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KANOSUKE NEWPOT 
Batch No,18001 
Distilled 2018.Jan.15 
200ml 59% 

香り:モルティング後の麦芽、柑橘の皮を絞ったようなほろ苦さと酸、軽い香ばしさ。奥には微かに乳酸や林檎の果肉を思わせる甘味も感じられる。ドライなアロマ。

味:柔らかいコクと粘性を感じさせる口当たり。ほろ苦い麦芽風味に加え、林檎や柑橘が混じったような甘酸っぱさ、ピリピリとした刺激を口内に感じさせる。余韻は果実系の風味を仄かに残し、ヒリつくようなトーンの高い刺激とビターなフィニッシュが長く続く。

嫌なところの少ない、素性の良さと丁寧な作りを感じさせるレベルの高いニューメイク。麦芽由来の風味だけでなく、酵母由来なのか林檎等果実を思わせる要素が香味に混じる点がポイント。また、ボディもそれなりにあって、熟成させる環境と合わせて5年程度の熟成で仕上がりそう。

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焼酎メーカーとしてはメローコヅルで知られる小正醸造が、2018年に鹿児島・吹上浜沿いの地に操業した、嘉之助蒸留所のファーストリリースであるニューポット。形状やサイズの異なる3基のポットスチルを使い分けて原酒を生産。このリリースは、2種類の原酒をバッティングし、少量加水して仕上げたものです。
先日発表されたWWAでは、ニューメイク部門で世界一は逃したものの、ベストジャパニーズの評価を得ています。

同蒸留所のニューメイクは、昨年7月の京都ウイビアメッセで初めて飲む機会を頂きました。
この時は各ポットスチルそれぞれで生産したニューメイクを試飲したのですが、嫌みが少なく、柑橘などの要素が感じられる一方で、香味の質が繊細でジンのようだなと。それはそれで良い味だと思いましたが、その場にあった焼酎樽熟成の試作ニューボーンでは該当する個性が潰れていたように感じられ、スイートスポットの狭い、熟成で苦労しそうな原酒だなという印象を持っていました。

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(2018年7月に京都で開催された、リカマン・ウィビアメッセの嘉之助蒸留所ブースにて。各種ニューメイクと、焼酎樽のニューボーンが試飲できた。)

ところが、その後リリースされた嘉之助ニューボーンを飲んだところ、アメリカンオークの樽香が酒質と上手く馴染んでおり、そんなに悪くないのかも・・・と。加えて、ファーストリリースのニューポットがWWAで受賞。WWAの評価は参考程度にしか考えていませんが、評価されるには理由があるわけで、ちゃんと飲んでおいた方が良いなと、自宅テイスティングすることにしたわけです。

前置きが長くなりましたが、複数タイプのポットスチルで作り分けた原酒をバッティングしたこのリリース、非常に良いニューメイクだと思います。
飲み口に柔らかさ、オイリーというか粘性を感じさせる舌当たりがあって、ボディも決して軽いわけではない。さすがにニューメイクなので、徐々に荒さというかドライな刺激が口内に広がっていきますが、これは熟成で十分軽減されるであろう程度です。
加えて未熟香が少ない点も、九州・鹿児島という暖かい場所で熟成させるに当たって短熟でのリリースになるでしょうから、地域の特性とマッチしていると感じられました。
これは5年後あたりの仕上がりが楽しみな原酒です。

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(嘉之助蒸留所のポットスチル。サイズ、形状共に全て異なっている。写真はウイスキーマガジンの特集記事から引用。http://whiskymag.jp/kanosuke_01/)

嘉之助蒸留所は、10億円以上とも聞く総工費をかけてイチから作られた蒸留所であり、その設計はウイスキーの生産のみならず、見学の導線にも配慮し、ウイスキー作りの現場を体感できるような洗練されたものであると伺っています。見学したウイスキー仲間の評判も総じて良く、鹿児島まで中々行くことは出来ませんが、いつか機会をつくって訪問してみたいと思います。

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