大丈夫だと思いますが、ティンキャップは一度開けると密閉性が悪くなるモノがあります。
半世紀も前のもので、かつ力のかかるパーツがありますから、動かして精度が悪くなるのも当然と言えば当然ですね。
なので、例えば少し横向きにしてみて、漏れがないなど確認されたうえで保管するならば問題ないと思いますが、いちばんは口径の合うコルクキャップに変えてしまうことだと思います。
でも、ティンキャップって特別感ありますから、できればそのまま使いたいという気持ちも個人的にはあります(笑)
参考になりましたら幸いです。
密閉性の問題なんですね。
ならせっかくのティンキャップなので、コルクには変えず、漏れがないか確認してからパラフィルムをまいて大切に飲んでいこうと思います。
ありがとうございました、
これからも記事を読んで勉強させていただき